UTグループ 【東証プライム:2146】「サービス業」 へ投稿
企業概要
文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において、当社グループが判断したものであります。
(1) 会社の経営の基本方針
当社グループは、「はたらく意欲を持ったすべての人にスキルアップやキャリア形成の機会が等しく提供され、公正に処遇される社会の実現」を企業目的として、グループミッションである「はたらく力で、イキイキをつくる。」を実現するため、「はたらく人」と「企業」双方を顧客として捉える「ツインカスタマー戦略」を推進し、事業展開しております。
2030年に向けた長期経営ビジョンとして「これからのはたらき方のプラットフォームになる」を掲げ、2026年3月期を最終年度とする第4次中期経営計画ローリングプランでは、「より多くのはたらく人に応えられるキャリアプラットフォームへ」を中期経営目標として、持続的な企業価値の向上を目指しております。
(2) 目標とする経営指標
当社グループは、成長と安定のバランスをとりながら持続的に企業価値を向上させることを経営の目標としております。経営指標としては、成長性を評価する観点から、「EBITDA(営業利益に減価償却費、のれん償却額を加算した額の金額)」及び「1株当たり当期純利益(EPS)」の成長、加えて、投資と財務安定性を確保するため「ネットDEレシオ」を重視しております。
第4次中期経営計画ローリングプランにおいては、EBITDAは2026年3月期に250億円、1株当たり当期純利益(EPS)は306円、また、ネットDEレシオは0.5倍以下を数値目標としており、成長と財務の安定性の両立を目指してまいります。
また、当社グループは、株主利益還元を経営の重要課題と認識しており、第4次中期経営計画ローリングプランにおいて、株主還元方針を変更しました。2024年3月期以降の株主還元を「配当性向60%」の配当金による還元を実施してまいります。従前は、配当金もしくは自己株式取得による「総還元性向30%」としていたものを、M&A等の投資計画や財務健全性を考慮し、十分なキャッシュポジションを確保できる見込みであることから変更したものであります。
(3) 中長期的な会社の経営戦略
(第4次中期経営計画の進捗)
新型コロナウイルス感染症の拡大が続き、先行き不透明な状況下でスタートした第4次中期経営計画の当初計画(2021年3月期~2025年3月期)は、1年目から2年目(2021年3月期から2022年3月期)にかけて、コロナ禍の顧客工場の稼働停止等の影響を最小限に食い止めるとともに、その後の人材需要の急回復期において積極的な採用活動を展開したことにより、当初計画スタートからの2ケ年で技術職社員数は150%の純増を果たし、売上高は約550億円拡大する発進となりました。3年目となる2023年3月期では、2ケ年で積み上げた技術職社員数を起点としながら、当社グループが中長期的に成長加速を実現していくための筋肉質な事業基盤を整えるよう努めました。共通の特性を持つ事業会社の統合や事業会社間のアドミニストレーション業務等の標準化及び共通化、人員配置の最適化を進めるとともに、採用活動において事業会社毎に保有する求人情報等のデータベースをグループで統合し、採用オペレーションを最適化することで採用効率改善への取り組みを進めてまいりました。
以上のように事業基盤の着実な強化に努めた順調な当初計画の進捗でございましたが、4年目の当事業年度における半導体関連での生産活動の停滞が想定よりも長く継続したこと、加えて昨今の事業環境の変化や製造派遣業界の動き等を踏まえ、当初計画のコンセプトや戦略を見直し、且つ第4次中期経営計画の最終年度を1年後ろ倒しの2026年3月期に変更とするローリングプランを策定いたしました。
(第4次中期経営計画ローリングプランのコンセプトと戦略の骨子)
日本の労働市場は、少子高齢化の進行による生産年齢人口の減少を背景として、人手不足の深刻化が進んでいます。製造業の顧客企業に求められるのは、いかに十分な労働力を確保し、生産性の向上を果たせるかということであり、製造業での派遣活用の方法は従来の一時的な労働力の確保から正社員に代わる労働力としての派遣活用に変化しています。求人に対して、労働者を集めて派遣する従来の採用を代行する機能だけでは不十分で、多様な人が働くことができ、キャリア形成を通じて生産性を高められる環境をつくることがますます重要になっています。そして、このような対応が可能な派遣事業者への期待がさらに高まることが予想されます。
