企業兼大株主大豊建設東証スタンダード:1822】「建設業 twitterでつぶやくへ投稿

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企業概要

 当社の研究開発につきましては、建設費の低減と安全性の向上に加え、DX化やカーボンニュートラルへの取組を強化することで受注の拡大を目指すべく、土木部門におきましては、独自技術の自動化・自律化、デジタル技術の活用、環境負荷低減、リニューアルによる構造物の機能維持と性能強化に関する開発を積極的に進めております。具体的には、施工の無人化・遠隔化、計測・管理技術の高度化、掘削の効率化、浚渫土の減容化、橋脚耐震補強関連などの研究に取り組んでおります。また、建築部門におきましては、CO2の削減と固定、森林資源循環に寄与する建築の木構造・木質化技術の開発の強化、DXの推進・BIM一貫体制導入や、省エネ技術などの研究に取り組んでおります。

 当連結会計年度における研究開発費の総額は250百万円であります。各セグメント別の研究開発費の区分は困難であるため、研究開発費は総額で記載しております。主な研究開発成果は以下のとおりです。また、子会社におきましては、株式会社森本組にて環境関連の研究開発活動を進めております。

(土木事業)

1.New DREAM工法の開発

 大豊式ニューマチックケーソン工法に多機能型ケーソン掘削機、掘削機メンテナンスシステム、大気圧エレベーター、DHENOXシステム(ヘリウム混合ガスシステム)、遠隔地耐力試験装置等を組み合わせ主要高気圧作業の100%無人化施工を可能とするNew DREAM工法を開発しました。10基のニューマチックケーソン工事に適用され橋梁基礎、道路・鉄道トンネルの立坑、雨水貯留施設等、大深度・大断面の地下構造物の建造に貢献しています。今後、掘削自動化の実現に取り組むことにより独自技術としてのさらなる進化を目指しております。

2.ニューマチックケーソン掘削シミュレータの開発

 コンピュータグラフィックを駆使してサイバー空間にニューマチックケーソン掘削作業室と掘削機を再現し、実機と同様の感覚での遠隔掘削操作の体験を可能とするニューマチックケーソン掘削シミュレータを開発しました。本シミュレータは、開発中のニューマチックケーソン自動掘削や長距離遠隔操作の技術開発で必要となるデジタルベースの掘削機を利用して開発したもので、パソコン及び掘削機操作レバー等の周辺機器で構成し、職員・作業員の教育訓練の他、一般の方向けの体験等に活用しています。一般の方向けの活用では、よりニューマチックケーソン工法に親しみをもっていただくための配慮として同工法に関するクイズやゲームなども搭載しており、全国各地の建設技術展やニューマチックケーソン現場で大いに活躍しています。

3.ニューマチックケーソン工法の高度施工管理技術の開発

 ニューマチックケーソン工法の適用範囲が拡大する中、大断面・大深度への対応は元より、構造物の高規格化へも対応しつつ効率的に施工を進めることが強く求められております。このような状況の下、施工精度向上及び施工管理の効率化を図るためリアルタイムの自動姿勢計測システム、高気圧作業室内の掘削面形状計測システム、高気圧作業従事者を対象とする減圧管理システムを開発しました。これらのシステムは、高度計測技術に当社開発のソフトを組み込みデータ処理するものであり、現場での試験運用を経て本格運用の段階に至っております。特に、減圧管理システムについては、最新の仕様ではAIによる顔認証機能を追加装備するなどの改良も行っており、既に28基のニューマチックケーソン工事に適用され、施工管理の効率化に多大な貢献をなし得ております。近年、i–constructionの推進に伴う生産性向上や施工管理技術の高度化は喫緊の課題となっており、今後もニューマチックケーソン工事分野への新技術の導入を積極的に図り、施工管理技術の大幅な向上に資するシステム開発を継続します。

