三井物産 【東証プライム:8031】「卸売業」 へ投稿
企業概要
この経営方針、経営環境、対処すべき課題等には、将来に関する記述が含まれています。こうした記述は、現時点で当社が入手している情報を踏まえた仮定、予期及び見解に基づくものであり、既知及び未知のリスクや不確実性及びその他の要素を内包するものです。3「事業等のリスク」などに記載された事項及びその他の要素によって、当社の実際の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況が、こうした将来に関する記述とは大きく異なる可能性があります。
(1)前中期経営計画の総括
2020年5月に公表した前中期経営計画(2021年3月期~2023年3月期)「変革と成長」の総括は次のとおりです。
1)定量目標の達成状況
前中期経営計画期間は、新型コロナウイルスの感染拡大や地政学的情勢変化と、これらに起因するサプライチェーンの分断・混乱やインフレ高進など、事業環境の不確実性が高い3年間となりました。そのような経営環境において、当社は強みであるグローバルに分散され広がりをもつ事業ポートフォリオから力強い収益を生み出し、各年度それぞれ期初に設定した事業計画を達成しました。2023年3月期には、前中期経営計画における目標を大きく上回る当期利益(親会社の所有者に帰属)1兆1,306億円、基礎営業キャッシュ・フロー1兆2,055億円を達成し、ともに過去最高を更新しました。また、目標としていたROE10%を上回る18.9%を達成しました。
力強いキャッシュ・フローを源泉に、株主還元については、1株当たり配当は2020年3月期の80円から2023年3月期の140円まで継続的な増配を実行しました。また、自己株式取得は2018年3月期から2020年3月期までの前々中期経営計画期間3年累計1,080億円に対し、前中期経営計画期間は3年累計で5,090億円まで増額しました。
2)前中期経営計画の成果
(a)事業経営力強化と収益力強化
不確実性の高い事業環境下、当社はグローバルに培ってきたトレーディング機能を発揮し、LNG・金属資源・化学品・鉄鋼製品・穀物等、社会を支えるエネルギー・素材・食の安定供給、販路拡大、サプライソースの多角化に取り組み、収益力を強化しました。また、米州を中心とした自動車・商用車事業に加え、ヘルスケア、船舶、化学品、食料事業等の強化を通じ、収益の拡大につなげました。
(b)財務戦略・ポートフォリオ経営の進化
前中期経営計画期間の3年累計での基礎営業キャッシュ・フローは、3兆230億円の獲得となり、資産リサイクルにより獲得した7,920億円と合わせて3兆8,150億円のキャッシュ・インとなりました。強靭なキャッシュ創出力を源泉とし、投融資、株主還元への戦略的な資金配分を実行した結果、投融資によるキャッシュ・アウトは1兆5,840億円となり、株主還元総額は1兆390億円となりました。また、前中期経営計画期間より、社内管理指標としてROIC(Return On Invested Capital)を導入しました。収益性・成長性の2つの軸で事業ポートフォリオのあり姿とその実現に向けたプロセスの可視化、投資規律の徹底を図り、大胆なリソースの再配分を行いました。チリ銅事業融資回収、豪州原料炭事業Stanmore SMC売却実行等、リサイクルで得た資金から成長投資へ再配分し、事業ポートフォリオの新陳代謝・良質化を図りました。
(c)人材戦略
国内・海外拠点及び関係会社で活躍する多様な人材は当社競争力の源泉であり、一人ひとりの「挑戦と創造」を通じて価値創造につなげていくことで持続的な成長を実現していきます。前中期経営計画期間中には、新卒採用プロセスにおける100%インターンシップ導入や積極的なキャリア採用による人材獲得強化、グローバルでの適材配置を支えるタレントマネジメントシステム“Bloom”の開発・一部海外地域への先行導入を行いました。また、多様な人材の活躍促進を加速すべく、女性リーダー育成プログラムや海外拠点より選抜された次世代リーダーの育成プログラムにも継続的に取り組んでいます。加えて、新しい働き方を加速させる施策としてリモートワークやフレックスタイム制の導入などを引き続き推進しており、多様な価値観を認め新しい価値を生み出す取組みを進めていきます。
