南海電気鉄道 【東証プライム:9044】「陸運業」 へ投稿
企業概要
当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取組みは、次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、有価証券報告書提出日時点で当社グループが判断したものであります。
(1)サステナビリティに関する考え方
当社グループは、持続的な企業価値の向上と持続可能な社会の実現の両立に向けた姿勢を社内外のステークホルダーに一層明確に示すため、「サステナビリティ方針」を定めております。さらに、同方針の下、長期的に取り組むべき重点施策として、SDGsの視点を取り入れた7つの「サステナブル重要テーマ(マテリアリティ)」を設定しました。その中でも、特に「地球環境保全への貢献」における気候変動への対応や「一人ひとりが能力を発揮できる職場・ひとづくり」における人的資本・多様性に関する取組みは重要課題であると認識しております。
<サステナビリティ方針・サステナブル重要テーマ(マテリアリティ)>
https://www.nankai.co.jp/sustainability/sustainability_policy
(2)サステナビリティに関する取組み
(ガバナンス)
サステナビリティ施策をグループ全社で横断的に推進する組織として、「サステナビリティ推進委員会」(年4回を目途に開催)を設置しております。本委員会が中心となって、事業部門と連携しながら、サステナビリティ施策に関する目標設定や進捗状況のモニタリング、達成度評価(PDCAサイクル)の推進や、リスクの抽出、対応方法について議論を行っております。
なお、サステナビリティ推進委員会の審議事項は、重要な事項については取締役会に年2回報告しております。
(リスク管理)
当社グループの事業等のリスクについては、「リスク管理委員会」を設置するなど、グループ全体の総合的・一元的なリスク管理を行うことにより、当社グループの経営に重要な影響を与える可能性のあるリスクの回避または低減に努めております。
また、「サステナビリティ推進委員会」においても、気候変動や人的資本等についてのリスクの最小化と機会獲得に向けた各種方針・戦略の策定、取組みのモニタリングに関する管理を行う体制となっており、リスク管理委員会と連携しながら、定期的にリスク低減に向けた取組みを実施します。
[気候変動対応に関する取組み]
当社グループでは気候変動への対応を重要課題ととらえ、気候変動による事業への影響を想定し、リスクと機会への対応について事業戦略と一体化していくための取組みを行っております。
また2021年9月にはTCFD(※)への賛同を表明し、その提言に基づいた情報開示を進めております。
※ 世界経済の安定性に向けて、金融安定理事会(FSB)が2015年に設立し、気候変動がもたらすリスク及び機会の財務的影響を把握し開示することを目的とするタスクフォース。
<TCFD提言への対応>
https://www.nankai.co.jp/sustainability/materiality/06environment/tcfd
(戦略)
戦略面については、将来の気候変動の進展や経済社会の変化について様々な可能性を想定し、気候変動に関するリスクと機会の特定ならびにその分析については、2022年度は当社、泉北高速鉄道㈱、南海不動産㈱、南海商事㈱の鉄道事業及び不動産・流通事業を対象とし、気候変動がそれらの事業に及ぼす可能性のあるリスク・機会の特定、及び重要度評価を実施しました。
事業インパクトの大きさ等を考慮し、脱炭素社会への移行に伴うリスク・機会項目として「炭素価格、各国の炭素排出目標・政策」、「電気・燃料価格、エネルギーミックスの変化」を、また気候変動がもたらす物理的リスク・機会項目として「異常気象の激甚化」を重要度評価「大」と設定しました。(分析は1.5~2℃シナリオ及び4℃シナリオについて行いました。)
これらのリスク・機会については、各コア事業の部門のリスク管理体制の中で、かねてから対応を進めております。移行リスク・物理的リスクへの対応策の方向性は、上記<TCFD提言への対応>に記載のURLより当社ホームページをご参照ください。
今後、認識したリスク・機会に対して適切な対応策を講じることで、持続的な企業価値の向上と持続可能な社会の実現の両立を目指します。
