企業兼大株主リコー東証プライム:7752】「電気機器 twitterでつぶやくへ投稿

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企業概要

 当社グループは、使命と目指す姿を「“はたらく”に歓びを」と当連結会計年度に新たに制定しました。“はたらく”に寄り添い 変革を起こし続けることで、人ならではの創造力の発揮を支え、持続可能な未来の社会をつくります。また、「デジタルサービスの会社」への実現に向けて抜本的な収益構造変革を行う「企業価値向上プロジェクト」をスタートいたしました。研究開発分野においてはデジタルサービスとの親和性が高い領域に選択と集中するとともに、イノベーション探索には上限を決めて進め、適正な投資配分を行います。

 体制面では、社内外でのデジタルとデータを活用した基盤及び価値創出の機能を強化しております。お客様のカスタマーサクセスを当社グループの提供価値と定め、既存ビジネスの深化と新たな顧客価値の進化、及びこれらを持続的に可能にする社内外でのデータ活用基盤、機能を強化しております。グローバルに広がる約140万社の顧客基盤を生かし、デジタルサービスの会社としてさらなる拡大を目指しております。また、2021年度より社内カンパニー制を導入し、事業分野ごとに、将来に備えた中長期的な研究から直近の製品開発・設計・生産までを一貫として集約した体制で進めております。

 本社での研究領域として、「RICOH Smart Integration(RSI)」 を支えるデジタル基盤技術の研究開発は「デジタル戦略部」にて進めております。AI/ICT技術の開発や”はたらく”をデジタル化する技術の開発、それらに携わるデジタル人材の育成・強化を担い、デジタルサービスの会社としての拡大を支えております。また、当社の中長期的な成長を支える研究開発と当社グループの共通基盤技術開発は「先端技術研究所」で進めております。

 研究開発の進め方としては、グローバルに拠点間の連携を深めながらそれぞれの地域特性を活かした市場ニーズの調査・探索、技術開発を行っております。また、世界各地にテクノロジーセンターやカスタマーエクスペリエンスセンターを開設し、お客様のサポートを通じて直接把握したニーズを製品開発へフィードバックする仕組みにより、お客様と一体となった価値共創活動を展開しております。

 オープンイノベーションにおいては、スタートアップ企業や社内外の起業家の成長を支援して事業共創を目指すアクセラレータープログラム「TRIBUS(トライバス)」を2019年度より実施しております。5年目を迎えた当連結会計年度においては社外132件、社内52件、社内外の応募の中からコンテストを開催し、そこを通過したスタートアップ企業と社内テーマには当社グループ内に登録されている約300名のサポーターをはじめとした様々なリソースを活用可能とし、チャレンジする人の支援・育成、新規事業の創出を促進する文化のさらなる醸成を目指しております。加えてBtoB領域での最新のデジタルサービスを牽引するスタートアップへの戦略的な投資を実行するCVC(コーポレート・ベンチャー・キャピタル)ファンド「リコーイノベーションファンド1号投資事業有限責任組合」を設立しました。

 社内でのR&Dに加え外部企業との連携や協業を通じて研究開発の加速に取り組みます。

 国際会計基準の適用に伴い、当社グループでは開発投資の一部について資産化を行い、無形資産に計上しております。無形資産に計上された開発費を含む当連結会計年度の研究開発投資は 109,899百万円です。

(1) デジタルサービス

 当社グループは、「企業価値向上プロジェクト」で、お客様の課題解決に対して当社の強みが活きる「ワークプレイス」へ戦略的にリソースを重点配分してまいります。その中でも「ビジネスプロセスオートメーション」、「コミュニケーションサービス」を注力領域と定め、リモートワーク等オフィスでの働き方が変容していくワークプレイスにおいて、一貫したサービスをグローバルで提供することが出来る「ワークプレイスサービスプロバイダー」への成長を加速します。

 ビジネスプロセスオートメーション領域においては、これまで培ってきたドキュメントソリューション技術、ワークフロー・オートメーション技術に、当社独自のAI技術を活用することでお客様の定型業務をゼロに近づけるサービスの開発に取り組んでおり、各種サービスを提供しております。

