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企業概要

 当社グループにおける研究開発活動は、主に連結財務諸表を作成する当社が行っております。

 また、当社における研究開発活動はSI事業に係るものであり、その活動状況は次のとおりであります。

(1) 研究開発体制

 当社の研究開発につきましては、技術管理統括部、ミライクリエーションラボプロジェクトをはじめとする各研究開発部門において、最新の技術動向を調査・研究すると共に、実践レベルでの各種検証を行っております。

 なお、当連結会計年度末の研究開発に従事する人員数は、108名であります。

(2) 研究開発費用

 当連結会計年度において当社グループが支出した研究開発費の総額は、924百万円であります。

(3) 研究開発の概要

①DX

・ UiPathTestSuiteと既存テスト手法(TestCafeでの自動テスト、および手動テスト)との比較検証による効果測定

 製造業向けの開発案件において、機能増加や高機能化に伴いテスト工数増加やデグレードリスクが高まっているため、RPA技術を用いて自動テストを実現できる「UiPath Test Suite」を用いて、有効性の検証を実施いたしました。検証の観点としては、「1.OSSの自動テストツールとUiPath Test Suiteでのテストシナリオ作成の生産性比較検証」、及び「2.手動でのテスト実施とUiPath Test Suiteを用いたテスト実施との比較検証」としております。

1.の検証結果としては、ツールを用いたテストシナリオの作成効率の観点では17%の改善効果が得られました。
また、UiPath Test SuiteはRPAツールの特色から幅広いアプリケーションに対応しており、これまでWebUIを中心としていた自動化対象を組込開発で使用される各種ツールにまで拡大可能なことが判明いたしました。
 2.の検証結果としては、自動化したテストを安定稼働させるために必要な手法や、想定通りに稼働しなかったテストの原因特定にコード解析やWebUIの知見が必要であり、開発知見の有無でシナリオの作成効率に大きな差異が発生することが分かりました。このことから、自動化コストの改修には8~30回程度のテスト実施が必要となることが判明いたしました。
 今後は本研究開発活動を通じて得られたことを活かし、テスト自動化環境の構築からテストシナリオの作成、実行までを富士ソフトが行う事で、UiPath Test Suiteによるテスト自動化を一括で対応するサービスの検討を進めてまいります。

・ Web3/NFT/メタバースに関する調査研究

2022年7月より開始した、「Web3/NFT/メタバースワーキンググループ」において検討した結果、日々進化している同ビジネス環境については、ネットや書籍から得られる情報だけでの検討では不足しており、実際の環境やオープンマーケット上での活動を行うことにより、より実ビジネスに即した最新の情報獲得やネットや書籍からは得る事の出来ない、ビジネス上の課題や技術要素を発見し解決する事ができるとの結論となり、実環境を行った調査研究の実施を行うこととし、目的達成のため、以下2テーマの調査研究を同時に実施いたしました。

・テーマ①:実際に社内で触れる環境、コンテンツを​クローズド環境で構築。技術調査、応用利用を調査・研

 究する。​​

・テーマ②:オープンマーケット上に実ビジネス環境同等の環境を構築。技術要素調査、周辺システム、企業法

 務の課題を​調査・研究する。​

テーマ①の調査研究の結果としては、目標とするクローズド環境にて、NFTを動作させるシステム構築および、コンテンツとなるFUJIPOINTの構築を完了、また、構築における技術要素及び課題事項についての洗い出しが完了いたしました。

テーマ②の調査研究の結果としては、目標とするオープンマーケット上にてNFTシステムの構築を完了、実際に仮想通貨を流通させ、ビジネスに必要な条件構築が完了いたしました。

