三菱UFJフィナンシャル・グループ 【東証プライム:8306】「銀行業」 へ投稿
企業概要
文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において、当社グループが判断したものであります。
(1) ガバナンス
① サステナビリティ
サステナビリティに関する課題は、取締役会の監督のもと、経営会議がその傘下に様々な委員会を設置して管理しています。サステナビリティ委員会は、経営会議傘下の委員会で、Chief Sustainability Officerが委員長を務めています。サステナビリティ委員会ではサステナビリティに関するリスクや機会を含めたサステナビリティに関する課題への取り組み方針を定期的に審議するとともに、MUFGグループの取り組みの進捗状況をモニタリングしています。サステナビリティ委員会は、経営会議へ報告を行い、必要に応じて取締役会へも報告を行っています。
業務執行の意思決定機関として経営会議を設置し、取締役会の決定した基本方針に基づき、経営に関する全般的重要事項を協議決定しています。
取締役会は、事業戦略、リスク管理、財務監視に沿って、サステナビリティに関する事項の管理を監督します。監督は、PDCAサイクルに基づいて行われます。取締役会は、気候変動を含むサステナビリティに関連する事項を最優先事項と位置づけ、年次計画に基づき定期的に、又は必要に応じて、議論・審議を行っています。
MUFGのサステナビリティへの幅広い取り組みを客観的に評価する観点から、2021年度より株式報酬の業績連動指標にESG評価機関5社(MSCI、FTSE Russell、Sustainalytics、S&P Dow Jones、CDP)による外部評価の改善度を導入しています。また、2022年度からは、インクルージョン&ダイバーシティのさらなる浸透・推進に向けて、役員賞与の職務遂行状況(定性評価)の中に、インクルージョン&ダイバーシティに関する目標を追加しています。
② 気候変動
MUFGでは、持続可能な社会の実現に貢献するため、優先的に取り組む環境・社会課題の一つに「気候変動対応・環境保全」を掲げています。
MUFGは、PCAF(Partnership for Carbon Accounting Financials)、NZBA(Net Zero Banking Alliance)及びGFANZ(Glasgow Financial Alliance for Net Zero)をはじめとする、気候変動に対処するためのさまざまなイニシアティブに参画しています。また、金融安定理事会(FSB)によって設立された、気候関連財務情報開示タスクフォース(Task Force on Climate-related Financial Disclosures:TCFD)の提言を支持しています。
グループ・グローバルベースでのプロジェクトチームであるカーボンニュートラル推進PTを立ち上げ、各取り組みについては、グループCEOをはじめとする主要なマネジメントが参加するステアリングコミッティで議論するほか、サステナビリティ委員会で審議します。
MUFGでは、気候変動に関するリスクをトップリスクと位置づけており、経営会議傘下の委員会である投融資委員会、与信委員会、リスク管理委員会において、それぞれの専門性を踏まえた検討を行っています。これらの各委員会の審議内容は、経営会議へ報告しています。
また、取締役会傘下委員会であるリスク委員会においても気候変動を含むグループ全体のリスク管理に関する事項及びトップリスクに関する事項について審議・報告を行っています。
ガバナンス体制の詳細については、「第4 提出会社の状況 4 コーポレート・ガバナンスの状況等」を参照してください。
(2) 戦略
① サステナビリティ
MUFGは、持続可能な環境・社会の実現に向けて、「世界が進むチカラになる。」を起点に課題の抽出を行い、世の中からの期待と、MUFGの事業領域との親和性の両面から、MUFGとして優先的に取り組む10課題を特定しています。「優先10課題」に対する「MUFGの認識」を機会・リスクの観点から整理し、さまざまな取り組みを推進しています。