 コミュニケーションサービス領域においては、お客様にハイブリッドワークに最適な「働く空間」を提供してお客様の創造性発揮をサポートするサービスの開発に取り組んでおり、「RICOH Spaces」といったサービスを提供しております。

 加えて、それらのサービスの提供価値を支えるデジタルサービス基盤「RICOH Smart Integration」の強化・拡張に取り組んでおります。ワークプレイスサービスプロバイダーとして、これらサービス/インフラを発展させ提供価値を強化することでお客様の事業成長・課題解決に貢献し続けます。

 また、最新AI技術を活用したDX実現のための価値共創拠点「RICOH BUSINESS INNOVATION LOUNGE TOKYO」をリニューアルオープンしました。RICOH BUSINESS INNOVATION LOUNGE TOKYOでは、当社の強みである顧客接点力を活かした100以上ある各業種の顧客価値シナリオと、自然言語処理や空間認識分野に強みを持つ当社独自のAI技術を掛け合わせて、フラッグシップとなる価値提供事例をお客様と共創します。

 当連結会計年度の主な成果は次のとおりです。

ビジネスプロセスオートメーション領域における、各種サービス提供

・「DocuWareバージョン 7.8 / 7.9」を提供開始、及びグローバルクラウド顧客1万社を達成。請求書処理プロセスにおける機能強化とユーザビリティの更なる向上と販売地域の拡大

・「Axon Ivyバージョン 11.2」を提供開始。ユーザーエクスペリエンス向上に向けた通知機能の再設計・及びプロセスエディターのUI改善

・「RICOH kintone plus」の新機能の提供、アプリストアの公開、β版モニター募集を開始。パートナーとのエコシステム強化、利用状況の可視化、アプリストアを活用したノウハウ共有によるお客様DX推進を加速

AI活用により、機器の保守サポート業務のプロセスDXを強化

~複合機・プリンターのダウンタイムを最小化するために、カスタマーエンジニアの業務効率を向上~

・お客様先で修復作業を行うCEがサービスマニュアルや過去の修復事例等の膨大なデータから適切な情報を検索する業務を効率化するための情報検索型AIボットを開発し、東日本地区での運用を開始

・当社が独自開発した大規模言語モデル(LLM)をベースに、当社グループに蓄積された修復事例やサービスマニュアルを学習させてカスタムした「保守ドメイン適応モデル」を適用した質問応答型AIチャットボットの検証を開始

「RICOH Spaces」の新機能提供及びユーザーエクスペリエンスの改善を継続的に実施

~働き方の変化やハイブリッドワークに対応し、シームレスな従業員エクスペリエンスを提供~

・スペースの自動キャンセル等、IoTセンサーで収集したデータの利活用強化により、スペースの利用効率を向上

・外出先からのオフィス利用状況の把握、QRコード対応等、モバイルデバイスを用いた利便性を向上

「RICOHスマート予約サービス for フリーアドレス」の提供を開始

~オフィス環境の効率的な活用や継続的な改善に活用できるクラウド型ソリューション~

・2023年8月より会議室予約管理システム「RICOH スマート予約サービス for 会議室」のシリーズ商品である「RICOHスマート予約サービス for フリーアドレス」の提供を開始

「RICOH Print Management Cloud」の新機能の提供を開始

~顧客環境の他社複合機も含めた共通の操作性を維持したスキャンデータの送信機能~

・2023年6月より、マルチベンダースキャン機能を追加したV3.34の提供を開始

 なお、当連結会計年度の当事業分野に係る研究開発投資は 15,612百万円です。

(2) デジタルプロダクツ

 新型コロナウイルス感染症の流行、半導体や電子部品の供給ひっ迫等の物流問題等を経て、我々を取り巻く環境の変化は予測がさらに困難となっております。生成AIのビジネス活用の急速な拡大、地政学的不安による世界情勢の変化も無視できません。この変わりゆく状況の中で新たな開発・生産のあり方を追求しております。2023年5月に発表した東芝テック株式会社との合弁会社エトリア株式会社の設立方針はその大きな転換点であり、私たちは業界の垣根を越えた協業を始めようとしております。