(d)Strategic Focus・新事業への挑戦
前中期経営計画で注力した3つの領域における進捗は次のとおりです。
(ⅰ)エネルギーソリューション
グローバルなエネルギートランジションにおける地域毎のソリューションの提供として、エネルギー分野では石
油・ガス上流事業の知見とネットワークを活かし、CCS(Carbon Capture and Storage)事業を推進する英国Storeggaへの出資参画や、豪州でのクリーン燃料アンモニア生産を見据えたCCS事業調査に取り組みました。また、クリーン燃料アンモニア生産事業推進に向けた複数のパートナーとの共同事業化に進捗がありました。電力事業分野では火力発電事業売却と並行して英国・中南米・アフリカ・アジア等に展開する再生可能エネルギー事業Mainstream、ReNew Powerとのインドでの大型再生可能エネルギー事業に参画、北米・南米・欧州・本邦における電力販売と合わせて電力バリューチェーンでの取組強化を推進しました。また、本邦におけるCO2可視化・削減クラウドサービスe-dashの事業化、フランスの電池システム製造会社Forsee Powerの事業拡大や、当社が排出権事業を通じて得た知見を活かして、豪州の排出権デベロッパーのClimate Friendly株式取得を行いました。
(ⅱ)ヘルスケア・ニュートリション
当社が出資参画するIHH Healthcareでは、調達の合理化やオペレーション改善、オンライン診療サービスの提供、事業ポートフォリオの見直しなどを推進し、グループ経営基盤を強化しました。また、健康に通じる「食」や複合型ホスピタリティサービス等の事業強化に向け、国内大手給食事業者エームサービスの完全子会社化を決定、および保健同人フロンティアを通じた企業の健康経営ニーズに対するサービス提供を推進しました。加えて、当社出資先のThorneとのアジアにおける未病対策事業会社設立、畜水産種苗事業会社Hendrixへのファンドを通じた出資、アニマルヘルス企業Ouro Fino Saúde Animal、シンガポール漢方薬製造販売企業Eu Yan Sangへの出資、住友ファーマアニマルヘルスへの出資参画の決定など、人の「治療」から「未病・予防」、アニマルヘルス・畜水産種苗分野に対象を広げ、世界の人々の健康を支える事業群の形成に進捗がありました。
(ⅲ)マーケット・アジア
「伸びゆく・変わりゆくアジア消費者市場」の成長を取り込み、また、多様化する消費者ニーズに対応すべく、ヘルスケア・ニュートリション、インフラ等での新規取組みを進めました。新型コロナウイルスの影響が継続する中でも、当社が強みをもつ鉄鋼製品・化学品などを中心とした関係会社の業績や物流事業が堅調に推移しました。また、インドネシアで金融、リテール、メディア、不動産、ホスピタリティ、エンターテインメント、ライフスタイルを含む消費者関連事業を担う企業グループCT Corpの転換社債を引き受け、マーケット・アジアにおける「消費者プラットフォーム」構築に向けた進捗がありました。本邦大手食品容器製造会社エフピコと共同でマレーシアの機能性食品容器製造会社Lee Soon Seng Plastic Industriesの株式を取得したほか、豪州情報化施工システムインテグレーターPosition Partnersの株式を追加取得しました。
(e)サステナビリティ経営の実践/ESGの進化
前中期経営計画期間では、「気候変動」、「サーキュラーエコノミー」、「ビジネスと人権」の3つを重要課題とし、一層のサステナビリティ経営の実践を継続的に進めました。「気候変動」対応では、2021年12月に開催したESG Dayにて公表したGHG(温室効果ガス)削減ロードマップに沿って、自社排出量の削減とGHG削減貢献の取組みを推進しています。また、GHG多排出事業領域については、前中期経営計画期間中に2℃シナリオに加え1.5℃シナリオ分析を実施、開示するとともに、GHG削減を機会とする事業領域への各種支援制度(グリーン案件評価連絡会・社内カーボンプライシング制度)を導入しました。「サーキュラーエコノミー」では、事業別及び地域別のリスク分野と、機会となる重点領域を特定しました。「ビジネスと人権」では、高リスク事業分野を特定し、人権デューデリジェンスを推進するとともに個別調達方針を策定、また、社内の意識向上に資する各種セミナー・アンケート調査等を実施しています。詳細については当社サステナビリティWebサイトをご参照ください。https://www.mitsui.com/jp/ja/sustainability/index.html
