協栄産業 【東証スタンダード:6973】「卸売業」 へ投稿
企業概要
当社グループの経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は、以下の通りであります。
なお、本文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において、当社グループが判断したものであります。
(1)経営の基本方針
当社グループは、「エレクトロニクス分野を通して高い品質と優れた技術に基づいた価値ある製品・サービス・情報を提供することにより夢とゆとりのある社会の実現に貢献します」という当社の経営理念のもと自動車、家電、産業機など様々な電子製品に搭載されるエレクトロニクス部品の取り扱いとともに製造業向けに各種メカトロニクス装置や関連システムをトータルに提供する技術商社機能、高品質で優れた技術力に基づき、お客様のニーズに合わせ各種のシステム・ソフトウェアを開発し提供するシステムインテグレーター機能を強みに、ICT技術×電子デバイス・装置で、新たなビジネスの価値を創造する“System Technology Group” として、お客様のものづくりや製品開発などの課題解決を実現するソリューション企業として事業展開を図っております。
今後とも先端技術の分野で、創造的な製品やサービスを提供し、お客様から変革を共に推進するパートナーとして常に選ばれる企業グループになることを目指し、成長・発展をし続ける方針です。
また、企業経営においては、常に株主に対する利益還元を念頭におきながら安定利益の確保に努め、同時に、全てのステークホルダーとの相互の信頼関係や、サステナビリティへの取組みを通じて、社会全体に対する貢献を大切にしてまいります。
(2)経営環境
当連結会計年度におけるわが国経済は、2023年5月に新型コロナの感染症法上の位置付けが5類感染症に移行したことにより、経済社会活動の正常化が進み、景気は緩やかに持ち直し、その他要因も相まって、長年続いたデフレからの脱却が期待される状況となりました。しかしながら足元では、企業の業況や収益の改善が続く中においても、個人消費については、所得の伸びが物価の上昇を下回ったことにより、力強さを欠く結果となりました。
世界経済は、堅調なアメリカ経済、底打ち感があるも低迷が続いた欧州経済、中長期的に停滞感が漂う中国経済と、地域により温度差があり、また地政学的リスクも高まったことにより不透明な状況が続きました。
半導体デバイス事業の主要顧客であるエレクトロニクス業界では、数年来続いてきた半導体の供給制約が緩和されたことにより、需要は弱含む状況にありながらも、出荷は回復局面を迎えました。当社グループが主に取扱いをしている自動車、民生品、産業機器向け半導体・デバイスについては、業種・品種・お取引先ごとに状況は異なり、市況感はまだら模様となりました。今後は車載部品の電装化並びに電気自動車へのシフトが急速に進むことが見込まれる自動車関連、産業機器向けモータのインバータ化、産業IoTのセンサーやAI活用が増加する産業機関連、太陽光発電や風力発電向けパワー半導体の拡大が見込まれるカーボンニュートラル関連などにより更なる市場拡大が見込まれます。
プリント配線板事業の主要顧客である自動車部品業界は、車載部品の電装化並びに電気自動車へのシフトが急速に進むことで拡大が見込まれるとともに、グローバルな調達が一層強まることが見込まれます。
産業機器システム事業の主要顧客である機械装置製造業界では、省人化ニーズやメカトロニクス装置をネットワークに接続するIoTの普及などから、FA機器、メカトロニクス装置並びにこれらに関連するシステム開発を含めた設備投資が緩やかな調整局面はあるものの期待されます。
また、省人化ニーズが益々高まるとともにデータ連携に基づく生産性の向上などを可能にするロボティクスの隆盛が今後は更に加速すると思われ、ハードウェアの販売に留まらず倉庫や工場全体の管理を可能にするシステム化のニーズが拡大をしていくとともに3Dデータから造形物を3Dプリンタで出力する造形サービスのニーズも高まるものと期待されます。
システム開発事業の属するIT市場におきましては、システムエンジニアの不足感が継続しておりますが、DX(デジタルトランスフォーメーション)をはじめとする企業のIT投資は引き続き活況を呈しており、成長が見込まれます。主要顧客である電力関連業界は、脱炭素社会に向けた再生可能エネルギー利用が一段と促進されることにより、新たなシステム開発の需要が見込まれるものと期待されます。また、DX関連市場においても、AIやIoTの活用が見込まれるなど様々な市場に必要不可欠なシステム開発の領域はさらに拡大が期待されるもののシステムエンジニアやパートナー会社不足が事業拡大を阻害する要因になる可能性があることが懸念されます。建築積算ソフトの主要顧客である、建設関連市場においては、これまで設計や施工の段階で様々なソフトウェアで分断されていた情報が統合共有され、コスト削減、リスク低減、スピードアップなどを実現するBIM(ビルディング・インフォメーション・モデリング)が普及することにより、当社が得意とするBIMに対応した当社オリジナルパッケージソフトのBIM対応RC数量積算システム「FKS RC 2.0」、仕上数量積算システム「FKS FN 2.0」の販売拡大が期待されます。なお、これらの商品は、国土交通省の建築BIM加速化事業の対象製品に選定されております。
