帝人 【東証プライム:3401】「繊維製品」 へ投稿
企業概要
帝人グループのサステナビリティに関する考え方及び取組は、次のとおりです。なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において帝人グループが判断したものです。
(1)マテリアリティ(重要課題)に関する取組
帝人グループは、社会・環境問題をはじめとするサステナビリティ(持続可能性)を巡る課題を経営課題と認識し、中期経営計画2020-2022の中でサステナビリティに関する方針を定め、自社にとっての機会とリスクを整理し、重要課題を特定しました。それぞれにKPIを設定して取り組みを推進することで長期ビジョンの実現につなげています。2023年に公表した「帝人グループ 収益性改善に向けた改革」においても、取り組むべき重要課題は変更せず、ポストパンデミック社会において、重要課題を解決する企業への変革を加速することを目指します。
①ガバナンス
サステナビリティを巡る課題への対応については、取締役会では年2回のTRM(トータル・リスクマネジメント)コミティー(*)報告のほかCEO、サステナビリティ管掌から適宜報告を受けて、状況を把握し指示を与えています。また経営陣は、サステナビリティに関する方針・計画及び進捗について、経営会議にて適宜報告を受け審議するほか、年2回のTRMコミティーを通じてサステナビリティに関する課題の対応状況を詳細に把握し対策を推進しています。
(*)TRMコミティー:CEOを委員長とし「経営戦略リスク」と「業務運営リスク」を統合管理する会議体
②戦略
重要社会課題を事業の成長機会と捉え、社会が必要とする新たな価値を創造・提供していくことで、事業と社会の持続的な発展を目指します。
1) 気候変動の緩和と適応
「気候変動の緩和」では、高機能・高付加価値材料によるモビリティの軽量化や高耐久化を中心としたソリューションを提供します。「気候変動への適応」では、高機能素材によるインフラ補強材や、ヘルスケアやIT等の技術やサービスを通し、自然災害発生時の被害低減と迅速な復旧に役立つソリューションの提供に取り組みます。また、事業活動に伴う地球環境への負荷低減として、脱石炭火力を図るとともに、省エネ・再エネ化の推進やプロセスイノベーションなどの技術革新にも取り組みます。
2) サーキュラーエコノミーの実現
製品の長寿命化とシェアリングにつながる「高耐久・高品質素材」を提供します。また、資源が排出されたところにリサイクル製品を還元する「地産地消型マテリアルリサイクル」など、「リサイクル技術の開発・提供を通じたパートナーシップ」によって、バリューチェーン全体での資源循環性の向上に貢献します。また、事業活動に伴う資源循環の取り組みとして、リユース、リサイクルなどによる廃棄物の削減や、水使用量の少ない製品の拡大と事業活動における水の効率的利用に努めます。
3) 人と地域社会の安心・安全の確保
火災の高熱にも耐えるアラミド繊維、地震災害時の天井落下リスクを軽減する超軽量天井材、あるいは安否確認システムなど、高機能素材やITを駆使したソリューションを提供します。また、ナノレベルの微細技術を活用したフィルターや環境エンジニアリングなどにより、地球環境汚染の防止・浄化に貢献します。また、事業活動における生態系の破壊や環境汚染につながる有害化学物質の把握と管理を徹底し、事業活動に伴う有害化学物質排出量を計画的に削減します。
4) 人々の健康で快適な暮らしの実現
医薬品・医療機器・医療材料・食品・ITサービスなどを総合的に活用し、人々の健康的で快適な生活を支えるソリューションを提供します。特に、希少疾病・難病などを中心に、より支えを必要とする患者、家族、地域社会の課題を解決するソリューションを提供していくことを目指します。また、安全と健康に配慮した職場環境を提供するため、労働災害の撲滅、長時間労働の是正、メンタルヘルスの向上に取り組みます。
③リスク管理
サステナビリティに関するリスクについては、TRMのグループ重大リスクと位置付けTRM体制のもとで管理しています。詳細は、「3 事業等のリスク」をご参照ください。
④指標と目標