ガバナンスの強化については、取締役・監査役フリーディスカッションを継続的に設営、中期経営計画や気候変動などの経営課題に関する議論を行いました。取締役会においては事業戦略、事業ポートフォリオ、サステナビリティ、労働安全・衛生などの重要テーマについての審議時間を充分に確保することに加え、取締役会付議・報告基準の見直しや書面決議の活用を通じて更なる取締役会の実効性向上を図りました。また、ROE・ESG等の要素をKPIとする役員向け株式報酬制度も新設し、当社の機関設計・取締役会のあり方などについても社外役員の視点を交えてガバナンス委員会で議論しました。詳細については、第4 提出会社の状況 4コーポレート・ガバナンスの状況等をご参照下さい。
(2)経営環境
1)全般
注:本項目は、2023年5月の決算公表時点の経営環境認識を掲載したものであり、当社の現在の経営環境認識と異なる記載が含まれている場合があります。
当連結会計年度の世界経済は、米欧先進国を中心とした高インフレと急速な金融引締め、ロシア・ウクライナ情勢の波及、ゼロコロナ政策を巡る中国経済の混乱の影響により、前年度比で更に減速しました。また、今春には米国の地域金融機関が経営破綻するなど新たなリスク要因が顕在化しました。
米国では、高インフレが続く中でも堅調な雇用情勢等を背景に個人消費の回復が概ね継続した一方、急速な金融引締めにより、住宅投資が減少し、設備投資も伸び悩んだことから景気は減速しました。先行きは、金融引締めの継続や地域金融機関の経営破綻の影響により、景気の減速局面が続くと見込まれます。欧州では、ロシア・ウクライナ情勢を受けたエネルギーの供給制約や物価の高騰などを受けて、景気は弱まりました。先行きは、高インフレの継続、金融引締めにより、景気は停滞するとみられます。日本では、経済活動の正常化が進む中でサービス消費やインバウンド需要は回復に向かいましたが、物価の高まりを受けた財消費の抑制や輸出の伸び悩みなどから、緩慢な持ち直しとなりました。先行きは、例年実績を超える賃上げの動きや政策支援もあり、緩やかな景気回復基調が維持されると見込まれます。中国では、昨年はゼロコロナ政策の影響や不動産市況の悪化等で景気は一段と減速しましたが、昨年末のゼロコロナ政策の解除により、サービス消費など内需に持ち直しの動きがみられました。先行きは、預金準備率の引下げ等の政策支援もあって、緩やかに景気が持ち直すと予想されます。ブラジルは、昨年までの金融引締めなどの影響により景気の減速が見込まれます。ロシアは、国際社会から課された経済制裁による経済活動の停滞が続くとみられます。
世界経済の先行きは、中国の持ち直しが期待されるものの、ロシア・ウクライナ情勢の影響が長引くと見込まれる中で、米欧先進国の高インフレと金融引締めの継続、金融システムへの懸念などにより、全体として減速局面が続くとみられます。
2)事業セグメント
上記経営環境を踏まえた各事業セグメントにおける環境認識並びにリスクと機会は、以下のとおりです。
(a) 金属資源セグメント | |
環境認識 | ・ インフレや金利高・燃料費の高値推移、労働力不足による人件費上昇などによる鉱山での ・ 産業界の期待に応えた安定供給を支えるアセットの希少性増加 |
リスク | 機会 |
・ 脱炭素社会への移行に向けた技術革新や価値観の変 ・ 地政学的リスク顕在化や新型コロナウイルス感染症 | ・ アジアを中心とした世界経済成長に伴うインフラ需 ・ 電動化・軽量化やグリーン鉄源・素材、高品位資源 |
(b) エネルギーセグメント | |
環境認識 | ・ 人口増加・世界経済の成長に伴い、エネルギー需要は増加する見込み ・ エネルギーの安定供給と脱炭素化の両立に対する社会ニーズの高まり |
