レノバ 【東証プライム:9519】「電気・ガス業」 へ投稿
企業概要
文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものです。
(1) 会社の経営の基本方針
当社グループは次の「ミッション/経営理念」、「ビジョン/目指すべき企業の姿」及び「経営原則/レノバのコミットメント」を掲げています。
■ミッション/経営理念 グリーンかつ自立可能なエネルギー・システムを構築し枢要な社会的課題を解決する
■ビジョン/目指すべき企業の姿 日本とアジアにおけるエネルギー変革のリーディング・カンパニーとなること
■経営原則/レノバのコミットメント 地球:人類と地球の、永遠の共生に貢献します 地域:歴史と文化を尊重し、新たな価値を共に創ります 顧客:経済的で環境にやさしいエネルギーを供給します 株主:株式価値を持続的に創出します 社員:有能な人材を集結し、エキサイティングな自己実現の機会を提供します
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上記の達成のため、当社グループは現在、次の5点を重視した経営を行っています。
①再生可能エネルギーへ中長期的にフォーカスする
当社グループは「日本とアジアにおけるエネルギー変革のリーディング・カンパニーとなること」というビジョンの実現を目指しており、再生可能エネルギー市場に経営資源を集中的に投下しています。脱炭素化と再生可能エネルギーの導入拡大は世界の潮流です。2021年10月に閣議決定された第6次エネルギー基本計画における2030年度の電源構成において、再生可能エネルギーの比率が36~38%程度に大幅に引き上げられました。なお、2024年度には、2035年以降を目標としたエネルギー基本計画の議論が開始されます。当社グループは、この成長市場である再生可能エネルギー市場において、中長期的に事業を拡大させていきます。
②独立系企業として、国内外において電源開発とGX事業を推進する
当社グループは、太陽光発電、バイオマス発電、陸上・洋上風力発電、地熱発電及び水力発電等の複数種類電源(マルチ電源)の発電所を開発することを志向しています。FIT制度だけに依拠せず、再生可能エネルギー電力の調達ニーズが高まっている電力需要家に対して直接電力を販売するコーポレートPPA事業も促進し、更なる発電容量の増加を目指していきます。
当社グループは独立系資本の特性を生かして多様なパートナーと連携することで、引き続き大型で先進的なマルチ電源開発を推進していきます。そして、電源開発に留まらず、蓄電池やアンモニア・水素等を含む新燃料等、GX事業も検討・開始しており、当社蓄電池第一号案件の姫路蓄電所が2023年8月に建設を開始しました。
③エンジニアリングと主要な開発業務を内製化し、高い収益性を追求する
事業開発の成功確度向上や高収益化を実現し、且つスピーディーな事業開発の推進を行うために、当社はエンジニアリングをはじめとした、事業開発における重要なプロセスにおいて各分野のスペシャリストを社内に擁し、高付加価値業務を内製化する方針です。
④安定したキャッシュ・フローを新規事業の開発及び既存事業の内部成長のため積極的に再投資する
当社グループは既存の発電所から長期に得られる強固なキャッシュ・フローを新規の事業開発に積極的に再投資し、持続的成長を図ることで企業価値の増大を目指し、もって株式価値の向上に努めていきます。
また、当社グループは借入れを活用したハイレバレッジのファイナンススキームを開発事業ごとに組成し、各事業における必要出資額を抑えています。さらに、ファイナンス組成の初期において複数の共同出資者を募ることにより当社の出資持分を抑制して、少ない投下資本で数多くの事業を手掛けられる投資モデルを採用しています。これによって建中リスクの低減を実現させることは、リスク分散の一助となっています。また、コール・オプションの行使や共同出資者との出資交渉により出資持分を追加取得し、事業期間(FIT適用事業の場合はFIT期間、Non-FITの場合はPPA期間、以下同じ)を通じて得られるリターンの最大化を図っています。
⑤地域との共生・共創により、長期的な発展を目指す
当社グループは、各地に広がる再生可能エネルギー発電所を長期にわたって所有・運営していきます。また、再生可能エネルギーとは本来それが存在する地域の資源であり、発電所はその資源を活用させていただいているという視点を、当社グループは大事にしています。今後も、当社グループの各発電所がそれぞれの地域に根ざし、地域関係者との長期的な共生・共創の関係を構築・維持出来るよう尽力していきます。
