企業兼大株主山陽特殊製鋼東証プライム:5481】「鉄鋼 twitterでつぶやくへ投稿

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企業概要

 以下の記述のうち、将来に関する事項は、当連結会計年度末(2024年3月31日)現在における当社グループ(当社、連結子会社および持分法適用関連会社)の判断に基づくものであります。実際の業績は、今後様々な要因によって大きく異なる結果となる可能性があります。

(1) 経営方針

 当社グループは、“社会からの信頼”、“お客様からの信頼”、“人と人の信頼”を確立することを目指す「信頼の経営」を経営理念としております。

 この経営理念のもと、当社グループは、特殊鋼製品の製造・販売を通じた「高信頼性鋼の山陽」のブランド力の更なる強化とともに、地球環境対策の確実な実行や企業倫理の徹底など、社会を構成する一員として求められる責任を果たすことにより経済性と社会性の両立を図ります。これらの取組みを通じて企業価値を高め、株主の皆様、需要家、従業員、社会など、全てのステークホルダーからの一層の信頼を得られる企業を目指してまいります。

(2) 経営環境及び対処すべき課題

特殊鋼は、鋼にクロムやニッケルなどの元素を添加することで、硬度、強度、粘り強さ、耐磨耗性、耐熱性、耐食性等、用途に応じた特殊な性能を持たせた鋼であり、自動車、鉄道、建設機械、エレクトロニクス製品や情報通信機器など、様々な工業製品の重要部品・基幹部品として使用されるため、高い品質と信頼性が求められる素材であります。

特殊鋼に対するニーズは、最終製品の機能向上や環境負荷の低減などを背景に多様化・高度化の一途をたどっております。当社グループは、長年にわたって培ってきた「高清浄度鋼製造技術」をベースに、それらのニーズに的確に応える高品質の特殊鋼製品を提供してまいりました。

 当社グループは、電気炉による製鋼から最終製品までの一貫生産を行う事業拠点を日本、欧州、インドに有しております。当社の直接輸出比率は約2割ですが、当社製品の間接輸出等や海外事業拠点における製造・販売分を含めますと、当社グループ製品の多くは海外で使用されております。

 当社グループの主力製品は、ベアリングの素材となる軸受用鋼であります。軸受用鋼は機械の回転運動を支えるため、特に厳しい品質が求められます。ベアリングの寿命を左右するのは鋼の清浄度の高さとされており、ここに当社が強みとする「高清浄度鋼製造技術」が生かされております。

 当社グループの主要な最終需要先は、自動車、産業機械、建設機械業界等であり、当社グループの製品には、自動車メーカー等に直接販売されるものとベアリングメーカーや部品メーカー等へ販売され、各サプライチェーンにおいて各種の部品に加工された後、最終的に自動車メーカー等へ納入されるものがあります。

 近年、競合他社の生産能力の増強や品質・技術力の向上等により、特殊鋼業界における国際競争は激しさを増しております。今後の特殊鋼需要に関しましては、2024年度後半からの回復が期待されるものの、通期の売上数量は当連結会計年度並みの水準にとどまると予想されます。また、原燃料価格は当連結会計年度比では低下するものの依然として高位で推移し、物流費等へのインフレの影響も見込まれます。

 このような中、当社グループといたしましては、外注・物流面を含む労務費の上昇も踏まえた販売価格の改定を進めるとともに、コストダウンにも取り組むことによりマージンを維持・拡大してまいります。また、引き続き経営理念「信頼の経営」の実践を通じて、大きく変化する経営環境下においても、人・技術・利益の持続的成長を図るとともに、持続可能な社会の実現に貢献してまいります。

 なお、当社グループは、グローバルな特殊鋼マーケットでの企業価値の更なる向上を目指し、2021年度~2025年度を実行期間とする、2025年中期経営計画を策定し実行してまいりましたが、当初の2025年中期経営計画策定後、資源価格のインフレ(鉄鋼需給とのデカップリング)、人的資源の制約拡大、EV化・カーボンニュートラルの加速化など、大きな環境変化が起こっていることなどを踏まえ、2023年7月に2025年中期経営計画の見直しを行いました。

 その内容は以下のとおりであります。

①2025年中期経営計画の基本方針

(ⅰ)グローバルな特殊鋼市場での企業価値・プレゼンスの更なる向上

・人的資本の確保や設備投資等により企業基盤を強化する。

・需要動向の不透明さや原燃料等のコストプッシュが持続することが想定される中、マージン・販売構成改善を継続的に実施する。

・グローバルに、事業基盤を強化するとともに、企業価値・プレゼンスの更なる向上に資する機会を探索する。

・資本コストや株価を意識した経営を実施し、PBR1倍を目指す。

(ⅱ)国内・海外事業の収益力強化

・単独鋼材事業は、市場および顧客が異なる軸受・機械構造用鋼分野(軸受営業部、自動車・産機営業部、海外営業部)と、高合金鋼分野(特品営業部)各々の営業基盤強化により、適正マージンを確保する。

・OVAKOは、カーボンニュートラルにおける優位性の更なる活用や固定費の持続的なコントロール等により、安定的な収益構造の維持・強化を目指す。

・Sanyo Special Steel Manufacturing India Pvt. Ltd.(以下、「SSMI」)は、コスト競争力や営業力の強化を通じ、インド市場でのプレゼンスを更に高める。

