兼松 【東証プライム:8020】「卸売業」 へ投稿
企業概要
(1) 経営方針
常に時代を先取りし、果敢に新たな事業へと挑戦し続ける創業以来の開拓者精神と積極的な創意工夫を行う姿勢は、当社グループの行動指針となっております。お取引先との信頼関係を深め、事業を創造し、社会に価値ある企業となるため、当社グループの企業理念として掲げる、当社創業者である兼松房治郎による創業主意ならびに「われらの信条」(1967年制定)を経営の基本理念としております。
創業主意 「わが国の福利を増進するの分子を播種栽培す」
「われらの信条」
・伝統的開拓者精神と積極的創意工夫をもって業務にあたり、適正利潤を確保し、企業の発展を図る。
・会社の健全なる繁栄を通じて、企業の社会的責任を果し、従業員の福祉を増進する。
・組織とルールに基づいて行動するとともに、会社を愛する精神と、社内相互の人間理解を基本として、業務を遂行する。
(2) 経営環境および対処すべき課題
① 中期ビジョン「future 135」の達成状況
当社グループは、当事業年度をもって6ヵ年(2018年4月~2024年3月)の中期ビジョン「future 135」の見直し後の定量目標をすべて達成いたしました。中期ビジョン「future 135」では、基盤となる事業における持続的成長を目指すとともに、強みを有する事業分野での事業投資により規模の拡大や付加価値の獲得を追求する基本方針のもと、デジタルトランスフォーメーション(以下「DX」という。)やグリーントランスフォーメーション(以下「GX」という。)の取組みを重点施策に加え、定量目標の達成に向けた取組みを実施いたしました。
中期ビジョン「future 135」は、定量目標の達成のみならず、中期経営計画「integration 1.0」の基盤を築くための期間でもあり、兼松エレクトロニクス㈱と兼松サステック㈱の完全子会社化や、革新的な技術や独自のビジネスモデルを持つ企業へのイノベーション投資などを実行いたしました。
(定量目標)
| 「future 135」最終年度(2024年3月期) | |
目標 | 実績 | |
連結当期利益 ※ | 200億円 | 232億円 |
ROE | 10~12% | 16.1% |
配当性向(総還元性向) | 30~35% | 32.4% |
(※)親会社の所有者に帰属する当期利益
当連結会計年度においては、2023年10月1日付で「グループ成長戦略推進室」を新設し、経営資源・無形資産をグループ随所において活用し、グループシナジーを発揮することで、当社の経営方針である「グループ一体経営」を加速させます。
② 中期経営計画「integration 1.0」
2025年3月期からは中期経営計画「integration 1.0」(2024年4月~2027年3月)を新たにスタートし、より一層の企業の成長を実現するとともに、経営環境における課題の解決を積極的に推進して参ります。
(ⅰ)経営環境の認識と当社グループの目指す姿
中期経営計画「integration 1.0」の策定の前提においては、当社グループを取り巻く経営環境における対処すべき課題として、少子高齢化や2024年問題に起因した「労働力不足」、ESG・SDGsなどの倫理・環境に対する社会的な要請による「持続可能性への対応」、目まぐるしく変化する時代において変化を機微に捉え迅速に対応するための「経営のスピード化」、以上の3つを認識しております。当社グループは、これらの課題を起点に、目指す姿として「効率的かつ持続可能なサプライチェーンの変革をリードするソリューションプロバイダー」を掲げます。
(ⅱ)基本方針
当社グループの目指す姿の実現に向けては、これまでのトレーディングビジネスで培ってきた当社の強みと完全子会社化した兼松エレクトロニクス㈱の強みを最大限生かすとともに、これまでの延長線上ではない取組みが必要になります。中期経営計画「integration 1.0」においては、以下の6つの基本方針を掲げ、着実に推進することにより、当社グループのすべてのステークホルダーに対する価値向上の実現とともに、中長期的な株主価値向上を実現いたします。
(a) グループ一体経営の推進
新たな価値(ソリューション)を提供するため、「グループ一体経営」を推進することを目的に「グループ成長戦略推進室」をコア組織として、部門や企業の垣根を超えて事業開発をリードし、部門横断的なシナジー創出や成長戦略を実行して参ります。