(2) 目標とする経営指標
①EBITDAを重視した経営管理
当社グループの再生可能エネルギー事業は多額の初期投資を必要とする事業であり、全体の費用に占める減価償却費等の割合は大きい傾向にあります。一過性の償却負担に過度に左右されることなく、企業価値の増大を目指し、もって株式価値の向上に努めるべく、当社グループでは経営指標としてEBITDA(売上収益-燃料費-外注費-人件費+持分法による投資損益+その他収益・費用)を重視し、その持続的な増大を目指していきます。
太陽光発電所については、売上収益、EBITDA、営業利益のいずれも事業期間にわたって安定しています。売上収益は、時間の経過に伴う設備の経年劣化による発電効率の低下(主に太陽光パネルの劣化)は見られるものの、全発電量に対して固定価格による売電契約を締結していることから高い予見性があります。費用及び償却性費用についても平準化されており、事業期間を通じてEBITDA及び営業利益についても高い予見性があります。
バイオマス発電所においても、基本的な傾向は太陽光発電所及び陸上風力発電所と同様ですが、発電効率は長期間にわたり一定であることが見込まれる一方で、メンテナンス期間や計画外停止期間、燃料価格の変動に伴い売上収益、EBITDA及び営業利益は変動します。当社グループでは、長期にわたる安定的な事業運営を目的として、燃料供給会社との間で長期の固定価格、固定数量の燃料購入契約を多く締結することで、前述のEBITDAや営業利益の変動の極小化に努めています。
なお、事業期間満了後の事業性が認められる場合の売電収入、EBITDA及び営業利益は、売電市場の状況、新規設備導入の状況及び土地賃料や燃料価格の水準等により変動します。
②事業の現在価値を重視した投資
再生可能エネルギー発電所の事業開発においては、一般的に、地権者又は地域関係者との開発合意、資源量の調査、各種許認可取得、エンジニアリング、ファイナンス関連契約及びプロジェクト関連契約の締結、工事・建設といった段階を踏みます。
下記の図は、当社の一般的な再生エネルギー発電所開発を例にとり、開発マイルストーンの経過に伴い、各再生可能エネルギー事業の事業価値が変化するイメージを図示したものです。運転開始の前段階においては、各マイルストーンを達成し、事業化の実現可能性が向上するに従い、事業価値が向上します。特に、融資団との間でファイナンス契約を締結し、着工に至って設備の建設が進む段階では、事業価値は急速に顕在化し、運転開始時において理論的には将来の予定獲得キャッシュの現在価値に達していきます。
運転開始後の発電事業は事業期間を通じて出資者に対する金銭の分配を行い、当該分配に伴って発電事業の価値は減少していきます。事業期間が満了となった再生可能エネルギー発電事業は、事業期間におけるFIT制度や売電契約に依らない売電に事業性が認められた場合は一定の事業の価値が残存致します。当社グループはかかる事業性判断において、事業期間満了時における売電市場、卸電力取引所、地域、地権者及び事業関係者との状況等を踏まえた検討を行う方針です。なお、当社グループの再生可能エネルギー発電所は事業期間満了後(海外事業においては、各国の再生可能エネルギー導入促進制度の適用対象となる期間の満了後)に事業継続判断が成されない場合に備え、設備撤去費用を事業期間中に積み立てています。
(再生可能エネルギー発電所の事業価値向上イメージ)
(3) 中期的な会社の経営戦略
当社グループは再生可能エネルギーによるマルチ電源化及びGX事業等による事業領域の拡大を推進しており、運転開始済み発電所及び蓄電所の合計発電容量が3.0GW超となることを中期的な通過点として捉えています。これに向けて、当面は先行投資を継続し優良な事業に対して積極的な投資を実行していく中で、当社グループでは現在、次の経営戦略を実行しています。
①建設中事業の着実な運転開始及び安定稼働による更なる収益基盤の構築
2024年3月31日現在、建設中事業はバイオマス発電所が2ヶ所、陸上風力発電所が2ヶ所、水力発電所、蓄電所が各々1ヶ所ありますが、今後、工事が完了し運転を開始する予定です。これらの事業が予定通りに運転開始することにより、当社の収益に大きな貢献をする予定です。