・素形材事業は、グローバルなサプライチェーン一貫での競争力を活かし、収益基盤を一層強化する。

・粉末事業は、今後需要増が見込まれる高収益アイテム(3Dプリンター、半導体、DⅩ・カーボンニュートラル対応)の販売拡大、新規アイテムの発掘などを通じ、更なる利益成長を目指す。

(ⅲ)ESGの取組み強化

・ガバナンス体制やESGの取組みを強化し、適切な開示を積極的に行う。

・ダイバーシティや健康経営に加え、グローバルも含めた人材の確保・育成および社員のエンゲージメント向上に資する取組みに注力する。

・従来の数値指標に加え、5つのESG指標(CDP気候変動スコア、健康経営度評価、安全指標、女性管理職比率、社外取締役による取締役会実効性評価)を役員報酬へ反映する。

(ⅳ)2050年カーボンニュートラルの実現

・グループ全体で、「エコプロセス(省エネ・高効率)」「グリーンエネルギー活用」「エコプロダクト(長寿命軸受鋼:自動車・風力発電・鉄道、3D粉末)」「エコソリューション(OVAKO・SSMI:省エネ技術・生産性向上の展開)」を推進する。

・エネルギーインフラに恵まれ、顧客からの認知度も高いOVAKOは、グリーン水素の製造・活用開始を含め、カーボンニュートラル分野でのリーダーシップを加速させる。

・グローバルな成長が見込まれる「EV(駆動系新機構等)」「風力発電(大型向け高品質材等)」「鉄道(グローバル高速鉄道軸受等)」「水素社会(水素関連設備等)」等の分野での更なる高信頼性ニーズに応える新商品(ECOMAXシリーズ、TOUGHFIT等)を拡大し、技術を深化させる。

・代表取締役社長を委員長とした「カーボンニュートラル推進委員会」を中心に多岐にわたる重点課題に対して、グループ横断的な取組みを強化する。

(ⅴ)DX(デジタルトランスフォーメーション)の推進

・代表取締役社長をリーダーとするDX推進プロジェクトチームを設置し、「業務改革」と「工場改革」の取組みの2本柱として業務・操業効率化とプロセス改革を図る。

・業務・操業の棚卸しを実施し、社員のお困り事を解決するためにDXを活用する。

・統合データベースを構築し、業務システム間で必要なデータの共有化を図る。

・最新のデジタル技術を活用し、情報の見える化・リアルタイム化、業務の自動化、省力等を図る。

・業務変革に繋がるDXを実施する事で、事業構造を高度化し、企業価値を向上させていく。

②財務目標・経営資源投入(連結)

(ⅰ)2025年度財務目標

・売上高          :4,200億円程度(当初計画:2,800億円程度)

・経常利益         :220億円程度(当初計画:140億円程度)

・ROE          :7%程度(当初計画:5%程度)

・ROE(のれん償却除き) :8%程度(当初計画:6%程度)

(ⅱ)経営資源投入

・設備投資(2023~2025年度):160億円程度/年(当初計画:120億円程度/年)

 カーボンニュートラル(省エネ)・DⅩ中心に積極的な設備投資を実施する。

・従業員数(2025年度末)  :6,500人程度(当初計画:6,400人程度)

 グローバルも含めた人材を確保する。

③PBR1倍に向けた取組み

(ⅰ)改善計画

・中期経営計画の諸施策の実施により、収益・ROEを改善。

・政策保有株式の相互売却を通じた流通株式比率の向上により、資本コストを低減。

・投資家との継続的な対話を通じ、カーボンニュートラル・ESG取組みへの適正な評価を獲得。(株価への反映)

・配当方針を改定。(配当性向、1株当たり配当額水準および成長投資等の所要資金などを総合的に勘案。通常の連結配当性向35%程度、のれん償却除き30%程度)

(参考)株主・投資家との対話の実施状況等

(ⅰ)対話方針等

・持続的な成長と中長期的な企業価値の向上を図る観点から、株主・投資家との建設的な対話を促進するための諸施策に取り組む。

・株主・投資家との対話全般については、役員および財務部・総務部をはじめとする社内各部門が連携して施策の充実に努める。

(ⅱ)2023年度の対話実績

・対話実績

 四半期または期末決算発表当日の説明会(※1)   4回

 個別面談(※2)                103回

 機関投資家向けESG説明会(※3)        1回

(※1)第2四半期および期末決算時は代表取締役社長が参加。説明用資料は日本語、英語版を同時開示。説明会議事録を当社ウェブサイトに掲載。

(※2)個別面談による対話を行った株主・投資家は延べ184名、うち海外の株主・投資家が延べ50名。

(※3)機関投資家向けにESGについての取組みを説明。代表取締役社長、取締役常務執行役員、常務執行役員が説明者として登壇。説明会の動画、資料および議事録は当社ウェブサイトに掲載。

・対話の主なテーマ

 当社および連結子会社の業績

 主要需要業界の動向

 原燃料価格・固定費コスト上昇への対応

 カーボンニュートラルへの取組み など

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