ヤマシタヘルスケアホールディングス 【東証スタンダード:9265】「卸売業」 へ投稿
企業概要
文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において、当社グループが判断したものであります。
(1) 当社グループの経営の基本方針
当社グループは、「地域のヘルスケアに貢献する」という経営理念を掲げ、地域医療の充実と安定、医療の品質向上に資する様々な商品及びサービスの開拓と提供を通じて、その実現を図ってまいりました。
2017年12月に持株会社体制に移行したのち、2024年6月に現在の事業会社9社体制となりました。持株会社体制を活かしたグループ力の向上に向けた活動により、ステークホルダーの真の満足度を高め、地域及び社会へ貢献を果たすべく、グループを挙げて取り組んでおります。
また、当社グループは、上記の経営理念のもと、長期ビジョンである「マルティプライビジョン2030」を策定し、マテリアリティ(重要課題)への取り組みを更に強化するとともに、「持続可能な社会」への貢献と企業価値向上の実現に向け、サステナブル経営を実践してまいります。
(2) 中期経営計画
① 前中期経営計画の総括
2021年7月に策定した中期経営計画(2024年5月期までの3ヵ年)においては、「持続成長可能な体制構築を目指し、継続的な収益拡大に向け、ヘルスケア領域でのグループ力の向上を図る」という基本方針のもと、各事業会社が更に本業に専念できる環境を整えることで継続的な収益拡大を目指し、グループの企業価値の最大化を図るため、重点事業領域を拡充しながらグループ力の向上に取り組んでまいりました。3年に及ぶコロナ禍において、医療提供体制維持のため医療機関に対する継続的な支援が行われてきた中、診療や検査の増加等もあり、営業活動にいまだ一定の制約はあるものの、最終年度となる当期(2024年5月期)は、連結売上高、連結営業利益、及び連結経常利益のいずれも、最終年度目標を達成することができました。
② 新中期経営計画の策定
当社グループでは、前中期経営計画の終了を受けて、本年7月に2025年5月期を初年度とする3ヵ年の中期経営計画を策定いたしました。本計画では、「積極的投資とグループ機能向上によるバランス経営の実行」という基本方針のもと、次の主要施策を掲げ、経営基盤の強化に向けた積極的な投資と、グループ機能向上による相乗効果の発揮を目指してまいります。また、当社グループにとって「人材」は最も重要な資本であることから、人材基盤を強化するとともに、従業員のワークエンゲージメントを向上させながら、当社グループで働く人々にとって魅力ある組織づくりに取り組んでまいります。
主要施策
・人的資本経営の推進
・グループ間連携による新たな価値の創出と生産性向上
・持続的成長に向けた投資の実施
・ESG経営による地域社会への貢献
・ガバナンス最優先の風土醸成
③ 業績目標について
新中期経営計画最終年度(2027年5月期)の主要業績目標は以下の通りです。
連結売上高 | 73,000百万円 |
連結営業利益 | 950百万円 |
連結営業利益率 | 1.3%以上 |
連結経常利益 | 1,000百万円 |
(3) 経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等
当社グループは、上記の経営方針のもと、安定的に収益が確保できる組織体制を確立・強化するとともに、資本コストや株価を意識した経営を実現し、企業価値向上を図るため、中期経営計画の主要施策の他、次の課題に取り組んでまいります。
・M&Aやパートナーシップ構築による収益性の向上
・ヘルスケア分野の社会問題解決に資する投資
・コーポレートガバナンス・コード推進による透明性、公正性の確保
・自己株式取得による機動的な資本政策
・株主・投資家との対話強化による経営改善
企業価値向上に向けた経営目標
経営指標 | 目標 |
PBR(株価純資産倍率) | 1倍以上 |
ROE(自己資本当期純利益率) | 10%以上 |
配当性向(株主還元) | 30%以上 |
(4) 当社グループを取り巻く経営環境
今後の経営環境につきましては、不安定な国際情勢や物価上昇、金利・為替の変動などの様々な要因による経済への影響等、依然として先行き不透明な状況で推移するものと思われます。
医療業界におきましては、新型コロナウィルス感染症の位置付けが変更されたことに伴い、各都道府県にて医療提供体制の見直しが進められる中、2024年4月に行われた診療報酬改定は、医療、介護、障害福祉サービスのトリプル改定となっております。改定に当たっての基本方針として、「医療従事者の人材確保・医師の働き方改革の推進」「地域包括ケアシステムの深化・推進」「医療DXのさらなる推進」「医療安全の確保」が示されております。また、2025年は「地域医療構想」の最終年度であり、特に、地域医療構想を支える医療従事者に関する課題解決に向けては、データヘルス、遠隔医療、AI、ロボット・ICTの活用など、医療分野におけるDX(デジタルトランスフォーメーション)が推進されていくとともに、医療従事者のタスク・シフト、タスク・シェア、時間外労働の上限規制や健康確保措置等の取り組みが実行されていくこととなります。
次期の売上面につきましては、医療機関における検査・手術件数が引き続き緩やかに回復することが期待されるほか、医療の質向上と効率化に寄与する医療機器やITシステムの需要が底堅く推移するものと考えており、増収を予想しております。また、利益面につきましては、売上増加に伴い売上総利益が増加する一方で、賃金のベースアップや人材確保に伴う施策等による人的資本投資にかかる人件費関連コストの上昇等により、営業利益、経常利益及び親会社株主に帰属する当期純利益は減益を見込んでおります。なお、グループ全体の安定した収益力の確保を目指して、DX推進や業務プロセス改革等による生産性向上やコスト削減を実現し、企業価値向上を図ってまいります。