特に現在建設中のバイオマス発電事業においては、既に運転中である5ヵ所のバイオマス発電事業で培ったノウハウを共有・活用することで、高稼働率の発電事業の実現を目指します。そして、既に運転を行っている多くの太陽光発電所からの安定的な収益と合わせ、当社の基盤収益の更なる拡大を構築し、中長期的な成長を実現していきます。
②海外事業開発の加速化
アジアにおいては、ベトナム、フィリピン、韓国、インドネシア並びにシンガポールに拠点を構え、エンジニアリングチームを含め約40名程度の体制で海外事業の開発を推進しています。更に、2023年12月には、米国で太陽光発電所や系統用蓄電所等の開発・運営を手掛けるPathway Power Holdings LLC(本社:米国カリフォルニア州サンディエゴ)の総額25百万米ドルの転換社債(Convertible Note)を引き受ける契約を締結し、新たな市場の開拓を実現しております。海外においても日本で培ったノウハウを横展開し、開拓・開発・資金調達・保守運営に至るまで一気通貫で当社が積極的に関与することで、海外での事業開発を加速し、長期的な成長と更なる株式価値の向上を実現していきます。
③国内再生可能エネルギー事業の積み上げ
2021年10月に日本政府により閣議決定された第6次エネルギー基本計画において、国内の2030年度の再生可能エネルギーの電源構成比率の目標は第5次エネルギー基本計画における24~26%から36~38%へと大幅に引き上げられました。なお、2024年度には、2035年以降を目標としたエネルギー基本計画の議論が開始されます。また、電力需要家側での再生可能エネルギーへのニーズの高まりも受け、国内の再生可能エネルギー市場は引き続き拡大していく見通しです。当社は、これまでに培った開発ノウハウを活用し、太陽光発電、バイオマス発電、陸上・洋上風力発電、地熱発電等のマルチ電源の開発を推進していきます。
④脱炭素に向けたGX事業の展開
従来型の再生可能エネルギーによる発電事業に加え、国内外の脱炭素化を更に加速するため、併設型を含む蓄電池事業等、環境に関する社会的課題を脱炭素の観点から解決するGX事業の開拓も推進しています。2023年8月には、蓄電池第一号案件の姫路蓄電所の建設を開始しました。また、2024年4月には、当社が開発を進めている3つの蓄電池事業が長期脱炭素電源オークションにて選定されました。
⑤オペレーション機能を内製化し、持続的かつ安定的な操業の実現
バイオマス発電所及び風力発電所を持続的かつ安定的に操業するには、一定のオペレーションのノウハウが必要です。現在、当社グループの運転中の大型バイオマス発電所は全部で5ヵ所あり、さらに2025年3月期末までに2ヵ所の大型バイオマス発電所が運転を開始する予定です。
当社グループは、内製化したオペレーション機能をハブとして、知見やノウハウを各発電所間で共有し、各発電所の運転、モニタリングや安全管理を、効率的かつ安定的に行っていきます。安定稼働の実現によって、社会的責任を果たすと同時に、予見性の高い安定的なキャッシュ・フローの創出を実現してまいります。
(4) 会社の対処すべき課題
当社グループは、再生可能エネルギー市場に参入した2012年から、安定的な収益獲得が見込め、事業の着実な積上げによる収益成長が期待できる発電事業の開拓・開発に注力してきました。国内においては、太陽光発電、バイオマス発電、陸上風力発電、地熱発電及び蓄電池事業を中心に、アジアにおいては陸上風力発電及び水力発電事業を中心に開発を行った結果、当社グループの太陽光発電、バイオマス発電、陸上風力発電、地熱発電及び水力発電等は運転開始済み及び現在建設中の事業を合算すると1GWを超え、本邦有数の規模を有する事業会社に成長しました。
当社グループでは、国内外において積極的な先行投資と事業開発を継続し、更なる成長を目指す方針です。
新たな事業領域での開発に係る各課題への適切な対処に加え、事業規模の拡大に伴いより高度な経営管理体制の構築が求められる中、当社グループでは以下の項目に取り組んでいきます。
①持続的な成長に向けた、新たな発電事業の開拓と実現
a.新規の再生可能エネルギー発電事業、新たな事業領域の開拓
再生可能エネルギー発電所の新規事業を開拓することは、当社グループの持続的な成長のために重要です。
当社グループは、これまで太陽光発電及びバイオマス発電を中心に「再生可能エネルギー発電事業」の展開を進めてきました。今後も引き続き、国内外において太陽光発電、バイオマス発電、陸上・洋上風力発電及び地熱発電のマルチ電源開発の開拓・推進、さらに、GX事業等による事業領域の拡大を当面の注力領域として、人員・経営リソースを重点的に配分しています。
