企業ヤマイチ・ユニハイムエステート東証スタンダード:2984】「不動産業 twitterでつぶやくへ投稿

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企業概要

 当社グループの経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は、以下のとおりであります。

 なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

(1)企業理念と経営の基本的な方針

 当社グループは、不動産事業を通じた「街づくり」と「地域活性化」を使命と考え、「人々が"安心"して住める街づくり」・「人々が"快適"に暮らせる街づくり」・「人々が"満足"する街づくり」を通して、地域の発展とそこに住む人々の幸せを追求することを企業理念に掲げております。

 当社グループは、事業用不動産の取得(入口)~開発(商品化)~販売・賃貸(出口)までを縦断的にフルラインで扱う少数精鋭の専門家集団としての特徴を基盤とし、不動産業の一部領域に特化するのではなく、社会構造の変化、経済の動向、国策の転換等に応じて、柔軟に経営資源の選択と集中を行い、長期にわたり安定的成長を続けていくことを目指しております。

(2)経営環境

 当連結会計年度におけるわが国の経済は、コロナ禍の急速な落ち込みの後、緩やかな回復基調を取り戻しましたが、内需の回復は力強さに欠ける状況にあります。企業の収益改善は続いていますが、資源や原材料の取得コストが上昇したこと等により、設備投資に十分に結びついておらず、また、物価上昇により2023年の実質賃金が2年連続で減少し、個人消費も軟調に推移しております。

 加えて、ウクライナや中東地域での地政学的リスクや、中国経済の失速、国際金融情勢の動向など、景気の下振れ要因は多く、回復ペースの鈍化が懸念されています。

 不動産市況については、インバウンド需要の回復に牽引され、都心や有力地方都市、観光需要の大きな一部のエリアにおける不動産価格の上昇が継続しておりますが、その他の地方においては、少子高齢化を背景とする地域経済と不動産市況の衰退が続いており、不動産市況は二極化が進んでいると考えられます。

(3)経営戦略

 当社グループは、土地の価値を最大化する不動産開発を掲げており、特定のエリアや用途に固執するのではなく、将来性のある優良地を見極め、中長期的な収益が最大化となる土地活用を追求する戦略を採っております。

 当社グループは、土地の価値に対する分析力とその価値を最大限に引き出す企画構成力を活かし、社会経済情勢やニーズの変化に即応する付加価値の高い不動産を提供してまいります。特に、素地からの不動産開発については、土地ごとの個別性が高く、また、専門的知識と豊富な経験値が要求されることから、当社グループの独自性の高いアプローチとして、エリアや規模を問わず競争力を発揮できるものと考えており、このノウハウを活用して、近畿圏でのプレゼンスを高めると共に、首都圏へと営業エリアを拡大し、成長を加速させていきたいと考えております。

 当社グループの不動産開発では、用地取得から売上獲得までのリードタイムに関して、1年以内の短期プロジェクトから、5年程度かかる比較的大きなプロジェクトまで、異なる投資・回収サイクルの事業を展開しており、期間の長いプロジェクトほど売上規模や利益率が高くなる傾向があります。これら様々なリードタイムのプロジェクトをバランスよく組み合わせることで、切れ目のないキャッシュインを実現し、安定的成長を目指しております。

 事業ごとの具体的な施策は以下のとおりです。

① 不動産開発・賃貸事業

 当事業では、長期保有による安定した賃貸収益の獲得を目指しており、継続的に賃貸用不動産の保有数の積上げを進めております。賃貸用不動産の取得は、次の通り大別されますが、いずれも保有期間のキャッシュ・フローを投資の判断材料としております。

a)既存賃貸用不動産の取得

 これまで当社グループでは、不動産の「目利き力」を活かして、高い収益性が見込まれる賃貸用不動産を取得してまいりました。過去のバブル崩壊やリーマンショックなどの経済的混乱が生じた際には、様々な理由で手放される「割安」な不動産を積極的に取得し、成長の糧としてまいりました。取得した不動産については長期保有を原則とし、設備更新やテナント管理、入居促進等によるバリューアップを図ることで安定的収益を獲得しているものと考えております。近年は、低金利環境等により収益不動産の市場価格が上昇したことを受け、含み益の大きな保有不動産については売却を実施し、手元資金を厚くすることで、新たな優良不動産を獲得する方針であります。

