北海道電力 【東証プライム:9509】「電気・ガス業」 へ投稿
企業概要
当社は、2022年度の不安定な国際情勢による燃料価格や卸電力市場価格の高騰により、電力供給コストが電気料金収入を大きく上回る状態であったため、2023年4月以降、電気料金の見直しを実施した。あわせて、社長を委員長とする経営基盤強化推進委員会のもと、カイゼン活動やDX(デジタルトランスフォーメーション)などの取り組みを通じ、効率化・コスト低減を一層強力に進めてきた。
2023年度の連結経常損益は、電気料金の見直しに加え、燃料費等調整制度の期ずれ影響が収支の好転に大きく寄与したこと、さらにカイゼン活動・DXの推進や期中における収支改善に取り組んだことなどにより、前連結会計年度の損失から1,165億67百万円増の873億15百万円の利益となった。
ほくでんグループは「ほくでんグループ経営ビジョン2030」の達成に向けて取り組んでいる。また、「新たな事業ポートフォリオ」の実現による収益基盤の拡大を図るとともに、2050年カーボンニュートラルの実現に向けて最大限挑戦している。
<「ほくでんグループ経営ビジョン2030」における利益・財務・環境目標>
項 目 | 2030年度までに目指す目標 |
連結経常利益 | 第Ⅰフェーズ(泊発電所の再稼働前) :230億円以上/年 第Ⅱフェーズ(泊発電所の全基再稼働後):450億円以上/年 |
連結自己資本比率 | 15%以上を達成し、さらなる向上を目指す |
CO2排出量 | 発電部門からのCO2排出量を2013年度比で50%以上低減 |
<新たな事業ポートフォリオ>
カーボンニュートラルの要請の高まりや次世代半導体工場などの進出による中長期的な道内電力需要の増加など経営環境の変化を的確に捉え、ほくでんグループの強みを活かして力強く成長していくため、新たな事業ポートフォリオを定め、2024年3月に公表した。発電・送配電・小売といった「既存領域」の事業については、経営の効率化などに引き続き取り組みながら着実に実施していく。また、エネルギーの脱炭素化やサービスの多様化などの社会やお客さまのニーズを捉え、グループの強みを活かした新たなビジネスモデルを構築していく事業分野を「変革領域」と位置づけ、果敢に挑戦することで、収益基盤を拡大していく。
<2050年カーボンニュートラルの実現に向けた挑戦>
2021年4月公表の『ほくでんグループ「2050年カーボンニュートラル」を目指して』の実現に向けて最大限挑戦している。「発電部門からのCO2排出ゼロ」を目指すとともに、さまざまな分野で電化の流れを創出する好機と捉え、グループワイドでの収入拡大につなげていく。
さらに、脱炭素化と経済の活性化や持続可能な地域づくりを目指して北海道が推進する「ゼロカーボン北海道」の実現に向け、幅広い連携や協働を実践していく。
[2024年度の取り組み事項]
(1) 新たな事業ポートフォリオを踏まえた価値創出の取り組み
① 既存領域における利益拡大
北海道の豊かな自然や再生可能エネルギー発電事業の適地としてのポテンシャルを背景に、次世代半導体工場や大型データセンターをはじめとする企業進出が計画されており、中長期的には道内の電力需要規模の大幅な増加が見込まれる。ほくでんグループは、責任あるエネルギー供給の担い手として安定的な電力供給を全うしつつ、新たな大規模需要を獲得していく。
また、RE100※1への対応に活用いただける電気料金メニューや再生可能エネルギー電源によるPPAサービス※2など、お客さまのカーボンニュートラル実現に向けたニーズにお応えするサービスをさらに拡充し、契約の獲得につなげていく。
※1 RE100:企業が事業活動に必要な電力の100%を再生可能エネルギーで賄うことを目指す枠組み
※2 PPAサービス:当社が発電設備をお客さま敷地内外に設置・所有し、発電した電力をお客さまへ供給するサービス(Power Purchase Agreement)