 当連結会計年度においては、前連結会計年度に刷新した主力A3カラー複合機のさらに高速モデル「RICOH IM C7010」及び、モノクロ複合機「RICOH IM 460F/370F」を発売し、設置場所を選ばないエッジデバイスとして、はたらく場所が多様化するお客様のDX支援に貢献しております。

 オフィスプリンティング分野の生産においては、中期経営戦略で掲げた「レジリエントな生産供給体制の構築」のために重要機種やキーユニットの生産地を分散し、地政学的問題に左右されにくい安定部品調達ルートの構築を進めております。また、トナー生産の拠点統廃合も進め、当連結会計年度末時点で3拠点へ集約を完了しました。

 プリンティング以外のエッジデバイスでは、大成建設株式会社との共同開発による「生産プロセスDX」の一環として、プロジェクションマッピングを利用した建設現場向けソリューションの高度化を果たしました。実際の建設現場に導入し、作業の効率化と生産性向上を実現しております。

 また、2022年度に連結子会社となったPFUでは、新たな技術を搭載した新商品のリリースを加速しております。自動スキュー補正、ステープル原稿検知、厚みのある原稿にも対応するデュアルパス構造、進化した排紙制御機能等を備えたA3高速スキャナーを発売し、大量の紙原稿を集中スキャンするお客様の業務効率向上への貢献を加速しました。

 当連結会計年度の主な成果は次のとおりです。

リコー初の70枚/分高速出力、高生産性かつ省スペースを実現したA3フルカラー複合機「RICOH IM C7010」を発売
~業務のDXのみならず優れた環境性能でサステナビリティに貢献~

・連続複写速度70枚/分、スリープ復帰11秒、ファーストコピータイムがフルカラー4.2秒の高速出力

・20枚~60枚/分出力機同等の大きさのコンパクトなデザインで、高速出力機ながら電源1口で利用が可能

・名刺や領収書等小サイズ原稿の1パス両面ADF(両面自動読み取り)での読み取りに対応

・世界基準に準拠した最新のセキュリティ機能を搭載

・本体樹脂総重量の約50%(重量比)に再生プラスチックを使用、低融点トナーの採用等、サステナビリティに貢献

モノクロA4複合機「RICOH IM 460F/370F」を発売
~ソリューション対応を強化したクラス最小*のA3対応モデルでお客様の業務効率化に貢献~

・A4複合機サイズのコンパクトな筐体で、デスクサイド設置が可能ながらA3出力に対応

・連続複写速度が前身機から向上し、省スペースかつスピーディーな対応が求められる店舗や窓口業務に貢献

・本体樹脂総重量の約17%に再生プラスチックを使用
 *A3対応モノクロ複合機として。2023年7月現在。当社調べ

プロジェクションマッピングを利用した墨出し技術「T-iDigital MARKING」を高度化
~建設現場における墨出し作業を効率化し更なる生産性向上を実現~

・建設工事での「墨出し」作業を支援する大成建設様のソリューションを共同開発で高度化

・4K超単焦点プロジェクターにより投影誤差を2mm以内に抑え、投影面積を従前の3.5倍以上に拡大

[PFU]業務効率化を加速するA3高速イメージスキャナー「RICOH fi-8950」「RICOH fi-8930」「RICOH fi-8820」を発売
~fiシリーズ最速のA3大容量フラッグシップモデル~