b)新規賃貸用不動産の自社開発

 当社グループは、素地からの土地開発力を活かし、ロードサイドの商業施設開発を進めております。開発した土地について、当社が貸主となる事業用定期借地権(土地の用途が事業用に限定され、契約期間が10年から50年未満とされている借地権)を活用し、テナントから長期の安定収益を獲得するスキームに注力してまいりました。こうした素地からの開発には、既存不動産の取得に比べて許認可の取得や地権者との折衝といった一定のリスク等がある反面、素地価格での取得や開発業務の分離発注等を通じて原価を抑制することが期待でき、収益性を高めることができる特徴があると考えております。また、開発行為に一定の期間を要するものの、計画の初期段階で借主となるテナントの誘致活動を行い、借主が内定した時点で開発作業を本格推進することができることから、在庫リスクを低減することが可能であります。引き続き、新規賃貸用不動産の自社開発に積極的に取り組んでまいります。

 子会社化した埼玉県熊谷市に本社を置く株式会社エルアンドビーは、埼玉県下を中心とする首都圏において店舗開発ビジネスを展開しており、当社グループの事業エリアの拡大に寄与するものと考えております。

② 不動産開発・販売事業

 当事業では、戸建分譲地と、住宅以外の用途として産業用地(倉庫や工場用地などの事業活動に供する土地)の開発・販売を行っております。

a)戸建分譲

 当社グループでは、主に和歌山市周辺エリアにおいて戸建分譲地の開発・販売と、住宅の建築請負事業を行っています。戸建分譲については、立地環境の優れた住宅地を開発することに加えて、「建物部分」の付加価値向上や市場細分化によるきめ細やかな価格及び仕様グレードの設定が重要であると考えております。そこで、当社グループでは和歌山市周辺エリアの地元ビルダーが一般的に採用している木造軸組み工法による標準ランクの商品企画に加えて、株式会社LIXIL住宅研究所が展開する「GLホーム」のFC加盟店として、木造枠組壁工法の一種である2×6工法による高気密・高断熱を謳った災害に強い商品づくりや欧米風デザインの採用による他社商品との差別化を推進しております。

 和歌山市周辺エリアに加えて、近年は兵庫県西宮市、大阪府堺市等の近畿圏を中心として新たな住宅地開発に取り組んでおり、エリア拡大を進めております。

b)産業用地

 近年は、企業をターゲットとした産業用地の開発・販売事業に注力しております。具体的には、立地特性に応じて、物流や倉庫、あるいはサービス事業の用地として取得・開発した土地を事業会社に売却するビジネスを進めています。こうした産業用地については、希少性の高い土地を提供することで取引規模や単価が高くなる傾向があり、そこで当社の強みである素地からの開発力を活かすことにより、高い利益率を確保できるよう計画を進めております。

c)店舗建築

 子会社である株式会社エルアンドビーは、商業地開発に付随してテナントからのオーダーに基づいて店舗や事務所等の建築事業を扱うようになりました。これにより、ロードサイド店舗開発のビジネスデザインの幅が広くなり、これまで以上に柔軟な対応が可能になっております。

③ マンション事業

 当事業では、50年以上にわたる分譲実績とブランド力を活かし、今後も大阪市中心部をはじめ、交通利便性の高いマンション適地を積極的に取得し、マンション供給数を着実に拡大していく方針です。また、これまで外部委託していた販売業務の一部を内製化することで収益力の向上と販売ノウハウの充実を図っており、セグメント利益率の改善に寄与しております。

 分譲マンション管理を手掛けてきたニューライフサービス株式会社を子会社化したことで、分譲マンションの管理業に進出しました。今後、当社グループが企画したマンションの管理事業を行うことで、顧客との長期リレーションを確立し、将来的なリフォーム需要や買替需要といったストックビジネスの拡充を図ってまいります。

 また、近年は首都圏での用地取得を進めており、2024年3月期以降は首都圏での分譲マンションプロジェクトが順次リリースされる計画としております。着実に案件を積上げることで、首都圏でのユニハイムブランドの認知度を高めてまいります。

