九州電力 【東証プライム:9508】「電気・ガス業」 へ投稿
企業概要
(1) サステナビリティ全般
当社グループは、「九電グループサステナビリティ基本方針」のもと、事業活動を通じて地域やグローバルな社会課題解決に貢献することで、持続可能な社会への貢献とグループの中長期的な企業価値向上の実現を目指している。
なお、文中における将来に関する事項は、有価証券報告書提出日現在において判断したものである。
<ガバナンス>
サステナビリティ経営の実践に向け、カーボンニュートラルをはじめとするESG(環境・社会・ガバナンス)の取組みを強力に推進するため、取締役会の監督下に、社長を委員長とし、社外取締役や関係統括本部長等を委員とする「サステナビリティ推進委員会」を設置している。本委員会では、サステナビリティ全般に係る戦略・基本方針の策定(マテリアリティの特定)、施策実施状況の進捗管理に加え、気候変動や人的資本等の重要なサステナビリティ課題に関する戦略、リスク・機会についての審議・監督を行っている。また、本委員会の下には、「カーボンニュートラル・環境分科会」及び「地域・社会分科会」を設置し、環境・社会問題全般について、より専門的な見地から審議を行っている。
年に2回以上開催する本委員会の審議結果は、取締役会に遅滞なく報告しており、取締役会はサステナビリティに係る活動全般を監督している。
■サステナビリティ経営推進体制図
<戦略>
当社グループは、「九電グループの思い」及び「九電グループサステナビリティ基本方針」のもと、中長期的に目指す姿として、「九電グループ経営ビジョン2030」と「カーボンニュートラルビジョン2050」を定め、グループ一体となった取組みを推進している。
これらの方針・ビジョン実現に向けた経営上の重要課題をマテリアリティとして特定し、その解決に向けた具体的取組みを中期経営計画(中期ESG推進計画)に落とし込むことで、着実な実践を図っている。
持続的に企業価値(経済価値)を高めていくためには、「短期」のみならず、「中長期」の社会情勢や経営環境の変化を見据えたうえで、今後の成長の障壁となりうるマテリアリティに焦点をあてた取組みを強化することが極めて重要である。そのため、当社グループは、企業価値(経済価値)につながる要素を「①短期の機会最大化」「②中長期の機会拡大」「③リスクの低減」の3つに分解し、それぞれの視点からマテリアリティ解決に向けた取組みを推進している。
■サステナビリティ経営を通じた企業価値向上モデル
<リスク管理>
当社グループの経営に影響を与えるリスクについて、毎年リスクの抽出、分類、評価を行い、全社及び部門業務に係る重要なリスクを明確にしている。把握したリスクについては、対応策を各部門及び事業所の事業計画に織り込むとともに、複数の部門等に関わるリスク及び顕在化の恐れがある重大なリスクについて、関連する部門等で情報を共有した上で、対応体制を明確にし、適切に対処している。特に、社会と企業のサステナビリティ実現に係るリスクについては、サステナビリティ推進委員会及び取締役会にて審議し、マテリアリティの見直し要否の判断につなげるとともに、対応策を中期ESG推進計画やカーボンニュートラルアクションプラン等に反映し、進捗管理を行うことで着実な実践を図っている。
当社グループの経営成績、財務状況等に重要な影響を与える可能性があると経営者が認識している主要なリスクは、「3 事業等のリスク」に記載している。
<指標と目標>
当社グループでは、マテリアリティごとに目指す姿を設定するとともに、その着実な実現に向け、中期ESG推進計画において、各取組みの中期目標及び年度目標を設定の上、取組みの進捗を管理している。
■2023年度中期ESG推進計画
(2) 気候変動
世界共通の課題である気候変動への対応は、エネルギー事業者にとって、事業のあり方そのものに影響しうる大きなリスクであると同時に、持続的成長に向けたビジネス変革への新たなチャンスである。当社グループは、責任あるエネルギー事業者として、また、再生可能エネルギー開発の長い歴史を持ち、東日本大震災以降いち早く原子力の再稼働を実現した低・脱炭素の業界トップランナーとして、今後も脱炭素社会をけん引するとともに、その取組みを更なる企業成長につなげるため、気候変動への対応をマテリアリティと位置づけ、グループ一体となった取組みを推進している。