4.ニューマチックケーソン自動掘削技術の開発

 ニューマチックケーソン工事の掘削作業は夜間や高気圧下で行うことも多く、働き方改革・生産性向上の観点からも自動化が強く求められています。ニューマチックケーソン自動掘削技術は、上述1から3の技術をベースに、さらなる自動化技術を開発・導入し、ニューマチックケーソン函内の掘削及び地上への排土に係わる一連の作業の自動化を図るものです。開発は、ステップ1:沈下掘削に影響しない掘削(盤下げ掘削)の自動化と、ステップ2:沈下掘削自動化の2段階で行うものであり、ステップ1から順次実用化を図っていきます。ステップ1については、既に現場実用ベル開発段階に到達しており、早期の本格実用化を目指してニューマチックケーソン実現場に開発フィールドを移し、現場実証実験等を実施していきます。

5.ニューマチックケーソン減圧管理プログラムの開発

 ニューマチックケーソン工法が大深度化する中、高気圧作業従事者が大気圧に帰還する際の安全な減圧方法に関する計算プログラムを専門医とタイアップして自社開発しました。本プログラムを使用することにより、ニューマチックケーソンの多種多様な条件下における高気圧作業の安全な減圧工程が、迅速かつ確実に算定可能となり、大深度のニューマチックケーソンを施工する際などの安全性確保と健康管理の徹底を図ります。2015年度の運用開始から現在に至るまで52基のニューマチックケーソン工事に採用し、この間、プログラムの改良も重ね、高気圧作業従事者の減圧症予防に多大な貢献をしています。

6.ニューマチックケーソン健康管理アプリの開発

 ニューマチックケーソン工法の高気圧作業従事者の健康状態を迅速・的確に把握し、健康状態に応じた注意喚起、及び健康データのデータベース化などを実現するニューマチックケーソン健康管理アプリを開発しました。本アプリの使用により、近年のニューマチックケーソンの大深度化と、ベテラン技術者の確保が難しい状況下においても現場管理者の経験に過度に依存しない高気圧作業従事者の健康状態の判断と継続・連続的な把握、さらに、健康管理に関する書類作成業務の排除などが可能となります。高気圧作業の実施においては、現場管理者が高気圧作業計画をアプリ上で作成し、併せて高気圧作業従事者が無線通信の健康測定器具で健康状態を測定・送信することにより、加圧~高気圧作業~減圧の各プロセスの健康管理とデータ蓄積が自動的に行われ、高気圧作業従事者の確実な健康管理と管理業務の簡素化・効率化が図られています。

7.ニューマチックケーソン硬質地盤掘削システムの開発

 ニューマチックケーソン工法の大深度化・大断面化に加え近年では岩盤硬質地盤への適用が増加する中、岩盤硬質地盤の効率的掘削を可能とする硬質地盤掘削システムを開発しました。本システムは、当社保有掘削機DREAMⅡに装着可能なリッパバケットなどの特殊掘削バケットなどから構成し、岩盤硬質地盤の掘削効率の大幅向上を実現します。本システムは、礫岩地盤に沈設した掘削断面積3,360㎡、掘削深度GL-36.3mの石巻中央排水ポンプ場のニューマチックケーソン工事に採用し沈下掘削の沈設に大きな貢献を果たしました。なお、当工事は23年度土木学会技術賞を受賞しております。今後、硬質地盤条件下に施工される大断面大深度の雨水貯留池、ポンプ場や立坑などでの採用が一層期待されます。

8.シールドⅤR(仮想現実)体験システムの開発

 ヘッドマウントディスプレイを装着してⅤRコンテンツを起動するだけで本物さながらのシールド工法を体験することが可能なシールドⅤR(仮想現実)体験システムを開発しました。本システムは、開発中であるシールド統合管理システムの技術開発で必要となるデジタル技術を利用して開発したもので、実物大のシールドマシンを体感したり架空の工事現場のシールド掘削状況を体験したりすることが可能です。シールド工法を紹介する動画「空間を生む」と併せ、職員向けの教材としてだけではなく、全国各地の建設技術展やシールド現場見学会における一般の方向けの体験等に活用されています。

