レナサイエンス 【東証グロース:4889】「医薬品」 へ投稿
企業概要
文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において当社が判断したものであります。
(1)会社の経営方針
当社は、医療現場の課題を解決するための多様なモダリティ(医薬品、医療機器、AIを活用したプログラム医療機器)を、医療現場で研究開発し、医療イノベーション創出に貢献することで、ヒトが心身ともに生涯にわたって健康を享受できるための新しい医療を創造することを経営理念として掲げています。
(2)経営戦略
① 多様なモダリティ開発
当社は特定の技術に特化したベンチャーでは無く、広くモダリティ(医薬品、医療機器など治療の様式)の開発に取り組みます。医薬品産業も、低分子医薬品を中心とした開発から、バイオ医薬品(抗体医薬、核酸医薬品、遺伝子治療、細胞治療)へと、モダリティが多様化しつつあります。更には近年の工学系や情報系技術の進歩により、情報・工学技術との融合による新たな医療の模索も進んでおり、欧米や国内の大手製薬企業では既に医薬品単体のビジネスから医療ソリューション全般にわたるビジネスへの転換を迎えております。医薬品、医療機器、更にはAIを活用したプログラム医療機器など、医療現場での治療のオプションも広がりつつあります(図表23)。当社もこれまで主体であった化学系や生物系の研究に加えて、工学系や情報系の研究にも視野を広げ、医療課題を解決する多彩で魅力ある研究と事業のポートフォリオを創出します。
< 図表23 医療の変遷とモダリティの広がり >
(出典:当社作成)
広くモダリティ開発に取り組むことには、早期の黒字化と将来の収益確保の両立という経営面での利点もあります。医薬品事業は、研究開発費や研究開発期間が比較的大きく事業リスクが高い分野ですが、上市後には極めて高い収益が期待できる事業です。一方、医療機器やプログラム医療機器の事業収益は医薬品と比べると小さいですが、研究開発費や研究開発期間のリスクは小さく、早期に当社収益につながります。当社は、これら2つの事業ポートフォリオを、同時に複数のパイプラインで進めることにより、リスクを分散しながら早期の黒字化と将来の収益の拡大を目指します。
<図表24 当社の事業ポートフォリオ >
(出典:当社作成)
② 少子高齢化の医療課題。
世界保健機関(WHO)では、高齢化や生活習慣に伴う重要な疾患(老化関連疾患)を「非感染性疾患(NCDs)」として位置付け、がん・糖尿病・呼吸器疾患・循環器疾患が対象となっています。2023年の全世界の死亡者数の74%がこれら疾患で亡くなっています(世界保健機関、Newsroom)。当社の開発品目は、これら4疾患を全て対象としており、先進国のみならず新興国でも重要な医薬品を開発しています。また、少子化問題も重要な社会的課題ですが、少子化問題に注力している製薬企業は多くはありません。当社は、女性(月経前症候群/月経前気分不快障害、更年期障害、乳がん病理診断プログラム医療機器)や小児の医療課題にも注力しています。
③ アカデミアなどの研究機関や医療機関とのネットワーク
医療イノベーション創出におけるアカデミアなどの研究機関や医療機関の役割が広がりつつあります。低分子医薬品と異なり、バイオ医薬品の技術基盤やシーズは研究機関にあります。また、AIを活用したプログラム医療機器の開発に必要な医療データは企業ではなく医療機関が有しています。当社は、多くの医療機関や診療科と複数の医療分野で医師主導治験を実施しているので、医師から医療現場の課題を把握する機会が多く、またAI開発に必要な医療データも比較的短期間でビッグデータが取得しやすい環境にあります。アカデミアなどの研究機関や医療機関とのネットワークを更に効率的に拡大することを目的として、東北大学などに研究開発拠点を持ち、オープンイノベーションを推進しています(図表25)。
< 図表25 当社が有する研究機関・医療ネットワーク >
(出典:当社作成)
④ 基礎研究から医師主導治験まで一気通貫での開発
当社は基礎研究から治療のコンセプトやアイデアを着想し、医薬品や医療機器などの「モノづくり」を行っています。適切な動物や細胞を用いた非臨床試験を終了し、必要なヒトにおける臨床試験(治験)で実証し、販売の許可を受けるための承認申請に近いところまで自社で対応します(図表26)。例えば、血液がんの一種である慢性骨髄性白血病の治療薬は現在、承認申請に必要な最後の臨床試験である第Ⅲ相試験を実施中ですが、第Ⅲ相試験まで自社で実施する予定です。その理由は、希少疾患などの治療薬は大手製薬企業からは注力されにくい場合が多いことや、更に第Ⅲ相試験まで自社で実施することで大きな事業収益が期待できるからです。
< 図表26 当社のビジネス・モデル >
(出典:当社作成)
⑤ 医師主導治験の活用
当社は、基礎研究から臨床試験まで広く研究を実施している医師(physician-scientistという)との共同研究を重視しています。基礎研究分野で共同研究を行っている多くの研究者は医師でもあり、自ら治験調整医師(治験責任者)として医師主導治験を実施することが可能です。基礎研究と臨床研究を実施する研究者が同じである場合が多いので、基礎研究から医師主導治験まで一気通貫で実施、効率的な開発ができます。当社の治験は基本的に医師主導治験で実施しています。