<ガバナンス>
気候変動対応については、サステナビリティ推進委員会を中心としたガバナンス体制のもと、その取組みを推進している。
詳細については、「(1)サステナビリティ全般 <ガバナンス>」に記載している。
<戦略>
当社グループが持続的に気候変動の緩和に貢献し、かつ成長し続けることができるよう、上昇温度が1.5℃と4℃のシナリオを想定し、リスク・機会等の分析を行っている。
また、その分析結果を踏まえた対応戦略については、「カーボンニュートラルの実現に向けたアクションプラン」に反映させるとともに、具体的な行動計画を毎年策定する「中期ESG推進計画」の中に落とし込み、戦略実現の実効性を高めている。
いずれのシナリオにおいても、低・脱炭素のトップランナーとして、アクションプランの取組みを実践することで、機会の最大化・リスクの最小化を実現していく。
■主なリスク・機会と対応戦略
項目 | 対応戦略 | ||
リスク | 政策・規制 | カーボンプライシング | ・GHG(温室効果ガス)排出量削減 ・エネルギー政策への提言・関与 |
非効率石炭フェードアウト | ・アンモニア・水素の混焼技術確立 ・LNG・カーボンフリー燃料等への振替 | ||
技 術 | 系統の安定性低下 | ・デジタルの活用による需給運用・系統安定化技術の高度化 | |
評 判 | 資金調達コスト上昇 | ・アクションプランの着実な実行 ・KPI(重要業績評価指標)進捗等含めた情報開示の充実 | |
物 理 | 資源開発地の操業不能 | ・供給ソースの分散化 | |
台風等による設備被害 | ・無電柱化の推進、災害対応力の向上 | ||
機会 | 技 術 | 再エネ開発推進による収益拡大 | ・強みである地熱・水力の開発 ・導入ポテンシャルが大きい洋上風力やバイオマス等の開発 |
原子力設備利用率向上 | ・定期検査短縮、長期サイクル運転、電気出力向上 | ||
市 場 | 電化の進展による販売電力量増 | ・電化率向上に向けた家庭・住宅関連業者との連携強化 | |
製品・ サービス | カーボンニュートラルニーズ拡大 | ・DER(分散型エネルギーリソース)制御技術・蓄電池を用 いたアグリゲートビジネスの展開 ・EⅤを活用した新たなビジネスモデルの検討 | |
レジリエンスニーズ拡大 | ・ドローンサービスや無停電電源装置等の関連製品・サービス における他社との協業、競合他社との差別化 |
※:1.5℃、4℃のシナリオごとで各項目のリスク・機会の影響度・発現可能性は異なる
<リスク管理>
気候変動に係るリスクは、他のサステナビリティ課題に係るリスクと共に管理している。
詳細については、「(1)サステナビリティ全般 <リスク管理>」に記載している。
<指標と目標>
低・脱炭素の業界トップランナーとして、2050年のサプライチェーンGHG排出量の実質ゼロにとどまらず、社会のGHG排出削減に大きく貢献する「カーボンマイナス」を2050年より早期に実現するというゴールを設定している。また、2030年の経営目標として、2050年からのバックキャストでチャレンジングな目標・KPIを設定し、その着実な達成に向けて、進捗を管理している。
■サプライチェーンGHG排出量の推移
(3) 人的資本
脱炭素やDXの潮流等により経営の不確実性が大きく高まるとともに、働き手の価値観が多様化する中、人的資本充実に向けた取組みを加速し、その多様な価値観を価値創出につなげることが極めて重要である。
このため、九電グループは、以下の「人的資本充実に向けた基本的考え方」に基づき、「人と組織が成長し続ける組織文化の醸成により未来の価値を創出」するための人財戦略を展開し、持続的な企業価値向上を図る。
■人的資本充実に向けた基本的考え方
・「個人の思い(Will)と組織のビジョン等を結び付け、人と組織が共に成長しながら価値創出につなげて いく」ことを人的資本経営の中心とする。 仕組みづくりに取り組む。 |
<ガバナンス>