(1)移行リスク
リスク項目 | 当社グループにとってのリスク(※1) | 発生時期 (※2) | 評価 | ||
脱炭素社会への 移行に伴うリスク (移行リスク) | 政策/ 規制 | 炭素価格、各国の炭素排出目標・政策 | [共通]炭素税課税による税負担増加 [共通]CO2削減目標達成のための再エネへの転換に伴う電力費増加 [不動産・流通]経年物件に対する排出権購入コスト増加 | 中~ 長期 | 大 |
業界/ 市場 | 電気・燃料価格、エネルギーミックスの変化 | [共通]再エネ比率増による運営コスト増加 | 短~ 中期 |
(2)物理的リスク
リスク項目 | 当社グループにとってのリスク(※1) | 発生時期 (※2) | 評価 | ||
気候変動の物理的 変化に関連する リスク (物理的リスク) | 急性 | 異常気象の激甚化 | [共通]鉄道路線、保有不動産への洪水・土砂崩れ・橋梁洗掘等の発生による損害増、損害保険料増、資産価値低下 [共通]台風の大型化等に伴う商業施設の営業停止や鉄道の運休等の発生、ホテル・旅行のキャンセル増加による減収 [共通]サプライチェーン寸断による営業支障 | 短~ 中期 | 大 |
(3)機会
機会項目 | 当社グループにとっての機会(※1) | 発生時期 (※2) | 評価 |
資源の効率 | [共通]省エネ投資により、操業コスト減、公的支援や減税可能性向上 | 中~ 長期 | 大 |
製品及びサービス | [鉄道]炭素税導入による自動車輸送から鉄道輸送への流入 | 中~ 長期 | |
[不動産・流通]高環境性能新築ビルへのニーズが高まることによる賃料上昇、資産価値向上 | 短~ 中期 | ||
[不動産・流通]BCP対応や帰宅困難者対策等、災害に強い施設への入居ニーズに応えることによる、競争力強化や増収 | 短~ 中期 | ||
レジリエンス | [共通]エネルギーミックスの変化に対応できている場合、事業の強靭性が向上 | 短~ 中期 |
(※1) [共通]は鉄道事業、不動産・流通事業の両方で発生するもの
(※2) 短期:1年、中期:2~4年、長期:5~15年
特定したリスク・機会の重要度評価において「大」と評価したものの中で、気温上昇のシナリオにおける将来の客観的な予測データが公開されている項目について、2030年の社会での当社、泉北高速鉄道㈱、南海不動産㈱、南海商事㈱の鉄道事業及び不動産・流通事業を対象に事業インパクトを定量的に試算しました。
その想定の前提となるシナリオについては、移行リスク・機会は気候変動に対し社会に積極的な対応が行われる1.5~2℃シナリオにより、また物理的リスクは1.5~2℃シナリオ及び4℃シナリオにより試算しました。試算結果は、上記<TCFD提言への対応>に記載のURLより当社ホームページをご参照ください。
試算の結果、想定される気候変動の影響については、脱炭素社会への移行リスク・機会に起因する事業インパクトが算出されたとともに、物理的リスクの事業インパクトについては、4℃シナリオにおける影響額は、1.5~2℃シナリオと比較し、およそ2倍の影響があることがわかりました。
なお、いずれのシナリオとなった場合でも、事業インパクトは限定的であるものの、今後気候変動によるリスクの最小化と機会の最大化を図るために、鉄道車両の更新をはじめとするCO2削減施策の推進等、脱炭素社会の実現に向けた取組みを行うことにより、気候変動に対してレジリエントな組織であり続けたいと考えております。
(指標及び目標)
当社グループでは気候変動の緩和と移行リスクへの備えのため、事業活動の脱炭素化に向けた取組みを行っており、スコープ1,2について「CO2排出量を2013年度比46%以上削減(2030年度)」「2050年のCO2排出量実質ゼロ」を目標に掲げております。加えて、鉄道事業部門(当社及び泉北高速鉄道㈱)においては、2030年度には省エネ型車両の導入割合を85.0%まで高めたいと考えております。
当社グループは、鉄道車両の更新・再生可能エネルギーの活用等のCO2排出量の削減に向けた取組みを通じて、持続可能な社会の実現に貢献してまいります。
当社グループのCO2排出量の実績並びに第三者保証取得状況(※)は、上記<TCFD提言への対応>に記載のURLより当社ホームページをご参照ください。
