企業兼大株主三菱製紙東証プライム:3864】「パルプ・紙 twitterでつぶやくへ投稿

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企業概要

研究開発方針

 研究開発本部では、中期経営計画の事業戦略に沿った次の3つの研究開発方針を掲げています。成長事業である機能商品事業の拡大につながる商品開発。「紙」から「素材」への転換と環境配慮型商品の拡販につながる商品開発。事業の支えとなる力強い研究開発体制の構築。この方針のもと、既存分野の深化および周辺領域との相乗による基盤技術強化、ならびに新規分野の探索・開拓を積極的に行っています。

研究開発体制

 研究開発本部は、「企画」「開発」「支援」の部門から組織されています。「企画」は、2023年4月に設立された研究開発企画部にて、機能商品および紙素材の両事業部を、研究開発企画、市場情報収集、人材育成、技術共有、進捗管理などからサポートし、全社的な視点から研究開発を推進しています。「開発」は、工場で生産している製品および関連製品の研究開発と技術支援をスムーズに行い、開発を加速し、各事業分野の収益に確実に貢献するために、生産場所である工場の敷地内に開発部隊が置かれています。高砂工場内には、機能性不織布の開発をメインテーマとする高砂R&Dセンターが、京都工場内には、イメージングメディア、エレクトロニクス、医療・ヘルスケア関連製品などの開発をテーマとする京都R&Dセンターが置かれています。八戸工場には、商品開発部の開発部隊が常駐して、紙素材のポテンシャルを追求することを信条とした用途開発を行っています。また、パルプの用途開発は、研究開発部門が一丸となって探索を進めています。「支援」は、分析部門と知的財産部門が、研究開発本部直轄の組織として、京都R&Dセンター内で戦略的に開発部隊を支援しています。

 また、2024年7月にはKJ特殊紙との合併により、KJ特殊紙の研究開発部門を統合し、特殊紙の研究開発の強化を行います。

 当連結会計年度の研究開発費は586百万円で、当連結会計年度末に当社グループが保有する産業財産権の総数は1,105件であります。

各事業分野の研究開発活動

当社が手掛ける事業分野は、機能商品事業と紙素材事業です。事業分野ごとの研究開発活動は、次のとおりです

(1) 機能商品事業

 機能商品事業分野においては、機能材関連製品、イメージングメディア関連製品の研究開発を進めています。

①機能材関連製品

 機能材関連製品としては、高機能不織布製品の開発にリソースを集中し、水処理膜支持体、蓄電デバイス用セパレータ、耐熱材料、その他の機能性材料の開発に取り組んでいます。

 水処理膜支持体については、逆浸透(RO)膜の高性能化・低コスト化に向けた基材の開発に取り組んでいます。また、食品・製薬用途向けフィルター用不織布などの開発を進めると共に、派生製品として、水素エネルギー関連製品の開発を進めています。

 蓄電デバイス用セパレータ「NanoBase」については、使用される電子機器の小型化及び高性能化に適応するための要素技術の開発と製品の改良を進めております。

 耐熱材料については、建材用途などの耐火性・耐熱性・断熱性が求められる分野へ向けて、高耐熱性ガラス繊維不織布を開発しております。その他機能性材料については、環境配慮型商品であるリサイクル炭素繊維不織布などの開発にも力を入れています。

 エレクトロニクス関連製品については、電子工業向けの機能性フィルムとして、エッチング、エレクトロフォーミング、サンドブラストなどの精密フォトファブリケーション加工に用いる、特色のあるドライフィルムフォトレジストを開発しています。そして、高解像性、高耐薬品性などの機能を向上させ、情報・通信機器製造、半導体製造装置の部材加工、自動車電装部品加工用途等の電子工業分野への進出を推進しています。

 医療・ヘルスケア関連製品については、生殖医療の発展に貢献する、研究用卵子・胚の凍結保存用デバイス「Diamour」の販売拡大、畜産用途への展開、周辺部材の開発を推進しています。

 子会社のKJ特殊紙では、建築分野、環境分野、医療衛生分野への展開の観点からの商品開発を進めています。建築分野では内外装の塗装に使用する和紙マスキングテープの開発に取り組んでおり、グローバルな視点で、顧客からの様々なニーズに対応しております。環境分野については、有害物質処理装置に搭載する無機繊維シートの開発及び性能向上に取り組んでいます。医療衛生分野については、ヒートシール性を付与した紙タイプ及び不織布タイプの医療包装材料の開発及び性能向上に取り組んでいます。

②イメージングメディア関連製品

 イメージングメディア関連商品としては、インクジェット用紙、写真感光材料などのイメージングメディア製品、これらイメージングメディア製品の開発で蓄積した技術を活かしたエレクトロニクス関連製品、医療・ヘルスケア関連製品などの成長分野での商品開発を進めています。

 インクジェット用紙については、テキスタイル分野において環境負荷が低い昇華転写用デジタル捺染紙のラインナップを拡充して、国内、北米およびアジアを中心に市場開拓を推進しています。また、高速化、高精細化に対応した、新しい産業用インクジェット用紙の開発に取り組んでいます。

 写真感光材料については、スクリーン印刷版、フレキソ印刷版を作製するときに用いる、サーマルレーザー製版用銀塩感熱フィルム「TRF-IR830」を製品化し、販売拡大に努めております。感熱ヘッドによる直接描画タイプ「TRF-IFM175」も開発いたしました。これらは薬液による現像処理が不要な完全プロセスレスフィルムであり、環境負荷を大幅に低減した環境配慮型商品です。「TRF-IR830」は日本印刷学会の2024年度の技術奨励賞を受賞しております。

 また、情報資材分野では、物販系Eコマース市場と共に需要が堅調な物流ラベル市場に向けて、環境に配慮した再湿糊型ライナーレスラベル「Water Thermal」を開発しました。プリンタメーカーでは量産型の専用プリンタの開発をスタートしており、ライナーレスとシリコーンレスを同時に実現するサステナブルなラベルシステムとして紹介を進めています。

 当連結会計年度の機能商品事業での研究開発費は540百万円です。

(2) 紙素材事業

 紙素材事業分野においては、容器包装プラスチックに代わる包装材料、印刷用紙などの紙素材の新規製品の研究開発を進めています。

 拡販を進めている包装材料については、晒クラフト紙をベースとした片面クラフトコート紙(晒クラフトコートN FSC認証-MX)が大手菓子メーカーの2次包装商品パッケージに採用されました。これは、軟包装向けに開発したコート層による鮮やかな発色性と優れた屈曲耐性、ベースの晒クラフト紙による製袋加工時や輸送時に耐えられる強度などの品質面とFSC森林認証紙としての環境配慮面が高く評価されたものです。これまで軟包装分野の紙化包装で課題であった発色性の問題を解決できる素材として様々なユーザーから引き合いが来ております。

 また、これまで晒クラフト紙では無かった両面に艶感を持たせた「両艶晒クラフト紙」も開発するなど、晒・未晒のクラフト紙分野での品質改良を行い包装材料分野の商品を拡充しました。

 印刷用紙分野では、新たに印刷光沢と不透明性を両立させた薄物印刷用コート紙を開発し、大手通販会社に新規採用されました。

 パルプ素材については、紙製品用途以外への有効活用技術を探索しています。

 当連結会計年度の紙素材事業での研究開発費は45百万円です。

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