三菱重工業 【東証プライム:7011】「機械」 へ投稿
企業概要
当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取組みの状況は、次のとおりである。
また、人的資本及び気候変動に関する戦略並びに指標及び目標はそれぞれ、「(2)気候変動」及び「(3)人的資本に関する戦略並びに指標及び目標」に記載のとおりである。
なお、記載事項のうち将来に関する事項は、当社グループが当連結会計年度末現在において合理的であると判断する一定の前提に基づいており、実際に生じる結果とは様々な要因により異なる可能性がある。
(1)サステナビリティ全般
①ガバナンス
当社グループは、環境問題をはじめとする地球規模の課題解決に向けて、当社の製品・技術による貢献のみならず、事業プロセス全体における各種活動を通じて様々な社会的課題の解決に取り組み、事業と連動したサステナビリティへの取組みを推進している。
当社グループは、「社業を通じて社会の進歩に貢献する」と謳われている当社社是を社員が常に念頭に行動する上で、具体的にイメージしやすい形にした「CSR行動指針」を当社グループ社員の共通の心構えとして制定しているほか、多様な経歴、国籍、文化を持つ当社グループの社員の行動における共通の規範である「三菱重工グループグローバル行動基準」を制定している。また、環境については「環境基本方針」及び「行動指針」を制定し、この方針・指針の下、環境負荷低減の取組みを進めている。加えて、人権については、世界人権宣言等の国際規範を支持・尊重し、国連人権理事会が採択した「ビジネスと人権に関する指導原則」に基づいた「三菱重工グループ人権方針」を、取引先との取引については、「資材調達の基本方針」を制定している。
また、当社グループは、社会のサステナビリティに配慮した経営を推進するため、マテリアリティ推進会議を設置している。マテリアリティへの取組みは、サステナビリティ経営を事業面で具現化するものであり、同会議においては、マテリアリティの目標実現に向けた事業活動状況を確認し、今後の取組みの方向性を議論し事業部門へ必要な対応を指示している。
さらに、当社グループは、サステナビリティを経営の基軸に据え、「常に社会の視点に軸足を置き、社会の期待に応え、信頼される企業」を目指すため、サステナビリティ委員会を設置している。サステナビリティ委員会においては、深化するサステナビリティを巡る課題への対応に関し、ステークホルダーの視点を踏まえ、当社グループが果たすべき責任を追求し、サステナビリティ経営の推進に向けた検討を行い、ESG(環境・社会・ガバナンス)の取組みに関する基本方針等についての審議及び決定並びにその関連諸活動を推進している。
加えて、社会的な要請が高まっているTCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)や人権デューデリジェンスをはじめとしたESG施策に対する企業としての対応方針を速やかに経営レベルで意思決定するとともに、これらの進捗状況を確認している。
なお、これらのサステナビリティの取組みのうち重要なものについては、定期的に取締役会に報告されている。
②リスク管理
当社グループにおいて、主要なリスクを検討するプロセスは、「3 事業等のリスク (1)主要なリスクを検討するプロセス」に記載のとおりであり、サステナビリティ関連のリスクも同プロセスにおいて検討されている。
また、サステナビリティ委員会において、気候変動を含むサステナビリティ関連のリスク及び機会のうち代表的なものに関する検討結果を確認している。
さらに、人権を尊重した事業活動を行っていくために人権デューデリジェンスを行い、自社のサプライチェーンにおいて発生しうる人権リスクを特定して実態調査を実施している。また、事業部門も交えた人権連絡会を継続的に開催し、最新の取組状況の共有化、今後の取組方針について協議している。
③戦略
当社グループでは、社会課題の解決を通じて企業価値を向上させ中長期的に成長していくために、当社グループが取り組んでいくべき重要課題(マテリアリティ)の特定を行った。社会課題の整理、マテリアリティマップの作成、妥当性の検証のプロセスを経て特定されたマテリアリティは、「脱炭素社会に向けたエネルギー課題の解決」「AI・デジタル化による社会の変革」「安全・安心な社会の構築」「ダイバーシティ推進とエンゲージメントの向上」「コーポレート・ガバナンスの高度化」の5項目である。また、深化するサステナビリティ経営課題の動向を調査した結果、取り組むべきESG施策をサステナビリティ委員会で決定した。