このような世の中の様々な変化は当社グループの大きな転換点です。2024年2月に公表しました第4次中期経営計画ローリングプランでは“製造派遣ではたらく人に選ばれるために私たちは何をするのか”これを全ての考え方の軸として、「派遣」という働き方をはたらく人へのサービスとして捉え、その利便性を高めることではたらく人に選ばれる状況をつくることに一層こだわり、製造派遣市場で最も選ばれる派遣会社を目指してまいります。現在3万3千人の国内技術職社員数は、最終年度には5万人規模まで拡大を図ってまいります。新しい製造派遣の在り方を全社一体となって創り上げたい、これが製造派遣のリーディングカンパニーとしてUTグループの役割であります。
第4次中期経営計画ローリングプランでは、「派遣」というはたらき方の利便性を高めていくこと、月間2,000名採用を常態化させることを実現します。中核であるマニュファクチャリング事業及びエリア事業を成長のドライバーとして、製造派遣市場でのシェアの拡大を図ります。マニュファクチャリング事業では、工場ではたらく人の価値を高めて顧客内シェアの最大化を、エリア事業では地元ではたらく人のニーズに応えることで各地の地域一番店を目指してまいります。その他事業では、日系外国人の活用等、より多様なはたらく人に活躍の機会を提供できるよう第3の柱となる事業を育ててまいります。また、M&Aによる規模拡大は引き続き注力しますが、“日本の製造派遣ではたらく人”にとって意義のあるものであることを軸とします。
(第4次中期経営計画ローリングプランの数値目標)
派遣事業の規模拡大に伴う管理業務等の集約化進めることで収益性を改善し、持続的なEPS成長を目指してまいります。数値目標は以下のとおりです。
| 2024年3月期 (実績) | 2025年3月期 (業績予想) | 2026年3月期 (本計画最終年度) | |||
実績 | 構成比 | 予想 | 構成比 | 計画 | 構成比 | |
売上高[億円] | 1,670 | 100.0% | 2,150 | 100.0% | 2,765 | 100.0% |
EBITDA[億円] | 109 | 6.5% | 160 | 7.4% | 250 | 9.0% |
営業利益[億円] | 93 | 5.6% | 136 | 6.3% | 224 | 8.1% |
親会社株主に帰属 する当期純利益[億円] | 63 | 3.8% | 130 | 6.1% | 145 | 5.3% |
EPS[円]※ | 160 | - | 274 | - | 306 | - |
(参考指標) 技術職社員数(国内)[名] | 33,078 | - | 45,717 | - | 54,478 | - |
※ EPS予想及び計画は、新株予約権が全て行使されたと仮定して算出しております。
加えて、当社における利益配分の考え方を再定義してお示しするとともに、株主還元方針の変更をいたしました。資本効率の向上及び財務健全性の維持、株主還元の充実のバランスを重視して、キャッシュアロケーションを適切に管理し、資本コストを踏まえてM&A等の事業投資計画を勘案した内部留保の適正化を目指してまいります。第4次中期経営計画ローリングプランにおける数値目標・目指す水準は以下のとおりです。
・のれん自己資本比率 50%以下
・ネットDEレシオ 0.5倍以下
・配当性向 60%
株主還元方針としては、これまで配当金もしくは自己株式取得により「総還元性向30%」としていたものを、「配当性向60%」の配当金による還元を安定的に実施することといたします。当社グループの持続的な成長に必要なM&A活動等の事業投資や財務健全性のバランスを考慮しましても、十分なキャッシュポジションを確保できる見込みであることから変更したものであります。
(4) 優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題
(1)~(3)に記載の長期経営ビジョン及び第4次中期経営計画を実行し、持続的な企業価値の向上を目指す上で、当社グループが優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題は、以下のとおりであります。
