企業兼大株主中部電力東証プライム:9502】「電気・ガス業 twitterでつぶやくへ投稿

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企業概要

 文中における将来に関する事項は,有価証券報告書提出日(2024年6月27日)現在において判断したものである。

(1) 会社の経営の基本方針

「くらしに欠かせないエネルギーをお届けし,社会の発展に貢献する」という当社グループの企業理念を実践していくために,「中部電力グループ 経営ビジョン2.0」を掲げております。

2021年頃には燃料価格が過去に例を見ない水準まで高騰し,一時的にLNGなどの供給不足が危ぶまれる事態となりました。足元では低位に推移しておりますが,引き続き,地政学リスクなどにより,ボラティリティ(変動性)・不確実性が高い状態が継続しております。長期的には,生成AIなどを活用したDX(デジタルトランスフォーメーション)の進展などにより,電力需要の増加が見込まれております。脱炭素化に向けては,「脱炭素成長型経済構造移行推進戦略」(GX(グリーントランスフォーメーション)推進戦略)が閣議決定されるなど,2050年カーボンニュートラル実現への取り組みが進められております。これらの環境変化を受け,社会構造そのものが大きく変容していくことが見込まれます。

 このような状況下においても,経営ビジョンに掲げた,「一歩先を行く総合エネルギー企業グループ」を目指す当社グループの行動姿勢は,変わるものではありませんが,事業環境の激変を新たなビジネスチャンスと捉え,2050年の社会像を見据えて果敢にチャレンジしてまいります。経営ビジョン2.0の実現に向けては,グループ一体となって,電力の安定供給の確保と脱炭素化された安心で安全な分散・循環型社会の実現,事業構造の変革を通じた新たな収益源の獲得・拡大に取り組むことで,「2030年には連結経常利益2,500億円以上」及び「国内エネルギー事業と新しい成長分野や海外事業などの事業ポートフォリオの比率1:1」を目指すこととしております。

 当社グループは,この経営ビジョンのもと,お客さまや地域・社会などのステークホルダーが求める価値を起点に新たなサービスを創出し,エネルギーとともにお届けするビジネスモデルへの変革に,当社グループの人財一人ひとりが取り組み,2050年に向けて持続的に成長してまいります。

 また,脱炭素社会への貢献,社会課題の解決,大規模災害時における事業継続,コンプライアンス経営の徹底など,ESG(環境・社会・ガバナンス)の観点を踏まえた事業経営を深化させることで,SDGs(持続可能な開発目標)の達成に貢献し,持続的な成長と企業価値の向上に努めてまいります。

 今後とも,お客さまや株主・投資家のみなさまに信頼,選択されるよう努め,地域社会の発展にも貢献してまいる所存です。

(2) 目標とする経営指標

2024年4月,中期経営目標を「2025年度の連結経常利益2,000億円以上,ROIC3.2%以上」に引き上げました。当社グループは,この目標の達成に向け,グループ一丸となって様々な取り組みを進めてまいります。

(3) 中長期的な会社の経営戦略・会社の対処すべき課題

 当社は,2020年4月から,送配電部門を中部電力パワーグリッド,販売部門を中部電力ミライズにそれぞれ分社し,これらにJERAを加えた3つの事業会社を核とする体制といたしました。パワーグリッドにおいては,一層の中立性・公平性を図るとともに,ミライズ・JERAにおいては,それぞれの市場,お客さまと向き合い,より強靭な企業グループへの成長を目指してまいります。

 このような事業体制のもと,以下の課題への対応をはじめ,グループを挙げてエネルギーの安定供給に努めるとともに,お客さまの期待を超えるサービスを実現・提供することにより,中部電力グループ全体の持続的成長と企業価値の向上を果たしてまいります。

(安全・安価で安定的なエネルギーのお届け)

 事業環境が大きく変動する中においても,中部電力グループは,「S(安全性)+3E(安定・安価・環境への適合)」の実現を目指してまいります。

 このため,国際情勢,社会・お客さまのニーズの変化や,国の政策・制度の見直しなどを捉えながら,環境負荷・経済性などの電源ごとの特徴などを考慮した最適な電源ポートフォリオや調達ポートフォリオの構築を目指してまいります。また,デマンドレスポンスのさらなる活用を進めるとともに,電力先物取引や燃料先物取引などのヘッジ手法を適切に組み合わせることで,安全・安価で安定的なエネルギーの確保に努めてまいります。 

 電力品質の維持に向けては,分散型電源の遠隔制御による需給調整などの技術も組み合わせながら,系統の次世代化を進めてまいります。また,太陽光発電をはじめとした自然変動電源の予測精度向上,他の一般送配電事業者と連携した広域的な需給運用の拡大などにより,中部エリアを中心に全国の安定供給の維持に寄与してまいります。