※ 2021年度実績のエネルギー起源CO2排出量(スコープ1,2)(範囲:当社及び連結子会社54社)について、「南海電気鉄道株式会社及び連結子会社54社のエネルギー起源CO2排出量 算定報告書(2021年度)」(PDF)において第三者保証を受けております。
| スコープ1 | スコープ2 | スコープ1+2 |
2021年度 エネルギー起源 CO2排出量(t-CO2) | 79,189 | 128,509 | 207,698 |
[人的資本、多様性に関する取組み]
当社グループは、2050年の企業像として「沿線への誇りを礎に、関西にダイバーシティを築く事業家集団」を掲げ、中長期的に事業を変革していくことを目指しております。その実現のためには、事業変革を支えることができる最適な「人財ポートフォリオ」を実現することが必要です。
そのため、当社グループでは、「一人ひとりが能力を発揮できる職場・ひとづくり」をマテリアリティ(サステナブル重要テーマ)に定め、事業変革の原動力となる多様な人財づくりとともに、すべての人財がいきいきと働き活躍できる組織づくりを推進し、従業員のエンゲージメント向上に取り組んでおります。
(戦略)
・人財の多様性の確保を含む人財育成方針
① 経営人財・専門人財の育成とダイバーシティ&インクルージョン
当社グループは運輸業、不動産業、流通業、レジャー・サービス業、建設業、その他の事業という多様な事業会社で構成されており、今後それぞれの事業において社会や顧客の変化に対応して事業を変革していくためには、経営的視点・スキルを持つ人財(経営人財)と、各事業に精通した専門性の高い人財(専門人財)の双方が必要となります。そのため、これらの人財育成施策として、ビジネススクールへの派遣をはじめとした各種研修や、自治体等への出向及びグループ外の事業会社との人財交流などを積極的に行っております。
また、多様な価値観や経験・能力をもった人財を採用するとともに、その能力を引き出すダイバーシティ&インクルージョンの実践に取り組んでおります。その例として、当社では、社員一人ひとりが自らの志向や適性に基づいて将来の目指す姿を選択できる仕組み(キャリアコース制、キャリア希望調査)の導入や、鉄道現業部門からイノベーション推進部門への社内公募などの新たな取組みを開始しております。
② イノベーションと生産性の向上に資する能力開発の促進
イノベーション(新価値の創造)及び生産性の向上を実現するためには、役職や担当分野に関わらず、DXに関する知識を習得しITツールの活用スキルを強化していく必要があります。そのため、これらについて関心を高め知識・実践スキルを身につける機会を、セミナー・ワークショップ・e-ラーニングなどさまざまな形式でグループ社員に広く提供し、イノベーションの裾野の拡大に取り組んでおります。
さらに、グループ全体でイノベーション・新事業開発を推進するため、2019年度から「事業創出支援プログラム」(当初は「新規事業開発プログラム」)を実施しております。第1期プログラムを通じて生まれた3つの社内発ベンチャーは、経済産業省の「大企業人材等新規事業創造支援 事業費補助金」(出向起業制度)にも採択されております。2022年度からは社外の提案者による新規事業提案もサポート対象に加えて事業創出を加速するとともに、こうしたチャレンジの促進を通じて、イノベーションに対する強いマインドと既存の枠組みに捉われない柔軟な視点をもった人財育成を進めております。
③ グループ各事業を支える人財の確保・定着支援
社会全体で働き手が減少傾向にある中、グループ共通の課題として、事業運営を支える人財の確保があります。この課題に対応するため、当社グループのシナジーを活かして、グループ全体での採用活動(グループ採用WEBサイトの充実、採用ターゲットへの合同PR活動など)を強化しております。
また、採用する人財の多様化に合わせて、新規採用者のオンボーディング・定着支援に取り組んでおります。その例として、当社では、若年社員を対象にしたメンター面談や、キャリア採用社員向けの交流会開催、新規採用者を含む多様な社員がいきいきと働き活躍できる組織風土づくりに管理職・監督職が取り組む組織開発プログラムなど、新規採用者側・受け入れ側の双方を支援する施策を実施しております。
・社内環境整備方針
① 生産性向上に資する働き方改革の推進