当社は、これまで28件に至る医師主導治験の実績(図表27)があり、医師主導治験には多くの利点があります。医師自ら治験を立案及び実施できますので、医療現場での課題や実情に合った試験計画や枠組みで実施できます。2003年の薬事法改正によって、医師自らが治験を実施する医師主導治験の道が開けましたが、治験に必要な医薬品を安全性試験、製剤を含めて全て自ら準備することは依然として難しい状況です。当時は、海外承認国内未承認の新薬や適応外使用薬(いわゆるドラッグラグ)も数多く存在したので、国内未承認薬や適応外使用薬が医師主導治験の主流でした。治験の実施し易さ(製造から安全性試験など既存のデータで対応可能)という点からも、多くの大学等の医療機関の医師が海外承認(国内未承認)の新薬や適応外使用薬の治験を医師主導で取り組みました。また、製薬企業が取り組まない希少疾患を対象に既存医薬品を用いて医師主導治験として実施される場合もありました。そのような背景から、「医師主導治験は適応拡大やオーファン疾患が対象」という印象が定着していた時期もございます。しかし、当社が行う治験は全て未承認の薬剤(first-in-human)を対象としており、海外承認薬(国内未承認)や既存薬の適応拡大のための治験ではありません。
< 図表27 医師主導治験等の数 >
(28件の内訳は、医師主導治験25件、臨床性能試験2件、治験外臨床性能試験(臨床研究)1件)
(出典:当社作成)
⑥ 外部機関とのエコシステムの形成
これまでの製薬企業や創薬ベンチャーの多くはパイプラインのバリューチェーン(開発の全ての工程の積み上げ)を自社で全て構築し、事業価値を高めることに注力してきました。しかし、医薬品のように成功確率が極めて低く、開発期間が長く、投資が大きな分野では研究開発及び事業リスクが大きいため、多くのパイプラインを組み合わせたポートフォリオを形成し、リスク分散をすることが不可欠です。大手製薬企業は潤沢な資金を背景に、多くはパイプラインのバリューチェーンを自社独自で形成するという既存の枠組みでの開発ができますが、ベンチャーのように資金が潤沢でない場合なかなか難しいのが現状です。当社は外部機関(研究機関、医療機関)のリソースを活用してコストを抑えるなど、効率の高い開発を実践してきました。外部機関とのアライアンスをもとに多くのバリューチェーン構築を考えており、既存ベンチャーとは戦略、研究開発、人的資源管理などが異なります。少ない人的リソースや経費で多くのパイプラインを広げ、モダリティを展開し、成果も出つつあります。自己資源や社内環境のみに注力するのではなく、むしろ外部資源や外部環境にも注力し、効率的にイノベーションを創出する枠組みを構築していきたいと考えています。オープンイノベーションラボの設立もその一環として推進しています(図表28)。
< 図表28 当社の事業戦略 >
⑦ オープンイノベーションラボ(TREx、HiREx)の設立
当社は創業当時、腎臓病の疾患動物モデル飼育施設を含む研究所を神奈川県・川崎バイオ特区に有しておりましたが、研究対象が腎臓病から多くの疾患領域に拡大し、研究段階が基礎から治験へ進むにつれ、当初の腎臓病の疾患動物モデルを主体とした研究所は閉鎖しました。しかし、多くの疾患領域に対する最先端の科学技術成果の活用の「場」、医師や研究者とのFace to Faceの交流の「場」、行政や医療産業企業とのオープンイノベーションの「場」が必要であると考え、2022年1月、東北大学に東北大学レナサイエンスオープンイノベーションラボ(Tohoku University x Renascience Open innovation Labo:TREx)を開設しました(図表29)。TRExは2021年4月に締結された「仙台市と東北大学との地域経済発展に関する協定」に基づく拠点立地の第一号案件でもあります。TRExでは、1)東北大学大学院医学系研究科の研究者、東北大学病院の医師、東北大学メディシナルハブに参画する企業、行政など異業種との連携が加速され、2)既存の開発パイプラインの研究推進と複数の新規シーズの導入ができ、3)医師主導治験の実施、医療データの取得、公的資金獲得、許認可戦略の立案などを効率的、迅速に対応できており、4)人材の育成と確保にもつなげられています。
更に、第二のオープンイノベーションラボとして、2023年4月には広島大学に広島大学レナサイエンスオープンイノベーションラボ(Hiroshima University x Renascience Open innovation Labo:HiREx)を開設しました。広島大学は、経済産業省の「ワクチン生産体制強化のためのバイオ医薬品製造拠点等整備事業」に国内大学では唯一採択され、2022年10月に「PSI GMP教育研究センター」を新設し、メッセンジャーRNA(mRNA)ワクチンをはじめ、核酸やペプチド等、中分子を主体とした治験薬製造施設を有しています。また、広島大学は学術・社会連携室の中にオープンイノベーション本部を設置し、地方におけるイノベーション拠点として新産業の創出を目指しています。広島大学の特色や強みを生かした研究開発拠点として、産学の連携を通して、医師主導治験実施を含めた医薬品及びプログラム医療機器の共同研究開発を行い、研究開発の効率化及び推進並びに人材育成などを目的とし「包括的研究協力に関する協定」を締結しました。本協定では、HiRExを活用し複数の医師主導治験(医薬品)、臨床性能試験(プログラム医療機器)を継続的に実施しつつ、広島大学の医療シーズの共同開発も視野に入れています。