・金融、公共、医療、BPO分野等の集中入力業務に最適な高速・大容量モデル

・シリーズ最速である毎分150枚/300面の読み取りスピードと、一度に750枚まで積載可能な大容量原稿トレイ

・傾いた原稿を1枚ずつまっすぐに整えてから給紙する「自動スキュー補正」や「ステープル原稿検知」機能を新搭載

・4.3インチの大型タッチパネルと、ネットワークインターフェイス(有線LAN接続)を搭載

 なお、当連結会計年度の当事業分野に係る研究開発投資は 41,053百万円です。

(3) グラフィックコミュニケーションズ  

 当社グループは、高品質で信頼性の高い製品とサービスの投入により、印刷現場のデジタル化を推進します。それにより、自動化・省人化とプロセスの可視化を実現し、お客様の収益力の向上に貢献します。加えて事業成長と社会課題解決の同軸化を図り、SDGsの達成に積極的に取り組みます。

 商用印刷分野においては、印刷業のお客様に向けて、生産性向上に寄与する印刷機やゴールド、シルバー等高付加価値を可能にする特色トナー、上流から下流まで工程を統合的に管理するワークフローソリューションを組み合わせた提案を行っており、Offset to Digitalを加速して、お客様の現場プロセスのデジタル化を牽引していきます。

 そのため、電子写真技術、サプライ技術、光学設計技術、画像処理技術、インクジェット技術、次世代作像エンジン要素技術、最先端ソフトウエア技術の開発を継続して行っております。
 当連結会計年度の主な成果は次のとおりです。

用紙対応力と自動化・効率化機能を強化したカラープロダクションプリンター「RICOH Pro C9500」と「RICOH Pro C7500」を新発売

・幅広い用紙厚(40~470g/㎡)に対応し、エンボス紙やクラフト紙といった凹凸紙・粗面紙への対応も強化

・「RICOH GC OS」により、様々な用紙の設定や調整、機器の利用状況やメンテナンスの管理に特別なスキルが不要

・RICOH Pro C9500では、「IQCT拡張ユニット」により、印刷中の色の調整/安定化やモニタリングに加え、画像品質/表裏見当/色変動の検査を自動で行うことができ、属人的で作業負荷の高かった色調整や検品業務の効率化、省人化が可能

・RICOH Pro C7500では、前身機に引き続き当社独自のスペシャルカラートナー(ホワイト、クリア、インビジブルレッド、ゴールド、シルバー、ネオンイエロー、ネオンピンク)が利用可能で、より豊かで鮮やかな色彩表現を実現

リコー初のB2サイズ対応枚葉インクジェット・プリンティング・システム「RICOH Pro Z75」を発売開始
~新開発の水性顔料インクと乾燥システムにより、低コストでの運用と高品質の両立を実現~

・自動両面印刷機能の搭載とシンプルな操作性により、生産性向上に大きく貢献、かつスキルレスでのオペレーションを実現し、人材不足や技能伝承問題を解決

・新しい水性顔料インクは少ない量で液滴を形成でき、ランニングコストを抑えた運用が可能

・新開発の乾燥システムにより紙の微妙な波うちを低減し、また乾燥待ち時間削減によりトータルでの業務効率化を実現

高速連帳インクジェット・プリンティング・システムの最上位機種「RICOH Pro VC80000」を発売
~印刷中の画質調整等の工程自動化による生産性の最大化を実現~

・最高速度が150m/分(1,200x600dpi)、最高解像度が1,200x1,200dpi(93m/分)となり、前身機に比べ1.5倍に向上

・新開発の水性顔料インクと最新のプリントヘッド、用紙搬送精度向上により、印刷したい位置に正確にインクを着弾

・標準搭載されたスキャナーやセンサーでインクの濃度、均一性をチェックし、リアルタイムに印刷精度を自動補正するため、画質調整でマシンを停止させる必要がなく、高品質かつ安定的な生産とオペレーターの負担軽減を実現

 産業印刷分野においては、産業用インクジェットヘッド技術の開発、製品化に注力し、製品ラインナップの拡充に取り組んでおります。MHシリーズヘッドは高耐久性と幅広いインク対応力でお客様よりご好評を頂いており、主にサイングラフィクス分野で使用されております。また、MEMS技術を活用した小型・高精細印刷に対応するTHシリーズヘッドも新規で採用いただけるお客様が増えております。さらに、プリンターとしては衣料印刷市場向けに新たに2つの機種を発表しました。