(b) 提供価値の拡充
中期経営計画の3年間で「DX」「GX」「イノベーション」の提供価値を重点的に強化し、3つの提供価値を通して、経済・社会が求めるニーズに応えて参ります。
(c) 新たな価値創出に向けた組織能力の強化
新たな価値創出を実現する思考・行動様式の開発・浸透に向けた組織能力を強化するために、2023年10月に社長直轄の「グループ成長戦略推進室」を設置し、目指す姿の実現に必要な思考・行動様式を形式知化、プロジェクトの実践を通じて、個々の部門で培ってきた暗黙知を部門の壁を越えて集結し、グループ全体へ浸透させて参ります。
また、目指す姿の実現に向け、パートナーとの共創を実現するためのエコシステムを形成し、拡大することにより、 最適なソリューション提供に向けて、グループの制約を超えた共創を行う組織能力を増強し、新しい顧客や技術、事業機会の獲得を組織的に実現して参ります。
具体的な戦略や指標及び目標は、「2 サステナビリティに関する考え方及び取組 (3)人的資本・多様性に関する取組み」に記載のとおりであります。
(d) 人的資本の強化
経営戦略と人材戦略を連動させ、目指す姿の実現に向けた価値創造の源泉となる人的資本を強化するために「人的資本委員会」を設立し、「人的資本委員会」と「グループ成長戦略推進室」で連携を取りつつ組織資産・組織能力を蓄積、拡大を目指して参ります。
具体的な戦略や指標及び目標は、「2 サステナビリティに関する考え方及び取組 (3)人的資本・多様性に関する取組み」に記載のとおりであります。
(e) 経営機能の強化:持続的な成長を実現するための経営機能の強化
ICTソリューション事業を各部門へ浸透し一体化することを目的に翌連結会計年度から「ICTソリューション部門」を新設し、適切なマネジメントと成長を実現するためのキーマンを登用することで、各部門のお客様へソリューション提供を行って参ります。
(f) 中長期的な株主価値の向上
以下の取組みにより中長期的な株主価値の向上に努めて参ります。
・資本収益性・効率性の向上
投資効率(ROIC)の高いICTソリューション事業への重点投資を通じた収益性の向上を図ることや、事業成長・株主価値向上に資する最適な事業ポートフォリオを実現することで、業界水準を上回るROE16~18%の維持・向上を目指して参ります。また、ネットDER1.0倍程度を目標とした財務健全性の維持と、適切なレバレッジ水準により効率性を追求して参ります。
・資本コストの低減
低ボラティリティの非資源100%のビジネスポートフォリオを活かし、5つの重要課題(マテリアリティ)を重視した経営による資本コストの低減、ESGディスカウント抑制を目指して参ります。
・期待利益成長率の向上
M&AとオーガニックのICTソリューション事業の成長と、他セグメントへの事業展開による収益の拡大や、サプライチェーンへの新たなる価値提供(ソリューション提供)による、収益源の獲得、人的資本の育成などを通したインタンジブルアセットのバリューアップ、組織の生産性・パフォーマンス向上に努めて参ります。
(ⅲ)定量目標
中期経営計画「integration 1.0」における定量目標は以下のとおりとし、中長期的な株主価値向上の実現へ取り組みます。
| 「integration 1.0」 最終年度 (2027年3月期)目標 | 2024年3月期実績 |
連結当期利益※ | 350億円 | 232億円 |
ROE | 16%~18%程度 | 16.1% |
ROIC | 8%以上 | 6.4% |
ネットDER | 1.0倍程度 | 1.00倍 |
(※)親会社の所有者に帰属する当期利益
(資本配分方針)
安定的な基盤事業と成長事業からの営業キャッシュ・フローを基に、更なる株主還元と成長投資を実行して参ります。
キャッシュ・インは、中期経営計画「integration 1.0」の3年累計で、(調整後)営業キャッシュ・フロー(会計上の営業キャッシュ・フロー ± 運転資本増減 - リース負債の返済)1,100億円と資産入れ替えによる調達100億円に対して、キャッシュ・アウトとしては、累進配当による株主還元へ約270億円、ICTソリューションを中心とするDX関連へ約400億円、強みを有する事業分野などへ(GX含む)約200億円、基盤事業の持続的運営と発展へ約330億円を配分する方針としております。