リスク | 機会 |
・ 原油・天然ガス価格の変動や生活・行動様式の変化 ・ クリーンエネルギーに対する社会ニーズの高まりに | ・ 一次エネルギーの需要拡大、現実解としての天然 ・ クリーンエネルギーや次世代エネルギーの需要拡大 ・ 脱炭素化の加速によるエネルギーソリューション事 |
(c) 機械・インフラセグメント | |
環境認識 | ・ 再エネ、天然ガスを電源とする電力需要が浸透する見込み ・ 半導体不足による自動車供給不足は今後正常化の見込み ・ 環境負荷の低いモビリティへのシフトが進む見込み ・ ばら積み船市況は当面下落継続する一方、タンカー市況は高止まる見込み |
リスク | 機会 |
・ 世界的なインフレ傾向と金融マーケットの変化 ・ 社会ニーズの変化を受けた新規資源開発の減少など 産業構造の変化 | ・ DX活用の進展、デジタルインフラ加速 ・ 気候変動対応に伴う再エネ電源や、新燃料・電動 |
(d) 化学品セグメント | |
環境認識 | ・ 気候変動対応に伴う環境配慮型事業に対する社会からの要請の高まり ・ 人口増加や経済成長に伴う食料やエネルギー由来の化学品需要の増大 ・ 健康意識の高まりによる食の高付加価値化ニーズの増大 |
リスク | 機会 |
・ 気候変動対応に伴う石油化学産業の構造変化の加速 ・ 地政学的リスクの高まりによるサプライチェーンの 再編と地産地消化 ・ エネルギー価格高騰や人手不足による製造コストの | ・ サプライチェーンの変化による安定供給ニーズの増 大 ・ 環境配慮型素材・製品・事業のニーズ増大 ・ 健康・ウェルネス、Quality of Life向上へのニー |
(e) 鉄鋼製品セグメント | |
環境認識 | ・ 脱炭素社会に向けた技術革新による段階的なグリーン化が進展する見込み ・ 原燃料費の高止まり、地政学的リスクの顕在化が継続する見込み ・ 中期的な世界鉄鋼需要はアジアを牽引役として増加する見込み |
リスク | 機会 |
・ 国内粗鋼生産減少を背景とした業界再編と流通構造 の変化 ・ 地政学的リスクの高まりによるサプライチェーンの | ・ 脱炭素化・循環型経済の加速によるサプライチェー ・ 車体軽量化・高強度化ニーズに伴う素材の需要拡大 ・ DX活用による鋼材流通改革ニーズ |
(f) 生活産業セグメント | |
環境認識 | ・ ライフスタイルの多様化と健康志向、サステナビリティ等社会価値への関心の高まり ・ 原材料費・労務費等の上昇が継続する見通し ・ オンラインとオフラインの融合に伴うリアルな「場」の重要性の高まり |
リスク | 機会 |
・ 気候変動による伝統的産地の移動 ・ 地政学的リスクによる貿易構造の変化 ・ 医療規制動向及び人手不足、GAFA等異業種参入に伴 | ・ 価値観の多様化・細分化、及び消費行動の多様化 ・ 未病・予防、健康への行動様式や価値観の変化 ・ アジア等新興国における医療需給ギャップ拡大、先 |
(g) 次世代・機能推進セグメント | |
環境認識 | ・ デジタル化に伴う価値あるサービスや、サイバーセキュリティ対応に関するニーズの上昇 ・ 環境意識の高まりなどの市場環境・ニーズの変化を捉えた投資判断の重要性増大 |
リスク | 機会 |
・ 株価変動などの市場価格変動リスク ・ 金利上昇、インフレに伴う景況感、企業業績の悪化 | ・ 技術進化に伴うICTソリューションニーズの高まり ・ ライフスタイルの多様化に伴うデジタルサービスの ・ 気候変動対応に伴う金融商品組成機会、ボラティリ |
(3)新中期経営計画
1)当社の目指すこと
当社は、今般、新中期経営計画(2024年3月期~2026年3月期)「Creating Sustainable Futures」を策定しました。サステナビリティを経営の中核に据え、グローバル・サステナビリティの視点から、あらゆる産業の社会課題を掘り起こし、そこから新しいビジネスイノベーションを生み出し、強い事業群及び新しい産業の創出を目指します。
2)2024年3月期及び2026年3月期定量目標