多様化した電源・事業領域にて同時に複数の新規事業を検討するためには、事業情報の収集及び開発可能性の見極めを効率的かつ効果的に行う必要があります。内製化したエンジニアリング機能によって蓄積されたノウハウと専門人材の知見、現地化による適時適確な意思決定を行う体制、過去10年にわたる発電事業開発によって構築した情報ネットワークとパートナーシップ等を最大限に活用し、収益拡大に貢献する新規の再生可能エネルギー発電事業の開拓を行っていきます。
b.専門性の高い人材の確保と育成
国内外の新たな市場において更なる事業の拡大を図り、変化し続ける事業環境に柔軟に対応し、当社グループの強みとなる専門性を高め差別化を図っていくためには、多様な人材の確保と育成が重要です。
当社グループでは、優秀で専門性の高い人材にとって魅力ある会社づくりを行うために、組織構成や人事考課制度の見直しを図るとともに、公正な評価基準設定と目標達成度に応じた評価及びフォローアップ、教育研修の充実等に引き続き取り組んでいきます。また、人材採用においては、今後の当社グループの軸となる人材を育てるために新卒採用を行いながら、一方で即戦力となる人材を中途採用することで効率的に人員体制の拡充を図っていきます。特に、マルチ電源及びGX事業の開発方針を踏まえた人員拡充や、事業拡大に伴う管理部門の強化・育成、今後の海外展開を見据えた海外経験の豊富な人材の拡充と社内人材育成を引き続き行っていきます。
c.開発中の再生可能エネルギー発電事業及びGX事業の着実な実現
一定の事業性が認められた事業の開発を着実かつ迅速に推進することは、当社グループの持続的な成長を実現する上で重要です。
当社グループは2024年3月末時点で、持分法適用会社である合同会社御前崎港バイオマスエナジー(出力75.0MW)、及び合同会社唐津バイオマスエナジー(出力49.9MW)においてバイオマス発電所の建設、苓北風力合同会社において陸上風力発電所(出力54.6MW)の建設、姫路蓄電池匿名組合事業(出力15.0MW)において蓄電所の建設、フィリピンにおいて水力発電所(出力8.3MW)の建設を推進しており、マルチ電源及びGX事業の開発に向け積極的に取り組んでいます。
当社グループは今後も地域社会や環境に配慮しつつ、当社の開発基準に見合った収益性を確保した上で、地域関係者協議、発電所設計、電力会社協議及び許認可取得等、事業化に向けて着実かつ迅速に開発を進めていきます。また、建設工程においても、安全管理・工程管理・コスト管理を徹底し、運転開始までのスケジュールを順守していきます。
d.事業パートナーシップの拡大
今後の持続的な成長のために、国内外の有力なパートナー企業と協力し、大型事業や先進的事業への取り組みを実行することが必要です。
豊富な実績に裏打ちされた当社グループへの信頼及び評判は、再生可能エネルギー業界における自治体や学術機関、有力企業とのネットワークの構築に貢献してきました。当社は、再生可能エネルギー業界における有力企業との戦略的事業パートナーシップを拡大しており、複数の開発中事業において、有力企業と共同で事業開発を推進しています。
2024年4月1日に、東京瓦斯株式会社(以下、東京ガス)と資本業務提携契約を締結しました。当社は東京ガスに11,877,600株(割り当て時の13.04%の株数)を割り当て、約178億円の調達を行いました。国内の陸上風力発電事業の共同開発、小規模分散型のNon-FIT太陽光発電事業の電力の販売、バイオマス発電事業における燃料・オペレーションでの協業、更に系統用蓄電池事業での協業を進めてまいります。
また、海外事業においては、現地の有力なパートナーとの連携により、着実な事業開発の推進を実現しています。
当社グループは、個別事業の開発における有力パートナー企業との連携を一層強化し、再生可能エネルギー事業やGX事業の新たなノウハウと実績を蓄積し、更なる事業の好循環を目指して経営を行っていきます。
②事業運営・オペレーション機能の強化
a.既存発電所による安定的キャッシュ・フローの創出
当社グループの所有する再生可能エネルギー発電所による予見性の高い安定的なキャッシュ・フローの創出は、当社グループが長期的かつ持続的な事業開発を行う上で重要です。