9.シールド統合管理システムの開発

 シールド工事の品質向上と合理的な施工管理の実現を図るシールド統合管理システムの開発に取り組んでいます。本システムは、IT・ICTなどの先端技術を積極導入してシールド掘削切羽の施工管理を総合的、且つ合理的に行う施工管理・支援システムであり、経験の浅い若年技術者も含め、高度で安定したな品質・施工管理を標準的に実現します。システムは、測量結果をCAD上に自動作図・出力する掘進管理支援システム、より適正な切羽圧力の設定と地盤の応力状態をリアルタイムで見える化する切羽圧力管理システム、セグメント組立状況を3次元で自動計測・表示可能なセグメント計測システムで構成し、既に掘進管理システムは現場に投入を果たし、また、その他の技術についても急ピッチに開発を進めています。なお、本システムは現状3つの要素システム・技術で構成しますが、今後、シールド関連で開発する技術についても取り込み・融合を図り、より総合的なシステムとして構築していく予定です。

10.浚渫土処理工法(DRESドレス工法)の開発

 港湾、河川、湖沼等の高含水の浚渫土を効率的に脱水・分級してリサイクルできるシステムを開発しました。本工法は、田子の浦港で浚渫土の減容化に採用され、また、新門司の築堤材製作工事では日本最大規模の処理システムで稼働するなど、浚渫土処理累計は約113万m3に上り、港湾の維持や環境影響の低減に貢献しています。特に田子の浦港では、高濃度ダイオキシン類の浚渫土中間処理にも採用され、環境負荷の低減やコスト縮減に貢献しており、今後さらに湖沼、港湾等での活躍が期待されます。

11.鋼製函体締切工法の開発

 既設橋脚の水中部を鋼製函体で仮締切し、ドライな状態で高品質な橋脚耐震補強を安全に行うことのできる鋼製函体締切工法を民間4社で共同開発しました。本工法に用いる函体は、浮力を利用して曳航沈設が可能なため、桁下空間の制限を受けず、フーチング上に設置できます。これまでに河川内の橋脚耐震補強に採用され、当社施工分として完了工事が5件あります。

 また、本工法の派生工法として狭隘な場所や浅水深による作業制限がさらに緩和でき、大幅な工費の低減を可能とする当社独自開発の「複合壁体締切(RECC)工法」と「カプセル壁体締切工法」も併せて開発しており、前者は8基、後者は4基の施工実績を有します。今後、同様な施工条件下の工事への採用が見込まれ、安全・安心社会の構築に貢献することが期待されます。

12.遠赤外線触媒還元処理システムの開発

 現在、最終処分場の残余量がひっ迫してきており、新たな最終処分場の建設も進んでおりません。その対策として、ゴミ焼却施設から排出される焼却灰を減容化・再資源化を目的に「遠赤外線触媒還元処理システム」を開発しております。遠赤外線触媒還元炉のセラミック壁を加熱し、遠赤外線が発生。遠赤外線と焼却灰由来の触媒との相乗効果により化学反応が促進され、焼却灰の結晶体を分解し、硫化物化します。これにより焼却灰に含まれる有害物質重金属が安定化・不溶化し、有害物質が無害化され、2/3の減容化が実現します。また、生成物から資源化物の製造も可能となります。環境保全の面からCO2の発生は大幅に削減されます。また、この装置を用いての放射線濃度の高い除去土壌の放射線濃度低減も確認されています。これらの効果を確認するために遠赤外線還元炉装置の実験機を作製し、実証実験を行い、システムの構築を確立していきます。

(建築事業)

1.木構造・木質化技術の開発

 地球温暖化防止にはCO2の削減とともに、CO2の吸収源を確保することが重要です。吸収源の大部分は森林ですが、日本では、人工林の高齢化とともに森林吸収量は減少傾向にあり、現在飽和状態の森林資源を活用し植林する、循環サイクルを加速させることが必要です。そのため国を挙げて木材の積極利用、都市の木造化が推奨されております。また、木材はCO2を固定化することができる第二の森林ともいわれております。木造は鉄骨造やコンクリート造に比べ、建設に伴うCO2排出量が約6割と少なく、建物が蓄える炭素量は4倍であり、建築の木造化は2050年のカーボンニュートラルに向けた重要な手段であり、優先的に取組む必要があります。

 当社における木質材料の活用及び木構造の技術開発に関しましては、茨城県阿見町の技術研究所で試験施工した木構造技術(大断面集成材のラーメン構造と鉄筋コンクリート造を組み合わせた、立面ハイブリッド工法や、鉄筋コンクリート造架構に組み込んだCLT耐震壁、配筋付き製材型枠)を更に発展させております。