原子力発電は、燃料供給の安定性、長期的な価格安定性を有するなど、電力の安定供給の確保に資するとともに、技術的に確立した脱炭素電源としてカーボンニュートラルの実現に向けて最大限貢献する重要な基幹電源である。
2023年6月、泊発電所の新規制基準の適合性審査において、基準地震動について「おおむね妥当な検討がなされている」との評価をいただいた。引き続き、早期再稼働の実現に向けてその他の審査項目についても総力を挙げて対応していく。また、2024年3月に着工した新たな防潮堤の設置工事を着実に実施していくとともに、審査の状況や当社の取り組み等についても積極的に情報発信していく。
福島第一原子力発電所のような事故を決して起こさないとの強い決意のもと、原子力事故のリスクを一層低減するよう継続的に取り組んでおり、毎年、「泊発電所安全性向上計画」を策定し、公表している。新規制基準への適合はもとより、「世界最高水準の安全性」を目指し、不断の努力を重ねるとともに、泊発電所の安全性についてご理解いただけるよう努めていく。
② 既存領域の変革による事業領域の拡大
再生可能エネルギー電源の導入拡大について、まずは経営ビジョンで掲げた目標である「2030年度までに30万kW以上増」を早期に達成し、その後も積極的な積み増しを図る。また、燃焼時にCO2を排出せず、カーボンニュートラルの実現に向けて重要な役割を果たす水素・アンモニアの利活用を進めていく。
また、再生可能エネルギーアグリゲーション※や蓄電所制御、PPAサービスなどのソリューションサービスの組み合わせにより、新たなビジネスモデルの構築を進めている。さらに、道産品販売サービスや電気のご使用量データを活用した見守りサービスなど、お客さまや地域とのコミュニケーションを通じて、お困りごとや社会課題の解決につながるさまざまなサービスを提供していく。
※ 再生可能エネルギーアグリゲーション:複数の再生可能エネルギー発電設備等を束ねることで、発電計画と実績の差が生じないような運用や発電した電力の取引等を行うこと
当社は、グループ会社とともに、北海道のZEB(ネット・ゼロ・エネルギー・ビル)コンサルティングのトップランナーとして、ビルや工場、学校などのカーボンニュートラルや省エネ・電化拡大、快適性向上に取り組んでいる。2023年11月、道内最大となる当社提案のZEB物件であるCOCONO SUSUKINOがオープンした。
③ 生産性・付加価値の向上
経営基盤強化推進委員会のもと、カイゼン活動、DX及び資機材調達コストの低減などの取り組みを通じ、効率化・コスト低減を一層強力に進めている。これにより、既存領域から変革領域へのリソースシフトを促し、ほくでんグループ全体の成長につなげていく。
カイゼン活動では、高い効果が期待できる大型カイゼンプロジェクトの確実な推進や、グループ会社へのさらなる展開などを強力に進め、生産性4倍増を目標に着実に成果を積み上げていく。DXについては、投資対効果が高い案件や業務高度化案件を優先して実施していく。また、調達検討委員会のもと、工事計画の策定段階など効率化余地が大きい上流プロセスから工事主管部門と資機材調達部門が一体となり「上流調達活動」を推進するなど、資機材調達コスト低減等の取り組みを進めている。
(2) 持続可能な成長を支える取り組み
① カーボンニュートラルの実現に向けた取り組み
発電における脱炭素化に向けては、泊発電所の早期再稼働を目指している。あわせて、再生可能エネルギー電源の導入拡大についても、道内各地で風力発電事業の前提となる風況調査を実施し事業化を検討していくとともに、森発電所に続く地熱発電事業の展開に向け、他企業と共同で開発調査を進めていく。また、当社やほくでんエコエナジー株式会社が所有する水力発電所のリプレース等を実施し、貴重な水資源の有効活用を進めている。