2024年3月期の基礎営業キャッシュ・フローは8,700億円、当期利益(親会社の所有者に帰属)は8,800億円を計画します。また、新中期経営計画の最終年度である2026年3月期の基礎営業キャッシュ・フローは1兆円、当期利益(親会社の所有者に帰属)は9,200億円、ROEは新中期経営計画期間の3年間で平均12%超を目標とします。
3)5つのCorporate Strategy
新中期経営計画で目指す「Creating Sustainable Futures」実現に向けた全社施策として、5つのCorporate Strategyを策定しました。
(a)グローバル・産業横断的な提案力の高度化
複雑化する世界の課題に対しては、地球規模で考え、産業横断的に対応することが必要不可欠です。当社の事業本部体制・グローバルマトリクス体制は、事業本部間や地域間の垣根が低く、柔軟で機動的な連携が可能となる点が強みです。この体制を活かし、当社の強みをグローバル・産業横断的に組み合わせることで、複雑化する社会課題の解決のための提案力を高度化します。
(b)「創る・育てる・展(ひろ)げる」(ビジネスモデル)の推進
コア事業と周辺事業を組み合わせ、社会課題に対し時間軸を踏まえた最良の現実解を提供します。当社が知見を有する領域の周辺で事業を強化することで事業の成功確度を上げることができます。インパクトある収益基盤・事業群の構築に向け、全社最適視点での経営資源配分を徹底します。
(c)サステナビリティ経営の更なる深化
気候変動・自然資本・ビジネスと人権といった社会課題に対して、サプライチェーン全体を通じた対応を牽引します。気候変動対応においては、脱炭素社会の実現に向けて事業ポートフォリオの変革を継続します。当社は2030年までの目標として、GHGインパクトの2020年3月期対比半減となる17百万トン*1、再エネ比率30%超*2をそれぞれ掲げています。新中期経営計画最終年度の2026年3月期においては、GHGインパクトは27百万トン、再エネ比率は27%を見込みます。
なお、サステナビリティ経営に関する詳細は、第2 事業の状況 2サステナビリティに関する考え方及び取組をご参照ください。
*1:2030年に自社の排出量から事業を通じて実現した削減貢献量を差し引いたGHGインパクトを20/3期比半減させる。
*2:発電事業における再生可能エネルギー比率を2030年までに30%超に引き上げる。
(d)グループ経営力の強化
事業ポートフォリオの絶え間ない変革にあたっては、1人当たりの生産性を向上させる必要があります。データドリブン経営とグループアセットの活用を両輪に、現在の人員数でより大きな仕事を、効率的かつ効果的に推進します。
(e)グローバルでの多様な個の活躍推進
自律的なキャリア形成を後押しするべく、人材への投資を更に加速します。強い「個」の育成、インクルージョン、戦略的適材配置という人材戦略の3つの柱は前中期経営計画から不変です。これらに加え、1人当たりの生産性を向上させ、仕事の付加価値を追求することで、事業ポートフォリオの変革を支えます。
なお、人材戦略の詳細は、第2 事業の状況 2.サステナビリティに関する考え方及び取組をご参照ください。
4)3つの攻め筋
前中期経営計画におけるStrategic Focusの取組みを深化させ、また、重要な環境変化を踏まえて、当社の強みが発揮できる分野として3つの攻め筋、Key Strategic Initiativesを設定しました。
(a)Industrial Business Solutions
グローバルに展開する事業ポートフォリオを通じ、エネルギー・金属資源・食料・素材等の安定供給に資する高度な仕組みを提供します。グローバルサプライチェーンの分断・混乱に対し、供給先・調達先の確保、適切な組替え、トレーディング機能の先鋭化・高度化により、サプライチェーンの安定化を図ります。また、デジタル化の進展を支える高機能素材、気候変動対応としての環境配慮型素材・グリーンマテリアル等、ニーズが高度化・多様化する素材の安定供給を通じ、サステナブルで豊かな社会の実現に貢献します。
(b)Global Energy Transition
