三菱重工業 【東証プライム:7011】「機械」 へ投稿
企業概要
以下の記載事項のうち将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものである。
(1)経営方針・経営戦略等
ア.当連結会計年度の経営環境
当社グループを取り巻く経営環境は、世界経済において米国の景気拡大とインド・東南アジア諸国の成長が続いたが、欧米での金融引締めや中国の不動産市場の停滞等を背景として、一部の地域では緩やかに減速した。一方、日本経済は、雇用・所得環境の改善等により徐々に回復したが、物価上昇や中東情勢、金融資本市場の変動など、今後の先行きには不透明感が残る状況となった。
かかる経営環境下においても、当社グループは長い歴史の中で培われた技術に最先端の知見を取り入れ、変化する社会課題の解決に挑み、サステナブルで安全・安心・快適な社会と人々の豊かな暮らしの実現に貢献していく。
イ.中期経営計画「2021事業計画」
当事業年度は2020年10月から開始した中期経営計画「2021事業計画」の最終年度であったが、「収益力の回復・強化」及び「成長領域の開拓」を柱として、収益性、成長性、財務健全性及び株主還元の4つの指標を定め、各種施策を着実に推進した。
「収益力の回復・強化」としては、サービス事業へのシフト、拠点統合による資産の最適化など構造改革を推進する一方で、価格の適正化や生産能力の増強等による既存事業の伸長を進め、過去最高水準の利益を達成し、強固な事業基盤と財務基盤を構築した。
また、「成長領域の開拓」としては、エネルギー供給側で脱炭素化を目指す「エナジートランジション」とエネルギー需要側で省エネ・省人化・脱炭素化を実現する「社会インフラのスマート化」を強力に推し進め、水素・アンモニア、CCUS*1、電化・データセンターでの事業化の可能性を見出した。
*1 Carbon dioxide Capture, Utilization and Storage(二酸化炭素回収・利用・貯留)
ウ.「MISSION NET ZERO」に向けた取組み
サステナブルで安全・安心な社会の実現に向け、MISSION NET ZEROに取り組んでおり、Scope1、2*2のCO2排出量を2030年に2014年比で50%削減するという目標に対して、2023年で42%削減を見込んでいる。これに加え、三原製作所で実践的なノウハウ獲得を目指し、工場のカーボンニュートラル化を進める取組みを進めており、太陽光発電設備の導入や工場設備の省エネ・合理化で、97.7%(2021年比、目処付け分を含む)のCO2排出量の削減を実現した。また、Scope3*2については当社製品の使用に伴うCO2排出量削減(2019年比で、2030年に50%)が目標であり、この達成に向けて高砂製作所の高砂水素パーク建設をはじめとした様々なソリューションの開発・実証を進めている。
*2 Scope1は当社のCO2直接排出を、Scope2は主に電気の使用に伴うCO2間接排出を、Scope3はScope1、Scope2以外の当社グループバリューチェーン全体でのCO2間接排出を示す。算定基準は温室効果ガス(GHG)排出量の算定と報告の国際基準であるGHGプロトコルに準じる。
(2)優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題
当社グループを取り巻く外部環境は大きな変化を続け、これに伴って社会課題も複雑化している。こうした中、当社グループは、脱炭素、エネルギーの安定供給、国家安全保障等への貢献に関して期待される役割を果たしていくため、2024年5月から次期中期経営計画である「2024事業計画」を実行する。
「2024事業計画」では、事業成長と収益力の更なる強化の両立に挑戦するため、「2021事業計画」で築いた事業基盤と財務基盤を活かし、「ポートフォリオ経営の強化」を進める。また、これを支える「技術・人的基盤の強化」を図るほか、「MISSION NET ZEROの推進」を継続する。「ポートフォリオ経営の強化」に関しては、「伸長事業の着実な遂行」と「成長領域の事業化推進」を重点領域とし、「事業競争力の強化」と合わせて、1.2兆円を投資する。加えて、2026年度において「売上収益5.7兆円以上」、「事業利益4,500億円(事業利益率8%)以上」、「ROE12%以上」等の定量目標を設定するとともに、中長期的な累進配当を実現する還元方針により株主還元の拡大を進めていく。