① 景気変動の影響を受けにくい事業基盤の構築
当社グループの事業は、製造工場の生産現場を中心とした職種への人材派遣や製造請負の占める割合が高いため、景気変動、自然災害及び感染症等の事象に影響される派遣先企業の生産調整によって、人材需要低下等の影響を受けやすい構造にあります。従来はマニュファクチャリング事業において、半導体・電子部品関連分野の割合が高かったことから、シリコンサイクルの影響を低減するため、異なる製品分野への分散を図ってまいりました。分散化により、個別の製品分野に対する生産変動への耐性は高まったものの、経済全体の減速に伴い全ての製品分野において生産量の減少が生じた際には、依然として解約リスクをゼロにすることは難しいと認識しています。
そのため、大幅な景気後退が生じた際の解約リスクを低減するための顧客工場内シェアの拡大や製造業の中でも景気変動の影響を受けにくい製造技術領域等の職種開拓を進めております。併せて、地域密着型で多様な職場を開拓するエリア事業や大企業を中心とした構造改革需要を取り込むソリューション事業等の強化を進め、景気変動の影響を受けにくい事業基盤を構築してまいります。
② 恒常的な欠員確保
当社グループの事業は、派遣先企業で働く派遣労働者を当社グループで正社員として無期雇用することで、はたらく人の雇用の安定化と企業へのフレキシビリティの提供を両立させております。この事業モデルを機能させるためには、ある職場で人員が余剰となった際に、異なる職場への配置転換を迅速に行わなければなりません。そのため、全国各地の職場において、欠員(受注残)を恒常的に確保しておくための活動が必要となります。
当社グループでは、人材管理とともに顧客への提案活動を行う管理者を顧客毎に配置して欠員の確保を行っております。また、事業部毎に設置した営業組織により、事業会社を横断したサービス提案や新規顧客開拓等の活動を通じた欠員の確保を行っております。
③ 多様な人材の活躍促進と安定的な採用体制の構築
わが国では、少子高齢化によって生産年齢人口の減少が続いており、将来的にもこのトレンドが継続するものと予測されております。当社グループの技術職社員の多くが若年層であり、中長期的にはこの影響を大きく受けることから、人材採用が困難になる可能性があります。
このような環境の中、女性・シニア・外国人など多様な属性の人材が活躍できる職場を増やしていくことが重要課題であると認識しています。このため当社グループでは、新たな顧客企業の開拓を進めるとともに、従業員から寄せられる職場改善に関する意見や求職者のニーズをもとに、顧客企業側により多様な人材を受け入れることができる職場づくりの提案を積極的に行っております。
当社グループは人材の安定的な採用のため、求人広告をはじめとする様々な採用媒体の活用や当社グループ独自の求人サイトの構築、全国の拠点における面接担当者のスキルの標準化や求職者からの問い合わせに24時間対応可能な採用自動化ツールの導入等により採用効率を高め、安定的に人材を採用できるための体制を構築してまいります。
④ 技術職社員の離職率低下とスキル向上
当社グループが属する製造派遣業界における派遣社員の離職率は、いわゆる正規雇用と呼ばれる正社員と比較すると高水準と言われており、流動性が高いことが特徴となっております。これは、製造派遣業界では有期雇用が一般的であることに起因し、製造派遣業界の派遣社員は、一貫したキャリア形成やスキルを向上させることが困難になっております。また、製造派遣業界の派遣社員の離職率の上昇は、派遣社員数を維持するために採用コストを生じさせ、利益率の低下を招きます。加えて、派遣社員のスキル向上が図れない場合は、派遣単価を上昇させることが困難になります。
このような状況認識の下、当社グループでは、顧客企業に派遣する社員を正社員(無期雇用)として雇用し、雇用の安定化を確保した上で、社内認定のキャリアパートナーが一人ひとりに合ったキャリアプランを一緒に考え、教育・訓練等を通じたスキルアップやキャリアアップに取り組んでおります。引き続きこれらの施策を進めるとともに体制を一層強化することにより、技術職社員の離職率低下と付加価値の継続的な向上を図ってまいります。
⑤ 派遣単価と技術職社員の賃金の上昇