 当連結会計年度の主な成果は次のとおりです。

ポリエステルへのプリントが可能なDirect-to-Garmentプリンター「RICOH Ri 4000」を発売

・これまでハイエンド領域の機器でしか対応できなかった、ポリエステルへのダイレクトプリントが可能となり、スポーツウェアでもソフトな感触かつ高品質・高耐久のプリントを実現

・必要な部分にのみ前処理剤を塗布する機構を内蔵することで、前処理プロセスが不要となり、作業の効率性を向上

リコーとして初のDirect-to-Filmシステム「RICOH Pro D1600」を発表

・最大1600mm幅のフィルムに対して20㎡/時を超える速度で印刷でき、かつパウダーシェーカーと乾燥ユニットを組み込んでいるため、トータルでの生産性が高く、デジタル印刷による衣類の大量生産が可能

・オーガニックテキスタイルの国際認証である「GOTS」を取得

 なお、当連結会計年度の当事業分野に係る研究開発投資は 26,528百万円です。

(4)インダストリアルソリューションズ 

 サーマル事業分野においては、世界で圧倒的なシェアを占める高付加価値サーマルペーパー(感熱紙)をはじめ、高い品質の製品・サービスを提供し、さらなるお客様の信頼獲得を目指しております。
 高付加価値サーマルペーパーは、近年の環境意識の高まりから、社会課題解決型商品(発色材料の安全性を高めたフェノールフリーラベル)の販売を欧州市場、日本市場、北米市場で進め、グローバル展開しております。

 また、デジタルサービスへのビジネス転換、環境負荷を低減する「ラベルレスサーマル」*をはじめとする機能性包材の企画・開発・販売を積極的に進めていくため、2023年4月に合弁会社「RNスマートパッケージング株式会社」を設立いたしました。当社の強みであるサーマル技術と、中本パックス株式会社の強みである包材設計・機能性コーティング技術、及び顧客基盤を組み合わせ、スマートパッケージングビジネスとして機能性包材市場に事業を展開し、2024年1月に「2023年日経優秀製品・サービス賞 最優秀賞」を受賞いたしました。

 今後も新しいパッケージソリューションを幅広いパートナーとともにご提供することでパッケージ業界の変革に貢献します。
*ラベルレスサーマル:ラベルやリボンを利用せずに、印字機能を有する基材へ文字・コードの可変情報を直接印字することで、業務の効率化、コストダウンを可能にする当社の印字プロセス
 当連結会計年度の主な成果は次のとおりです。

当社と中本パックス株式会社、合弁会社「RNスマートパッケージング株式会社」を設立
~ラベルレスという新しい価値を持ってパッケージング業界へ参入~

・独自の機能性包材・オンデマンド印字ソリューションでお客様の生産性向上、脱炭素社会・循環型社会の実現に貢献

・パッケージの個品ID管理ソリューション等によりパッケージ業界のDXを実現

 産業プロダクト事業分野においては、生産技術とIoT、AI、画像認識等の最先端技術を融合し、データ認識処理による 情報変換を通じた情報の見える化により、様々な産業設備のインテグレーション、車体・外装部品等の塗装外観を中心とした検査ラインソリューションを提供しております。成長著しい車載リチウムイオンバッテリー外観検査や車両塗装外観検査における安全・信頼性を高める検査ラインは現場における省人化、自動化に貢献しております。

2023年12月には長年にわたる塗装品の検査実績と独自の画像認識技術を結集し、従来は目視で行っていた自動車塗装の外観検査を、自動車の生産ラインを止めずに高い精度を維持しながら自動化する検査装置として、車両塗装外観検査装置「RICOH Visual Inspection System 5000」シリーズを発売いたしました。今後、これら検査設備等から得られるデータの活用により、お客様への新たな価値提案へと繋げていく予定です。