(今後の見通し)
翌連結会計年度においては、各国の金融環境緩和が消費を下支えし景気回復が期待される一方で、中国の景気停滞長期化、中東情勢悪化による地政学リスクの高まりなどが世界景気の下振れ要因として懸念されます。
日本経済は、インバウンド需要など内需は堅調を維持すると見込まれる一方で、先行き不透明な海外経済の減速が下押し圧力となる懸念もあり、景気の回復は緩やかなものに留まると見込まれます。
2025年3月期の業績見通しについては、収益1兆1,000億円、営業活動に係る利益425億円、税引前利益380億円、親会社の所有者に帰属する当期利益250億円を見込んでおります。
| 2024年3月期実績 | 2025年3月期見通し |
連結当期利益※ | 232億円 | 250億円 |
配当性向(総還元性向) | 32.4% | 33.4% |
(※)親会社の所有者に帰属する当期利益
セグメントの業績見通しおよび成長戦略は、次のとおりであります。翌連結会計年度から、中期経営計画「integration 1.0」における「経営機能の強化」として、「ICTソリューション部門」を新設するなど新たな部門編成としたことに伴い、報告セグメントの見直しを行っております。
ICTソリューション
事業拡大や競争力強化を目的としたDXや重要性の高まるサイバーセキュリティ強化など、半導体関連を中心とした企業のデジタル投資需要は旺盛で、引き続き好調に推移する一方で、人的資本の強化を目的とした人件費などのコスト負担を見込むことから、収益は900億円、営業活動に係る利益は137億円、親会社の所有者に帰属する当期利益は96億円を見込んでおります。
技術革新とビジネスニーズの変化が速いビジネス環境の中で、兼松エレクトロニクス㈱を中心に、成長市場の動向を把握するとともに適切なソリューションを導入することで事業を拡大させて参ります。具体的な戦略は、次のとおりであります。
・強固な顧客基盤と技術力に裏打ちされたマルチベンダーとしての強みを活かした、ITインフラ基盤の設計、構築から保守、運用まで一貫したサービスをワンストップで提供。
・「セキュリティ」を中心とした当社グループ独自の「as a Service」を提供するサービスビジネスの更なる拡販。
・当社グループの幅広い業種・業態の顧客基盤に対するクロスセルと顧客課題に応じたソリューションの提供。
電子・デバイス
モバイル事業は販路拡大や販売台数の回復により堅調な一方で、踊り場を迎えている半導体製造業向けの半導体装置事業の停滞、一方で納期問題が解決しつつあり堅調に推移する半導体部品事業、中国の景気後退により需要の伸長に欠ける電子材料事業などにより、収益は2,800億円、営業活動に係る利益は87億円、親会社の所有者に帰属する当期利益は53億円を見込んでおります。
業界再編や法改正による販売体制の変化などの影響を受けるモバイル事業や、高い性能を備えた製品とグローバルな市場展開が求められる半導体部品・製造装置事業などは、複数の要因を受けやすいビジネス環境の中で、高度な技術革新の追求に加え、製品販売のみならずソリューション提供へ発展させることにより事業を成長させて参ります。具体的な戦略は、次のとおりであります。
・全国販売ネットワークを活用し、モバイル関連商品の販売から管理、運用、回収までのトータルサービスを提供するとともに、SaaSなどのリカリングサービス、次世代半導体・次世代電池用の材料提案など、幅広いサービスの展開とソリューション提供。
・半導体装置や半導体製品、電子部品・素材、プリンタ、バッテリーなどを含むエレクトロニクス産業全般において、革新的なソリューションと高度な技術力を組み合わせたグローバルな事業展開。
食料
海外向けの魚粉・魚油などを中心に食糧事業が好調に推移する一方、飲料原料を中心に販売が好調に推移した当連結会計年度の反動を見込む食品事業や、低調な牛肉消費の影響を受ける畜産事業により、収益は4,100億円、営業活動に係る利益は77億円、親会社の所有者に帰属する当期利益は33億円を見込んでおります。
食品事業は、消費者の人口動態やライフスタイル、健康志向などの価値観の変化、オンライン販売の拡大など、市場ニーズが多様化し、また、海外市場の成長を見込むビジネス環境にあり、マーケットインによるグローバルなアプローチで成長させて参ります。具体的な戦略は、次のとおりであります。