環境負荷低減については、中期経営計画2020-2022で設定したKPIを継続(一部目標値を引き上げ)しています。自社グループ排出温室効果ガスの削減目標は「2℃を十分に下回る目標水準(Well-below2℃)」であるとして、パリ協定の定める目標に科学的に整合する温室効果ガスの排出削減目標「Science Based Targets(SBT)」の認定を受けており、長期目標達成のロードマップを設定して、ネット・ゼロの実現に向けて取り組んでいます。この他にも下表のようにサステナビリティに関するKPIの長期目標を設定しており、達成のロードマップを新中期経営計画(2024年度公表予定)にて明示する予定です。
項目 | 目標年度 | 目標 | |
気候変動 (CO2排出量) | CO2*1削減貢献量*2 | 2030 | 「削減貢献>総排出」達成 |
自社グループ排出(Scope1+2) | 2030 | 2018年度比 30%削減 | |
2050 | 実質ゼロ実現 | ||
サプライチェーン*3(Scope3) | 2030 | 2018年度比 15%削減 | |
水(淡水取水量売上高原単位*4) | 2030 | 2018年度比 30%改善 | |
有害物質(有害化学物質排出量売上高原単位*4) | 2030 | 2018年度比 20%改善 | |
資源循環(埋立廃棄物量売上高原単位*4) | 2030 | 2018年度比 20%改善*5 |
*1 CO2以外に、メタン、一酸化二窒素を含んでいます。
*2 当社製品使用による、サプライチェーン川下でのCO2削減効果を貢献量として算出しています。
*3 スコープ3排出量のうち、カテゴリー1(購入した製品・サービス)の商社ビジネスを除く範囲を対象としています。
*4 各指標の売上高原単位は、連結売上高を分母に適用して算定しています。
*5 2022年度に、目標値を2018年度対比10%改善から20%改善に引き上げています。
(2)人的資本(人材の多様性を含む)に関する戦略並びに指標及び目標
① 戦略(人材の多様性の確保を含む人材の育成に関する方針及び社内環境整備に関する方針)
帝人グループは、企業理念の1つとして「社員と共に成長」することを謳っており、具体的には次の3項目の実現を目指しています。
■ 社員が能力と個性を発揮し、自己実現できる場を提供します。
■ 社員と共に、革新と創造に挑戦します。
■ 多様な個性に彩られた、魅力ある人間集団をめざします。
革新と創造への挑戦なくして企業の成長はありません。帝人グループは、上記3項目の実現により「社員と共に成長」することが企業価値の向上につながると考えています。そのために、1)人財多様性の推進 2)自律的キャリア形成 3)企業風土改革 4)生産性向上とデジタル人財育成に加え、全ての人事施策の基盤となる 5)社員エンゲージメント向上を重視し、諸施策を推進しています。
1)人財多様性の推進
帝人グループは、多様な人財を活用することが創造性を高め、イノベーションを促進すると考え、2000年より女性の活躍の推進、外国籍社員の採用などに積極的に取り組んできました。事業のグローバル化に伴い、日本を中心とした取り組みを世界に広げ、役員層の多様性推進のためのKPIを設定しているほか、日本だけでなくグローバルの各地域それぞれの課題状況に応じた地域戦略とKPIを設定し、その達成に向けて施策を実行しています。
また、事業ポートフォリオの変革に合わせた人財の獲得や、新鮮なアイディアや価値観を取り入れて、組織を活性化させるため等の理由から中途採用者を積極的に活用しており、2022年度のキャリア入社者の割合(総合職以上)は23.9%、キャリア入社のうち管理職の割合は7.2%でした。
2)自律的キャリア形成
社員が、自らキャリアを形成できる仕組みとして、4つの制度・施策を実施しています。「自己申告制度」により、毎年、上司と今後のキャリアについて話し合うほか、社内のキャリアコンサルタントによる相談窓口を設けています。また、希望する職種・ポストへの異動が可能な制度として、上司に断りなく応募できる「ジョブチャレンジ(社内公募)」と、公募枠がなくとも社員本人が希望する異動先に申請し、異動先が選考の上で異動を実現させる「FA(フリーエージェント)制度」があり、2022年度は29人がこれら制度を活用して社内で新たなキャリアに挑戦しました。また、2022年度から、現在の業務に直接関係ないスキルであっても、希望者はキャリア形成に必要な知識やスキルをいつでも習得できるようオンラインで自由に学べる「オンライン学習サービス」も導入しました。