ア.伸長事業の着実な遂行
「2024事業計画」では、今後伸長が見込まれるガスタービン、原子力発電、防衛関連の事業で人的リソースの拡充と生産設備等の増強によって事業遂行能力を強化する。これにより受注済の契約を確実に遂行し、売上を約1兆円伸ばす。ガスタービンは、世界的なCO2排出規制に伴う燃料転換、データセンター向け等のオンサイト電源、さらには再生可能エネルギーの拡大に伴う調整用電源としての需要が期待されている。市場ごとの特性に応じた販売戦略を展開するとともに、水素・アンモニア焚きガスタービンや水素製造装置等の技術開発にも引き続き取り組む。また、原子力分野は、革新軽水炉「SRZ-1200」の設計推進と高速炉・高温ガス炉の実証炉開発を進めるとともに、既設プラントの最大限の活用に向けた支援を継続していく。防衛関連では、スタンドオフ防衛や統合防空ミサイル防衛への対応、次期戦闘機開発の国際共同開発等を着実に進めるほか、次世代要素技術開発にも取り組んでいく。
イ.成長領域の事業化推進
当社グループが「2021事業計画」で実績を積み上げてきたエナジートランジションやデータセンター等の成長領域では、事業化に向けてパートナリングを推進する。まず、水素・アンモニアの関係では、これまでも製品開発に取り組んできた水素・アンモニア焚きガスタービン、水素製造装置等の実証・商用化を進めるとともに、現在参画中の北米・東南アジア等のプロジェクトの具体化に向けてパートナーと協力して取り組んでいく。次に、CCUSの分野では、北米・欧州等におけるプロジェクトの受注獲得を目指すほか、次世代CO2回収技術の開発や、遠隔監視等のサービス基盤の整備と並行して、ライセンシーのネットワークを拡げて市場でのプレゼンスを更に高める。さらに、電化・データセンター分野では、熱と電気に関するエンジニアリング技術を活かし、電源システム、高効率冷却設備、高知能化EMS*3による脱炭素・省エネ化をワンストップで提供するとともに、サービス体制の更なる強化を図り、パートナリングも組み合わせて事業化を推進する。
*3 Energy Management System(エネルギーマネジメントシステム)
ウ.事業競争力の強化
上記の各種施策に加え、収益力の更なる強化を進めていく。当社の強みが活かせる市場では、ヒートポンプ、環境対応船、船舶用の代替燃料供給システム、水素ガスエンジンなどの脱炭素に寄与する製品を投入するとともに、物流分野では省人化・自動化ソリューションを引き続き提供していく。また、蓄積データの活用、AIによる故障予測・予防保全等により、顧客の抱えるニーズに応えることでサービス事業を拡大する。さらに、航空機用エンジンや民間航空機においては、MRO*4事業等の拡大を進める。加えて、当社全体の生産拠点・サプライチェーン等を最適化して業務効率化や生産性向上を図るとともに、リソースシフトなどの事業構造改革を行うことで事業運営を最適化する。
*4 Maintenance, Repair and Overhaul(整備・補修・オーバーホール)
エ.技術・人的基盤の強化
社会課題の解決には、最先端の技術とともに、当社グループが長年培った技術基盤の維持・拡充が不可欠である。このため、知財戦略を強化するとともに、技術・製品・知見を含む技術基盤を全社横断で活用し、開発の効率化を進めながら、新たな価値を創出していく。また、グローバルでの人材の確保・育成を強化しつつ、重点領域へのリソースシフトを進め、各事業の戦略に応じた人的基盤を強化していく。
オ.MISSION NET ZEROの推進
当社グループは、サステナブルで安全・安心・快適な社会の実現に向け、「MISSION NET ZERO」に取り組んでいる。三原製作所での工場のカーボンニュートラル化で得たノウハウを全社に展開し、自社工場の省エネ化・合理化・電化や、太陽光発電の追加導入など、当社のCO2排出量の更なる削減にも取り組んでいく。
当社グループは、「MISSION NET ZERO」の活動を通じ、環境価値と経済価値を両立させながらカーボンニュートラルの達成に取り組み、事業を通じた社会課題解決によってサステナブルな社会の実現に貢献していく。このように事業を発展し成長させていく上では、従来同様コンプライアンスが大前提であるとの認識の下で各種施策を進めていく。
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