具体的に2023年度から非小細胞肺がん及び皮膚血管肉腫の第Ⅱ相医師主導治験並びに維持血液透析医療支援プログラム医療機器及び糖尿病治療支援プログラム医療機器の臨床性能試験を実施しています。
< 図表29 TRExの風景 >
(3)目標とする経営指標
当社の事業収益は、医薬品、医療機器、プログラム医療機器の研究開発成果を実用化企業に導出して得る一時金、マイルストーン及びロイヤリティ収入がメインです。そのため下記の4つの経営指標を掲げています。
① 臨床段階にある開発パイプライン数
パイプラインを実用化企業に導出するためには、非臨床試験や第Ⅰ相試験(健常者での安全性確認試験)では難しく、少なくとも患者での有効性の確認(第Ⅱ相試験)の治験が終了していることが必要です。そのため、臨床段階(特に第Ⅱ相試験以後)にある開発パイプライン数は重要な数値目標になります。当社は当事業年度末日現在において、2025年3月期に臨床試験を実施予定のパイプラインを10本(医師主導9本、企業治験1本)有しており、内訳は第Ⅲ相試験2本(慢性骨髄性白血病、悪性黒色腫)、第Ⅱ相試験4本(非小細胞肺がん、皮膚血管肉腫、全身性強皮症、月経前症候群及び月経前不快気分障害)、第Ⅰ相試験1本(脱毛症)、臨床研究1本(更年期障害)、承認申請のための臨床性能試験2本(糖尿病治療支援プログラム医療機器、維持血液透析医療支援プログラム医療機器)です。2023年3月期、2024年3月期に臨床段階にある開発パイプライン数がそれぞれ7本及び9本であることからも、順調に開発パイプライン数は増加しています。
臨床開発は販売の許可を受けるための承認申請に近いところまで自社で対応します。例えば、2022年12月に承認を得た医療機器(極細内視鏡)は、製品コンセプトから試作品開発、非臨床試験の実施、検証のための医師主導治験まで複数の大学と共同で開発を進め、当社が取得した成績で承認申請を行いました。また、血液がんの一種である慢性骨髄性白血病の治療薬は現在、承認申請に必要な検証試験である第Ⅲ相試験を実施中ですが、今後も可能な場合は第Ⅲ相試験まで自社で実施したいと考えています。その理由は、希少疾患などの治療薬は大手製薬企業からは注力されにくい場合が多いことや、更に第Ⅲ相試験まで自社で実施することで大きな事業収益が期待できるからです。AIを活用したプログラム医療機器も承認申請のための臨床性能試験まで実施します(糖尿病治療支援プログラム医療機器、維持血液透析医療支援プログラム医療機器)。
今後は慢性骨髄性白血病、悪性黒色腫の第Ⅲ相試験に特に注力するものの、継続的に少なくとも年間5件程度の治験を医師主導治験で実施することを目標として掲げています。
② 契約締結パイプライン数
当社は、製品の開発権、製造権、販売権等をライセンスアウトすることで、契約一時金、開発の進捗に応じて支払われるマイルストーン収入、製品上市後に売上高の一定割合が支払われるロイヤリティ収入、売上高に対する目標値を達成するごとに支払われる販売マイルストーン収入等を得る事業モデルを採用しています。また、出口企業とは、ライセンス契約に至る前の比較的早期の研究開発段階において、将来のライセンス契約を前提としたオプション権付き共同研究契約(オプション契約)を締結することもあります(図表4 事業系統図の(共同研究))。この場合、当社は、パートナー企業から共同研究費を得ることで、自社の費用負担を抑えつつ研究開発を実施できるメリットを得られます。
当社は、現在7本の契約締結パイプライン数を有しており、内訳はライセンス契約3本(エイリオン社に脱毛症など皮膚疾患治療薬、ハイレックスメディカル社にディスポーザブル極細内視鏡、チェスト株式会社に呼吸機能検査診断プログラム医療機器)、オプション契約等4本(あすか製薬株式会社に月経前症候群及び月経前不快気分障害治療薬、第一三共株式会社に肺疾患治療薬、ニプロ株式会社に維持血液透析医療支援プログラム医療機器、東レ・メディカル株式会社に透析装置搭載型AI)です。
③医師主導臨床試験数
当社は、これまでに蓄積してきた多くの医師や医療機関とのネットワークから、多くの診療科にわたる開発が可能で、開発領域も特定の疾患に偏っていません。当社の医薬品・医療機器開発における開発パイプラインの多様性と多くの疾患・診療科・医療機関で行われている28件に至る医師主導臨床試験の実績は、当社の有する医療機関とのネットワークと医療現場を重視する特徴の証です。当社には、医師主導臨床研究の経験やノウハウが蓄積されており、これを更に加速することで事業価値を向上できると考えています。