・ 「人材育成プラットフォーム」に関する調査研究

2022年7月より、全社教育市場戦略検討・推進WGを立ち上げ、教育市場において「今後当社が注力すべき分野の検討」等を検討して参りました。検討の結果、市場成長率が高く今後拡大が見込まれる社会人教育市場を対象に、当社の技術者育成ノウハウを活かし、社会人が日々意欲的に学習しスキル習得/向上を実現する「人材育成プラットフォーム」を立案し、社会人の技術者育成プロセスの確立や課題点を抽出するため、社内実証による研究を実施することとしました。

 社内実証の実施に向け、2023年3月より教育プログラムや実証フィールド等を検討し、参加者募集の準備を開始、2023年4月からは社内実証フェーズ1を開始し、3つのテーマ(AI/EC/セキュリティ)について社内で実証参加者を募り、個別学習とワークショップを中心とした協働学習による育成プロセスを検証いたしました。

 フェーズ1では、意欲的に学習する資質を持つ人材の発掘プロセスや育成プロセスにおけるワークショップの有用性を確認、2023年11月から開始したフェーズ2では、フェーズ1の実績/課題を踏まえ、有効性を確認した「探求/協働学習」の割合を拡大したカリキュラムに変更し、意欲的に学習する資質を持つ人材の候補者を発掘するAI等、運営面の効率化や、学習者の理解度・スキル向上を図るためのAI・ツールのプロトタイプを開発し、効果検証を実施しております。

②AI

・ AI技術に関する調査研究

 大型GPUサーバーを導入し、開発者に提供することで早期提案の実現や開発の生産性を向上する取り組みを行っております。この取り組みの実現により、お客様のサービス提供スピードの向上とともに高付加価値の実現への貢献を果たしております。医療分野においては引き続き大学病院と共同研究を実施しており、他の部位や異なる症状についての共同研究を進めております。デジタルツインを実現するシミュレータの研究においては、ビジネスへの転用を図っており、多くの引き合いを頂いております。大規模自然言語モデル(LLM)においては、全社員に利用できる環境を公開するとともに、カスタマイズの手法や様々なLLMの評価などを経てソリューション化の一助となる調査、研究活動を実施しております。ロボット分野においてはROSを利用したロボット、AMR等を低予算で少量多品種の生産現場へ適用すべく研究を進めております。
 今後も市場の動向や研究で発表される新たな技術の調査・検証を進めると共に、開発の生産性や品質の向上、お客様の付加価値を提供すべく継続して研究を進めてまいります。

・ データ分析技術に関する調査研究

 データ分析技術活用によるビジネスの拡大を研究目的としております。DX時代に必要なデータ分析基盤の調査研究と合わせて取り組んでおり、これらの活動を経て、お客様のデータドリブン経営の実現に貢献してまいります。

③Security

・セキュリティに技術関する調査研究

 社内システム・自社プロダクト・受託開発のセキュリティ強化のため、「セキュア開発・運用プロセス」、「脆弱性検査・管理」、「ハッキング・堅牢化手法」、「セキュリティアーキテクチャ」等の研究を実施しております。

Cloud

・ Rubrikを活用したランサムウェア対策のバックアップサービスに関する調査研究

 近年、日本国内でもランサムウェア被害が企業規模に関わらず拡大しており、メディアやマスコミでも多く取り上げられております。「セキュリティ」は当社注力領域であることから、拡大するランサムウェア対策市場に対し、優位性を持ったマネージドサービスの開発は急務であると考え、ランサムウェア対策サービスの立案に向けた、調査研究をフェーズ1とフェーズ2に分けて実施しております。

 市場への当社優位性を考慮し、調査研究プロダクトは「Rubrik」としています。Rubrikは2023年Gartneのバックアップ/リカバリ・ソフトウェア・ソリューション部門でリーダーに選出されており、当社はRubrik社のGlobal Partner AwardsにおいてPartner Sales Champion of the Year(APAC)を国内初受賞しております。

 主要課題としては、マネージドサービスを提供することを目的に、以下の観点で実機検証を行っております。
  ・性能検証:バックアップ機能、リストア機能、ランサムウェア感染時の検知機能や通知機能の検証
  ・構成検証:バックアップ/リカバリ環境(オンプレ、クラウド)に応じた可用性、拡張性を考慮したシステ

