企業大本組東証スタンダード:1793】「建設業 twitterでつぶやくへ投稿

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企業概要

 当社は、研究開発部門においても益々多様化するニーズに応えるべく、関連する各分野で幅広く研究を行い、技術の確立と新技術の開発に努めております。また、異業種、大学等の研究機関、公共機関との共同研究も積極的に推進しております。なお、当事業年度における研究開発費は135百万円であります。

 セグメントごとの研究開発活動を示すと次のとおりであります。

(建築事業、土木事業)

a ニューマチックケーソン工法関連技術

・地耐力試験機の効率化

 現行の平板載荷試験機にて仕様の再検討や改良改善を行い、試験精度の保証された遠隔操作式平板載荷試験装置の開発を進めております。まずは有人での作業を更に短時間で行えるよう機器の改善を図る予定であります。

・救護設備開発

 大深度化が進む中、完全無人化や掘削の自動化技術等の開発と併せて人命尊重(=リスク回避)の観点から、緊急脱出(救護)設備の重要性・必要性が増大しております。共同開発にて救護設備を開発し現場での運用を開始しました。これによりニューマチックケーソン工法の安全性が向上し、今後は短時間での緊急脱出実現のための改善を行う予定であります。

・総合施工管理システムの開発

 施工中の各種計測データを取得し、そのデータからケーソンの挙動予測を可能にするシステムの開発を目的としております。当事業年度は継続して、掘削形状の3Dデータや各種計測データを複数の工事において取得し、データの蓄積を行いました。今後も継続してデータの取得を進めてまいります。

・掘削機の自動(自律)運転システムの開発

函内気圧0.18MPa以深の掘削は遠隔操作による無人化施工で行っております。今後は自動(自律)による掘削を可能とするシステムの開発を目指しております。システムでは3D地盤形状データより掘削位置を自動選定し、掘削した土砂を指定した位置に移動して排土を行いますが、さらに掘削した土砂を地上に搬出するために排土バケットの形状及び位置を自動認識して直接排土バケットへ投入することを可能とするシステムの開発と現場実証を当事業年度に実施しました。また、自動(自律)運転を目指すにあたり、掘削機制御のための基礎データの取得及びシミュレーターの開発を行いました。今後は、自動掘削制御方法を再度検討し、収集した地盤データ等の分析によるシステムの改良を行う予定であります。

b 生産性向上技術の開発

国土交通省で推進しているi-Construction(建設生産システム全体の生産性向上を図り、魅力ある建設現場を目指す取り組み)への対応を進めております。

・ 造成工事等において、ドローンによる3次元測量、3次元設計データを使用したマシンガイダンスやマシンコントロールによるICT施工、3次元点群データによる出来形管理及びデータ納品といった全てのプロセスで3次元モデルを活用することによって、生産性の向上を図っております。また、携帯端末による3次元データを活用した測量の試行検証を進めております。

・ 仮設を含む構造物等工事等において、3次元モデルを活用したBIM(Building Information Modeling)/CIM(Construction Information Modeling / Management)により工事関係者間の情報共有・連携を深め、作業性や安全性の向上について利用を進めております。

・ 3次元データを基に施工等の状況を投影可視化する技術については、汎用性が高く他工種での利用可能性が認められたため、今後は、別工種に応用した場合の有効性の確認を進める予定であります。

c 地震対策技術

・ 当社で開発したスマート制震システムを用いた大型賃貸マンションの耐震改修工事が、2015年3月に竣工しました。この工事では、外付けフレームと建物を接続する後施工アンカーである「ピン支承対応型ディスクアンカー」と、既存構造体の耐震性能向上に適した高い引張抵抗力とせん断力を発揮できる接合部材である「プレミアムアンカー」を新たに適用し、当工事の施工実績を踏まえて、2018年3月には一般財団法人ベターリビングの一般評定(2度目のバージョンアップ版)を取得しました。また、2020年9月には『プレミアムアンカーを使用した柱梁構面内へのブレース型(ダンパー)ブレースの直接接合に依る組込み方法』の発明名称を「柱・梁架構の補強構造」として特許を出願し、特許査定を取得しました。当該技術アイデアは国立大学法人東京大学との調整・協議の上、米国においても特許登録を完了しました(当事業年度)。また、2023年3月には一般財団法人ベターリビングの一般評定の更新を実施しております。