 当連結会計年度の主な成果は次のとおりです。

車両塗装外観検査装置「RICOH Visual Inspection System 5000」シリーズを発売

~従来目視で行っている検査を自動化 高い検査精度で生産品質の向上に貢献~

・起伏の少ない側面にゲート式、高低差の大きい上面にロボット式を採用したハイブリッド構成とAI活用により

 高精度な検査を実現

・標準で170mm/sec(42s/台・85台/h)のスピード、高速コンベアへの対応が可能

・車種変更・追加の際、少量のデータのみで調整できるため、短期間での量産立上げが実現可能

・固定ゲート式の側面ユニット、ロボット式の上面ユニットがそれぞれ分かれているため、部分設置としての導入も可能

 なお、当連結会計年度の当事業分野に係る研究開発投資は 3,879百万円です。

(5) その他事業

 当社グループのもつ技術のさらなる活用と、オープンイノベーションを通じた新規事業創出により社会課題解決に取り組みます。同時に各事業の状況を見極め、メリハリのある経営資源配分と意思決定を行います。

■デジタルカメラ分野

 デジタルカメラ分野を担うリコーイメージング株式会社では、PENTAXとGRの2つのブランド価値をより高め、"デジタル"手法を駆使してお客様とダイレクトにつながり、両ブランドの魅力をより一層研ぎ澄ませて深化しております。

 当社グループでは、100年に及ぶカメラ開発の歴史で培われた、光学設計、光学部品加工技術を柱に、最先端のデジタル画像処理技術を搭載した画像処理エンジンPRIME VやGR ENGINE6と、高度なノイズ処理を実現するアクセラレーターユニットI, IIのコンビネーションにより、すべての感度域で優れた階調再現や質感描写を実現したデジタルカメラ製品の開発を行っております。また、これらの技術に加え、当社独自のボディ内手振れ補正機構SR(Shake Reduction)を搭載し、優れた手振れ補正性能を有するとともに、この機構を応用したローパスセレクター機能やリアルレゾリューション機能を開発しております。写真に拘りを持つユーザーの皆様へ、これらの技術を搭載したデジタルカメラを以下のシリーズで提供しております。

 当連結会計年度の主な成果は次のとおりです。

多様な特徴を持つ新製品を発売

・モノクローム専用イメージセンサーを新たに搭載したデジタル一眼レフカメラ「PENTAX K-3 Mark III Monochrome」

・塗装をメタリックウォームグレーの特別仕様としたハイエンドコンパクトデジタルカメラ「RICOH GR III Diary Edition」

・水深14mでの撮影が可能なコンパクトデジタルカメラ 「PENTAX WG-90」

・Kマウントデジタル一眼レフカメラ用単焦点レンズ「HD PENTAX‐FA 50mmF1.4」「smc PENTAX‐FA 50mmF1.4 Classic」

・大口径タイプのスポッティングスコープ(地上望遠鏡)「PENTAX PF-85EDA」

・本格性能と小型軽量を兼ね備えた双眼鏡「PENTAX A」シリーズの最新モデル2機種

■スマートビジョン分野

 ワンショットで360度撮影ができるカメラ「RICOH THETA」を発売以降、360度画像・映像を活用した事業の幅を広げてきました。現在では、クラウドサービスと連携させることでワークフロー全体を効率化するソリューションを提供し、業務効率化と生産性の向上を実現するRICOH360プラットフォーム事業を展開・強化しており、建設業界をはじめとした業界のDX加速と「RICOH360」プラットフォーム事業のさらなる拡大を目的に、様々なパートナー企業と共創を始めております。

 当連結会計年度の主な成果は次のとおりです。

RICOH THETA本体及び360度画像をよりビジネスで使いやすく「RICOH360 プレミアムパッケージ」を提供開始
~新たなソリューションを共創するパートナーを募集~