2023年3月期の医師主導臨床研究実施数は7件(医師主導治験6件、臨床研究1件)、2024年3月期の医師主導臨床研究実施数は9件(医師主導治験6件、臨床研究1件及び検証試験である臨床性能試験2件)、2025年3月期の医師主導臨床試験実施予定数は9件(医師主導治験6件、臨床研究1件及び検証試験である臨床性能試験2件)と徐々に増加しています。慢性骨髄性白血病治療薬は第Ⅲ相試験を実施中であり、2024年度から悪性黒色腫治療薬の第Ⅲ相試験を開始予定ですが、今後も希少疾患では第Ⅲ相試験まで自社で実施したいと考えています。AIを活用したプログラム医療機器においても承認申請のための検証試験である臨床性能試験を実施しています(糖尿病治療支援プログラム医療機器、維持血液透析医療支援プログラム医療機器)。
今後も継続的に少なくとも年間5件程度の治験及びその他検証試験等を医師主導で実施することを目標として掲げています。AIを活用したプログラム医療機器に関しては、探索レベルでは年間10件程度のシーズ開発が当社のリソースから適した数と判断しています。この中で約3割程度が実用化レベル(臨床性能試験など臨床試験を実施)に移行すると考えています。
④ 研究開発費
当社の成長や将来の収益を考えると、上記経営指標である臨床段階にある開発パイプライン数、契約締結パイプライン数、医師主導を含む臨床試験実施数の拡大が望ましい一方、医薬品の研究開発、特に治験の実施には多額の研究開発費が必要です。当社は、開発シーズを、医師主導治験を含む臨床試験を活用しながら開発し、製薬企業等へライセンスアウトするビジネス・モデルを基本としているため、高額な研究開発費を自社で負担する必要があります。そこで、研究開発費(特に自己資金)は重要な経営指標と考えています。開発パイプライン数及び医師主導臨床研究の実施数は順調に増加しており、全体の研究開発費は2022年3月期8,271万円、2023年3月期23,524万円、2024年3月期23,633万円と確実に増加しています。これらリスクの高い医師主導治験に対しては、公的研究助成金を積極的に活用することで、研究開発費の自己負担の軽減に努めてきました。その結果、2022年3月期6,108万円、2023年3月期19,280万円、2024年3月期13,317万円の公的資金が獲得でき、自己負担の研究開発費は2022年3月期2,163万円、2023年3月期4,244万円、2024年3月期10,316万円に抑えることができました。現在、医薬品では医師主導治験を実施中の慢性骨髄性白血病、悪性黒色腫、全身性強皮症、PMS/PMDD及び臨床研究実施中の更年期障害が、プログラム医療機器では糖尿病治療支援プログラム医療機器及び維持血液透析医療支援プログラム医療機器が公的資金を確保できています。
当社の研究開発の強みは高い効率性とスピード感と考えています。当社は外部機関(研究機関、医療機関)のリソースを活用してコストを抑えるなど、効率の高い開発を実践してきました。外部機関とのアライアンスをもとに多くのバリューチェーン構築を考えており、既存ベンチャーとは戦略、研究開発、人的資源管理などが異なります。少ない人的リソースや経費で多くのパイプラインを広げ、モダリティも展開できていますので、成果も出つつあります。自己資源や社内環境のみに注力するのではなく、むしろ外部資源や外部環境にも注力し、効率的にイノベーションを創出する枠組みを構築していきたいと考えます。TRExやHiRExなどオープンイノベーションラボの設立もその一環として推進しています。
自己負担の研究開発費を抑えつつ、多くの臨床段階にある開発パイプライン数と医師主導治験実施数を増やし、最終的に契約締結パイプライン数を増やすことが重要な経営指標と考えています。当社は、2021年9月に東京証券取引所マザーズ市場に上場し、公募増資及びオーバーアロットメントによる売出しに関連した第三者割当増資により総額1,653,616千円の資金調達を行いました。この調達資金を活用して、既存のパイプラインの開発(慢性骨髄性白血病や悪性黒色腫などの医師主導治験の実施)、新規プロジェクトの導入と医師主導治験の実施、AIを用いたプログラム医療機器の開発を計画していました。しかし、医薬品では慢性骨髄性白血病、悪性黒色腫、全身性強皮症、PMS/PMDD及び更年期障害が、プログラム医療機器では糖尿病治療支援プログラム医療機器及び維持血液透析医療支援プログラム医療機器も公的資金が確保できていることから、当初の充当予定時期よりも資金の充当時期が大幅に先送りになっております。
< 図表30 当社の経営指標 >
(4)経営環境
バイオベンチャーの取り組む最先端医療研究は、環境変化のスピードが極めて早いと考えられ、潜在的な競争相手に先行し、他社の知的財産権を上回る開発をする必要性があります。医薬品もこれまでの化学を基盤とする低分子と異なり、近年は抗体医薬、核酸医薬や遺伝子治療といったバイオ医薬品が主流に成りつつあります。更に、今後は、ビッグデータや人工知能など情報系技術を取り入れないと、競争の激しい医療分野での開発は難しくなります。医療のあり方もブロックバスターから個別化医療へ大きく変遷しています。技術も日進月歩で進んでいます。重要なことは、最先端の研究、技術、シーズをいち早く取り入れる枠組み、速やかに臨床現場で実証することと考えます。