(3)経営環境を踏まえた取組み
半導体デバイス事業では、強みとする「アナログ&パワー半導体」事業を更に強固なものとすべく、営業と技術の両面で市場のニーズにお応えできる体制を構築し、IoT化やAI実装の進展により今後益々需要の拡大が期待される自動車や産業機器、家電製品向けの拡販に努めております。また、従来比で電力変換損失を大きく低減できる酸化ガリウムパワーデバイスは、電気自動車や産業機器、民生用小型電源機器等への搭載が期待されており、環境負荷を低減させることができる商材として市場への普及を目指しております。技術面においては、マイコン開発技術者にアナログとデジタル技術の両方を習得させることにより、アナログ技術者不足により充足されていない需要の取込みを目指しております。
プリント配線板事業では、海外基板メーカーの開拓を継続的に行い、高品質かつ価格競争力のある商品を拡充させ、自動車関連業界や各種電子機器製造業界に向けて提案活動を行っております。なお、業績が低迷しておりますプリント配線板製造子会社の協栄サーキットテクノロジ株式会社は2024年9月をもちまして、生産活動を終了し、解散する予定です。
産業機器システム事業では、省人化ニーズの拡大やIoTの普及などにより、FA機器、メカトロニクス装置並びに関連するシステム開発への積極的な投資が期待される状況のもと、「モノ」から「コト」へのコトソリューションビジネスの拡大に向けて、三菱電機株式会社製を中心とするFA機器と、当社のシステム開発力、そして協力会社のハードウェア組み立てノウハウを組み合わせたソリューションの開発と販売に注力しております。
また、省人化ニーズの高まりからロボティクスの隆盛が期待される状況においては、無人搬送車(Automatic Guided Vehicle)の導入実証及び効果検証などの取組みを行っています。「物流の2024年問題」や「CO2排出量削減」、「地方創生」等、社会的課題の解決を目指し、新幹線を活用した列車荷物輸送サービス「はこビュン」による多量輸送のトライアルを実施いたしました。神奈川県の「令和5年度 ロボット実装促進センター 導入実証サポート」の参加企業にも採択され、2024年1月から1カ月間、横浜市の栄聖仁会病院にて協働運搬ロボット「Thouzer(サウザー)」を使った、オムツやリネン等の搬送業務の負荷低減に関する導入実証を行いました。今後も企業や地方自治体の課題解決に向けたソリューション提案を推進してまいります。
その他、物流倉庫業をターゲットにした自動搬送ロボットソリューション営業の体制を強化している他、黎明期から取り扱いを開始している3Dプリンタ事業も装置販売に留まらず、神奈川県相模原市のテクニカルセンター(K-3TC)において、造形サービス、保守サービスなどを含めた多面的な事業展開を図るなど、新規事業の拡大、構築へも積極的に取り組んでおります。
システム開発事業では、プロジェクトマネージャー及び専門性の高いスペシャリスト要員の育成を目的にスキル認定制度を導入するとともに、ビジネス面では、大手SIerと連携し、新分野(ヘルスケア、SDGs等)への参入に取り組んでおります。
建築積算パッケージソフトにおいては、3次元モデルに建物の属性情報をひも付けることにより積算見積りから維持管理までを連携させることを可能とする建設DXの実現に向け、当社オリジナルのBIM対応RC数量積算システム「FKS RC 2.0」及び仕上数量積算システム「FKS FN 2.0」を開発し、拡販に努めております。東京工芸大学の建築コースにおいては、一般社団法人BIM教育普及機構企画のもと、公益社団法人日本建築積算協会との協力により、当社建築積算システム「FKS」と見積書作成システム「KYOEI COMPASS」を使用し「建築積算の授業」を行いました。この「建築積算の授業」は、これまで建築生産という枠組みの中で行われてきた建築積算の授業を、BIMに代表される建築情報処理という新たな視点で行うもので、建設DXが推進するデジタル環境の中でコストマネジメント教育を行う日本初の取組みとなりました。