持続可能な形で脱炭素社会へ移行していくために、当社はエネルギー安定供給と気候変動対応の双方の観点から、事業を通じた最先端の現実解を提供します。当社はグローバルに時間軸の異なる多数の事業をポートフォリオ経営することで、収益を維持・確保しながら、社会課題となるエネルギートランジションの解決に貢献します。気候変動対応としての次世代エネルギー、環境負荷の低い次世代モビリティ、素材・化学品等のバリューチェーン全体を低炭素化するサーキュラーエコノミー等の脱炭素社会実現に資するビジネスを推進します。
(c)Wellness Ecosystem Creation
医療、未病・予防に加え、健康に通じる食の提供により、多様化する消費者のライフスタイルの質向上に貢献します。食の安定供給、環境負荷の低減、多様なニーズに応じた食品の提供など、食・ニュートリションを通じた健康の提供に加え、データ活用によりヘルスケア関連事業を連携させ、ウェルネス事業群において有機的に組み合わせることで、多数の付加価値をバリューチェーンに沿って創出します。
5)キャッシュ・フロー・アロケーション
新中期経営計画期間中の資金配分の見通しは以下のとおりです。2024年3月期から2026年3月期までの3か年の累計基礎営業キャッシュ・フローと投資キャッシュ・フローの合計額から株主還元を差し引いた株主還元後キャッシュ・フローの黒字維持を基本方針としつつ、マネジメント・アロケーションの枠組みを通じ、厳選した成長投資と追加還元の充実に向けて、戦略的に資金を配分します。
(4)利益配分に関する基本方針
株主還元策については第 3 提出会社の状況 3 配当政策をご参照ください。
(5)2024年3月期連結業績予想
①2024年3月期連結業績予想
[業績予想の前提条件] | 24年3月期 予想 | 23年3月期 実績 |
期中平均米ドル為替レート | 130.00 | 136.00 |
原油価格(JCC) | 79ドル | 103ドル |
期ずれを考慮した当社連結決算に反映される原油価格 | 88ドル | 93ドル |
単位:億円 | 2024年3月期 業績予想 | 2023年3月期 実績 | 増減 | 増減要因 |
売上総利益 | 11,700 | 13,962 | △2,262 | 商品価格下落 |
販売費及び一般管理費 | △7,500 | △7,028 | △472 |
|
有価証券・固定資産 関係損益等 | 2,300 | 583 | +1,717 | 一過性評価益 資産リサイクル |
利息収支 | △1,100 | △668 | △432 | 金利上昇 |
受取配当金 | 1,600 | 1,549 | +51 |
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持分法による投資損益 | 4,400 | 5,555 | △1,155 | 商品価格下落 |
法人所得税前利益 | 11,400 | 13,953 | △2,553 |
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法人所得税 | △2,400 | △2,407 | +7 |
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非支配持分 | △200 | △240 | +40 |
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当期利益 (親会社の所有者に帰属) | 8,800 | 11,306 | △2,506 |
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減価償却費・無形資産等償却費 | 2,700 | 2,727 | △27 |
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基礎営業キャッシュ・フロー | 8,700 | 12,055 | △3,355 |