優先10課題 | MUFGの認識 | ||||
気候変動対応・環境保全
| 脱炭素化がもたらす世界的な産業構造の変化は、MUFGとお客さま双方において、事業継続上のリスク、成長機会の両面の意味合いを持つ。脱炭素社会へのスムーズな移行、環境と経済の好循環による持続可能な社会の実現をめざすことが重要 | ||||
環境対応については、気候変動に加えて、生物多様性等にも焦点が拡大する方向 | |||||
少子・高齢化社会への対応
| 少子・高齢化がもたらす社会構造の変化、これによる顧客ニーズの変化・多様化の中では、総合金融サービス力の発揮が重要 | ||||
少子・高齢化による経済の活力低下や潜在成長力の低下は、資金需要の減退や利ざやの縮小を通じて、特に伝統的な商業銀行業務に負の影響を与える可能性 | |||||
インクルージョン&ダイバーシティ
| 多様な人材が相互に刺激しあうことで生まれる新しい発想やアイデア・行動様式が、企業カルチャーの変革や、社会・お客さまの期待を超える新しい価値を生み出すとともに、多様な人々のインクルージョンにも寄与 | ||||
変化の時代にしなやかに対応するには、多様な人材・価値観を活かしたレジリエントな組織・社会であることが必要 | |||||
社会インフラ整備
| 国内外のインフラの老朽化対策や途上国を中心とした社会インフラ整備はサステナブルな社会実現の基盤 | ||||
社会インフラである金融において、安心・安全の脅威への対応は信頼・信用の大前提。情報資産のセキュリティを強化し、複雑化・巧妙化する金融犯罪に対応することが不可欠 | |||||
産業育成・イノベーション支援
| 経済の牽引役である成長産業の勃興や活力あるベンチャー企業の育成を支援することは、経済の停滞を回避し、持続的成長を達成するうえで必要。そこではリスクマネーの供給をはじめとする金融機能の役割が重要 | ||||
金融サービスへの平等なアクセス確保
| より多くのお客さま層に金融サービスへアクセスする機会や投資機会を提供することは、経済の成長力向上への貢献に加え、MUFGの成長基盤拡充にも寄与 | ||||
働き方改革の推進
| 価値観・社会構造変化に順応した働き方、ワークライフバランスに配慮した柔軟な働き方の機会提供は、人口減少社会において、人材を有効活用し会社の成長を支える基盤。コロナにより、その重要性は一段と増大 | ||||
社会インフラである金融の業務効率化は、自社のみならず、社会全体の生産性向上にも寄与 | |||||
貧困問題への対応
| 貧困は、社会の安定(健康・衛生・治安等)、人権(衣食住の確保等)、持続的な経済成長(含む教育問題)等、さまざまな面での重大な脅威 | ||||
教育格差の是正
| 次世代を担う学生は、将来の基盤であり、仲間にもなりうる重要な存在 | ||||
教育は安定した社会の礎、かつ持続的な経済成長の源泉。貧富・教育の格差が世代を超えて繋がる負の連鎖、経済的事情による教育の制約等は大きな社会課題 | |||||
健康への脅威の克服
| ヘルスケアセクターのイノベーションは社会・経済のレジリエンス向上に寄与 | ||||
新型ウイルス等に対する予防力(ワクチン開発等)、パンデミック発生時の対応力(医療技術・体制)を強化し、さらなる高齢化社会の進展に向けた社会機能の維持・向上を図ることは、持続的な経済活動の大前提 |
② 気候変動
「気候変動対応・環境保全」への取り組みは経営の最重要課題の一つであり、リスク管理とビジネス機会の両面から対応しています。
MUFGは、TCFDの提言を踏まえ、金融機関としての気候変動関連のリスクを二つのカテゴリーに分類し、取り組みを進めています。一つは、異常な暴風雨や洪水などの悪天候事象の深刻化や頻度の増加、気温や海面水位の上昇、降水量や降水分布の変化などの気候パターンの長期的な変化などによる物理的損害から生じるリスクであり、「物理的リスク」と分類されます。もう一つは、脱炭素社会への移行に関連して生じるリスクであり、規制、市場の選好、技術の変化などから生じるリスクであり、「移行リスク」と分類されます。