人的資本経営については、サステナビリティ推進委員会を中心としたガバナンス体制のもと、その取組みを推進している。
詳細については、「(1)サステナビリティ全般 <ガバナンス>」に記載している。
また、人財戦略と経営戦略との連動をより一層強化するため、人的資本充実に向けた戦略立案・具体的取組みの推進にあたり、コーポレート戦略部門と人材活性化本部の協働体制を整備している。
<戦略>
「九電グループ経営ビジョン2030」の実現に向けて一人ひとりの主体的・自律的な行動を喚起するため、働き方改革、安全に関わる取組み、健康経営等の働きやすさを高める取組みや、人事処遇制度の見直し、社内公募・社内兼業等の働きがいを高める取組みを行っている。また、事業環境や領域の変化に応じ、経営戦略の実現に必要な専門知識・技術・経験等を有する人財や経営をリードする人財等の戦略人財を確保・育成している。
一方、事業環境や個々人の価値観が大きく変化する中において、一人ひとりの力を最大限引き出し、生産性向上やイノベーションにつなげていくには、組織風土変革にまで踏み込んだ取組みが不可欠である。
このため、対話を通じて組織のビジョン等への共感(従業員エンゲージメント)を高めることで、一人ひとりの意欲・能力の向上を図るとともに、それを組織の中で活かし、価値創出につなげる組織開発の取組みを強化する。また、これらを実現するためのQXプロジェクト(Qden Transformationプロジェクト)を立ち上げ、経営層の強いリーダーシップのもと、全社を挙げて取組みを加速していくとともに、人と組織が共に成長する企業文化の定着を図る。
戦略実現に向けては、主要課題ごとに以下の通り取り組んでいく。
○ 価値共創・イノベーションの推進
一人ひとりの自律的な成長・挑戦を促すため、自己選択型研修や自己啓発支援等、自律的な学び・キャリア形成に関する自己選択機会を提供する等、主体的なチャレンジを支援する取組みを行っている。また、従業員のアイデアを起点に、社外とも連携しながら新しいビジネスやサービスを共創する取組みとして、「KYUDEN i-PROJECT」を実施している。QXプロジェクトでは、同様の課題認識を持つ個人同士のアイデア交流や、課題解決に向けた知見を有する個人からの助言等により、従業員一人ひとりの「しよう」「したい」という思い(Will)に基づく提案を実現につなげ、成果を高める仕組みづくり等を通じて、生産性・価値創出力の向上に取り組んでいく。
■従業員の主体的なチャレンジを支援する取組み
・社内公募、ジョブ・チャレンジ制度 |
○ ダイバーシティ&インクルージョンの推進
他企業経験者等の採用等を通じて、多様な知・経験を有する人財を確保するとともに、性別にかかわらない活躍支援等を実施している。また、一人ひとりが時間と場所に捉われず、ライフスタイルに合わせて活躍できる環境づくりに取り組むとともに、育児の経験を通じた人間的な成長やタイムマネジメント力、新たな発想力の向上等をねらいとして、男性の育児休職取得推進にも継続的に取り組んでいる。QXプロジェクトでは、マネジメントのあり方変革に向けた研修や職場状況の診断等を通じて、知・経験の多様性を活かし共創する企業文化への変革・定着に取り組む。
■多様な経験等を有する人財の確保・活躍推進
項 目 | 主な取組み |
多様な知・経験を有する 人財の確保 | ・他企業経験者等の採用(高度専門人財、他企業経験者等) ・副業・兼業の実施(社外での副業や社内兼業、社外人財の活用) |
性別にかかわらない 活躍支援 | ・女性のキャリア形成を支援する個別相談及び情報提供 ・男性、女性を対象とした仕事と家庭の両立に向けたセミナーの開催 |
時間と場所に捉われない 柔軟な働き方 | ・コアタイムのないフレックス勤務制度の導入 ・フルリモート勤務の導入(本店職場) |
知・経験の多様性を活かし共創する組織文化への変革・定着 | ・マネジメント変革に向けた研修(多様性を活かすマネジメント、 エンゲージメントを高めるマネジメント等) ・エンゲージメントや共創等に関する職場状況の診断・フィードバック |
○ 安全と健康の最優先