当社グループは、2024年3月末時点での運転中の発電所として、合計出力約830.7MWの発電所を有しており、これらの発電所において適切なメンテナンス及びモニタリング体制を構築することで、安定的な稼働を実現していきます。
太陽光発電所及び陸上風力発電所における日射量や風量等の天候発生確率は、統計的に一定の割合に収束すると見込まれることから、事業期間を通した総発電量は比較的予見可能性が高いものと見込まれます。さらに、当社グループの太陽光発電所の所在地は、日本各地に地理的に分散しており、局地的な異常気象に左右されにくい安定的なキャッシュ・フローを創出する構造となっています。また、当社グループの所有するFIT制度に基づく太陽光発電所は、全て40円/kWh又は36円/kWhでの買取価格を確保しており、FIT期間にわたり高い収益性を有しています。
また、バイオマス発電所においては、安定的な燃料の調達及び適切な運転・メンテナンス体制を構築することで、安定した発電を行う事が可能となり、結果、長期的に安定的なキャッシュ・フローを生み出すことが可能となります。
当社グループでは引き続き、予見性の高い安定的なキャッシュ・フローを創出するべく、既存発電所の適切な運営に取り組んでいきます。
b.オペレーション機能の充実と安全管理
当社グループでは、事業基盤をより強固にするべく電源の多様化を進めています。当社グループの建設中・運転中の発電所・蓄電所は、2024年3月31日現在、1GW超となり、さらに2025年3月期末までに2つの大型バイオマス発電所が運転を開始する予定です。特に、バイオマス発電所は定期修繕等の場合を除いて24時間稼働を行うため、安定的に電力を供給する社会インフラとしての責任を果たすことがより一層求められ、発電所を安定的・持続的且つ安全に運転することが、重要な経営課題であると認識しています。
当社は、発電所のオペレーションを専門的に行う部門の内製化により各発電所間での知見・ノウハウ・安全対策の共有を行い、さらに、バイオマス事業本部をオペレーション本部から独立させ、バイオマス事業に特化したチームを編成することで安全管理の充実を図り、万全の体制でバイオマス発電所の試運転及び運転開始に臨む方針です。今後も国内外の発電所を持続的、安定的に運営するための体制を充実させていきます。
③高い資本効率と、持続的な成長のための財務基盤の実現
a.継続的な資金調達の実施及び資本効率の向上
当社グループでは、資本効率を向上させながら大型の再生可能エネルギー事業及びGX事業の開発投資を行うために、長期及び短期借入金を組み合わせた財務レバレッジを活用しています。
当社グループは、2024年3月末までに、再生可能エネルギー発電所の事業化に係るプロジェクトファイナンス関連契約を締結し、銀行を中心とする金融機関より、累計約4,000億円超(連結子会社及び持分法適用会社における約定ベース)の長期のプロジェクトファイナンスを組成しています。その結果、2024年3月末時点において、当社グループの連結有利子負債残高の約9割がSPCにおけるプロジェクトファイナンスにより調達されています。
今後も大型の事業への開発投資を継続的に行っていくにあたり、一定の強固な財務基盤を維持していくことが重要であると認識しています。
当社グループは、引き続き好条件での資金調達を実施するために、資本市場における情報収集及び分析に努める他、調達先の多様化、先進的な調達手法の検討や金融機関との関係性強化を行っていきます。また、グループ全体の資金管理や調達管理の充実、SPCからの資金回収の早期化を進め、受領した配当資金等により新たな事業の再投資を行うことで、資本効率の向上に一層取り組んでいきます。
b.事業投資及び経営に関する指標設定と運営
当社グループでは、経営原則の一つとして株式価値の持続的な向上を掲げています。これに関連し、当社グループは、新規再生可能エネルギー事業及びGX事業への投資判断を行う際には、出資金額に対する内部収益率(IRR)の見込み値が一定水準を上回ることを原則としています。また、IRR水準を満たす事業候補の中で、株式価値の向上がより大きく見込まれる事業への投資を優先的に行うために、事業の正味現在価値(NPV)を重視しています。加えて、事業投資を決定した後も、事業毎にIRR水準、NPV及び予実差異を管理分析し、収益性の管理を強化していきます。