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・為替レートは2023年3月期の136.00円/米ドルおよび92.67円/豪ドルに対し、2024年3月期はそれぞれ130.00円/米ドルおよび85.00円/豪ドルを想定します。また、2024年3月期の原油価格(JCC)を79米ドル/バレルと仮定し、期ずれを考慮した当社の連結決算に適用される原油価格の平均を88米ドル/バレル(2023年3月期比5米ドル/バレル下落)と想定します。
オペレーティング・セグメント別での業績予想(当期利益(親会社の所有者に帰属))は以下のとおりです。
(単位:億円) | 2024年3月期 業績予想 | 2023年3月期 実績 | 増減 | 増減要因 |
金属資源 | 2,900 | 4,388 | △1,488 | 原料炭・鉄鉱石価格 前期売却益の反動 |
エネルギー | 1,300 | 3,094 | △1,794 | 原油・ガス価格 LNG物流 |
機械・インフラ | 2,400 | 1,719 | +681 | 資産リサイクル |
化学品 | 600 | 709 | △109 |
|
鉄鋼製品 | 200 | 225 | △25 |
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生活産業 | 900 | 548 | +352 | 関連会社の子会社化に 伴う一過性利益 |
次世代・機能推進 | 600 | 667 | △67 |
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その他/調整・消去 | △100 | △44 | △56 |
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連結合計 | 8,800 | 11,306 | △2,506 |
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オペレーティング・セグメント別での基礎営業キャッシュ・フロー予想は以下のとおりです。
(単位:億円) | 2024年3月期 業績予想 | 2023年3月期 実績 | 増減 | 増減要因 |
金属資源 | 3,200 | 4,367 | △1,167 | 原料炭・鉄鉱石価格 受取配当金 |
エネルギー | 2,300 | 4,196 | △1,896 | 原油・ガス価格 LNG物流 |
機械・インフラ | 1,400 | 1,829 | △429 | 資産リサイクル |
化学品 | 800 | 895 | △95 |
|
鉄鋼製品 | 100 | 180 | △80 |
|
生活産業 | 500 | 311 | +189 | 前期コーヒー関連取引 不調の反動 |
次世代・機能推進 | 400 | 466 | △66 |
|
その他/調整・消去 | 0 | △189 | +189 |
|
連結合計 | 8,700 | 12,055 | △3,355 |
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② 2024年3月期連結業績予想における前提条件
2024年3月期連結業績予想における商品市況及び為替の前提と価格及び為替変動による当期利益(親会社の所有者に帰属)への影響額は以下のとおりです。
価格変動の2024年3月期 当期利益(親会社の所有者に帰属)への影響額 | 2024年3月期 前提 |
| 2023年3月期 実績 | |||
市況商品 | 原油/JCC | - | 79 |
| 103 | |
連結油価(*1) | 26 | 億円(US$1/バレル) | 88 |
| 93 | |
米国ガス(*2) | 14 | 億円(US$0.1/mmBtu) | 2.99 |
| 6.51 (*3) | |
鉄鉱石(*4) | 27 | 億円(US$1/トン) | (*5) |
| 116 (*6) | |
原料炭 | 3 | 億円(US$1/トン) | (*5) |
| 352 (*7) | |
銅(*8) | 7 | 億円(US$100/トン) | 8,600 |
| 8,815 (*9) | |
為替(*10) | 米ドル | 39 | 億円(\1/米ドル) | 130.00 |
| 136.00 |
豪ドル | 27 | 億円(\1/豪ドル) | 85.00 |