・RICOH THETAの稼働状況を遠隔で把握できるデバイスマネジメント

・360度ビューワーや画像処理技術(メディアマネジメント)の提供

・RICOH THETA本体+専用三脚のセットの物損補償付きレンタルとサポート

■ヘルスケア分野

2022年度にバイオテクノロジーのベンチャー企業であるエリクサジェン・サイエンティフィック(eSci社)を子会社化しました。同社がもつ技術やノウハウと当社の技術や強み、リソースを掛け合わせることで、iPS細胞を活用した創薬支援事業の強化や、日本国内におけるmRNAを用いた治療薬製造基盤の整備·構築を進めております。人々の健康と安心への貢献はもとより、国内の経済安全保障の観点からも、医療用mRNAの製造能力のさらなる強化を目指し、ワクチンをはじめとするmRNA医薬品の創薬を支援していきます。

 当連結会計年度の主な成果は次のとおりです。

 
リコー、ERS Genomics LimitedとCRISPR/Cas9ゲノム編集技術に関する非独占的ライセンス契約を締結

~CRISPR/Cas9ゲノム編集技術で疾患モデル構築の幅を広げて創薬支援に貢献~

・これまで培ってきたデジタル化技術やAI技術により、eSci社のコア技術の活用領域を拡大し、個別化医療や創薬・再生医療研究を加速


■社会インフラ分野
 社会インフラの老朽化や自然災害の頻発化・激甚化が進み、インフラの効率的な維持管理が大きな社会課題となっております。当社は独自のカメラと解析AIによる道路・トンネル・のり面等への高精度かつ低コストなサービスを提供し、インフラ老朽化に対する効率的な維持管理・予防保全による安心安全な社会作りに貢献しております。

 当連結会計年度の主な成果は次のとおりです。

のり面モニタリングシステムが国土交通省の「土工構造物点検及び防災点検の支援技術性能カタログ」に掲載

~最適なカメラ・センサー類を搭載した走行型システムにより、点検を省力化~

・高画質な測定システムで広範囲にわたるのり面を一度で測定

・複数のラインセンサーカメラにより、のり面の全景画像を延長無制限で作成可能

・LiDARで、画像と同時にのり面の3次元形状を記録することで、平面画像からだけではわからない断面の形状も記録可能

・AIによって自動的に亀裂やはく離、ひび割れ等の変状を抽出

 
■環境分野
  植物由来でコンポスタブルという特性を持つPLA(ポリ乳酸)を独自技術で発泡させた新素材の発泡PLAシート「PLAiR (プレアー)」で、化石資源由来プラスチックを代替し、新たなエコシステム構築を通じて環境負荷低減に貢献します。まずは、軽量で耐熱性をもつPLAiRの特徴を活かして食品容器に展開し、パートナーとの共創により事業拡大を目指します。

 当連結会計年度の主な成果は次のとおりです。

植物由来の新素材「PLAiR」製食品容器が株式会社イトーヨーカ堂の実証実験に採用

・株式会社イトーヨーカ堂店舗で「PLAiR」の成型加工用シートを使用した容器に入った食品販売の実証実験

・当社独自の発泡制御技術で開発した成型加工用シートにより、自然由来99%の素材でありながら、優れた断熱性・耐熱性を実現

 なお、当連結会計年度の当事業分野に係る研究開発投資は 7,392百万円です。

(6) 基礎研究分野 

 当社グループではこれまで、商品の差別化につながる基礎研究分野として、お客様の業務の効率化や時間、場所に捉われない新しい働き方に貢献するためのデータ収集・解析技術、人工知能を応用したシステムソリューション開発を進めております。また、フォトニクス技術、MEMS、画像認識・画像処理技術を融合した高度なセンシング技術・エッジデバイス技術、分析・シミュレーション等の基盤技術や検証、シミュレーション等の技術、機能性材料、プリンティング技術の応用研究開発を進めております。

 デジタル戦略部ではオフィス・現場・社会へと価値提供領域を拡大する中で、各領域においてAI活用が求められております。お客様の高度な業種・業務を支援するサービスを拡充すべく、当社独自開発の大規模言語モデル(LLM)等の技術開発を進めております。
 当連結会計年度の主な成果は次のとおりです。