当社グループでは、経営戦略の実現のために、従業員が働きやすい環境を整備し、働き方改革による生産性向上を推進しております。具体的には、グループ全体のコミュニケーションの活性化および共創の促進をねらいとして、グループ共通のコラボレーションツールの導入を段階的に拡大しております。2022年度末時点で合計43社が導入し、2023年度も新たに10社が導入予定です。さらにクラウドストレージを導入することで、社内外の関係者との安全で効率的なデータ共有を可能にし、かつ働く場所の柔軟化を進めております。2022年度末時点で合計13社が導入し、2023年度も新たに6社が導入予定です。
こうした取組みと並行して、従業員の働き方に関する制度の整備も推進しております。その例として、当社では、従業員が自身の業務都合や個人の事情に応じて柔軟に働くことのできる環境を整備するため、2019年度からスライドワーク制度(始終業時刻を選択できる制度)と半日年休制度を導入し、さらに2022年度からテレワーク制度を導入しております。また、鉄道現業部門では、エッセンシャルワーカーとして安全輸送を提供しつつ、労働時間の削減などを通じたワークライフバランス向上の取組みを継続的に進めており、年次有給休暇取得率は90%以上で推移しております。
② 育児・介護等を行う人財に業界最高水準の働きやすい環境を提供
当社グループでは「育児・介護等を行う人財やシニア人財に、業界最高水準の働きやすい環境を提供すること」を中期的に目指す姿として設定しております。
その取組みの例として、当社では、子どもが小学校5年生の始期に達するまで育児短時間勤務などを可能としております。また2022年度の男性社員の育児休業取得率(育児目的休暇を含む)は90%を超える高水準ですが、2023年度からは「ベビーサポート休暇」と称し、男女問わず産後期間に最大10日の有給休暇制度を導入するなど育児支援策を拡充しております。
③ 健康経営の推進
当社グループでは、従業員が心身ともに健康的に働ける環境づくりに継続的に取り組んでおります。
その取組みの例として、当社では、お客さまに「安全・安心」を届け、沿線の豊かさを創造し続けるためには、従業員が心身ともに健康でなくてはならないという考えに基づき2022年6月に「健康宣言」を策定し、健康経営を推進するとともに、グループ全体への波及に取り組んでおります。2023年4月からは、当社人事部にヘルスケア担当を新設し、産業医や保健師による定期健康診断後の受診勧奨やメンタルヘルスケア、保健指導、セミナーの実施、啓発活動などに注力しております。また、選択型の福利厚生制度(NICEプラン)のメニューに人間ドックの料金補助を設定し、疾病の予防・早期発見の機会を提供しております。なお、一部のグループ会社は「健康経営優良法人」の認定を受けております。
④ 人権尊重とハラスメントの防止
公共交通事業を中核とする当社グループにとって、人権の尊重は事業活動を行っていくうえで基本となる事項と位置付けております。お客さまをはじめとするさまざまなステークホルダーの人権を尊重して事業活動を進めるために、2022年8月に南海グループ人権方針を制定しました。この方針に則り、従業員に対する啓発・研修を継続的に実施して人権問題の発生防止に取り組むとともに、ハラスメント等の相談窓口を設置するなど適切な対応を取ることができる体制を整備しております。
(指標及び目標)
当社グループでは、上記(戦略)において記載した、人財の多様性の確保を含む人財育成方針及び社内環境整備方針について、次の指標を用いております。当該指標に関する目標及び実績は、次のとおりであります。
指標 | 目標 | 実績 (当連結会計年度) |
女性管理職比率[連結](※1) | 10%程度まで向上 (2030年度までに) | 5.2% |
新規採用者に占める女性比率[連結](※1) | 30%程度まで向上 (2030年度までに) | 22.1% |
マネジメントコース(※2)新卒採用者に占める女性比率[単体] | 40%以上維持 (2026年度まで) | 40.9% |
年次有給休暇取得率[単体] | 90%以上を維持 (2026年度まで) | 96.9% |
男性労働者の育児休業等と育児目的休暇取得率[単体] | 100% (2030年度までに) | 90.6% |
(※1) 当社及び連結子会社54社
(※2) マネージャー及び経営人財としての活躍を目指すキャリアコース
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