九州フィナンシャルグループ 【東証プライム:7180】「銀行業」 へ投稿
企業概要
当社グループの経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は、次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
〔経営方針〕
(1)会社の経営の基本方針
当社は、2015年10月1日に株式会社肥後銀行(以下、「肥後銀行」という。)と株式会社鹿児島銀行(以下、「鹿児島銀行」という。)との経営統合に伴い、共同株式移転により設立いたしました。両行の地元を中心とした九州での存在感を更に発揮できる盤石な経営基盤を確立することで、広域化した新たな地域密着型ビジネスモデルを創造し、地元との信頼関係を更に強化するとともに経営の効率化を促進し、企業価値を高め、地域価値共創グループとして活力あふれる地域社会の実現に積極的に貢献してまいります。
(2)中長期的な会社の経営戦略
当社グループでは、2030年度を見据えたビジョンとして「お客様、地域、社員とともに、より良い未来を創造する『地域価値共創グループ』への進化」を掲げ、そのために3年間ですべきことを、第3次グループ中期経営計画(計画期間:2021年4月1日~2024年3月31日)として策定し、取り組んでまいりました。
(第3次グループ中期経営計画の概要)
1.ビジョン:お客様・地域・社員とともに、より良い未来を創造する『地域価値共創グループ』への進化
2.名 称:第3次グループ中期経営計画「改革」
3.計画期間:3年(2021年4月~2024年3月)
4.基本方針:地域価値共創グループの実現に向けた改革
5.基本戦略・戦略の柱
基本戦略 | 戦略の柱 | |
事業戦略 | 地域総合金融機能の深化 | ・新常態における金融コンサルティング力の強化 |
地域産業振興機能の拡充 | ・地域との協働による課題解決実践 | |
人材戦略 | 人づくりとエンゲージメント向上 | ・価値共創を実現する人づくり |
ガバナンス戦略 | KFGビジネスモデルの確立 | ・組織構造・収益構造改革 |
デジタル戦略 | デジタル社会に向けたDX推進 | ・新たな体験・サービスの提供 |
6.グループKPI
KPI項目 | 中計最終年度目標 | 中計最終年度実績 |
①当期純利益 | 260億円 | 263億円 |
②コア業務純益 | 380億円 | 348億円 |
③お客様向けサービス業務利益※1 | 170億円 | 228億円 |
④役務利益比率※2 | 14%以上 | 14.7% |
⑤OHR | 65%以下 | 73.7% |
⑥株主資本ROE | 4%以上 | 4.0% |
⑦自己資本比率 | 10%以上 | 11.17% |
※1 お客様向けサービス業務利益:貸出金平残×預貸金利鞘+役務収益等利益-経費
※2 役務利益比率:役務等利益÷コア業務粗利益(業務粗利益-国債等債券損益)
第3次グループ中期経営計画の最終年度となる2023年度において、当社グループが実施した主な施策は次のとおりです。
地域総合金融機能の深化
<新常態における金融コンサルティング力の強化>
2024年1月よりNISA(少額投資非課税制度)が抜本的に拡充・恒久化され、貯蓄から資産形成への流れが加速する中で、当社グループはNISAを活用したお客様の資産形成支援に積極的に取り組んでおります。NISA専用ダイヤルの開設や各種お客様向けセミナーの開催、当社グループ会社と連携したキャンペーンの展開など、グループ一体となり取り組んだ結果、当社グループのNISA口座数は約13万2千口座(2024年3月末)と、2023年度の1年間で約4万8千口座増加いたしました。
また、高齢化社会の進展を背景に高まる相続・資産承継ニーズに対応するため、銀行本体での信託業務を2019年4月より開始しており、信託契約件数は年々増加しております。信託銀行との連携などによる信託業務の専門人材育成にも注力しております。
<金融機能の高度化による地域産業成長支援>
お取引先の創業期から成長期、安定・成熟期、又は新事業展開などの事業ステージや課題に応じた様々な金融支援を行っております。