このため、多くの疾患領域に対する最先端の科学技術成果の活用の「場」、医師や研究者とのFace to Faceの交流の「場」、行政や医療産業企業とのオープンイノベーションの「場」が必要であると考え、2022年1月、東北大学に東北大学レナサイエンスオープンイノベーションラボ(Tohoku University x Renascience Open Innovation Labo:TREx)を開設しました。TRExでは、1)東北大学大学院医学系研究科の研究者、東北大学病院の医師、東北大学メディシナルハブに参画する企業、行政など異業種との連携が加速され、2)既存の開発パイプラインの研究推進と複数の新規シーズの導入ができ、3)医師主導治験の実施、医療データの取得、公的資金獲得、許認可戦略の立案などを効率的、迅速に対応できており、4)人材の育成と確保にもつなげられています。具体的には、全身性強皮症や血管肉腫などの新規医薬品パイプライン、乳がん病理診断、心臓植込み型デバイス患者における不整脈・心不全発症予測、人工心臓患者における血栓発生予測などの新規プログラム医療機器パイプラインが新たに立ち上がりました。更に、第一三共株式会社、日本電気株式会社、NECソリューションイノベータ株式会社、チェスト株式会社、株式会社ハイレックスコーポレーション、株式会社ハイレックスメディカル、ニプロ株式会社、東レ・メディカル株式会社などの契約締結につながっています。
更に、第二のオープンイノベーションラボとして、2023年4月には広島大学に広島大学レナサイエンスオープンイノベーションラボ(Hiroshima University x Renascience Open innovation Labo:HiREx)を開設しました。広島大学は、経済産業省の「ワクチン生産体制強化のためのバイオ医薬品製造拠点等整備事業」に国内大学では唯一採択され、メッセンジャーRNA(mRNA)ワクチンをはじめ、核酸やペプチド等、中分子を主体とした治験薬製造施設を有しています。広島大学の特色や強みを生かした研究開発拠点として、産学の連携を通して、医師主導治験実施を含めた医薬品及びプログラム医療機器の共同研究開発を行い、研究開発の効率化及び推進並びに人材育成などを行います。具体的に2023年度から非小細胞肺がん及び皮膚血管肉腫の第Ⅱ相医師主導治験並びに維持血液透析医療支援プログラム医療機器及び糖尿病治療支援プログラム医療機器の臨床性能試験を実施しています。
TRExやHiRExの研究環境を活用することにより、更に効率的かつ迅速な研究開発が期待できます。また、社員は積極的にオープンイノベーション拠点でTRExやHiRExに参画しています。特に研究開発に携わる社員はこのような外部環境で研究開発に取り組んでおり、多様な環境ならではの経験と教育や啓発が可能となります。
(5)優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題
① コーポレート・ガバナンス及び経営体制の強化
当社は、事業環境の変化に対応した迅速な意思決定を重視し、経営の効率性を一層高めるとともに、継続的な事業発展、持続的な企業価値の向上に資するようコーポレート・ガバナンスの一層の充実に取り組むことで、これまで以上にステークホルダーに公正な経営情報を開示し、その内容の適正性を確保します。
当社は、取締役の職務執行の監査等を担う監査等委員を取締役会における議決権を有する構成員とすることにより、取締役会の監査・監督機能を強化し、更なる監視体制の強化を通じて、より一層のコーポレート・ガバナンスの充実を図るため、2022年6月29日開催の第23回定時株主総会の決議により、監査役会設置会社から監査等委員会設置会社に移行しました。社外取締役からの客観的な意見を意思決定に反映させることで透明性の高い経営ができ、効率的かつ迅速な経営判断を行うための最適なガバナンス体制となっています。また、これに併せて執行役員制度を導入し、経営の監督機能である取締役会からの権限委任を通じた業務執行体制を採っています。
② パイプラインの拡充
これまでの製薬企業や創薬ベンチャーの多くはパイプラインのバリューチェーン(開発の全ての工程の積み上げ)を自社で全て構築し、事業価値を高めることに注力してきました。しかし、医薬品のように成功確率が極めて低い一方で、開発期間が長く、投資が大きな分野では研究開発及び事業リスクが大きいため、多くのパイプラインを組み合わせたポートフォリオを形成し、リスク分散をすることが不可欠です。大手製薬企業は潤沢な資金を背景に、多くはパイプラインのバリューチェーンを自社独自で形成するという既存の枠組みでの開発ができますが、ベンチャーのように資金が潤沢でない場合は、なかなか難しいのが現状です。当社は外部機関(研究機関、医療機関)のリソースを活用してコストを抑えるなど、効率の高い開発を実践してきました。外部機関とのアライアンスをもとに多くのバリューチェーン構築を考えており、既存ベンチャーとは戦略、研究開発、人的資源管理などが異なります。少ない人的リソースや経費で多くのパイプラインを広げ、多様なモダリティを開発し、成果も出つつあります。自己資源や社内環境のみにこだわるのではなく、むしろ外部資源や外部環境の積極的活用に注力し、効率的にイノベーションを創出する枠組みを構築していきたいと考えています。当社は、大学や様々な異業種企業との連携や協業を基にオープンイノベーションを推進し、効率的な開発を実施しています。具体例として、2022年1月東北大学に東北大学レナサイエンスオープンイノベーションラボ(Tohoku University x Renascience Open innovation Labo:TREx)を設立し、新たなオープンイノベーションラボとして、2023年4月には広島大学に広島大学レナサイエンスオープンイノベーションラボ(Hiroshima University x Renascience Open innovation Labo:HiREx)を開設しました。これら研究開発拠点を活かして、新たなシーズの導入や医師主導治験を含む臨床研究を実施します。