・「食の安全・安心」をテーマに、メーカーの視点で原料の調達から製品加工までの一貫供給体制を構築。
・農産物、水産物、コーヒー、飲料・酒類、調理食品など幅広い商品ラインナップで市場の多様なニーズに対応。
・顧客のニーズを先取りした市場性の高い原料や製品の開発推進や、市場が拡大するインドネシアなどアジア諸国におけるバリューチェーンの横展開を通じたビジネス拡大。
畜産事業は、安定供給を目的とした海外サプライヤーの確保および特にアジアを中心とした海外市場の成長を背景に、国内外のビジネスパートナーとの信頼関係の維持・深化により事業を成長させて参ります。具体的な戦略は、次のとおりであります。
・原料から畜産加工品まで幅広い商品群を取り扱い、加工・物流機能を組み合わせ、顧客ニーズに合った付加価値の高い商品とソリューションの提案。
・商品の安定確保を目的とした、国内外のパートナー企業との提携・出資によるバリューチェーン(生産・加工・物流・販売)の横展開と強化。
食糧事業は、年々、世界的な穀物需要は増大する一方、天候リスクや地政学的リスクなどにより安定供給へのリスクが高まっております。これらの課題を機会と捉え、供給においては、産地の多様化、持続的な生産体制の構築、生産性向上のためのデジタル化などを進めて参ります。需要においては、日本市場に加えて中国・アセアン市場への参入を進めて参ります。
また、持続的生産体制の構築において、魚粉・魚油などの水産養殖原料については、近年、特に資源管理や環境負荷に配慮した原料の供給が求められており、各種認証プログラムへの参画を含め供給体制の強化に力を入れております。
鉄鋼・素材・プラント
市況の影響を受ける鉄鋼事業やエネルギー事業により、収益は1,950億円、営業活動に係る利益は74億円を見込む一方で、当連結会計年度に計上した鉄鋼事業の持分法による投資の減損損失の一過性要因の剥落により、親会社の所有者に帰属する当期利益は38億円を見込んでおります。
GXに代表される世界的な環境問題への意識の高まりの影響を受けるビジネス環境にあり、顧客の「脱炭素」への様々な支援により事業を成長させて参ります。具体的な戦略は、次のとおりであります。
・社会インフラを支える部門として、幅広い分野において高い専門知識を備えた人材による、GXを中心としたバリューチェーンへのソリューションの提供。
・サーキュラーエコノミーの実現に向けた持続可能な原料・素材や環境配慮商品の取扱い。
車両・航空
航空宇宙事業は、航空業界の需要回復や宇宙・防衛産業の需要の増加を見込んでおります。車両・車載部品事業は、部品需要が堅調に推移する見通しで、工作機械・産業機械事業では、自動車向け工作機械や産業機械の需要に一定の回復が見られます。これらにより、収益は1,200億円、営業活動に係る利益は50億円、親会社の所有者に帰属する当期利益は30億円を見込んでおります。
次世代モビリティや空飛ぶクルマ、ドローンの普及、モビリティ関連製品全般の軽量化や電動化などの技術革新による脱炭素化の動きも加速するビジネス環境にあり、新たなモビリティ事業の創造で事業を成長させて参ります。また、民間宇宙産業の勃興に伴い、地球低軌道を利用した商用宇宙ステーションの事業開発などにも取り組んで参ります。具体的な戦略は、次のとおりであります。
・「環境」「安全」「快適」をテーマにし、次世代モビリティや素材、宇宙、データビジネスなどの領域で事業創造を推進。
・幅広い製品ラインナップと様々な機械関連サービス、さらに環境ビジネスから海外進出支援までをカバーし、顧客の多様なニーズにお応えするエンジニアリング・ソリューションの提供。
(業績見通し算定にあたっての前提条件)
・為替レート : 1米ドル=135円
・金利水準 : 円金利:横這い 外貨金利:下落を見込む
(注意事項)
上記の見通しなどの将来に関する記述は、当社グループが有価証券報告書提出日現在入手している情報および合理的であると判断する一定の前提に基づいており、その達成を当社として約束する趣旨のものではありません。また、実際の業績等は様々な要因により大きく異なる可能性があります。
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