(4)経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等

 当社グループは、不動産開発を基礎とした事業展開を行っており、不動産の仕入から販売に至るまでをフルラインでカバーすることで高い収益性を達成することを目指しており、目標達成状況を判断する材料として、自己資本当期純利益率(ROE)を客観的な指標としております。また、当社グループでは賃貸不動産の積み上げを戦略の中心としていることに加えて、近年ではM&Aを活用した業容拡大を図っているため、償却額が増加傾向にあります。償却前の収益力の拡大を評価するために、EBITDAに関しても重要な指標としてモニタリングしております。

(5)優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題

① 建設コストの上昇とプロジェクト遅延への対策

 円安基調を背景とする資材価格の上昇や建設業界の深刻な人手不足に起因する人件費の高騰に加えて、いわゆる働き方改革の影響により、2024年度から、特に規模の大きな建設に関して、プロジェクトの遅延や採算性の悪化が懸念されております。

 プロジェクト利益の確保のために、当社グループの強みである土地開発のノウハウを活かし、土地の取得段階での工夫により土地原価を抑え、建物原価の上昇分を吸収できるよう対策を講じてまいります。また、経済の趨勢を見極めて、販売価格や賃料設定について、より一層きめ細やかなコントロールを行うことが必要であります。

 建設期間については、期間の長い案件と短い案件の組み合わせと投資バランスを考慮し、キャッシュ獲得の時期が偏らないように配慮してまいります。

② 優秀な人材の確保

 不動産のワンストップサービスを向上させるためには、優秀な人材の確保が必要であると考えております。当社グループでは、不動産に関する幅広い知識と高い専門性を養うために、採用した人材について配置転換や部署横断的なキャリアプロセスを通じて、モチベーションの持続を図るとともにマルチスキルを有する人材としての育成を進めております。また、企業成長を促進するために、従来の人材育成プロセスを継続する一方で、即戦力となる経験豊富な人材も獲得し、営業エリアの拡大や新たなビジネス領域への進出を進めてまいります。

③ 開発用地の取得

 当社グループの不動産販売では、土地部分から得られる収益獲得に注力しており、優良な土地をできるだけ安価に仕入れることが重要であります。直ちに利用可能な既成市街地での不動産取得は競合が多く、価格が上昇する傾向にあることから、相続により権利関係の調整が必要なケースや、事業承継に課題がある企業に対して不動産取得のためのM&Aを提案するケース、あるいは、開発許可をとることが難しい調整区域等で宅地開発するケースなど、用地取得の競合が起こりにくい開発用地の取得を推進してまいります。

④ 首都圏でのビジネス深耕

 事業拡大のためには、近畿圏だけでなく、より大きなマーケットである首都圏での営業展開が必要と考えております。2020年から東京支店を中心に不動産取得に向けた活動を開始しており、着実に不動産取得が進んでいます。子会社化した株式会社エルアンドビーの開発部門との連携を深めることで、首都圏での用地取得を強化してまいります。加えて、2024年3月に、埼玉県下を主要エリアとする大成住宅株式会社と資本提携することに成功し、首都圏での戸建分譲事業に進出をする計画であります。

 過去3か年でのこうした投資により、不動産開発を基盤とする賃貸・販売・マンションの主要事業を首都圏で推進するパーツが整ったことから、当社が近畿圏で成長してきたビジネスモデルを首都圏で深耕し、さらなる飛躍を目指してまいります。

⑤ 金利上昇リスクと資金調達の多様化

 当社グループにおける事業の資金調達は、主に金融機関からの借入に依存しております。国際金融情勢の引き締めが長期化しており、わが国においても少しずつ金利のある経済に戻りつつあります。今後の金融機関からの借入コストや支払利息の上昇リスクについて注視が必要であります。経営安定化のため、資金調達の多様化を検討し、適切な財務バランスとなるよう配慮してまいります。また、必要に応じて保有不動産の入替を実施し、売却による含み益の獲得により財務健全性を高めてまいります。

⑥ 資本コストや株価を意識した経営

 投資家をはじめとするステークホルダーの期待に応え、中長期的な企業価値の向上を実現するためには、戦略的な経営資源の配分が必要であります。当社グループは2022年6月の上場以来、PBRが1倍未満となっていることから、株式評価を改善することが急務であると考えております。このために、業績目標を着実に達成しつつ、積極的な株主との対話を推進することや丁寧な開示を通じて当社グループの展望についての説明義務を果たし、当社グループの経営資源配分の方針について理解を得らえるように努めてまいります。

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