2020年10月から開始した中期経営計画「2021事業計画」においては、「収益力の回復・強化」及び「成長領域の開拓」を重点テーマとし、収益性、成長性、財務健全性及び株主還元の4つの指標を定め各種施策を推進している。「MISSION NET ZERO」で掲げるカーボンニュートラルを達成し、サステナブルで安全・安心・快適な社会を実現するため、「エネルギー供給側の脱炭素化」と、「エネルギー需要側の省エネ・省人化・脱炭素化」を両面で進め、「成長領域の開拓」のための各種取組みを引き続き展開していく。
④指標及び目標
当社グループは、各マテリアリティについて全社目標及び進捗モニタリング指標(KPI)を設定し、進捗をマテリアリティ推進会議にて管理している。
なお、マテリアリティの各項目に対応した全社目標は下表のとおりである。
マテリアリティ | 全社目標 |
脱炭素社会に向けた エネルギー課題の解決 | ・三菱重工グループのCO2排出削減 Scope1、2を、2040年Net Zero ・2040年までにバリューチェーン全体を通じた社会への貢献 Scope3+CCUS削減貢献を、2040年Net Zero |
AI・デジタル化による 社会の変革 | ・顧客や利用者に寄り添った便利でサステナブルなAI・デジタル製品の拡充 ・AI・デジタル化により適切かつ効率的に電力需給を管理する未来型エネルギーマネジメントで、持続可能な社会へ貢献 ・クリエイティブな製品を生み出すための環境づくり |
安全・安心な社会の 構築 | ・製品・事業/インフラのレジリエント化 ・製品・事業/インフラの無人化・省人化 ・三菱重工全製品の継続的なサイバーセキュリティ対策の深化 |
ダイバーシティ推進と エンゲージメントの向上 | ・多様な人材による新たな価値創出 ・安全で快適な職場の確保 ・社員を活かす環境づくりと健やかで活力にあふれ社会に貢献できる人材づくり |
コーポレート・ ガバナンスの高度化 | ・取締役会審議のさらなる充実 ・法令遵守と誠実・公平・公正な事業慣行の推進 ・CSR調達のグローバルサプライチェーンへのさらなる浸透 ・非財務情報の説明機会創出 |
(2)気候変動
①ガバナンス
当社グループは、「(1)サステナビリティ全般 ①ガバナンス」に記載のとおり、マテリアリティ推進会議及びサステナビリティ委員会を設置している。TCFD提言に沿った分析は、CSO(Chief Strategy Officer)が担当し、サステナビリティ委員会に報告している。また、TCFD提言に沿った開示を含むサステナビリティ委員会の活動状況については、定期的に取締役会に報告されている。
②リスク管理
当社グループにおいて、サステナビリティに関するリスク管理は、「(1)サステナビリティ全般 ②リスク管理」に記載のとおりであり、また、気候変動に関して、各事業部門においてそのリスク及び機会を事業計画策定の勘案要素として検討している。
③戦略
当社グループは、環境への影響を最小限とするため、2100年時点における世界の平均気温の上昇を、産業革命以前と比較して1.5℃以下に抑制しながら経済成長を目指す「気候変動政策厳格化により脱炭素を推進するシナリオ(脱炭素シナリオ)」と、現状ベースで化石燃料をエネルギー主体として経済成長を目指した結果、2100年時点における世界の平均気温が産業革命以前と比較して4.0℃上昇することが想定されるシナリオである「気候変動政策が厳格化されず引き続き化石燃料に依存するシナリオ(化石燃料依存シナリオ)」の2つの気候変動シナリオを設定し、2030年における各事業への影響を分析している。なお、シナリオの設定にあたっては、国際機関や日本政府の開示情報を参照している。
このうち、「脱炭素シナリオ」では、当社グループ共通の移行リスクとして、例えば炭素税等の規制が強化され、炭素排出に対するコストが大きく上昇することを想定している。しかしながら、脱炭素化に対応した当社製品・技術の強みを生かすことで、事業機会も十分に存在するものと考えている。
一方、「化石燃料依存シナリオ」では、主なリスクとして、気候変動による物理的リスクがある。当シナリオにおいても、既に各種環境規制を推進している先進諸国において今後、規制が緩和されることは想定しがたいことから、当社の脱炭素技術の優位性を提供することで事業機会が生じると考えている。
