三井E&S 【東証プライム:7003】「機械」 へ投稿
企業概要
当社グループは、舶用推進事業及び港湾物流事業を中核事業として、製品競争力強化と事業拡大につながる研究開発を積極的に推進しております。
当連結会計年度におけるグループ全体の研究開発費は、1,955百万円であり、主な研究開発は以下のとおりであります。
なお、海洋開発は持分法適用会社で構成され、その研究開発費は上記金額に含まれないため記載を省略しております。
(1)成長事業推進
産業機械関連では、従来、石油精製、石油化学市場向けを中心に事業展開してきましたが、近年の産業界の急速な脱炭素化への流れに対応し、当社の連結子会社である株式会社加地テックと協同で水素サプライチェーン設備向けに高圧大流量の水素圧縮機の開発を完了し、販売を開始しました。本圧縮機は大型化が進む水素ステーションや水素製造設備に最適な仕様(流量・サイズ)に設計しており、設置スペースが小さく収まり配置の自由度が増し、併せて導入費用及び維持費を含めたライフサイクルコストの低減も期待できます。
今後、水素社会の拡大に伴い市場拡大が見込まれる高圧水素ガスの製造・輸送・利用分野に対し、経済性・信頼性に優れた各種製品・サービスの拡充を継続的に進めてまいります。
新規事業関連では、港湾における業務のデジタル化による脱炭素化や省人化、効率化に貢献する技術開発を進めております。一例として、これまで書類で行っていた港湾クレーンの法令点検記録管理を電子機器での入力及びクラウド上での管理とする「CREWS(クルーズ)」(Crane Engineer Workflow Service)を開発し、博多港において試用を開始しています。
その他、水素燃料電池や水素内燃機関活用のための水素燃料供給方法の技術開発や、大型船舶の燃費低減等を目的とする船体汚損状態管理手法の開発などによって、脱炭素化と人口縮小による労働力不足などの社会課題解決に取り組んでいます。
トンネルや道路、橋梁などを対象に表層部及び深部の異常を探査する電磁波レーダー関連事業は11月1日付で子会社の株式会社三井E&Sテクニカルリサーチへ移管しましたが、移管前からの研究開発を継続しております。最近ではレーダーセンサー部とデータ処理システムを一体化して一般車両に搭載可能な小型レーダーシステムを開発しました。主なターゲットとしては自治体などの車両を想定しており、データ計測から保存までをネットワーク経由で完全自動化しています。既存車両の大きな改造や専門技術者不在でも運用が可能となっています。今後、道路のインフラコンサルタントなど外部企業との提携も視野に新型システムを活用した事業展開を計画しています。また新たな適用先として一般住宅点検用向けに当社独自のマルチパス方式を活用した点検装置の開発検討を進めていきます。
当事業に係る研究開発費は、617百万円であります。
(2)舶用推進システム
舶用エンジン関連では、燃焼時にCO2を排出しないアンモニアや水素燃料の活用が注目されており、当社グループではアンモニア燃料船向けに世界初号機を目指してアンモニア焚きエンジン及び燃料供給装置、燃料タンクなど周辺機器の開発を進めております。
燃料供給装置など一部の製品開発は、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)のグリーンイノベーション基金の補助事業として採択されています。水素燃料船向けの開発については国土交通省の海事産業集約連携促進技術開発支援事業を活用し、水素焚きエンジン及び水素燃料供給装置に安全対策を施した装置設計・製作を行っています。支援事業最終年度となる2023年度には、当社玉野工場内に完成した水素ガス供給設備(液化水素タンク、水素ガス圧縮機他)とのカップリング運転にて、シリンダ直径50cmの大型舶用2サイクルエンジンにおける水素燃焼運転に世界で初めて成功いたしました。
当事業に係る研究開発費は、685百万円であります。
(3)物流システム
運搬機システム関連では、水素燃料電池を搭載したラバータイヤ式門型クレーン(RTGC)の開発を進めています。この開発はNEDOの補助事業に採択されており、2022年に大分工場での実証実験を成功させました。今後は、NEDO補助事業の一環として、2023年度に新たに1台製作したゼロエミッションRTGCを米国・ロサンゼルス港に持ち込み、2024年度より実使用環境下での運用を通して、水素充填作業が荷役に及ぼす影響や、連続稼働実験などの検証、分析の実証事業を実施します。加えて、国内においても東京港と神戸港において、水素を燃料とした荷役機械の稼働実証が開始しており、東京港ではRTGCに水素燃料電池を実装し、神戸港ではRTGCに水素エンジン発電機を搭載します。共に、既存RTGCのディーゼル発電機を換装し、2025年度までに現地実証試験を実施します。この成果を広く展開し、荷役機械の水素利用の促進により、港湾の脱炭素化を推進してまいります。また、コンテナターミナルの労働環境改善や安全性向上へのニーズに応え、遠隔操作が可能なRTGCの開発を完了し、大分工場内に整備したテスト用RTGCとヤード荷役テストエリアを活用して、システム検証やさらなる荷役効率向上を進めております。この遠隔操作RTGCの操作性をさらに向上させるために、遠隔自働化したRTGと港湾ターミナル構内シャーシとの連携自働化に関する技術開発を、国土交通省より受託し開発を開始しました。当社大分工場での実証試験を行い、2024年度末までにシステムを確立させる予定です。
これらハード面の開発と並行して、コンテナ管理及び荷役作業の指示を効率的に行うシステムCTMS(Container Terminal Management System)などのソフトウェア製品に関しても、遠隔荷役機器との連携機能の開発や、よりユーザフレンドリーなシステムとするための開発を進めています。
アフターサービス関連では、国土交通省港湾局が進めている荷役機械の予防保全的維持管理手法の高度化に合わせて、ビッグデータを活用するクラウド型遠隔監視システムCARMS(Crane Advanced Remote Monitoring System)を三井E&Sシステム技研株式会社と共同で製品化しました。国内外5港湾に導入し、クレーンの動作情報を収集し、解析を開始しました。2023年以降は新造や改造でご発注頂いたお客様に、順次CARMSを搭載していく予定です。並行してクレーンの故障予防保全AI診断機能の開発を進め、診断機能を試験的にクレーンに搭載する予定です。収集したデータからAI分析を行い、点検業務を支援するサービスや、クレーン使用頻度から自動的にメンテナンス時期を算出する維持管理サービスなど、新たなサービスの開発を進めています。
また、従来目視で行っていた点検作業をドローンに置き換えるシステムを株式会社ゼンリンデータコムと共同開発しました。3Dモデル上での設定による自動飛行と撮影に加え、遠隔地からのリアルタイム操作を実現、さらにAIによる定量評価システムを構築し、CARMSと連携させて経年変化観察も実現できるものです。2023年中に、クレーンユーザ以外にも、移動式クレーンや、橋梁、プラント設備や、遊園地施設での自動点検システムとして、実証試験を完了しました。国内外のドローンメーカ機種にてシステム稼働を確認し、多くのユーザーニーズにマッチしたシステムとして2024年から提供予定です。
当事業に係る研究開発費は、287百万円であります。
(4)周辺サービス
三井E&Sシステム技研株式会社の主力製品である勤怠管理システム「TIME-3X」の機能強化を継続的に進めております。三次元自動計測分野では、これまでの自動車業界向け車体三次元計測システムの機能強化に加え、X線CT画像と三次元解析ソフトウェアを用いた、アルミ鋳造品などの非破壊検査を実現するシステムの開発に向けて、PoC(Proof of Concept)を実施しました。
当事業に係る研究開発費は、365百万円であります。
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