わが国では、少子高齢化によって生産年齢人口の減少が続いており、労働市場の売手市場化が進むことで、採用難易度が高まっていくものと予想されます。
そのような採用市場の見通しの中、当社グループは顧客企業からの人材ニーズに応えていくために、より多くの求職者から選ばれ続け、かつ技術職社員の定着を図る必要があります。そのために求職者や技術職社員一人ひとりの経歴、スキル、パフォーマンス等を適正に評価し、派遣単価に反映するとともに技術職社員が適正な賃金を得られる環境の実現に取り組んでまいります。
⑥ 経営管理・事業運営体制の強化
当社グループは、持続的に高い売上高を達成し、利益成長を続けることを目指しております。それに伴い、経営管理や事業運営を行う人員を育成・確保するとともに、事業規模に応じた組織基盤を確立させることが欠かせません。
このため当社グループでは、これらの経営管理や事業運営を支える人員の確保・育成とともに、柔軟な組織運営やそれを支える業務システムの構築等を重要課題として取り組んでおります。
⑦ コーポレート・ガバナンスと内部統制体制の継続的な強化
当社グループの持続的な成長と企業価値の向上を実現するためにはコーポレート・ガバナンス体制の強化が重要であると認識しております。
当社グループは、的確かつ迅速な意思決定及び業務執行体制とそれを適切に監督・監視する体制の構築を図っております。経営の健全性や透明性を確保する観点から、今後も事業規模に応じたコーポレート・ガバナンス体制の強化を継続的に図ってまいります。また、企業規模の拡大やグループ会社の増加、海外での事業展開等、内部統制の重要度が増してきていることから、グループ全体での内部統制につきましても継続的な強化を図ってまいります。
⑧ M&Aによる事業拡大
当社グループの主力事業である製造業向け人材派遣事業は、業界に先駆けた無期雇用派遣と高い人材供給力や高品質な人材育成・管理体制によって、特に大企業において大きなシェアを獲得しております。一方、地域における職場数や技術者領域や事務領域等の製造工程以外での職種等、当社グループが未だ競争力を発揮できていない領域があります。これらの今後開拓すべき事業領域では、M&Aが有効な手段であると考えております。
当社グループは、採用・育成プラットフォームや既存事業とのシナジーを考慮した上で、ターゲット企業に対して事業の評価を行い、企業価値の向上に資するM&A戦略を推進してまいります。また、買収後にはガバナンス強化を行い早期にグループシナジーが実現できる体制を構築してまいります。
⑨ 業務プロセスの効率化とITによるグループ共通業務基盤の構築
当社グループの各拠点における採用・営業・事務等の業務には、帳票類やプロセスの標準化等、システム導入による効率化の余地があると認識しております。
当社グループでは、全社横断のプロジェクトチームを設置し、課題の抽出やITによる効率化の可能性の検討を重ね、段階的にシステム導入を進めております。今後もシステム改善を行い、業務プロセスの効率化を図ってまいります。
⑩ 外国人材の活用促進
わが国では、生産年齢はもとより総人口の減少が続いており、将来的にもこのトレンドは継続するものと予測されております。2019年4月に施行された改正入国管理法では、新たな在留資格が創設される等、外国人材を受入れるための法整備が進んでおります。また、当社グループが持続的に成長していく上では、国内だけでなく海外での事業展開も視野に入れることが必要であると認識しております。
当社グループは、2017年より外国人技能実習生を対象とした労務管理代行事業を開始し、企業が外国人材を活用する際に、外国人材の権利保護等のコンプライアンスを遵守する体制を構築してまいりました。
現在わが国では「技能実習制度」の見直しが進められていますが、当社グループは新制度においても外国人材が日本国内で継続的に働くための受入れ環境の整備や就労支援に取り組む考えです。また、母国に帰国したあとにその技術を活かして働くことを支援するために、現地の有力企業との資本・業務提携を通じた人材サービス事業の構築を進め、海外における事業基盤の拡大を図ってまいります。
加えて、日系人材を海外から招聘する・国内在住の日系人材を採用するためのネットワークの強化と安心して働くことのできる職場環境づくりを進めてまいります。
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