肥後銀行では、大学発ベンチャー・スタートアップ企業の創出拡大を目的として、肥銀キャピタルと共同で「肥銀大学発ベンチャーシード投資事業有限責任組合」(愛称:肥銀シードファンド)を設立いたしました。また、熊本大学キャンパス内に「肥銀アントレプレナーサポートオフィス」を開設し、熱い想いを持ち起業を目指す研究者や創業間もない皆様を支援してまいります。さらに、持続可能な地域社会の実現と発展に貢献するため、日本M&Aセンターホールディングスと玉山ベンチャーキャピタルとの3社共同出資により、M&Aアドバイザリー業務を行う「九州M&Aアドバイザーズ株式会社」を2024年4月に設立いたしました。
鹿児島銀行では、後継者不在企業に対し、地域に根ざした金融機関と税理士法人が一丸となって円滑な事業承継を実現させることを目的とし、鹿児島県内4先の税理士法人と「事業承継支援に関する連携協定」を締結いたしました。また、お客様の重要な経営課題である事業承継ニーズに対する新たなソリューションメニューの提供を目的として、投資事業有限責任組合(ファンド)の組成・運営を通じたマジョリティ投資などを行う投資専門子会社「株式会社かぎん共創投資」を2023年11月に設立いたしました。
地域産業振興機能の拡充
<地域との協働による課題解決実践>
半導体受託生産世界最大手である台湾積体電路製造(TSMC)の日本で初めての生産拠点である熊本工場が2024年2月に完成し、第2工場も熊本県内に建設されることが発表されております。
肥後銀行では、2023年6月に台北駐在員事務所を開設し、TSMC進出を機に日台相互のグローバルニーズに対して、現地でのリアルタイムな情報やネットワークの提供によりお客様の輸出入や進出ニーズなどの課題解決を直接支援しております。また、台湾への理解を深め、幅広い分野における産業連携及び人的交流の推進、並びに台湾とのビジネス機会創出を目的に、2023年7月に鹿児島銀行や玉山銀行(台湾)などとの共催で「日台経済交流シンポジウム in 熊本」を開催いたしました。
さらに、九州・沖縄での半導体関連産業を起点とする経済成長に、より具体的かつ能動的に貢献するため、2024年1月に鹿児島銀行や福岡銀行などの九州・沖縄の地方銀行11行で「新生シリコンアイランド九州」の実現に向けた九州・沖縄地銀連携協定を締結いたしました。
<地域商社機能の強化・創造>
当社は、従来の金融の枠組みを超えて地域産業振興にかかる課題解決に主体的に取り組むため、2023年4月に地域商社事業を営む子会社「株式会社九州みらいCreation」を設立し、同年6月にECモール「よかもーる」をオープンいたしました。「よかもーる」は南九州の魅力的な逸品を幅広く取り扱い、2024年3月末で商材数は約300品、会員数は約7千名と拡大しております。また、海外ビジネス支援事業では、ポテンシャルの高い熊本県、鹿児島県、宮崎県の農林水産物を中心とした輸出拡大支援に取り組んでおり、これまで香港やマレーシアへの販路先紹介や貿易実務支援を通じた新たな需要を創出しております。
人づくりとエンゲージメント向上
<価値共創を実現する人づくり>
地域価値共創グループへの進化に向け、金融に特化した基本的な育成はもとより、幅広い分野の専門性を高める研修や、グループ横断的な人材の配置、外部企業への派遣等を実施しております。
特徴的な取り組みとしては、地域価値共創を担う人材育成のため、地域の課題解決につながる新規事業立案に向けた研修プログラムを「学校法人先端教育機構 事業構想大学院大学」と連携して実施しております。さらに、デジタル分野において、データサイエンティストの育成を目的とした「データコンペティション研修」を実施いたしました。また、グループで共通化した自宅学習支援システム(eラーニング)で、リベラルアーツ等の様々なコンテンツを充実させ、従業員の自律的成長を支援しております。
<多様性の尊重と働きがいの向上>
物価上昇等の社会状況への対応、従業員のエンゲージメント向上、優秀な人材の確保等を目的として、ベースアップを含む5%以上の賃金の引き上げを2年連続で実施しております。なお、採用競争力強化による多様な人材の確保等を目的に、2025年4月まで3年連続で初任給の引き上げを実施いたします。