 ム全体構成検討
  ・運用検証:「システムの安定的な稼働」を実現するための運用・保守面の要件策定
 調査研究の結果、Rubrikをベースとした構成は当社がマネージドサービスを提供するに十分なレベルであると判断し、サービス仕様書(案)、システム構成図(案)及び運用仕様書(案)のアウトプットにまとめております。

 今後は今回の結果を踏まえて、まずはオンプレを中心としたフェーズ1のサービス提供の開始を1月に行い、かつ、更なるお客様ニーズに合わせたサービスメニューの拡大や品質向上のための調査研究をフェーズ2で進めてまいります。

Mobile & AutoMotive

車両サイバーセキュリティに対応した車載標準プロセス構築に関する調査研究

BEVの急速な伸長、自動運転、OTAが次々と市場に投入され、より一層増加傾向にある車載ソフトウェア開発を支えるため、当社はMBD/CIを活用した再利用性の高い開発手法への取組み、HILS/SILSを活用したシミュレーション環境構築への取組み、従来よりも高い精度と効率を実現する画像AIアルゴリズム開発への取組み等を行っております。また、モビリティ社会の発展のため、国立大学法人東海国立大学機構 名古屋大学や複数企業と共同でレベル4以上の自動運転サービスの社会実装を進める研究開発を開始しております。
 品質および開発効率といった観点においては、Automotive Spice Level3の認証取得をはじめISO26262(機能安全)、ISO/SAE21434(セキュリティ)などのプロセス構築を継続し、開発現場での活用を通じて改善を進めております。
 今後はECU統合化などE/Eアーキテクチャの進化に向けて、旧来より取り組んできたAUTOSARのみならず、これまでの知見と資産を活かした次世代技術への取組みを進めてまいります。

MBDプロセス委託サービス実現に向けた調査研究

 経済産業省主導でモビリティ社会の最先端の開発コミュニティの実現を目的としてJAMBE(一般社団法人 MBD推進センター)が設立され、より一層自動車業界でのモデルベース開発普及推進傾向にあり、当社はA-SPICEやAUTOSARに対応したモデルベース開発プロセスの構築に取り組んでおります。
 また、より効率的にモデルベース開発関連の委託業務を進めることを目的として、モデルベース開発プロセスの標準化、自動化、CI環境の導入をするため、プロセステーラリング、自動化に適したフォーマット定義、自動化システムの技術調査および試作検証を進めてまいります。

⑥5G

・ ローカル5Gに関する調査研究

2021年6月より開始した、ローカル5G技術研究及び検証強化のためのラボプロジェクトについて、研究検証ラボ機材の調査・調達・構築を完了し、ローカル5G基地局の無線免許を取得いたしました。その後、実際の無線利用を可能とした環境を当社秋葉原オフィスに用意し、「ローカル5Gラボ」を開設いたしました。
 2023年での研究は、より現実利用環境における通信パフォーマンスを検証すべく、複数機器による同時通信環境における5G通信のデータ収集を実施し、他の無線通信との同環境における通信品質比較した結果、当初の想定通り、5G通信は遅延性が低く、他の無線通信と比較しても安定的な通信が可能なことを確認しています。これらの事から「音声や映像の途切れ」が発生しにくいことも確認しており、AIとの連携による製品品質向上することを確認しました。今回の研究により、通信単位での優先度調整や帯域制限を組み合わせることで限られた通信リソースを用途に応じ配分による用途に応じた活用が可能であり、今後課題に応じた最適な構成を検証し、サービス提供を目指します。
 更に今後、5G通信の特性検証だけでなく、ユーザー利用時に発生するであろう、リソースの最適化や運用コスト低減に向けた研究を取り組み、利用したいユーザーが誰でも容易に利用することが出来る機能の研究開発を行ってまいります。

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