また、事業本部とは独立して設置されているビジネスイノベーション室では、市場の拡大が見込まれるインフラ点検市場向けに、ロボットを活用した画像解析サービスや点検業務、自治体向け営繕工事積算チェックツールなど新規ソリューションを提案する他、河川防災情報のデジタル化に向けた実証実験に参加するなど、次世代へ向けた事業創造や、地域社会の課題解決に向けた取組みを行っております。国立大学法人大阪大学とは、同大学が研究開発した2次元的な配筋状態を非破壊で可視化することでコンクリート埋設鉄筋の点検時間を従来比30分の1以下に短縮する小型スキャナーの製品化を目指す共同研究を行っており、NEDO(国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構)、大阪大学と共同でプレスリリースいたしました。
サステナビリティの取組みにおいては、次世代を担う地域の子どもたちの健やかな成長(未来)を応援するため、『未来の社会を考える』と題して、地域の中学生や高校生とそのご家族を最新設備が揃った3Dプリンタテクニカルセンターに招待し、3Dプリンタの仕組みや工程を学習するとともに、実際に装置を使い小物の製作等を行う職場体験を実施しております。
(4)目標とする経営指標
当社グループでは、安定的な収益力の確保とグループ全体の業績向上のため事業効率を重視し、営業利益率3%の早期達成をはかり、さらなる利益率の向上及び株主価値の最大化を図ってまいります。
(5)優先的に対処すべき課題
当社を取り巻く事業環境は、グローバル化による競争の激化に加え、技術革新の進展により新たな競争機会が増えるとともに省人化ニーズやIoT、DX、そして生成AIの普及などから新たな商機が幅広い領域で見込まれるなど大きく変化しております。
このような環境のもと、当社といたしましても事業環境の変化に対応するためには、収益構造の改善や新規事業への取組み体制の強化を行い、経営基盤の安定強化を図る必要があると捉えており、以下の項目を対処すべき経営課題と認識しております。
①収益力を強化するために
・生成AIやロボティクスビジネスなどの新事業・新分野の更なる開拓を図る
・先進先端技術への取組みや、成長事業へ積極的に資源投入を図る
・海外事業推進とエンジニアリングサービス強化のためのアライアンス戦略を強化する
・自社ブランド製品の開発、販売を強化するとともに、それを支える品質管理体制の強化を図る
・主要仕入先・取引先との連携強化を図る
・システム投資や業務プロセスの見直しにより間接経費の削減を図る
②お客様から変革を共に推進するパートナーとして常に選ばれる企業グループになるために
・生成AIを活用したビジネスの開発や、お客様のDXを推進するソフトウェア、システムをはじめとする取扱商品の幅を広げるとともに、当社のICT技術と組み合わせることにより、お客様にとって付加価値の高い各種製品、サービス、ソリューション、ビジネスモデルの提供を図る
・Only1 技術を探求し、お客様の事業発展に貢献する
③技術力の強化と人材育成のために
・業務に必要な商品、技術、各種制度及び語学などの知識を深め、グローバルな視野を持ち、自律的に行動できる人材を育成するとともに社内ローテーションを活発化させて、より幅広い視座での発想を促す。また、人材の多様化や専門性の高い人材を外部からも積極的に採用し、活性化を図る
・働く女性のキャリアアップ支援を行い、女性管理職比率を10%以上とする
④企業基盤の整備と改革のために
・事業環境の変化に即応した組織機構・人事制度の改革を図る
・従業員一人ひとりが、安心・安全に、やりがいを持って働ける「ウェルビーイング」を重視した職場環境の実現を図るため健康経営体制の整備をはじめとした人的資本経営の推進を図る
・従業員のエンゲージメントを高める取組みを強化する
・効率的に資産を活用し、財務内容の健全化を図る
・テレワーク、フリーアドレス導入後における働き方の更なる改善やITインフラの整備を図る
⑤コーポレートガバナンスを強化するために
・企業の持続的成長・発展のためのサステナビリティ経営を重視するとともに内部統制システムの整備充実を図り、コンプライアンス意識の浸透を徹底する
(6)中長期的な会社の経営戦略と見通し
翌連結会計年度の見通しにつきましては、デフレ脱却に向かって経済が新たなステージを迎える期待感がある一方で、企業の好調な業況や収益が賃金や投資に十分に結びついておらず、また、地政学的リスクの懸念もあり、経済回復の力強さには不透明感が残っております。
このような環境の中、半導体デバイス事業におきましては、下期からの回復を見込むも、上期中は弱含む市況の中、前期比でマイナス成長を見込んでおります。
プリント配線板事業におきましては、2024年9月末での自社国内製造事業終了へ向けた取組みが予定通り進む見通しである一方で、海外製品の拡販に努めることから、利益の改善を見込んでおります。
産業機器システム事業におきましては、前期からの半導体市況の需要減速の影響で、在庫調整の局面を迎えておりますが、下期以降の需要回復が期待されます。