また、従業員がいきいきとやりがいをもって働き、お客様の信頼と期待に応え、地域とともに成長し、活力あふれる地域社会の実現に貢献できるよう、肥後銀行、鹿児島銀行の頭取を健康経営責任者として、従業員一人ひとりのこころと体の健康増進に取り組み、健康経営を実践しております。2023年度は、肥後銀行、鹿児島銀行ともに経済産業省による健康経営優良法人認定制度に基づく健康経営優良法人に認定され、肥後銀行は「ホワイト500」として認定されております。
KFGグループの従業員約5,500名を対象に実施しているエンゲージメント調査結果は業界平均対比で良好なスコアとなっており、スコア良好店に関する情報の発信、スコア低位店への臨店支援、マネジメント層全員を対象とした研修等を継続的に実施しております。さらに、入社5年以内の若年層に対しては「個」に寄り添うことを目的に別途エンゲージメント調査を実施し、結果を踏まえた個別フォローを実施しております。
KFGビジネスモデルの確立
<SDGs・ESGの先駆的取り組み>
当社グループは、気候変動や自然資本を含む環境問題への対応を重要課題として認識しております。地域社会の脱炭素化を積極的に推進するため、2023年3月に「KFGカーボンニュートラル宣言」を公表いたしました。当社グループ(KFG及びKFG100%出資子会社)のCO2排出量のうち、スコープ1(ガソリン・都市ガス使用等による排出量)・スコープ2(電力使用による排出量)について、2030年までにカーボンニュートラル(ネットゼロ)の達成を目指してまいります。
また、地域・お客様のカーボンニュートラル実現のため、肥後銀行において、CO2排出量算定システム「Zero-Carbon-System(通称:炭削くん)」を開発し、2024年1月よりサービスの提供を開始いたしました。さらに、肥後銀行では、地域の脱炭素化を進めるため、2024年1月に再生可能エネルギー事業子会社「株式会社KSエナジー」を設立いたしました。ヒト・モノ・カネ・グリーンエネルギーの域内好循環を生み出し、地域のカーボンニュートラル・脱炭素化の実現に積極的に貢献してまいります。
また、当社グループは、自然関連の財務情報を開示する枠組みの開発・提供を目指すイニシアチブ「TNFD(自然関連財務情報開示タスクフォース)フォーラム」に参画し、2024年1月にTNFD提言の早期採用企業に登録いたしました。今後、事業を通じた自然資本・生物多様性への依存と影響、リスクと機会を認識し、透明性のある開示を行ってまいります。
デジタル社会に向けたDX推進
<新たな体験・サービスの提供>
地域におけるキャッシュレスへの取り組みとして、熊本では「くまモンのICカード」、鹿児島ではキャッシュレス決済アプリ「Payどん」の機能拡大などを継続的に行っております。
鹿児島銀行では、鹿児島県内の各自治体や商店街などと連携して「Payどん」によるデジタル地域振興券の発行に積極的に取り組んでおります。また、2023年度には鹿児島銀行の「Payどん」を活用したキャッシュレス事業に鹿児島の地域金融機関である南日本銀行、鹿児島相互信用金庫、鹿児島信用金庫の3行庫が参画いたしました。4行庫が協力していくことにより、キャッシュレスの一段の普及とともに地域内における資金循環を促進し、地域のさらなる経済活性化に取り組んでまいります。
肥後銀行では、非対面チャネルの機能拡充への取り組みとして、2024年3月に新「肥後銀行アプリ」のサービスを開始いたしました。従来の通帳アプリの機能である入出金明細の確認等に加え、インターネットバンキングとのスムーズな連携など、サービスを拡充しております。
<プロセス改革による生産性向上>
銀行業務における生産性向上への取り組みとして、肥後銀行及び鹿児島銀行では、店頭タブレットを導入しております。お客様が店頭タブレットへ入力いただいた情報を銀行内のシステムに自動連携することにより、行員によるシステム入力作業の省力化とペーパーレス化を実現しております。2023年度も機能追加及び機能改善を実施し、さらなる生産性の向上とお客様の利便性向上を実現いたしました。