医薬品開発において重要なことは安全性と有効性の確認です。安全性は、一般毒性や遺伝毒性など薬事規制上で決められた試験に従い実施するので、時間と資金があれば対応可能です。一方、有効性の評価は単純ではなく、医薬品がどの疾患に有効かを見出すことは難しい課題です。1つの医薬品の開発には多くの時間と費用がかかります。当初想定された疾患での有効性は得られなくても、別の疾患には有効である可能性はあるので、多くの疾患で医薬品の効能性を検討することが、成功確率を高める(失敗しない)上でも重要になります。この医薬品の適応疾患を広く検討すること(ドラッグリポジショニング)は難しく、全ての疾患で検討することは現実的に無理です。当社は、国内外の公的研究機関に所属する研究者に当社開発の化合物を「オープンリソース」として提供しています。最先端の基礎研究を展開する様々な領域の研究者と共同で開発できる当社の枠組みは、自社の限られたリソースのみで基礎研究を行うより、遥かに効率的かつ広範囲にわたったドラッグリポジショニング研究が実施できます。「オープンリソース」の取り組みは、新たな治験対象疾患の広がりにつながっており、パイプラインの拡充にも寄与しています。自社リソースを特に必要としないので、非臨床試験(疾患動物モデルでの試験)のプロジェクト数に制約はありません。臨床開発は医師主導治験で実施し、医薬品開発業務受託機関 (Contract Research Organization:CRO)などを活用するため自社の人的リソースは少なくて済みます。
当社の臨床段階にあるパイプライン数は、2023年3月期は7本、2024年3月期は9本、2025年3月期予定数は10本と徐々に増加しています。今後も継続的に少なくとも年間5件程度の治験及びその他検証試験等を医師主導で実施することを目標として掲げています。
③ AIを活用したプログラム医療機器開発の加速
AIを活用した効率的な研究がライフサイエンス領域でも重要になっています。医師主導治験の患者選択、治験デザイン、データ解析などにもAIがますます活用されていくはずです。これまで当社の事業パートナーは、製薬企業が主でしたが、最近は、医工学機器企業だけではなく、NECやNESといったIT企業との研究及び事業開発連携にも注力しています。多彩な分野の企業との研究開発及び事業開発連携を行うことが魅力あるポートフォリオを創生する上で重要と考えます。医療機器やプログラム医療機器の事業収益は医薬品と比べると小さいですが、研究開発費や研究開発期間のリスクは小さく、早期に当社収益につながります。当社は、医療機器やプログラム医療機器事業を同時に複数パイプラインを進めることにより早期の黒字化を目指しておりますが、これらパイプラインについての契約(共同研究、オプション、ライセンス等)、特に安定収入となるロイヤリティの獲得が重要と考えます。
医療分野へのAIの応用は大きな可能性を秘めたテーマですが、研究開発に重要な役割を担うステークホルダーが、個々に課題を抱えている状況です。医師などの医療者(医療機関)は、医療の課題や問題(ニーズ)を熟知し、豊富な医療データやアイデアなどを有してはいるものの、AI技術の活用方法やITベンダーとのネットワークが乏しく、研究開発に具体的に着手できない状況です。一方、AI技術を有するITベンダーは、成長が見込める医療分野への応用に興味はあるものの、医療者(医療機関)とのネットワークが少ないため、医療ニーズや医療データの取得が困難です。更に薬機法など薬事行政の経験も不充分なため、実用化は簡単ではありません。また、AIの医療応用を事業化したいと考える出口の製薬・ヘルステック企業も、研究から事業開発までを自社単独で全て対応することは時間的にもリソースの観点からも困難な場合も多いです。そこで、課題を有する医療者(医療機関)、AI技術を有するITベンダー、出口の製薬・ヘルステック企業が当初から連携し開発を進める枠組みが重要になります。
AIを活用したプログラム医療機器のプロダクトライフサイクルは医薬品ほど長くないため、効率的な研究開発には開発初期から許認可や実臨床への出口を見据えた計画が不可欠になります。そのためにも、異分野分業のオープンイノベーションが重要で、医師に加えて、データサイエンティスト、AI研究者、薬事専門家が連携して取り組む必要があります。当社は、多くの医師主導治験の実施の過程で多数の医療機関や複数の診療科とのネットワークを構築しており、医療課題や医療データにアクセスしやすいこと(医療面でのサポート)、オープンイノベーションを通して複数のIT企業と共同研究事業契約を締結できていること(技術面でのサポート)、医薬品の医師主導治験を実施する過程で薬事規制にも対応できることなど利点を有しています。