CLT耐震壁(RCWSw工法)に関しては産学共同研究による実物モデル架構による加力試験や要素試験を実施して、新たな設計法(特許取得済)を開発し、大阪の鉄筋コンクリート造ワンルームマンションの耐震壁に初めてCLTを採用しました。また、中央機材センターの新工場建設プロジェクトでは、鉄骨柱と木質トラス梁を併用したハイブリッド構造を採用し、設計法・施工法を検証しました。引き続き、RCWSw工法の汎用化のため適用範囲拡大の研究や、中大規模木造建築の構造パターンごとの試設計を行い、木造木質化を推進します。

2.DXの推進・BIMモデルによる生産システムの変革

DXの取組みとして、品質・安全管理における生産性向上や効率化のためのITツールの導入や支援ソフトの導入により業務改善を推進しております。業務を置き換えるだけでなく、課題を解決する為、関連企業との協業によるシステム開発を行うと共に、技術者の育成を進めております。

BIM(Building Information Modeling)は、原則設計施工の案件で採用し、コミュニケーションの向上、図面間の整合確認、問題点をフロントローディングにより抽出し改善するなど、着実に成果が出てきており、BIMの技術情報を水平展開し、更なる活用の加速と技術者育成を進め、生産システムの変革を図ります。

3.省エネルギー設計技術の研究

 建築物に関連するCO2の排出量は非常に多く、建築物の省エネルギー化は大変重要であります。技術研究所では省エネ設計技術を研究し、ZEB Ready(ZEBとは、ネット・ゼロ・エネルギー・ビルの略で、建物で消費する年間の一次エネルギーの収支をゼロとすることを目指した建物)を取得しており、オフィスビルでのZEB実績を活かし、新工場建設プロジェクトでZEB Readyを取得しました。また、大阪のワンルームマンションでは、ZEH-M Oriented(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス マンション オリエンテッド)を取得しております。今後もZEB、ZEHを設計提案し、採用数を増やしていくことを目指します。

4.免震・制震工法の開発

 各種用途の建築物への免震工法の適用は定着しており、当社でも関東近郊、東海、関西、九州地区等、集合住宅を中心とした多くの実績があります。最近では、首都直下型・南海トラフ等の巨大地震の発生が懸念される中、防災拠点の耐震化や企業のBCP(企業継続計画)対策のひとつとして重要視されております。

 免震工法では、基礎免震による共同住宅や中間免震の高層ホテル、杭頭免震でのPC圧着関節工法による大型物流倉庫、免震タワーマンションなどに取り組んでおります。また、制震工法につきましては、超高層住宅での「摩擦ダンパー工法」や、官庁物件における「アンボンドブレース工法」の適用を通じて多くのノウハウを蓄積しており、関連技術を総合的に活用し、免震・制震分野へ継続的に取組んでいきます。

5.杭・基礎関連技術の開発

 当社では、引抜き抵抗力に優れるなどの特徴を持つ中間及び先端に拡径部を有する場所打ちコンクリート杭 工法「Me-A工法」を共同開発し、一般財団法人ベターリビングより一般評定を取得しております。本工法は、アースドリル工法を用いて、杭軸部の中間及び先端に節状の拡径部(節)を設けて、建物を支える力を増大させた場所打ちコンクリート杭を造成する工法であり、この拡径部は地震の時に建物を転倒させようとする力に抵抗するため、杭の引抜き抵抗としても有効に働きます。従来の杭より短く、もしくは杭軸部を細くすることが可能になり、杭の工事費を低減できます。これまでに、東京及び大阪の11物件(126本)で採用されております。

 また、阪神・淡路大震災における杭頭破壊の事例を契機に、杭頭の損傷を制御する研究・開発が行われるようになり、多くの関連技術が実用化されるようになってきました。当社でも「CTP(杭頭半固定接合)工法」の導入を図り、杭性能の向上とともにコストダウンにも有効なツールとして検討を進めてきた結果、これまでに4件(62本)の高層集合住宅で採用しております。両工法は汎用性に優れており、今後も全国への積極的な展開を進めていきます。

(その他の事業)

 研究開発活動は特段行っておりません。

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