 なお,燃料価格のボラティリティが高い中においても,お客さまに安定して電気をお届けするため,2022年11月に低圧の一部料金メニューの燃料費調整制度の変更,2023年4月に特別高圧・高圧の標準料金メニューの見直しを行いました。不透明な環境が継続する状況ではありますが,足元の資源価格が低位に推移していることや,当社グループ全体で取り組んでいるコストダウンなどの経営努力を踏まえ,2023年6月から2025年3月にかけて電気料金の負担軽減をはじめとした施策を実施しております。

(浜岡原子力発電所の再稼働に向けた取り組み)

 浜岡原子力発電所については,「福島第一原子力発電所のような事故を二度と起こさない」という固い決意のもと,安全性向上対策を進めております。3・4号機については,原子力規制委員会による新規制基準への適合性確認審査の審査会合において基準地震動が概ね妥当と評価されました。基準津波の審査も着実に進捗しており,審査において了承が得られた後は,プラント関係の審査などに対応していくとともに,安全性向上対策の有効性をはじめ浜岡原子力発電所の安全性に係る理解活動を実施してまいります。

 エネルギー資源の乏しいわが国において,化石燃料価格の変動や地球温暖化という課題に対処しつつ,将来にわたり安定的にエネルギーを確保していくためには,原子力を引き続き重要な電源として活用することが不可欠であると考えております。

 今後も,新規制基準への適合性確認を早期にいただけるよう最大限努力するとともに,地域のみなさまのご理解をいただけるようコミュニケーションを図り,安全確保を大前提に浜岡原子力発電所の再稼働に向けて取り組んでまいります。

(脱炭素社会実現に向けた取り組み)

 中部電力グループは,経営ビジョン2.0,ゼロエミチャレンジ2050及びJERAゼロエミッション2050にもとづき,再生可能エネルギーの拡大や,水素・アンモニアサプライチェーンの構築を含むゼロエミッション電源の追求などに取り組むとともに,社会・お客さまと一体となって進めるエネルギー利用の電化・脱炭素化を通じて,脱炭素社会の実現を目指しております。また,国の「GXリーグ基本構想」にもとづいて設立された「GXリーグ」に参画し,CO排出量削減に向けた取り組みを着実に進めてまいります。

 経営ビジョン2.0で掲げた「2030年頃に,保有・施工・保守を通じた再生可能エネルギーの320万kW(80億kWh)以上の拡大に貢献」という目標の達成に向け,短期的には太陽光発電,中期的には水力・バイオマス・陸上風力発電,長期的には洋上風力・地熱発電の開発・保有拡大を全国で積極的に推進してまいります。同時に,小規模分散が主体となる太陽光発電については,グループ会社による設備の保守・施工などに加えて,お客さまのお役立ちにつながる付加価値サービスを提供してまいります。これらの事業の推進にあたっては,安全の確保を大前提に,地域のみなさまに丁寧にご説明を行い,ご理解をいただけるよう努めてまいります。

 また,欧州・アジアなどの地域を中心にグローバルな事業展開を行うことで,各国における脱炭素化にも貢献し,グループ全体でカーボンニュートラルの実現を目指してまいります。

(新しいコミュニティの形の創造に向けた取り組み)

 中部電力グループは,エネルギー事業とさまざまなサービスを掛け合わせた新たなサービスをお届けすることで,新たな価値の創出を目指してまいります。

 不動産事業については,日本エスコン,中電不動産を中心に,地域の特色を生かしたまちづくりを進めてまいります。

 また,資源循環・上下水道・地域交通・森林経営などの地域インフラ事業については,さまざまなパートナーのみなさまと連携して,分散・循環型社会の実現を通じ,地域課題の解決と脱炭素化に貢献してまいります。

 今後も,地域のみなさまやパートナーとの連携を大切にしながら,「新しいコミュニティの形」の創造に挑戦してまいります。

 当社及び中部電力ミライズは,2023年3月30日,中部地区等における特別高圧電力及び高圧電力の供給について,公正取引委員会から独占禁止法にもとづく課徴金納付命令等を受けました。本命令の内容については,当社と同委員会との間で,事実認定及び法解釈に見解の相違があるため,司法の公正な判断を求めることとし,同年9月25日に取消訴訟を提起しております。

 また,2024年3月4日,中部地区における大口需要家向け都市ガスに係る供給について,当社及び中部電力ミライズは,同委員会から独占禁止法に基づく課徴金納付命令等を受けました。

 当社及び中部電力ミライズは,2023年4月7日に公表した「コンプライアンス徹底策」に加え,2024年3月4日に公表した「コンプライアンス徹底策の強化策」に取り組んでいくことで,二度と独占禁止法違反事案を起こさず,またそのような疑いを持たれることがないよう努めてまいります。

 中部電力グループは,従前より,企業の社会的責任を果たすため,CSR宣言にもとづき事業活動を進めており,そのことがESG経営の深化や,SDGsの課題解決に貢献するものと考えております。今後とも,お客さまや社会からの信頼が事業運営の基盤であることを肝に銘じて,コンプライアンスを徹底することで,CSRを完遂してまいります。

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