加えて、業務効率化および生産性向上を目的に生成AIの活用にも取り組み、業務における生成AI活用が有効な事例を調査し、その正確性や効率性、実効性を検証しております。
〔経営環境及び対処すべき課題〕
当社グループの地元である中・南九州においては、恒常的に生産年齢人口が首都圏・都市圏へ流出しており、少子高齢化の加速、市場規模の縮小など、構造的な問題を抱えております。
一方で、半導体受託生産世界最大手のTSMCの熊本進出による九州各地の経済に与えるインパクトは大きく、地域経済に対してプラスに寄与することが見込まれます。
金融業界においては、今後見込まれる金利上昇局面への対応、事業の多角化が進む他の金融機関等との競合などに加え、DXやSDGsといった多様化するお客様の課題やニーズへの対応も求められております。
〔第3次グループ中期経営計画における結果と課題〕
2021年度からスタートした第3次グループ中期経営計画「改革」では、2030年度を見据えたビジョンとして掲げる「お客様、地域、社員とともに、より良い未来を創造する『地域価値共創グループ』への進化」を目指し、ビジネスモデルを変えることに取り組んでまいりました。その結果、当期純利益は堅調に推移し、その他の指標項目についても概ね計画どおりの成果を上げることができました。当社グループは今後、ビジョンの実現に向けた取り組みを加速させ、地域価値共創グループの基盤を構築する必要があると認識しております。
〔第4次グループ中期経営計画〕
当社グループは、2015年10月の設立以来、「協働」ステージ、「融合」ステージと歩み、2021年4月には、総合金融グループから地域価値共創グループに進化する10年間の計画を掲げ、これを共創ステージと定めました。共創ステージの第1章は「改革」でしたが、それに続く第2章として、第4次グループ中期経営計画「躍進」(計画期間:2024年4月1日~2027年3月31日)を策定いたしました。
<概要>
1.ビジョン:お客様・地域・社員とともに、より良い未来を創造する『地域価値共創グループ』への進化
2.名 称:第4次グループ中期経営計画「躍進」
3.計画期間:3年(2024年4月1日~2027年3月31日)
4.基本方針:地域価値共創グループの実現に向けた躍進
5.基本戦略・戦略の柱
基本戦略 | 戦略の柱 |
未来を創る地域価値提供の取り組み加速 | 新たな事業への挑戦・事業領域の拡充 |
地域・お客さま起点のソリューション提供 | |
地域経済の成長に向けたコア事業の強化 | 地域産業の成長支援強化 |
ライフプランコンサルティングの深化 | |
持続的成長に向けた強固な経営基盤の確立 | 人的資本経営の実践による社員価値向上 |
GX・DXにかかる先進的な取り組み | |
KFGビジネスモデルの変革 |
6.主な経営指標・KPI
<地域・お客様・従業員> |
| <財務指標> | ||
| 2026年度計画 |
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| 2026年度計画 |
南九州3県GDP | 16.6兆円 |
| 当期純利益 | 360億円 |
地域価値共創事業収益額 | 70億円 |
| コア業務純益 | 530億円 |
預り資産残高(九州FG証券) | 5,300億円 |
| 顧客向けサービス業務利益 | 325億円 |
投信評価損益率(九州FG証券) | 5.0% |
| OHR | 61.0% |
CO2削減量(2019年度比) | △20.0% |
| 連単倍率(当期純利益) | 1.03倍 |
ESG投融資 | 8,500億円 |
| 株主資本ROE | 5.0% |
エンゲージメント総合スコア | 75P |
| 自己資本比率 | 10.50% |
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| RORA | 0.52% |
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| PBR | 0.88倍以上 |
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