日本語精度が高い130億パラメータの大規模言語モデル(LLM)を開発

・LLMは巨大な学習データと深層学習(ディープラーニング)を用いて構築された言語モデル。従来の言語モデルよりもデータ量が増大し精度が格段に向上したもの。当社は日本語処理精度が高いLLMを開発

・企業が持つデータを追加学習させることにより業種・業務に合わせたカスタマイズが可能。当社の顧客基盤における信頼を活かすことで企業保有データの活用を進める

・今後、音声認識技術を組み合わせたAIエージェントや、RAG(検索拡張生成:Retrieval Augmented Generation)機能の実装等を行い、活用範囲の拡大を狙う

企業独自のAIモデルを簡単に作成できるノーコード開発ツールのトライアル提供を開始

・業務の効率化や新たな価値の創造を支援する「仕事のAI」の新サービスとして、企業独自のAIモデルを簡単に作成し、学習推論できるノーコードツールを開発

・LLMを業務に活用するためには、企業固有の用語や言い回し等を学習させ、その企業独自のAIモデルを作成する必要があるが、専門の知識が必要で手間と時間がかかる

・本ツールでは、専門の知識が必要なく、企業固有の用語等を含めた分類情報のサンプルデータをExcelで作成、アップロードするだけで独自AIモデルを構築できる

 先端技術研究所では、将来に向けてこれらの技術を核として、二つの提供価値領域にフォーカスして開発を行っております。

・HDT(Human Digital Twin at Work):ワークプレイスで働く人のデジタル化技術。行動センシングやバイタルセンシング等の技術と、認識やAI等の技術とを活用し、働く人の創造力発揮を支援する

・IDPS(Industrial Digital Printing System):インクの代わりに機能材料を吐出する産業用インクジェット技術を発展させ、製造・生産プロセスをデジタル化し、飛躍的な改善や廃棄物削減、省エネにつなげる。

 分析・シミュレーション等の共通基盤技術は、引き続き当社グループの開発生産現場に展開し、さらなる効率化と品質向上を図っていきます。

 協業パートナーとの共創も積極的に推進しており、当連結会計年度は、24%以上の開発テーマで協業パートナーと共同研究・開発を実施致しました。また、研究開発のグローバル化を推進しており、国内の先端技術研究所と東南アジアの企業・スタートアップ、研究機関等とを繋ぐイノベーションハブ拠点として、シンガポールにRICA(Ricoh Innovation Centre in Asia)を設立しました。

 当連結会計年度の主な成果は次のとおりです。

HDTを実現する技術開発

・“1on1の対話トレーニングシステム”を発表。画像解析技術、言語解析技術、AI技術を活用し、部下役のAIとの1on1シミュレーションを行う中でトレーニーであるリーダーの発話内容や振る舞いを解析。トレーニング終了後の振り返りを通じて、1on1における対話スキル向上を実現

・建物・設備の管理効率化を実現する“空間データ作成・利活用AIソリューション”の実証実験を開始。カメラやレーザースキャナー等光学デバイスから取得した点群と360度画像を自動的に位置合わせしてつなぎ、建物内をバーチャルに見て回ることのできる3次元復元を実現。AI技術の活用により、3次元CADモデルの生成、またデジタル建物の中で計測・計画・シミュレーションを支援する機能等を開発

IDPS ~インクジェット技術の活用領域の拡大により持続可能な社会の実現を目指す技術開発~

・高圧対応の“GELART JETヘッド”を開発。高粘度・大滴サイズの塗料吐出による大面積・厚塗り印刷や、塗料の飛翔距離拡大による曲面・凹凸面への印刷、大粒子含有材料の吐出を実現し壁面や路面、自動車外装等へのデジタル塗装技術を開発中

・従来のシリコン太陽電池に代わる発電技術として注目を集めているペロブスカイト太陽電池の製法開発を含む、国立大学法人東京工業大学とのインクジェット技術の共同研究実施

 なお、当連結会計年度の当分野に係る研究開発投資は 15,435百万円です。

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