④ 医師主導治験の推進
当社の臨床試験は、研究者でありかつ医師であるphysician scientistによる医師主導治験です。当社は、これまでに蓄積してきた多くの医師や医療機関とのネットワークから、多くの診療科にわたる開発が可能で、開発領域も特定の疾患に偏っていません。当社の医薬品・医療機器開発における開発パイプラインの多様性と28件に至る医師主導治験等(多くの疾患・診療科・医療機関)の実績は、当社の有する医療機関とのネットワークと医療現場を重視する特徴の証です。当社には、医師主導治験の経験やノウハウが蓄積されていますが、これを更に加速することで事業価値を向上できると考えております。
当社では6本のパイプラインが第Ⅱ相試験(医薬品候補の有効性/安全性を確認する試験)段階以上にあり、特に慢性骨髄性白血病、悪性黒色腫は有効性/安全性を確認済みで、現在検証試験(第Ⅲ相試験)を実施中あるいは準備段階にあります。これらのパイプラインを早期に導出することにより契約収入を得ること、特に安定的なロイヤリティ収入を獲得することが重要と考えます。
医師主導治験の圧倒的な利点は、「質」と「スピード」、すなわち「効率」です。医師主導治験では、最新の研究成果に触れることが可能な研究の最前線にいて、医療現場では患者を日々診療している医師が、適切な患者対象と試験計画を立案することができます。また、医師自ら治験を実施できるので、未承認薬の初期段階の治験(有用性や安全性を最初に確認する段階で、探索的臨床試験と言われる)には、適した治験の枠組みです。また、オーファン疾患(希少疾患のこと。患者数が少ないので売上も多くを望めない。)の治療薬開発は、収益性が低いために製薬企業が着手しないことから、最初から最後まで医師主導治験で行わざるを得ない場合もあります。研究開発費用のほぼ大半は、基礎研究段階では無く、臨床開発段階で費やされます。医師主導治験は、最先端の大学等の科学技術成果を速やかに活用でき、治療の対象となる患者を治験実施医師が適切に選択できることから、開発コストを削減できます。適切な治験調整医師を見出し、大学など複数の大きな医療機関の支援を得られた場合、企業治験に比べて医師主導治験は大きなアドバンテージがあり、短期間に大型の治験も実施できるために、当社は他社と異なりこの治験の形を優先しています。2003年の薬事法改正によって、医師自らが治験を実施する医師主導治験の道が開けました。しかし、治験に必要な医薬品を安全性試験、製剤を含めて全て自ら準備することは依然として難しい状況です。法改正当時は、海外承認(国内未承認)の新薬や適応外使用薬(いわゆるドラッグラグ)も数多く存在したので、国内未承認薬や適応外使用薬の適応拡大が医師主導治験の対象の主流でした。治験の実施し易さ(製造から安全性試験など既存のデータで対応可能)という点からも、多くの大学を含む医療機関の医師が海外承認(国内未承認)の新薬や適応外使用薬の治験を医師主導で取り組みました。また、製薬企業が取り組まない希少疾患を対象に既存医薬品を用いて医師主導治験として実施される場合もありました。そのような背景から、「医師主導治験は海外承認薬(国内未承認)や既存薬の適応拡大が対象」という印象が未だに強いのだと考えております。しかし、当社が行う治験は全て未承認の薬剤(first-in-human)を対象としており、海外承認薬(国内未承認)や既存薬の適応拡大のための治験ではありません。当社の医薬品は未承認の薬剤で知財も確保していますので、独占的な事業化が可能であり、充分な収益を得ることが可能です。当社の医薬品開発においては、非臨床試験はGLP(Good Laboratory Practice、医薬品の安全性の実施に関する基準)、治験薬の製造は治験薬GMP(Good Manufacturing Practice、治験薬の製造管理及び品質管理に関する基準)を遵守して実施しています。また、医師主導治験は、企業治験と同様にGCP(Good Clinical Practice、医薬品の臨床試験の実施に関する基準)を遵守して実施しています。そのため、当社の実施する医師主導治験は承認申請や許認可を得る上で問題なく使用することができます。
医師主導治験を含む臨床試験実施数は2023年3月期7件、2024年3月期9件、2025年3月期9件と徐々に増加しています。今後も継続的に少なくとも年間5件程度の治験を医師主導で実施することを目標として掲げています。
⑤ 重点開発領域
医薬品ではプラスミノーゲンアクチベーターインヒビター1(plasminogen activator inhibitor-1, PAI-1)阻害薬のがん領域及び呼吸器領域での開発に注力しています。PAI-1の発現が高いがんは悪性度が高く、予後不良であることがわかっています(PAI-1パラドックス)。当社は、PAI-1ががん細胞の免疫チェックポイント分子(PD-L1など)の発現を促進することを共同研究で見出しました。当社のPAI-1阻害薬の投与でがん細胞の免疫チェックポイント分子の発現が低下し、腫瘍内の細胞障害性T細胞の浸潤が増加し、腫瘍関連マクロファージを抑制することも大腸がんや悪性黒色腫モデルマウスで明らかになりました。これら非臨床試験の成績に基づき、悪性黒色腫(第Ⅲ相試験実施準備中)を対象とした治験を実施しています。PAI-1パラドックスが実際にがん治療でも関与しており、一部のがん種ではPAI-1阻害薬の併用が有効であることを実証しています。がん領域では、慢性骨髄性白血病が第Ⅲ相試験実施中、悪性黒色腫が第Ⅲ相試験を実施準備中です。また、皮膚血管肉腫、非小細胞肺がんが第Ⅱ相試験実施中です。