| 92.67 |
(*1) 原油価格は期ずれで当社連結業績に反映されるため、それを考慮した連結業績に反映される原油価格を連結油価として推計している。2024年3月期には約35%が4~6ヵ月遅れ、約30%が1~3ヵ月遅れ、約30%が1年超遅れ、約5%が遅れ無しで反映されると想定される。上記感応度は、連結油価に対する年間インパクト。
(*2) 当社が米国で取り扱う天然ガスはその多くがHenry Hub(HH)に連動しない為、上記感応度はHH価格の変動に対するものではなく、加重平均ガス販売価格に対するインパクト。
(*3) 米国ガスの2023年3月期実績には、2022年1月~12月のNYMEXにて取引されるHenry Hub Natural Gas Futuresの直近限月終値のdaily平均値を記載。
(*4) Valeからの受取配当金に対する影響は含まない。
(*5) 鉄鉱石・原料炭の前提価格は非開示。
(*6) 鉄鉱石の2023年3月期実績には、2022年4月~2023年3月の複数業界紙によるスポット価格指標Fe 62% CFR North Chinaのdaily平均値(参考値)を記載。
(*7) 原料炭の2023年3月期実績には、対日代表銘柄石炭価格(US$/MT)の四半期価格の平均値を記載。
(*8) 銅価格は3ヶ月遅れで当社連結業績に反映される為、上記感応度は2023年3月~12月のLME cash settlement price平均価格がUS$100/トン変動した場合に対するインパクト。
(*9) 銅の2023年3月期実績には、2022年1~12月のLME cash settlement priceのmonthly averageの平均値を記載。
(*10)上記感応度は、各国所在の関係会社が報告する機能通貨建て当期利益に対するインパクト及び一部海外出資先からの受取配当金の影響。円安は機能通貨建て当期利益の円貨換算を通じて増益要因となる。関係会社における販売契約上の通貨である米ドルと機能通貨の豪ドルの為替変動、及び為替ヘッジによる影響を含まない。
注) 経営成績に対する外国為替相場の影響について
2022年3月期及び2023年3月期の海外の連結子会社及び持分法適用会社の当期利益(親会社の所有者に帰属)の合計はそれぞれ7,505億円及び8,946億円です。これらの海外所在の連結子会社及び持分法適用会社の機能通貨は、主として米ドルおよび豪ドルです。2024年3月期連結業績予想の当期利益(親会社の所有者に帰属)に対する為替変動の影響について、当社は簡便的な推定を行っています。
(a)具体的には、業績予想策定の過程で、海外関係会社の予想当期利益(親会社の所有者に帰属)を各社の機能通貨別に集計し、まず米ドルおよび豪ドル建ての予想当期利益(親会社の所有者に帰属)の合計額を算出しました。これら2つの通貨別に表示された海外関係会社の予想当期利益(親会社の所有者に帰属)に一部の海外出資先からの通貨別の配当金を合計した金額に対して為替変動の影響を評価しました。これによれば米ドルに対する円高は、1円当たり39億円程度の当期利益(親会社の所有者に帰属)の減少をもたらすと試算されます。また、豪ドルに対する円高の影響は、1豪ドル当たりで1円の円高で27億円の減益となります。
(b)なお、豪ドルを機能通貨とする資源・エネルギー関連生産会社の当期利益(親会社の所有者に帰属)は、両通貨と契約上の建値通貨である米ドルとの間での為替変動の影響を大きく受けます。この影響額は、(a)に述べた3つの通貨毎の当期利益(親会社の所有者に帰属)合計の円相当評価による感応度と別に勘案する必要があります。
(c)但し、資源・エネルギー関連生産会社などでは、一部において、販売契約の契約通貨である米ドルと機能通貨の為替ヘッジを行っているほか、外貨建の当期利益(親会社の所有者に帰属)の円貨相当評価に係る為替ヘッジを行っている場合があります。これらの影響額についても、(a)に述べた3つの通貨毎の当期利益(親会社の所有者に帰属)合計の円相当評価による感応度と別に勘案する必要があります。
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