3)企業風土変革
多様化していく人財を最大限活かすため、2020年度から3年間、革新と創造への挑戦を推奨する企業風土を醸成する「Power of Culture Project(企業風土変革プロジェクト)」を実施しました。2020年度より役員層を対象に開始し、リーダーシップにフォーカスした組織開発の手法を取り入れ、トップリーダーの行動変容による組織風土の改革を推進し、2021年度及び2022年度はグローバルの部長層に広げて展開しました。
社員が新しいアイディアを自由に提案し、社員同士で意見交換等の交流ができるプラットフォームとして「IdeaScale*」を活用しています。グローバルで社員2,300人以上が登録して交流を行っています。「IdeaScale」のプログラムの1つである「新規ビジネス提案」では、審査に通過したアイディアに予算をつけて事業化に向けた検討を行っています。2022年度は、183件の新規ビジネス提案のうち、1件が最終審査に通過し、事業化に向けた検討が進んでいます。
*IdeaScale:帝人グループ内の交流・提案の活性化、新規ビジネスのアイディア創出を目的としたシステム。社員であれば誰でも自由にIDを登録し、新規ビジネスのためのアイディアを提案し、関心のあるテーマについてシステム上で意見交換や情報交換ができる。
また、挑戦したこと自体を賞賛する仕組みとして、2021年度から2022年度にかけて、グループ・グローバル全社員を対象として、「ダイバーシティ&インクルージョン」「イノベーション」「サステナビリティ」の3つの領域においてイノベーションの促進を通じて帝人グループや未来の社会に大きなプラスの効果をもたらす取り組みを表彰する「Designing the Future Award」を実施しました。この取り組みの実績も踏まえ、多様な価値観に対応できる今後のあるべき表彰制度を検討していく予定です。
4)生産性向上とデジタル人財育成
業務効率化による生産性向上のため、2018年度からRPA(*1)開発の専門部署を立ち上げ、各部署の定型的な業務の自動化を実施しました。大型のRPA開発が一巡したことから、2022年度はこれまでの専門部署によるRPA推進の方針を変更し、各部署での自律的なRPA推進体制の構築により定型業務の自動化を実施し、2018年度末から2022年度末までに約170業務を自動化し、約8万時間相当の業務削減を実現させました。今後も各部署の社員自身がRPAを開発できるよう研修・教育を通じてリスキリングを行い、各部署における業務プロセス等の自動化を進めます。
また、帝人グループでは、デジタルトランスフォーメーション(DX)(*2)の自律的推進を課題と認識しており、2023年度にグループ全体のDX推進を強化・支援するDX推進部を新設しました。今後、DX推進部・人事部門が連携し、社員がデータやデジタル技術の活用で新たな価値を創出できるよう2023年度からグローバルで“帝人流”のビジネスアーキテクト(*3)育成を開始します。この取り組みを通じて、社員のDXリテラシーを向上させるとともに、業務・プロセスのDXを実際に提案・企画できる社員を育成していきます。
*1 RPA:Robotic Process Automationの略で、定型的な事務作業を自動化するツール。業務効率の向上と人為的ミスの予防に役立ち、生産性の向上の効果がある。
*2 帝人におけるDXとは、データやデジタル技術の活用で、新たな価値を創出すること。
*3 帝人流ビジネスアーキテクトとは、デジタルを活用した問題解決の企画・立案・推進を担う者をいう。
5)社員エンゲージメント向上
社員の働く環境、組織状態及び人事施策等は、社員のエンゲージメントに大きな影響を与えます。エンゲージメントが高い社員が多い組織は、困難を乗り越えようとするレジリエントさを持ち、目標の達成力が高いとされていることから、2021年度より全世界の社員(約19,500名)を対象にエンゲージメントサーベイを行い、会社や組織に対する意識や貢献意欲を把握しています。