システム開発事業におきましては、電力受託開発及び建設・受注・タクシーソリューションの需要が旺盛で、全体として堅調に推移すると見込んでおります。
このような状況のもと、当社では、2023年2月27日に公表をいたしました2024年3月期から2028年3月期までの5ヵ年を対象とする中期経営計画「KYOEI Power 2028」(連結業績目標 売上高 750億円 営業利益21億円 営業利益率2.8%)に基づいて、システム開発事業を重点成長領域と位置づけ、M&Aなどの活用と事業ポートフォリオの最適化により、安定した利益を創出し、お客様から変革を共に推進するパートナーとして常に選ばれ、必要とされる存在価値のある企業グループへの成長の実現に向けた取組みを行ってまいります。また、脱炭素社会に向けたGX(グリーントランスフォーメーション)、生産性向上に向けたDXへの取組みや人口減少による人材不足に対して採用の多様化、給与体系の見直しや多様な働き方の推進に向けた人的資本投資、大学、スタートアップ企業との研究段階からの関係構築により、次世代ビジネスの創出を目的とした研究開発投資などは中長期的に取り組んで行かねばならない事項であると認識し、これらを含め、以下の施策に取り組んでまいります。
半導体デバイス事業は、三菱電機株式会社製パワー半導体、海外製メモリ他の内外メーカーの半導体デバイスの販売活動を核とし以下の施策を実施します。
①既存中核ビジネスの更なる強化
②新商材発掘、新商流開拓、次世代パワー半導体製品の積極展開
③お客様の設計段階において弊社販売製品の採用を促進する営業活動の強化
④大学、スタートアップ企業との研究段階からの関係構築
⑤IC設計及びソフト開発受託ビジネス、EMS/DMS完成品ビジネスの拡大 等
プリント配線板事業は、国内外の基板製造先に委託し、複数の特色のある協力メーカーから、顧客要望に最適なメーカーを提案実施する海外ビジネスを拡大させていくため以下の施策を実施します。なお、連結子会社での生産事業を2024年9月末を以て終息します。
①海外生産品の、日本・中国・その他アジア各国への販売強化
②アジア地区での生産拠点の拡充等
産業機器システム事業は、三菱電機株式会社製品を中心にしたFAシステム機器、メカトロニクス製品の販売及び斯かる機器・製品に関するシステムの構築、各種システム・ソフトウェアの開発・販売等といった既存事業の維持拡大に加えて、当社の保有技術の融合により、変化する市場やお客様ニーズに最適なサービスを提案、提供するトータルソリューション事業の拡大を進めるため以下の施策を実施します。
①「モノ」から「コト」へのコトソリューションビジネスの拡大
②FAを中心とした基幹既存ビジネスの安定的規模拡大
③当社システム開発による、IoT・空調・物流・工程間搬送ビジネス拡張
④3DPの当社保守業務のルート拡張
⑤当社製自動化装置の保守拡張による事業領域の拡大等
システム開発事業は、脱炭素社会に向けた再生可能エネルギー分野やAIやIoTの活用によるDX関連分野でのシステム開発領域の拡大。また、建築積算市場でのBIMの普及が見込まれることにより、これらの市場での優位性を確立するため以下の施策を実効します。
①品質・サービス・変革をお届けするコトソリューションの推進
②パッケージ及び標準システムによる安定的な収益基盤の確保
③顧客ニーズに則した製品・サービス提供を実現するアライアンスの強化
④パッケージ製品のサブスクリプション販売への転換
⑤大手SIerとの共創による新分野プロジェクト開発への参入
⑥SI活動の強化、保守サービスビジネスの拡大等
以上のセグメント事業の取組みに加えて、管理業務では、世界標準を意識した組織改革により、事業の成長を強力に後押しするため、グループ経営基盤の強化として、人的資本戦略としては、あらゆる競争力の源泉は人材にあるとの考えのもと、多様性の拡張と社員教育の拡充、採用システムの改革を強力に推進します。財務戦略は、バランスシートを改善し、事業ポートフォリオの最適化に向けM&Aの活用やベンチャービジネスへの投資等、攻めの経営を可能とする基盤づくりに注力します。サステナビリティ戦略としては、重要課題を特定し、解決へ向けて活動し、持続可能な社会の発展に貢献していきます。
以上により、翌連結会計年度の見通しにつきましては、売上高は580億円、営業利益は14億円、経常利益は13億円、固定資産の売却等による特別利益の計上見込みに加え、連結子会社の清算結了が見込まれることに伴い、有形固定資産の減損等により発生していた課税所得計算上の一時差異が損金算入され、課税所得金額が減少し、税金費用が減少することが見込まれることにより、親会社株主に帰属する当期純利益は14億円を見込んでおります。
また、2025年3月期の配当予想につきましては、1株当たり110円(中間55円、期末55円)を見込んでおります。
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