なお、当該分析におけるリスク及び機会の影響度の判定に当たっては、事業規模及び脱炭素化の影響を踏まえて分析対象事業を選定した上で、2023年度末の事業利益と2030年における事業利益の予測の差から事業利益への影響を分析している。その結果、脱炭素シナリオを適用した場合に、各事業に対して2030年断面に発生するリスク及び機会のうち、重要なものは以下のとおりである。
各事業部門においては、移行リスクと物理的リスクを経営計画策定の勘案要素として検討しており、またサステナビリティ委員会では、当該リスクと機会のうち代表的なものに関する検討結果を確認している。
ア.リスク
・世界的な電化への移行に従い、内燃機関に関連する製品・サービスである自動車用ターボチャージャ、エンジン式フォークリフトの需要減少や、カーボンニュートラル燃料への移行に伴いディーゼル燃料エンジンの需要減少が想定される。
・技術関連のリスクとして、水素ガスタービン等の新製品の開発遅れや、CO2回収装置における代替技術の出現が想定される。
・外部環境の影響として、化石燃料代替エネルギーとしての水素・アンモニアのサプライチェーン形成の遅れ、それに伴う新市場の立ち上がりの遅れが想定される。
イ.機会
・新興国を含む全世界で脱炭素の流れが進行するなかでトランジション期間として、石炭やディーゼル燃料から天然ガスへの燃料転換が起こり、高効率ガスタービンコンバインドサイクルプラント(GTCC)や、ガスエンジンに対する需要増が見込まれる。また、石炭火力発電設備におけるアンモニア混焼・専焼改造や、バイオディーゼル対応のエンジンに対する需要増が見込まれる。加えて、製鉄機械及び物流機器においても脱炭素化に資する製品・サービスの需要拡大が見込まれる。
・カーボンニュートラル実現とエネルギー安定供給の両立に向け、日本国内においても「GX実現に向けた基本方針」が閣議決定され、原子力については、「再稼働推進」「次世代革新炉の開発・建設」「既設炉活用(運転期間の延長)」「燃料サイクル推進」を進め、原子力を最大限活用する方針が示された。これを受け、既設PWR・BWRプラントの再稼働支援・特定重大事故等対処施設の設置や再稼働済プラントの保全に関する事業機会の拡大が想定される。また、世界最高水準の安全性を実現する革新軽水炉(SRZ-1200)の新設・建替えプロジェクトなどによる事業機会の拡大が期待される。
・CO2回収装置に関し、法・税制度やCO2貯留地の整備が進む北米や欧州を中心に市場が先行拡大し、その他の地域でも制度の整備に従って成長が見込まれる。
④指標及び目標
当社グループは、「脱炭素社会に向けたエネルギー課題の解決」をマテリアリティの一つと認識しており、2040年にカーボンニュートラルを達成する「MISSION NET ZERO」を宣言し、2つの目標を策定している。
第一の目標は、当社グループの生産活動に伴う工場等からのCO2排出量(Scope1、Scope2*1)を2030年までに2014年比50%削減し、2040年までに実質ゼロにすることである。
第二の目標は、バリューチェーン全体からのCO2排出量を2030年までに2019年比50%削減し、2040年までに実質ゼロにすることである。これは、主に当社グループの製品の使用によるお客様のCO2排出量(Scope3*1)の削減に、CCUS*2による削減貢献分を加味したものである。
当社グループは、「MISSION NET ZERO」の実現に向けて、省エネ化に継続して取り組んでおり、Scope1、2のCO2排出量を2030年に2014年比で50%削減するという目標に対して、2022年で既に47%削減を実現している。これに加え、三原製作所をカーボンニュートラル工場とするための使用電力の100%グリーン化等、更なる取組みを実施している。また、Scope3については、当社製品の使用に伴うCO2排出量削減(2019年比で、2025年に30%、2030年に50%)が目標であり、この達成に向けて高砂製作所の高砂水素パーク建設をはじめとした様々なソリューションの開発・実証を進めている。
*1 Scope1は当社のCO2直接排出を、Scope2は主に電気の使用に伴うCO2間接排出を、Scope3はScope1、Scope2以外の当社グループバリューチェーン全体でのCO2間接排出を示す。算定基準は温室効果ガス(GHG)排出量の算定と報告の国際基準であるGHGプロトコルに準じる。
*2 Carbon dioxide Capture, Utilization and Storage(二酸化炭素回収・利用・貯蓄)