MUFGは、地球温暖化問題に取り組むグローバル金融機関としての責任を認識し、お客さまに提供する商品・サービスや、事業活動に伴う環境負荷を低減するための施策を通じて、脱炭素社会への移行に向けた取り組みを支援していきます。
③ 人的資本
MUFGでは、社員の挑戦を後押ししつつ、重点領域の育成・採用、女性マネジメント比率向上などの人的資本拡充への取り組みを強化しています。
(ア)人材育成方針
MUFGでは、MUFG Wayに相応しい人事マネジメントを実現するための基本的な考え方として「MUFG人事プリンシプル」を策定しています。
人材育成に関しては、「従業員一人ひとりが知識や専門性のみならず、見識や価値観を高められる教育機会を提供し、MUFG Wayを実現できる人材を育成すること」を基本理念としています。
事業環境が大きく変化する中で、変化をチャンスに変えていくために、中期経営計画においては「『挑戦と変革の3年間』を支える人材戦略」を主要方針に掲げており、自律的に判断・行動する社員を育成し、社員の自己革新を促進することを目指しています。
(イ)社内環境整備方針
MUFGのパーパスである「世界が進むチカラになる。」の実現に向けて、「インクルージョン&ダイバーシティ」「働き方改革の推進」をサステナビリティ経営の優先10課題として取り組みを進めています。多様な価値観やバックグラウンド、就業意識を持つ社員が互いに尊重・切磋琢磨し、一人ひとりが成長・活躍できる組織・カルチャーの醸成を通じてダイバーシティ・エクイティ・インクルージョンを推進するとともに、リモートワークやペーパーレス化等のインフラ整備や勤務ルールの柔軟化を通じて働き方改革を推進しています。
人材を惹きつけ、社員が持てる力を最大限発揮するための人事制度を構築するとともに、他社比競争力のある処遇を提供しています。社員の人権を尊重するとともに、事業を展開する各国・地域の法令遵守、労働環境、労働時間の定期的なモニタリング及び改善、財産形成貯蓄制度、企業年金、持株会等を通じた社員の安定的な資産形成、Financial Wellnessの向上を通じて、社員の心身の健康促進・私生活の充実に取り組んでいます。
(3) リスク管理
① サステナビリティ
「MUFG環境方針」、「MUFG人権方針」のもと、ファイナンス(※)において、環境・社会に係るリスクを管理する枠組みとして、「MUFG環境・社会ポリシーフレームワーク」を制定しています。環境・社会への影響が懸念される特定のセクターについては、ファイナンスにおけるポリシーを定めるとともに、ファイナンスの対象となる事業の環境・社会に対するリスク又は影響を特定し、評価するためのデューデリジェンスのプロセスを導入しています。
※MUFGの主要子会社である銀行、信託及び三菱UFJ証券ホールディングスの法人のお客さま向けの与信及び債券・株式引受を指します。
MUFGがファイナンスの対象とする事業の環境・社会に対するリスクの特定・評価は、お客さまと直接接点を持つ部署が「標準デューデリジェンス」を行います。これにより、対象事業が特に留意が必要と判断された場合、「強化デューデリジェンス」を実施し、ファイナンスの実行の可否を決定します。
対象事業の環境・社会に対するリスクが重大であり、MUFGの企業価値の毀損に繋がりうる、評判リスクに発展する可能性がある事業については経営階層が参加する枠組みにおいて対応の協議を行っています。また、銀行では大規模なプロジェクトによる環境・社会に対するリスクと影響を特定、評価、管理するための枠組みである赤道原則を採択し、ガイドラインに沿ったリスクアセスメントを行っています。
環境・社会にかかる機会及びリスクへの対応方針・取り組み状況は、テーマに応じてリスク管理委員会や投融資委員会、与信委員会においても審議・報告を行っています。各委員会の審議内容は経営会議への報告後、取締役会において報告・審議され、取締役会が環境・社会課題に関するリスクを監督する態勢としています。
<ファイナンス対象事業の環境・社会に対するリスクまたは影響を特定・評価するプロセス>
② 気候変動