当社グループの再生可能エネルギー事業及びGX事業は多額の初期投資を必要とする事業であり、減価償却費等の償却費の費用に占める割合が大きくなる傾向にあります。一過性の償却負担に過度に左右されることなく、企業価値の増大を目指し、もって株式価値の向上に努めるべく、当社グループでは引き続き経営指標として金利・税金・償却前利益であるEBITDAを重視し、その持続的な増大を目指していきます。
c.発電所SPC持分の追加取得による内部成長
当社は、資金制約がある中でより多くの再生可能エネルギー発電所の事業を早期に事業化するべく、開発段階における投資資金の配分を各発電所SPCへ分散化させることを志向しています。そのため、事業成立時点で当社が所有する多くの発電所SPCの出資持分比率は持分法適用水準としており、当該SPCの出資持分の追加取得による連結化及び内部成長の実現は当社グループの持続的な成長のために重要です。
「第2 事業の状況 3 事業等のリスク (2) ファイナンスに関する事項 ②各発電所SPCに対する出資持分」に記載のとおり、当社は共同出資者との出資者間合意の定めにより、一定期間の経過後に一定の価格にて当社が他共同出資者の出資持分を買い取る権利(コール・オプション)を有し、また、他共同出資者がその出資持分を当社に売り渡す権利(プット・オプション)を有している場合があります。なお、共同出資者とオプション契約を締結していない場合においても、共同出資者との合意が得られた場合には、当社は再生可能エネルギー発電所の出資持分を追加取得する可能性があります。
なお、出資持分追加取得の判断は当該時点における当社の経営方針、資金状況、その他状況等を総合的に勘案の上で決定します。
④事業の成長を促す強い組織とガバナンス体制の構築
a.内部統制及びガバナンスの強化
社会的に内部統制の重要性が増大し、また事業拡大に伴い関係会社を含めた当社グループの売上規模も拡大していく中、持続的に健全な成長を果たすためには、当社及び関係会社の内部統制及びガバナンスの一層の強化が不可欠であると考えています。現在、当社は、基本方針として取締役の半数以上を社外取締役によって構成するモニタリング型の取締役会を指向しています。経営の監督と執行の分離による経営のモニタリングレベル向上に加え、リスク管理等の内部統制レベルの向上を継続的に図るとともに、事業推進に必要な意思決定の迅速化にも邁進しています。また、取締役会の任意の諮問機関として指名・報酬委員会を設置する等、取締役会機能を強化しています。今後も、コーポレートガバナンス・コードの精神に則った実効的なコーポレート・ガバナンスの実現を目指していきます。
b.関係会社の事業運営状況のモニタリング強化
当社グループにおいては業績に占める関係会社の貢献割合が高いため、当社によるグループ経営管理体制を整備し、適切に運用することが重要です。
当社は、関係会社の継続的なモニタリング活動を通じて、各社の直近の運営状況を適時に把握する仕組みを講じています。また、関係会社の事業計画の策定支援及び予実分析を実施しています。さらに、関係会社と連携して、各社の業務プロセスや各種規程の定期的な見直しを行うとともに、安全衛生管理や労務管理等含め、グループ一体となった管理体制の構築にも取り組んでいます。
今後も引き続き、関係会社のモニタリングを一層強化し、より良い経営管理体制の整備及び運用を推進していきます。
c.コンプライアンス対応
当社グループにおいては、当社グループのコンプライアンス憲章に則って社内遵法体制の整備を行ってきました。事業に関連する法令、会社法、労働法への対応等、コンプライアンス管理体制の一層の強化と厳格な運用が重要な経営課題と認識しています。当社グループでは代表取締役社長CEOを委員長とするコンプライアンス委員会を設置しており、当該委員会の充実を図ることでコンプライアンス意識の浸透を徹底し、一層のコンプライアンス管理体制の強化を図っていきます。さらに、連結子会社内におけるコンプライアンス意識向上のための教育・指導にも継続して取り組んでいきます。
d.発電事業者を取り巻く法令規則等への対応
事業に関連する法令の制定や改正が行われた場合、新たなルールに迅速かつ適切に対応することは、当社グループの競争力の維持強化に資するものです。
当社グループでは、関連法規等の改正の状況を常時モニタリングする従業員を配置し早期の情報収集に努めるとともに、必要に応じ他の電気事業者や業界団体と協力して政策提言を実施していきます。
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