富士製薬工業 【東証プライム:4554】「医薬品」 へ投稿
企業概要
文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
(1) 経営方針
当社グループは、「優れた医薬品を通じて、人々の健やかな生活に貢献する」、「富士製薬工業の成長はわたしたちの成長に正比例する」ことを経営理念としております。今後も引き続きこの経営理念の下に、良質な医薬品の開発・製造・販売を通じて、顧客、仕入先、株主、従業員、地域・社会の各ステークホルダーに対する責任を果たしつつ、さらに貢献と成長の好循環を発展させてまいりたいと考えております。
(2) 経営者の問題認識と今後の方針について
中期経営計画の成長戦略としては、中期視点で3つ、長期視点で1つを進めて参ります。
これらの4つの成長戦略を支える3つの施策として、人財の強化、組織機能の高度化、デジタルの推進を推進してまいります。
① 女性領域での貢献拡大
女性領域とは婦人科疾患以外にもメンタルヘルス、心臓血管関連、母体の健康など様々なカテゴリーに分けられておりますが、いずれも将来的に市場が拡大する見通しとなっており、婦人科疾患に絞ってもグローバルでは現時点でも2兆円を超える市場となっております。
日本国内では、月経随伴症状と更年期障害による経済損失は2.5兆円と言われ、その背景には先進諸国と比較して疾患認知の遅れ、低い産婦人科受診率、低いホルモン剤治療率などがあり、国内市場拡大の余地は、まだ十分あると考えております。
このように拡大余地が大きな国内女性医療市場に向けて、2024年12月から発売を始めたアリッサ配合錠を中心に、エフメノカプセル、経口避妊薬などが貢献する見通しです。
国内の月経困難症の患者様に対しては、低用量エストロゲン・プロゲスチン配合剤(LEP製剤)が約80%使用されています。このLEP製剤の増加傾向は今後も続くと見込んでおり、既存のLEP製剤にないメリットを有するアリッサ配合錠を、より多くの患者様に届けられるよう、国内最大規模である当社女性医療専任МR90名が情報提供活動に取り組んで参ります。また、よりメディカル視点での医師とのコミュニケーションを実現するためメディカルアフェアーズ部、メディカルサイエンスリエゾンを設置するとともに、日本の医師90%以上が会員となっている共同開発先のエムスリー社の情報提供プラットフォーム、サービスを活用しながら、女性医療での貢献拡大に努めてまいります。
② バイオシミラー事業の成長
世界のバイオ医薬品市場は医薬品市場全体の40%に到達しており、日本においても医療経済的観点から、低分子のジェネリック医薬品が数量ベース80%を達成しております。
このような背景から、昨年国内におけるバイオシミラー普及について、過去のジェネリック医薬品と同様に、厚労省から2029年に向けた具体的な数値目標が出され、今後、バイオシミラーの普及はこれまで以上に急速に進んでいくと考えられます。当社ではバイオシミラーのラインナップを既に上市済みの3製剤に加え、中期経営計画期間中に6製剤まで増やしていくことを予定しております。
③ グローバルCMO事業の成長
CMOに製剤開発を加えたグローバルのCDMO市場は今後も年平均成長率で7.2%拡大していくと想定されています。当社グループでも、既に製剤開発を加えたCDMO事業を手掛けております。
当社が製造所を保有しているタイ、日本という生産拠点は、地政学的リスクも比較的低く、欧米の大企業をはじめ多くの新規受託案件の検討がなされております。
タイ、日本で製造できる剤型は多岐に及び、OLICと富山工場が連携することで様々な顧客ニーズにお応えできるものと考えております。
④ 次の成長に向けた戦略投資
当社は、これまでにも新薬の自社開発を3製品手掛けてきておりますが、既に海外で承認済みの製品の国内未承認薬、既に医薬品となることが見通せている成分の国内開発が中心でした。
今後は、早期の開発フェーズにあるもののシーズ探索と目利き、そしてこれを医薬品として開発していくことを計画しています。
女性医療領域でのシーズ探索を中心として、創薬エコシステムに入り込むためにコーポレートベンチャーキャピタルの設置や、女性医療分野の新規成分の研究が盛んに行われている北米やヨーロッパにリサーチハブを設置することも含め、医薬品に限らず、医療デバイスによる価値提供にもアンテナを張って新規開発パイプラインの構築に努めてまいります。
これらの4つの成長戦略を支える3つの施策として、人財の強化、組織機能の高度化、デジタルの推進をそれぞれ進めてまいります。
ひとつ目の人財の強化は、女性医療に注力する企業として、女性が働きやすい環境整備を積極的に進め、女性の健康課題解決に対する福利厚生を、さらに充実させていき、女性管理職比率を現在の20%から大きく引き上げる取り組みを進めて参ります。また、当社の真面目で仲間を想う組織の源泉となっている徳目のさらなる浸透に注力していきます
ふたつ目の組織機能の高度化については、シーズ探索など研究開発基盤の強化、現在社会問題となっている安定供給を堅持するためのサプライチェーンの維持、効率的な生産体制の強化を進めて参ります。また上市した医薬品の価値を最大化するためのライフサイクルマネジメントの推進基盤についても強化してまいります
最後は、デジタル活用が必須となっている現代において、後れをとることの無いよう、デジタル専門組織体制を整備し、全社を挙げてデジタル人財の育成と風土改革、デジタル基盤の構築とデータの更なる利活用を推進してまいります。
(3) 目標とする経営指標
中期経営計画の最終年度である2029年9月期は、売上高800億円、営業利益100億円を目指します。
営業利益率は、収益性の高い女性医療領域の新薬と既存製品やバイオシミラーの貢献などにより、2024年9月期の8.4%から大きく改善させて12.5%を目指します。
収益性改善に伴い、EBITDARは109億円から230億円と倍増させ、営業利益ベースの一株あたり純利益は 240円、ROEは10%を目標としております。(EPS、ROEはいずれも現在発行済みの新株予約権が全て行使された後の数値)
(4) 対処すべき課題
当社では2035年の長期ビジョンとして「女性医療で新たな価値を創出し続け、誰もがwell-beingを実感できる社会へ貢献する」を定めました。
人生のうち、女性は男性よりも25%多い時間を不健康で過ごしていると世界経済フォーラム2024で公表されており、経済産業省からは月経随伴症に伴う経済損失額は約6,000億円、更年期症状による経済損失額は約1兆9,000億円であるといわれ、女性の健康課題の解決は大きな社会問題であると考えております。
そのなかで、当社は創業以来50年以上にわたって一人でも多くの女性を笑顔にするために、女性医療に取り組んできており、女性医療領域はわたしたちの貢献と成長の象徴であると捉え、今後、ウィメンズヘルスにおける医療格差がなくなり、女性が男性と同様に健康な生活を送れる世の中を目指し、富士製薬工業グループ全体でそんな未来の創造に貢献する責任があると考えております。
まずは、日本そしてタイの子会社を中心としたASEAN諸国において、当社グループの貢献の範囲が広がっていくことを重要な戦略と位置付けております。
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