エンゲージメントサーベイにより各階層の全ての組織の状態と課題を見える化したうえ、特に最小の組織(部・課)毎の改善施策を重点的に実施しています。2021年度の全社のエンゲージメントスコア64に対して、具体的な改善施策を実施した結果、スコア改善に繋がった組織があった半面、様々な要因がありスコアが低下した組織もあり、2022年度は全体では前年と同一スコアとなりました。今後は、全ての事業本部・機能組織で毎年スコアを1%改善することを目標として、ベストプラクティスを全社共有することによりスコア改善を図っていきます。
②指標及び目標
1) 2020年度-2022年度 中期経営計画における目標と実績
帝人グループは、中期経営計画期間において、役員層の多様性推進のためのKPIを設定したほか、日本だけでなく、グローバルの各地域それぞれの課題状況に応じた地域戦略とKPIを設定し、その達成に向けて施策を実行してきました。2020年度以降に設定したマイルストーンの達成状況は下表のとおりです。未達となったKPIについてレビューを行いつつ、実情に応じたキャッチアップ策を検討・実施していきます。
| 2019年 10月*6 | 2020年4月*6 | 2021年 4月*6 | 2022年 4月*6 | 2023年 4月*6 | マイルストーン 2023年4月*6 | ||
役員 *1 ダイバーシティ | 女性役員数 | 3 | 4 | 4 | 5 | 5 *8 | 6以上 | |
非日本人役員数 | 3 | 5 | 5 | 4 | 3 *8 | 6以上 | ||
女性活躍 重点目標*2 | 日本 *3 | 管理職数 | 117 | 127 | 143 | 162 | 172 | 174 |
米国 | 上級管理職数*4 | 2 | 2 | 2 | 3 | 3 | 4 | |
欧州 | グローバルコア人財数*5 | 0 | 1 | 1 | 3 | 3 | 3 | |
中国 | 上級管理職数*4 | - | 4 *7 | 4 | 7 | 7 | 9 | |
ASEAN | 上級管理職数*4 | - | 5 *7 | 5 | 7 | 10 | 5以上 |
*1 取締役、監査役、グループ執行役員・理事 *2 地域別の課題に応じて設定(中国・ASEANは2020年9月設定) *3 国内グループ主要4社:帝人(株)、帝人ファーマ(株)、帝人フロンティア(株)、インフォコム(株) *4 グループ会社社長を含む上級管理職
*5 すでに相当数存在する管理職からグループ執行役員候補として選抜・認定された人財 *6 各年10月1日、4月1日時点のデータ
*7 KPI設定時の2020年8月1日時点のデータ *8 2023年4月から役員制度変更のため同年3月末の人数を記載
2) 2023年度以降の目標
経営体制見直しにおける執行役員数低減に合わせ、長期目標値を再設定(人数の目標値から比率の目標値に変更)すると同時に、従業員満足度(エンゲージメント)のKPIも設定しました。多様な属性、バックグラウンド、価値観を持った人財が活躍でき、また、男女間賃金差異改善に繋がる女性管理職比率の向上を目指して各種取り組みをさらに推進し、より一層イノベーションを促進する活力ある組織づくりを進めます。また、役員報酬制度において、ダイバーシティ&インクルージョン、従業員満足度(エンゲージメント)を指標として設定し、目標達成に向けた実効性を高めています。
| マイルストーン 2026年4月 | 目標 2030年度 |
女性役員 | 20% | 30% |
非日本人役員 | 10% | 30% |
従業員満足度 | 毎年1%改善 (参考:2022年度実績64%) |
(3) 社会貢献活動
帝人グループ社会貢献基本方針に則り、自然との調和を大切にし、地域コミュニティとともに発展するため、よき企業市民として事業特性や地域性を尊重した適切な社会貢献活動を推進しています。
学術・教育、スポーツなどを通じた次世代の育成の支援としては、若き科学技術者の育成を目的に創設した公益財団法人帝人奨学会による帝人久村奨学金制度を通じ、70年にわたり約1,700人の理工系学生を支援しています。また、「全国高校サッカー選手権大会」への協賛や、公益財団法人日本ユニセフ協会「子どもの権利とスポーツの原則」への賛同等、青少年のスポーツ支援に取り組んでいます。その他、社員のボランティア活動を支援する様々な仕組みを継続的に運用しています。
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