  また、2016年4月14日に発生した巨大地震である「熊本地震」では、2日後に更なる巨大地震が発生し、大きな被害が発生しました。このように連続した巨大地震が発生した場合でも、スマート制震システムの採用により安全性の確保が可能となる設計が実施できることが判ってきました。スマート制震システム構法の実用化・普及を目指すとともに、顧客にも適切に新技術適用前後の建物の耐震性能の向上程度とそれに伴う必要金額を同時並行的に提示して、顧客に納得いただける新たな設計(手)法である性能設計の構築も進めていく予定であります。

・ 岡山県内の耐震改修工事において、当社で開発したスマート制震システムを事業主指定の設計者に技術提案し、採用されました。事業主による一般財団法人ベターリビングの個別評定取得を経て一般競争入札にて公告となり、当社が受注し2022年2月に竣工しました。この工事においても「ピン支承対応型ディスクアンカー」と「プレミアムアンカー」を適用しております。

・ 当社は2020年4月から2年間の予定で、「オープン・イノベーションによる建築新技術実用化のための『ビジネスモデル』に関する研究(ディスク・ジョイントを例として)」を題目として共同研究を進めておりましたが、その共同研究対象範囲を「スマート制震システム&ディスク・ジョイントを例として」に拡大したため、研究期間を2年間延長し、2024年1月には、米国ロサンゼルスにおいて、ストラクチャーエンジニアとのヒアリングを実施するなどして、国立大学法人東京大学と進めてまいりました共同研究を2024年3月に終結しました。当該特許技術を根拠とした「広く・あまねく」の将来展開と普及を目標として、現在、報告書のまとめを進めております。

・ 今後は「プレミアムアンカー」など個別特許技術も含めて、新たな適用範囲開拓も見据え「広く・あまねく」の将来展開を、発明者である東京大学塩原等教授(当事業年度末現在)や他の発明者との連携を取りながら検討を進めていく予定であります。

・ アクティブ制振装置を設置した青山OHMOTOビルが2016年2月に竣工しました。国立大学法人東京農工大学、株式会社構造計画研究所、特許機器株式会社と共同開発した「実時間シミュレーションを用いた建物の振動制御(RTCS制御)」を新たに採用し、特許権の設定登録が行われました。

・ パッシブ制振装置(TMD)を設置した岡山本店ビルの新棟新築工事が2018年12月に完了しました。従来のガイドレール式の装置に加速度センサーによるトリガー機構を有した空気浮上式の機構を併用し、特許権の設定登録が行われました。

d 建築技術の共同研究

 ゼネコン35社で技術開発・調査研究を行う共研フォーラムに参加し、「コンクリート品質向上検討会」のテーマについて調査と検討を行っております。また、共同研究開発した「建築物のLCサポートシステム」を運用し、システムの改修と保守を共同で行っております。

e 建築設計BIM・施工BIM実用化

 当社は2010年からBIMソフトを導入していますが、発注者に対する提案力の強化、業務時間短縮及び競争力の強化を目的として、2022年4月より本格的にBIM研究開発に着手しました。

・ 2022年4月よりBIMを利用するための環境整備に着手し、BIMソフトライセンス数の増強や個人パソコンからリモートデスクトップによりBIMソフトを利用出来るなどの環境整備を行いました。

・ 2022年6月よりBIMコンサルティング及びBIM操作トレーニングプログラムの受講を開始し、BIMの効果的な利用方法などを学んでおります。

・ 2024年度以降は、設計施工一貫利用BIMを目指すとともに、設計プロセスの効率化、ビジュアルプレゼンテーション力の強化、構造計算書と図面・数量の整合確認など、より具体的で実践的な取り組みを開始する予定であります。

・ BIMモデルを作成することで、精度の高い土量算出を行い、無駄のない残土の転用計画を実現しました。面積が広く高低差のある敷地の場合は、外構勾配を考慮した土量の把握が工事計画・コストに大きく影響するため、今後も関係部署間で連携を図りBIM運用を進めてまいります。

f 現場作業省力化関連

「働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律」に関連し、現場作業の省力化を推進する目的で、レンタル会社と協力して省力化につながる各種作業機械や計測機器を試験導入し、その評価とフィードバックを行うことで、機器の改善を図る研究を行っております。

g その他

 その他の主な研究開発テーマを下記に示します。

・ニューマチックケーソン工法の安全性・施工性向上技術の開発

・CO2削減(カーボンニュートラル対策)技術の実証研究

h 特許に関する事項

 当事業年度の特許登録は米国におけるSmart&Disc-joint関連を含めて3件、特許出願は1件であります。

 当事業年度における建築事業及び土木事業の研究開発費の金額は、135百万円であります。

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