三井住友建設 【東証プライム:1821】「建設業」 へ投稿
企業概要
当社グループにおける経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は以下のとおりです。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものです。
(1) 経営方針
当社は、経営理念として「顧客満足の追求」「株主価値の増大」「社員活力の尊重」「社会性の重視」「地球環境への貢献」を掲げ、安全で快適な社会の実現に取り組んでいます。
<理念と経営計画の体系>
(2) 経営環境
わが国経済の先行きにつきましては、雇用・所得環境が改善する下で緩やかな回復が続くことが期待されます。ただし、世界的な金融引締めに伴う影響など、海外景気の下振れがわが国の景気を下押しするリスクとなっています。また、物価上昇、金融資本市場の変動等の影響に十分注意する必要があります。
建設業界につきましては、防災・減災、国土強靭化への計画的な投資により公共投資は底堅く推移する見通しです。また、民間企業の設備投資も企業収益の改善等を背景として堅調に推移する見通しです。一方、資源価格や建設資材価格の高止まりや労務需給の逼迫の影響、加えて2024年4月からの建設業への時間外労働の上限規制適用による影響等に注視していく必要があります。
(3)中期的な経営戦略と目標とする経営指標
当社グループを取り巻く中長期的な事業環境は、国内建設需要の縮小が懸念されるものの、海外では特に新興国(東南アジア、南アジア、アフリカ等)において、急速な経済成長によるインフラ需要が見込まれています。また、建設産業全体の課題である担い手不足問題の深刻化が見込まれる一方、IoT、AIなど先進的なICTをはじめとした技術革新が急速に進み、建設生産プロセスにおけるデジタル化の進展が予想されています。
こうした事業環境の変化に対し、当社グループの強みを活かして、社員一人ひとりが未来志向を持って行動し、持続可能な社会の実現と当社グループの持続的な成長を遂げるため、目指すべき「2030年の将来像」を設定しています。
「2030年の将来像」に向けたセカンドステージと位置付けている「中期経営計画2022-2024」では、テーマを「新たな成長へ~サステナブル社会の実現に向けて~」と掲げ、「収益力の向上」「成長分野への挑戦」「人材(=人財)基盤の強化」に取り組んでいます。しかしながら、建設資材の価格上昇や労務需給の逼迫等の影響が当初の想定を上回っていることから、中期経営計画最終年度である2024年度の業績予想は、計画の数値目標を下回る見通しとなっています。
2024年度は、中期経営計画未達の要因分析を行い、2025年度から始まる次期中期経営計画の策定を進めてまいります。
①受注力の強化
・デジタル技術の積極活用や協力会社組織との連携強化などにより競争優位性を創出し、優位技術、得意分野を軸に需要拡大が見込まれる分野に注力。
②現場力の強化
・現場管理体制の強化
現場が「コア業務(安全・品質・工程・原価管理)」に集中できる体制を構築し、工事リスクへの対応力を向上すべく、現場業務のバックアップ体制を強化。
受注前の検討体制の強化を目的としたフロントローディング体制を構築し、早期に工事リスクを把握することで、対策を施工計画に反映。
・技術者教育の強化
リスク検知能力や課題解決力の向上、若手技術者の早期育成。
・デジタル化の推進
③国内建築事業の業績改善
・施工体制逼迫の改善と現場支援体制の再構築
施工体制逼迫の改善に向けた受注量の管理、事前検討・支援体制の強化。
・受注プロセスにおけるガバナンス強化と最適な受注ポートフォリオの構築
取組みの初期段階における取組判断の厳格化と受注プロセスにおけるガバナンス強化。顧客、工事規模、用途、地域特性等を鑑みた受注方針の再設定と運用の徹底。
・利益を重視した目標管理の徹底
受注時における利益の確保を最重要指標と位置づけ、これ以降の各段階において利益を最優先とした目標管理を徹底。
①サステナブル社会に向けた取り組みの強化
・新たに生まれる社会ニーズに対し、技術とサービスで応え続けることで成長を実現。
②海外事業の拡大~拠点の自立とネットワーク強化~
・事業を通じて持続可能な地域社会の発展に貢献し、地域とともに成長を実現。
③建設生産システムの深化
・デジタル化の推進を中心とした取り組みにより、建設現場の工業化や自動化を推進し、当社グループの競争力を強化。
①ダイバーシティ&インクルージョン(D&I)の実現
・D&Iの実現を通じて、社員の幸福度の向上を企業の成長につなげる。
②エンゲージメントの向上
・「社員の幸福」「企業の成長」と社員のエンゲージメントがお互い高め合う関係性を構築。
③人材の育成
・「新たな成長」の実現を牽引するデジタル人材、グローバル人材など多様な人材育成、確保に注力。