PAI-1は血栓の溶解に必要なタンパク質ですが、炎症や組織の線維化にも深く関与しています。この作用に基づき、呼吸器疾患を対象とした開発を進めています。具体的には、COVID-19に伴う肺傷害(第Ⅱ相試験終了)、全身性強皮症に伴う間質性肺疾患(第Ⅱ相試験実施中)、特発性間質性肺炎(非臨床試験)などのプロジェクトが進行中です。
医療機器(極細内視鏡)の研究開発は終了しており、メイン部分のファイバースコープに関しては2022年12月に承認が下り、付属部分のガイドカテーテルの開発はほぼ完了したので、現在承認準備を進めております。AIを活用したプログラム医療機器に関しては、糖尿病治療支援や維持血液透析医療支援などのプログラム医療機器の開発が先行しており、今後承認申請のための臨床性能試験を実施する予定です。
⑥ 公的研究費の獲得
医薬品の研究開発、特に治験の実施には多額の研究開発費が必要です。本来当社は、開発シーズを、医師主導治験を活用しながら開発し、製薬企業等へライセンスアウトするビジネス・モデルを基本としていますので、高額な研究開発費を自社で負担する必要があります。しかし、公的研究助成金を積極的に活用することで、これらリスクの高い医師主導治験に要する研究開発費の自己負担を軽減しています。
現在、医薬品では慢性骨髄性白血病(第Ⅲ相医師主導治験実施中)、悪性黒色腫(第Ⅱ相医師主導治験完了)、全身性強皮症に伴う間質性肺疾患(第Ⅱ相医師主導治験実施中)で、また、プログラム医療機器では糖尿病治療支援プログラム医療機器及び維持血液透析医療支援プログラム医療機器も公的資金を確保できています。今後も引き続き公的研究助成金を積極的に獲得し活用したいと考えております。
⑦ 優秀な人材の採用と育成
当社は、公的資金や外部機関(研究機関、医療機関)のリソースを活用することで、効率的かつ迅速な研究開発を心がけています。外部機関とのアライアンスをもとに多くのバリューチェーン構築を考えており、既存ベンチャーとは戦略、研究開発、人的資源管理が異なります。当社を取り巻く外部環境(例えば、東北大学や広島大学とのオープンイノベーション拠点であるTRExやHiREx)に優秀な人材が集結するため、必ずしも当社に多くの人材を抱える必要はありません。一方で、当社が取り組む医療分野(医薬品、プログラム医療機器)は、国内外バイオベンチャーや製薬企業との競争が激しく、より一層の研究開発の加速と競合他社との差別化が必要になります。そのため、創造的かつ独創的な研究活動を推進し、会社の経営を支える優秀な人材の獲得は、当社の重要な経営課題でもあります。そこで、年齢や性別に関わらず、事業の拡大に貢献できる人材や意欲溢れる優秀な人材については積極的に採用する予定です。当社社員は、積極的にオープンイノベーション拠点であるTRExやHiRExに参画しています。研究開発に携わる社員はこのような外部環境で研究開発に取り組んでおり、多様な環境ならではの経験と教育や啓発が可能となります。
⑧ 財務基盤(黒字化)
安定的な黒字化を達成できる時期を明言することは難しいですが、単年度の黒字化につきましては数年のうちに達成したいと考えます。その根拠を以下記載します。医薬品事業は、研究開発費や研究開発期間が大きく事業リスクが極めて高い分野ですが、上市後には極めて高い収益が期待できます。医薬品の研究開発、特に医師主導治験の実施には多額の開発費が必要であり、同時に開発リスクを伴います。そこで当社は、公的研究助成金を積極的に活用することで、これらリスクの高い医師主導治験に要する研究開発費の負担を補うことに注力してきました。現在、医師主導治験を実施中あるいは準備中の慢性骨髄性白血病、悪性黒色腫、全身性強皮症も公的資金を確保できており、自己研究資金の負担が軽減されています。
一方、医療機器やプログラム医療機器の事業収益は医薬品と比べて小さいですが、研究開発費や研究開発期間のリスクは小さく、早期に当社収益につながります。医療機器(極細内視鏡)及びプログラム医療機器の研究開発も順調に進んでいます。極細内視鏡は2022年12月に厚生労働省からファイバースコープ(内視鏡本体)の薬事承認を取得しました。プログラム医療機器については、糖尿病治療支援プログラム医療機器・維持血液透析医療支援プログラム医療機器についてはそれぞれ2022年4月、2023年2月に公的資金が確保でき、承認申請のための検証試験である臨床性能試験を実施中です。嚥下機能低下診断プログラム医療機器や呼吸機能検査診断プログラム医療機器の開発も順調に進んでいます。公的資金獲得に伴い、これらプログラム医療機器の自己研究資金の負担が軽減されるとともに、ライセンス一時金やマイルストーン受領など収入源となることが見込まれます。
- 検索
- 業種別業績ランキング