(3)人的資本に関する戦略並びに指標及び目標
①戦略
中期経営計画(2021事業計画)では、事業を支える共通基盤の一つとして「人材基盤」を掲げ、社員一人ひとりが自律的に働くことができる環境づくりを推進している。人材の多様性の確保を含む人材の育成に関する方針及び社内環境整備に関する方針に関するものを含む以下の各取組みを引き続き推進していく。
ア.人材育成
当社グループの事業を取り巻く環境は、価値観の多様化や社会課題の複雑化等により加速度的に変化している。当社グループがいかなる環境の中にあっても持続的に発展していくためには、そこで働く社員一人ひとりが、お客さまのニーズに対して一人称で考え、行動することが必要である。HR部門はそれができる人材の育成とその人材を最大限に活かす企業文化の醸成、一人ひとりの主体性や活力をさらに引き出すことができるワークスタイルへの転換に鋭意取り組んでいる。
また、当社グループは、「三菱重工グループ人材育成方針」を制定しており、「長い歴史の中で培われた技術に最先端の知見を取り入れ、変化する社会課題の解決に挑み、人々の豊かな暮らしを実現する」とのミッションの実現に向けて、グループ員一人ひとりの能力の伸長とキャリア開発の支援を行い、全員が学び成長できる環境を整備する旨定めている。
イ.エンゲージメント
当社グループは、「社員のエンゲージメントを高めることが組織の活性化につながる」との考えの下、社員のエンゲージメントを重要指標と位置付け、定期的に、当社グループ全体でエンゲージメントサーベイを実施している。本サーベイ結果を受け、各部門において改善・向上活動を展開しており、HR部門としてはグループ全体の課題に対してベンチマークや水平展開、様々なツール整備を実施している。
ウ.ダイバーシティ&インクルージョン
多様な経歴、国籍、文化を持つ数万人からなる当社グループにとって、多様性は大切な財産であり、様々なバックグラウンドを持った社員一人ひとりが一つの共通の企業文化の下で業務に邁進している。女性活躍を一層推進していくため、女性社員数の拡大、キャリアを中断させない仕組みづくり、女性管理職の計画的な育成及び風土醸成という4つの施策に取り組んでおり、さらに、障がいを抱える方が安心して活躍できる職場環境づくり、職域の拡大にも積極的に取り組み、各地域での雇用も鋭意進めている。
エ.安全衛生・健康
当社グループは、「人命尊重の精神に徹し、安全を何よりも優先する」ことを労働安全衛生における基本方針とし、その方針を実現するために社員がとるべき行動指針を反映した「三菱重工グループ安全衛生方針」を制定し、全世界に跨る事業場において安全かつ安心して業務を遂行でき得る環境の実現を目指している。また、衛生面では社長による「社員が働き甲斐を実感し心身ともに健康であることを大切にした健康経営に取り組む」旨の健康経営宣言の下、健康経営を推進し、健やかで活力にあふれた社会に貢献できる人材づくりに努めている。
②指標及び目標
当社グループは、「(1)サステナビリティ全般 ④指標及び目標」に記載のとおり、マテリアリティの特定を行った。「①戦略」で記載した方針に関しては、「ダイバーシティ推進とエンゲージメントの向上」に向け、多様な人材による新たな価値創出、安全で快適な職場の確保及び社員を活かす環境づくりと健やかで活力にあふれ社会に貢献できる人材づくりをテーマに、安全や多様性、エンゲージメントに関する指標を設け、以下のとおり取り組んだ。
・将来の幹部候補社員に対して、HR部門と事業部門が連携し、計画的な指導、育成を継続中
・女性社員がキャリアを継続するため、育児や介護などに配慮した様々な支援制度の拡充に取り組み、仕事と家庭を両立しやすい職場環境・組織風土の構築を推進中
・「三菱重工グループにおける人権尊重」に関する教育コンテンツ(e-ラーニング)を作成、海外含む当社グループ約75,000名が受講
・過去に発生した災害をベースに発生予兆検知や真因分析等を行い、部門横断で対策を検討・立案
・2023年3月に第4回目となる当社グループ社員意識調査を実施
・社長タウンミーティングを国内4拠点で開催
・パルスサーベイツール*3の全社展開及び運用改善を継続中
*3 社員意識調査よりも高い頻度で簡易な質問によるアンケートを実施し、より早期に職場に応じた課題の解決を目指す手段
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