■ 経営数値計画
・業績目標、財務目標
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| 中期経営計画 2022-2024 |
| 2023年度 実績 | 2024年度 業績予想 | 2024年度 目標 |
連結売上高 | 4,795億円 | 4,550億円 | 4,670億円 |
連結営業利益 | 85億円 | 125億円 | 160億円 |
ROE | 6.0% | - | 9.0%以上 |
総還元性向 | 54.7% | - | 50%程度 |
(注) 2024年度業績予想(2024年5月10日公表)につきましては、公表日現在において入手可能な情報から得られた判断に基づいています。
・非財務情報
| 中期経営計画 2022-2024 2024年度 目標 | |
安全 | 死亡・重大災害「ゼロ」 度数率:0.6以下(施工部門)、0.5以下(全社) | |
品質 | 品質不具合ゼロ | |
カーボン ニュートラル | CDP評価 | A |
Scope1+2 | △20% (基準:2020年) | |
Scope3 | △10% (基準:2020年) | |
人権 | 人権DD | 人権DDの定着(人権リスクへの対応) |
救済メカニズム構築 | 2023年度から運用 | |
生産性 | 社員総労働時間あたりの完成工事高 5%向上 | |
エンゲージメント | 4.0以上(5点満点の平均)※ |
※「組織診断サーベイ」におけるワークエンゲージメントに関する指標
■ 事業戦略
1.国内土木事業戦略
(1)収益力強化 (2)新たな価値の創出
2.国内建築事業戦略
(1)受注力の向上 (2)現場力の向上 (3)社員教育・人材活用の強化
3.海外事業戦略
(1)海外建設事業の成長 (2)成長を支える事業基盤の強化 (3)社会変化に対応した取り組み推進
4.周辺領域事業戦略
(1)既存周辺領域事業(再エネ発電、エンジニアリングサービス等)の拡大による収益貢献
(2)新規周辺領域事業創出への取り組み
(3)周辺領域事業の裾野拡大のための「新規事業創出プロセス」の構築
(4)M&A・アライアンスを活用した戦略的なポートフォリオ変革の実現
■ 基盤戦略
1.安全・品質
2.人材(=人財)戦略
3.技術開発戦略
4.グループ経営戦略
5.ガバナンス及び内部統制
■ 環境、社会面における取り組むべき事項
1.環境面
(1)気候変動、カーボンニュートラル (2)資源循環 (3)生物多様性
2.社会面
(1)人権 (2)ダイバーシティ&インクルージョン
(4) 対処すべき課題
① 当社施工の横浜市所在マンションの事案につきましては、2017年11月28日付にて、本件マンションの発注者の1社である三井不動産レジデンシャル株式会社(以下、「レジデンシャル社」といいます。)が、本件マンション全棟の建替え費用等の合計約459億円(その後2018年7月11日付にて約510億円に増額、2022年9月30日付にて約510億円から約506億円に減額)を当社並びに杭施工会社2社に対し求償する訴訟を提起していますが、レジデンシャル社の請求は、根拠、理由を欠くものであると考えており、引き続き裁判において、当社の主張を適切に展開してまいります。
② 現在施工中の国内大型建築工事における度重なる損失発生につきましては、施工・品質管理体制の強化、本支店による施工全般に対する支援や技術的な指導、外部の有識者に参画いただいた調査委員会の提言を踏まえて策定した再発防止策の徹底により、更なる追加損失の発生を防止してまいります。この再発防止策については、建築事業におけるリスクの高いと判断される他の工事にも適用し、同様の損失発生のないように努めてまいります。加えて、建築事業全般の業績改善につきましては、施工体制逼迫の改善と現場支援体制の再構築、受注プロセスにおけるガバナンス強化と最適な受注ポートフォリオの構築、利益を重視した目標管理の徹底の3点を確実に実施するとともに、リスク対策を実施した工事への入れ替えを進め、建築事業の業績改善に取り組んでまいります。
≪具体的な再発防止策≫
・受注プロセスにおける審査の充実化
・大規模工事における継続的なモニタリングの徹底
・外部専門家による不具合検証と再発防止策の提案・実施
・図面管理に関する対策(チェック能力の平準化、図面管理システムの構築)
・体制の増強(特別対応チームの編成 等)
・リスク情報の早期共有
・規則に基づく管理・運営の徹底
・品質管理の重要性に関する教育実施
・業務担当者のフォロー体制の構築等
・受注プロセスにおけるリスク対応の徹底
・体制、工程の事前検討の徹底
・他社設計案件(急速施工工法)の取扱い(原則「不可」とする)
・工場間における不具合情報共有の徹底
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