再生可能エネルギー電源の導入拡大を進めるうえで調整力等を担う火力発電の脱炭素化が重要である。苫小牧東部エリアにおいて、CO2を回収、有効活用、貯留するCCUS(Carbon Capture,Utilization and Storage)の実現に向けた調査を進めるとともに、燃料としてのアンモニア活用や道内外の他産業への供給が可能なアンモニア供給拠点の構築に向け検討を進めている。加えて、水素の利活用に向け、2023年5月に運転を開始した水素製造設備において、運用・保守のノウハウ確立に取り組んでおり、2024年2月には、苫小牧西部エリアにおいて国産グリーン水素サプライチェーン構築事業の実現に向けた検討を開始している。
② 電力の安定供給確保に向けた取り組み
S+3E(安全性の確保を大前提に、エネルギーの安定供給、経済効率性、環境適合)の観点からバランスの取れた、競争力のある電源構成の構築に取り組むとともに、2050年のカーボンニュートラルを見据えた電源構成の検討を進めていく。
当社及び送配電事業を担う北海道電力ネットワーク株式会社は、北海道や道内全179市町村の間で「大規模災害時における相互協力に関する基本協定」を締結し、災害時における停電の早期復旧に向けた体制を強化した。災害対応力のさらなる向上を図ることにより、グループ一体で北海道内における電力の安定供給とレジリエンス(災害等に対する回復力・復元力)向上に取り組んでいる。
北海道電力ネットワーク株式会社においては、安定供給の確保と再生可能エネルギーの接続拡大を両立する次世代型電力ネットワークの構築に向けて取り組んでいく。
③ ESG(環境・社会・ガバナンス)に関する取り組み
ほくでんグループは「人間尊重・地域への寄与・効率的経営」の経営理念のもとで持続的な成長を続けていくために、ESGを重視している。
発電における脱炭素化、電化拡大など需給両面での取り組みにより、カーボンニュートラルの実現に向けて最大限挑戦するとともに、CO2排出量の削減方策など環境関連情報を積極的に開示し、ステークホルダーのみなさまとの対話を推進していく。森林の再生や林業の人材育成支援等を目的とした植樹や、子供たちの「科学する心」を培うことを目的に多様なテーマの実験を行うおもしろ実験室の開催、北海道の未来を担う小学生を対象にSDGs教育の支援を目的とした出前授業を実施しており、今後も地域に密着した支援を積極的に行っていく。
また、地域のみなさまとの対話を通じ、地域の課題克服や経済発展に向けて共に新たな価値を創り上げる「共創」を進めていく。2023年11月に設置した事業共創推進室を中心に、当社の強みと他企業の技術やノウハウを掛け合わせ、一次産業や観光、福祉といった分野から積極的に事業化を図っていく。
2024年3月、従業員のさらなる活躍と能力の最大化に向けてほくでんグループ人材戦略を定めた。従業員一人ひとりが行っている仕事やサービス、それらに関するルール・技術・ノウハウといった今ある価値を高めながら、新たな価値を生み出していく企業風土の創造を目指す。その実現に向けて、必要なスキルを身に付け、自律的に挑戦・変化していく人材の育成と、多様な人材が互いに認め合い、働きがいと成長を感じながら活躍する環境の整備に取り組んでいく。多様な視点や価値観が事業領域を拡げ、持続的に成長していく原動力になり得ると認識し、ダイバーシティ&インクルージョンを推進する。また、当社と北海道電力ネットワーク株式会社は、「健康経営優良法人(ホワイト500)」に5年連続で認定されており、一人ひとりの健康づくりや働きやすい職場づくりに向けた活動を積極的に展開している。
持続的な企業価値向上の実現に向けて、2024年1月、資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた検討状況を公表した。PBR向上に向けて、新たな事業ポートフォリオに基づき、ROICの向上や利益の最適配分等の方策を講じていく。
当社は、以上の取り組みを通じて企業価値の向上を図るとともに、北海道の発展と持続可能な社会の実現に貢献していく。
なお、当該事項は当連結会計年度末現在において判断したものであるが、将来に関する事項については、有価証券報告書提出日現在において判断したものである。
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