(5) 対処すべき課題
① 人的資本経営の実践
持続的成長を支える根幹は人的資本にあると認識しており、人的資本の最大化を図るため、事業会社8社を含むグループ9社の人材情報を統合的にマネジメントする体制を構築してまいります。採用から、研修、キャリア形成を一体的に捉える戦略的な人事管理体制の推進を図ることと併せて、業務関連研修の他、階層別研修、新任管理職研修、コンプライアンス研修等、多様なカリキュラムによる従業員研修を実施し、当社グループ事業を支える個々人の資質やキャリアを踏まえた人材育成に取り組んでまいります。また、従業員が健康的に働くことができる職場環境の整備に努め、時間外労働の削減や有給休暇の取得促進、全従業員の健康診断受診等、健康経営を積極的に実践し、組織の活性化を図ることで、従業員のエンゲージメントの向上に努めてまいります。
② グループの一体化と戦略機能の強化
持株会社と事業会社間において、迅速な情報収集や情報の共有および相互補完を図りながら、事業会社が本業に専念できる環境を構築し、グループ全体の事業収益を継続的に拡大していき、持続成長可能な推進体制構築の実現を目指します。また、グループ経営機能の明確化を図るとともに、グループ内の経営資源の効率的な運用を進め、収益力の向上を目指してまいります。
③ 重点事業領域の拡充
現在、外部企業と業務提携して、新型輸液装置のレンタルや、医療機関向けICTインフラサービス、注射調剤・監査支援システム、乳がん検査デバイスなど、新規商材の取り扱いを推進しております。いずれも将来の成長が期待できる商材であるため、早期に市場への浸透を図り、当社グループの事業の多角化を目指してまいります。
今後も、事業領域の拡充や潜在需要の顕在化に向けた積極的な投資を加速しながら、グループの企業価値の最大化を図るため、外部企業とのアライアンスを含め、新規事業分野への投資を積極的に行い、事業領域の拡充を図ってまいります。
④ 物流体制の更なる強化
「地域のヘルスケアに貢献する」企業として、離島・過疎化地域を含めた物流体制の維持に万全を期し、医療資材の安定供給を確保するとともに、「事業継続計画(BCP)」による社会的インフラ機能を維持し、自然災害等の発生時におけるリスクの最小化に努めてまいります。
また、当社グループの持つ物流ネットワークを有効的に活かし、物流の更なる効率化と顧客対応のスピードアップにより、物流面における競争力強化を図ってまいります。
⑤ デジタルトランスフォーメーション(DX)の推進
顧客視点での価値創出に向け、ビジネスモデルや業務プロセス、企業文化の改革を行いながら、当社グループの企業価値を高めるツールとしてのDXを推進してまいります。営業や物流のみならず、全ての業務プロセスに対しDXを推進することでビジネスプロセスの更なる効率化を進め、従業員一人ひとりが付加価値の高い仕事を行う時間を創出できるよう、セキュリティ強化と共に進めてまいります。
⑥ ガバナンスと内部統制の強化
当社グループは、法令遵守はもとより、企業倫理への取り組みの重要性を認識するとともに、変動する企業環境に対応した迅速な経営意思決定と経営の健全性向上を図ることによって、企業価値を継続して高めていくことを経営の最重要課題の一つとして位置づけております。その実現のために、株主の皆様をはじめ、お客様、取引先、地域社会、従業員等のステークホルダーとの良好な関係を築くとともに、株主総会、取締役会、監査等委員会、会計監査人等、法律上の機能制度を一層強化・改善・整備しながら、コーポレート・ガバナンスを充実させてまいります。また、主たる事業である医療器販売業においては、同業他社を介在して販売取引を成立させる商習慣があり、同取引において中核子会社にて発生した債権取立不能事案を踏まえ、再発防止策を策定しており、引き続き与信管理、債権管理の強化を図ってまいります。
株主・投資家の皆様へは、迅速かつ正確な情報開示に努めるとともに、幅広い情報公開により、経営の透明性を高めてまいります。
⑦ ESG/SDGs視点での経営基盤の強化
当社グループは、環境的・社会的・経済的側面に配慮しながら、トータルヘルスケアサービスの事業活動に取り組み、地域とともにサステナブルな社会を実現し、企業価値向上を目指すことを重要課題と位置づけ、「ESG基本方針」を策定しております。当社グループの経営理念「地域のヘルスケアに貢献する」は、SDGsが目指す「誰ひとり取り残さない社会の実現」と強く結びついており、掲げるESG基本方針をもって、経営の推進やステークホルダーの皆様に対する情報開示を行っております。
⑧ 企業風土の醸成
当社グループでは、新しい時代に向けて、社会や株主等から認められ、必要とされる企業であり続けるため、高い倫理観を持つ人材を育成し、経営の透明性を確保しながら、当社の事業活動に関係する個々を守るという意識改革を進めてまいります。その基盤となるコンプライアンスの実践を重要な経営課題の一つとして位置づけており、以前より取り組んでいるコンプライアンス研修を継続し、より深化させるとともに、併せて人権尊重を踏まえたハラスメント防止意識の浸透を行うことにより「会社を取り巻く全てのステークホルダーの信頼に応えること」を当社のあるべき姿として努めてまいります。
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