気候変動に関するリスクへの対応の強化に向けて、グループ全体の視点で、気候変動に関するリスクとその潜在的なポートフォリオ、事業、財務への影響をより的確に把握、測定、低減することを目的として、リスク管理枠組みに統合しています。MUFGのリスク管理フレームワークは、物理的リスクと移行リスクに対処することを意図しています。
前述の「MUFG環境・社会ポリシーフレームワーク」では、石炭火力発電や鉱業(石炭)、石油・ガス等、気候変動への影響が懸念される特定のセクターについては、ファイナンスにおけるポリシーを定めるとともに、ファイナンスの対象となる事業の環境・社会に対するリスク又は影響を特定し、評価するためのデューデリジェンスのプロセスを導入しています。
気候変動に関するリスクについては、「第2 事業の状況 3 事業等のリスク」を、リスク管理フレームについては、「第4 提出会社の状況 4 コーポレート・ガバナンスの状況等」を参照してください。
(4) 指標と目標
① サステナビリティ
MUFGは、環境・社会課題の解決に向けた具体的な指標・目標を設定し、モニタリングしています。2019年度から2030年度までに累計実行額35兆円(うち環境18兆円)のサステナブルファイナンス目標を設定しています。2022年度までの累計実行額は24.6兆円(概算値)と順調に推移しています。
② 気候変動
MUFGでは、2021年5月に「MUFGカーボンニュートラル宣言」を公表し、2050年末までに投融資ポートフォリオの温室効果ガス排出量をネットゼロに、2030年末までに当社自らの温室効果ガス排出量をネットゼロにするという目標を発表しました。これらの目標は、パリ協定の合意事項を支持するとともに、MUFGグループにとって気候変動に関連するリスクと機会を最優先課題として認識していることを示しています。
投融資ポートフォリオの温室効果ガス排出量ネットゼロの実現のために、各セクターやMUFGのポートフォリオの特性も踏まえて、以下のように中間目標の設定を行っています。
<各セクターの中間目標、実績>
| 単位等 | 基準(基準年) | 2021年度実績 | 2030年中間目標 | |
電力(排出原単位) | gCO2e/kWh | 328(2019) | 299 | 156-192 | |
石油・ガス(排出量削減率) | MtCO2e | 84(2019) | 76 | ▲15-▲28% | |
不動産 (排出原単位) | 商業用 | kgCO2e/m2 | 65(2020) |
| 44-47 |
居住用 | kgCO2e/m2 | 27(2020) |
| 23 | |
鉄鋼(排出量削減率) | MtCO2e | 22(2019) |
| ▲22% | |
船舶 | PCAスコア※ | PCA+0.6%(2021) |
| PCA≦0% |
※船舶に関する投融資ポートフォリオ全体での要求水準との差分を示す整合度指標。ファイナンス提供をしている個々の船舶の気候変動整合度(VCA)を融資ポートフォリオ上の割合で加重平均して算出
③ 人的資本
MUFGでは、人的資本を最重要資本の一つとして位置付けており、人的資本の拡充を通じて、社員がさらなる成長や挑戦、自己革新できる環境を整えています。2023年度は、銀行・信託・証券ホールディングスの国内の合算で、社員への教育研修費として42億円の投資をする予定です。また、外部への教育研修費以外にも、役職員が講師となる各社及びMUFG共通の研修を通じて、役職員に対し多様な教育の機会を提供していきます。
多様な社員一人ひとりが持てる力を最大限に発揮できる職場づくりに取り組んでいます。特に、女性のマネジメント比率向上は喫緊の課題であるとの認識のもと、MUFGでは、中長期的な数値目標を設定し、トップのコミットメントのもと女性の育成・登用を推進しています。銀行・信託・証券ホールディングスの3社では、2024年3月末までに日本国内の女性のマジメント比率を22%にする合同数値目標を設定しており、2022年度末時点(※)における実績は19.6%となっています。
※2022年度中に発令等確定した人事異動は反映しています。
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