「安全はすべてに優先する」という認識のもと、その基本方針を示した「九電グループ安全行動憲章」を意識と行動のベースとして、安全に関わる取組みを推進している。2023年4月には、経営の基盤である当社グループ従業員の安全への決意と実践力を育み、グループの総力をあげて安全文化を創造し、進化させるための安全教育施設として、「安全みらい館」を新設した。また、あらゆる事業運営の基盤である従業員の健康を維持・増進することにより、従業員の意欲や活力を高め、その力で組織を活性化することで、永続的な会社の発展につなげることを目的とし、「九州電力健康宣言」及び「九州電力健康経営方針」のもとで、健康経営を推進している。
■健康経営の概要図 ■健康経営の体制図
○ 戦略人財の確保・育成
「戦略人財の確保・育成」に向けては、経営戦略の実現に必要な専門知識・技術・経験等を有する人財を計画的に採用するとともに、高度な専門性を持つ人財を市場価値に基づき処遇する新たなキャリアルートを設けている。また、あらゆる業務の生産性向上や新たな価値創出に資するDX推進に向けて、全社員を対象とした教育や、DXを牽引する人財を育成するための専門的な教育を実施するとともに、高度な知見を有する社外人財の登用や協業にも積極的に取り組んでいる。さらに、事業環境が変化する中で経営をリードする人財の計画的な育成に向けて、経営者に必要なマインド・視座・判断軸を早い段階から涵養するため、経営リーダー塾を実施するとともに、複数の領域を経験するための人事ローテーションや、経営者としての経験を目的としたグループ会社の要職への配置等も実施している。
<リスク管理>
人的資本に係るリスクは、他のサステナビリティ課題に係るリスクと共に管理している。
詳細については、「(1)サステナビリティ全般 <リスク管理>」に記載している。
<指標と目標>
「人と組織が成長し続ける組織文化の醸成により未来の価値を創出」することを目指す姿とし、その達成状況を測定する指標として、従業員の熱意や会社への共感度合いを示す「従業員エンゲージメント」及び価値創出につながっていることを評価する「一人当たり付加価値」をKGIとしている。また、目指す姿の実現に向けて、主要課題ごとにKPIを設定し、取組みの進捗状況を把握・管理している。
KGI (2030年度) | 主要課題 | 中期目標 (年度の記載がないものは2030年度) | 2022年度実績 |
・従業員エンゲー ジメントの向上 -従業員満足度 スコア80%※1
・一人当たり付加 価値※2の向上 -2021年度比 1.5倍 | 価値共創・イノベーションの推進 | 個人のWillを活かし、新たな価値を創出 ・事業・サービス化件数(KYUDEN i-PROJECT) :30件以上(2030年度までの累計) ・提案・エントリー件数※3:10,000件 |
・13件(累計)
・新規施策 |
ダイバーシティ&インクルージョンの推進 | 知・経験の多様性を活かす組織 ・女性管理職就任率※4:30%以上※1 ・マネジメント変革研修 :全組織の長受講(2025年度)※1 | ・21.5% ・新規施策 | |
安全と健康の 最優先 | ・委託・請負先も含めた重大な労働災害ゼロ ・健康優良法人認定※1 ・ストレスチェックにおける総合健康リスク :80pt以下※1 | ・16件 ・ホワイト500認定 ・76pt
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戦略人財の 確保・育成 | ・DXフォロワー※5研修 :全社員受講(2025年度)※1 | ・DXリテラシー研修 :全社員受講 |
※1:実績集計範囲は当社及び九州電力送配電株式会社(その他の指標は当社グループ全体)
※2:売上高から外部購入価値(燃料費や委託費等)及び減価償却費を差し引いたもの(経常利益+人件費+賃借料+
金融費用+租税公課等)
※3:個人やチームでの提案件数、全社アワード(表彰)へのエントリー件数
※4:候補層における一般的な係長級以上への就任率(役員を除く)
※5:デジタル技術及びデータ活用の基礎知識を有し、DXを自分事として捉え、積極的に推進する人財
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