マイクロ波化学 【東証グロース:9227】「サービス業」 へ投稿
企業概要
当社の経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は、以下のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において当社が判断したものであります。
(1)経営方針及び経営環境
化学産業は、わたしたちの生活には欠かせない医薬品からスマートフォン、航空機など幅広い分野へ原料を提供する産業として世界経済の発展を支えてきました。しかしながら、今もなおエネルギーを大量に消費する重厚長大型の製造工程が主流で、大量の産業用エネルギーを消費、二酸化炭素ガスを排出しており、製造プラントは広大な敷地を要します。
化学反応にはエネルギーが必要となります。化学産業は、勃興期から、「外部から」、「間接的に」、「全体を」加熱してエネルギーを伝達してきました。一方、電子レンジにも使われているマイクロ波は、「内部から」、「直接」、「特定の物質だけに」エネルギーを伝達します。当社はこのマイクロ波の特性を活用して化学反応をデザインし、「省エネルギー」・「高効率」・「コンパクト」・「高品質」なものづくりを実現する製造プロセスを提供します。
さらにマイクロ波プロセスは再生可能エネルギー由来の電力を活用することで大幅に二酸化炭素の排出を減らすことができます。各国政府が約束した2050年のカーボンニュートラルは遠い未来のように思われますが、化学産業をはじめとした重厚長大な製造業の設備更新サイクルは40年であり、国際エネルギー機関(IEA)が発表したNet Zero by 2050 A Road Map for the Global Energy Sector IEA(2021年5月)では今後10年以内に、約30%の設備が設備改善の為の大規模投資が必要とされる25年目の寿命を迎えると言われております。カーボンニュートラルを実現するためには、それまでに、新しい革新的な技術を導入可能な状態にしなければいけません。また、一般的に新技術が実用化されるためには10年程度必要なことを考えますと、当社としては「今」新しいソリューションの開発に着手をする必要があると考えております。
(2) 経営戦略等
当社の戦略としては、脱炭素のニーズを捉えながら社会実装につながる事業領域に選択的に研究開発投資を行い、技術標準化及び大型収益の獲得確度・速度を増加させることを目指します。具体的な成長戦略は以下の通りです。
① 質の高い新規契約の獲得
単に契約数を追いかけるのではなく、社会実装につながる質の高い大型案件にフォーカスします。
② 技術プラットフォーム強化によるステージアップ
技術優位性と事業ニーズがある分野にフォーカスした技術プラットフォームの強化によるステージアップ確度の向上を実現します。
③ 標準化による横展開・事業のスケール
ケミカルリサイクル、鉱山プロセス事業の推進と、新規標準化事業の立ち上げを目指します。ケミカルリサイクル事業においては複数の共同開発案件を通じて要素技術・実証機の開発を進めており、鉱山プロセス事業においては、複数種類の鉱石を製錬できる標準ベンチ装置を開発しました。
④ 成長分野(グリーン領域)への注力
設備投資及び研究開発が積極的な領域を中心にプロジェクトを組成し、カーボンニュートラル分野へ先行投資することで、成長を加速します。
上記の成長戦略に基づき、当社がこれまでに取り組んできた、石油化学プロセス、炭素繊維製造、ターコイズ水素製造などの開発案件を提携先と共に着実にPhase 3(実機導入)に持って行き、収益を実現していくことを優先達成事項とします。またグリーン領域の中で技術標準化・実績の蓄積が進んでいるケミカルリサイクル事業と鉱山プロセス事業において、横展開を進め、事業の拡張と収益の最大化を目指します。更に、上記事業に加え、複数の新規事業領域確立に向けた仮説検証を同時並行で進めていきます。
(3) 経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等
当社は、製造プロセスを化石資源由来の「熱と圧力」から電気由来の「マイクロ波」に置き換えることで、「省エネルギー」・「高効率」・「コンパクト」な環境対応型プロセスのグローバルスタンダード化を目指しています。これを実現する為に、技術プラットフォームを用いて幅広い顧客や業界が抱える課題に対してソリューションとして提供します。当社事業にとって最も重要なのは、技術が商業レベルで使われることでありますが、そのためには、新規案件を獲得し共同開発からスタートをした案件が、実証開発へ、そして最終的には、実機導入にまでステージアップすることが重要となります。これをモニタリングするために重視をしている経営指標としては、1)新規契約獲得数、2)契約総数、及び3)フェーズ別売上高があります。
(4) 優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題
当社が優先的に対処すべき課題は下記のように考えております。
① 開発戦略
要素技術の開発、データベースの充実、ノウハウの整備、及びアカデミアとも協力をした技術の体系化をはかり効率的な開発体制を構築します。また、発信器など当社が競争優位を持たない分野については、外部機関とも積極的に協力することで技術プラットフォームを強化します。当社の強みは、マイクロ波化学において、研究開発から実証開発・エンジニアリング迄をワンストップで提供できることですが、これを可能とする要素技術群で構成されるインフラの開発投資を進めます。顧客の開発に共通的に使用できる設備を持ち、かつ、ラボ装置は市販されているものでは不十分な為、当社で開発し整備することで、安価かつ高品質なソリューションを提供することが出来る体制を構築します。
また、「電化」の製造技術という観点から競合技術の動向にも注意を払いながらスピードを落とさずに開発を行う必要があります。一方で、マイクロ波加熱以外の有力な手段となるIH加熱・電気ヒーター加熱は、従来の化石燃料による加熱と同様に伝熱を基本とする技術で、直接エネルギーを伝えるマイクロ波と比較して、エネルギー変換効率が低く、スケールアップ難易度が高いため、その優位性を活かして社会実装をすすめることを目指します。 |
② 事業開発体制
当社は、技術プラットフォームを幅広く顧客や業界が抱える課題のソリューションに適用します。また、最終的に社会実装するために、化学メーカーをはじめとした様々なプレイヤーとアライアンスを組むことにより事業を拡大します。このため、世界中の化学メーカー等とのネットワークを構築し、常に顧客や業界ニーズ・トレンド情報を収集し咀嚼しております。このためには、当社の技術を理解・発信し顧客や業界ニーズとマッチングさせることができるプロデューサー的な機能を持った事業開発体制を構築し強化を図るために、継続的な人材採用と組織づくりが必要となります。
また、顧客の化学メーカーにとって、これまでに導入した実績がない技術であるマイクロ波化学プロセスを導入することは、経営的な判断となります。当社がスムーズな技術導入を実現するためには、開発の初期段階より顧客側経営層からの理解が必要となり、その為に経営レベルでの関係構築及び経営目線での価値提言に努めて参ります。
③ 研究開発体制
当社がテクノロジー企業として構築したマイクロ波プロセスに関する技術プラットフォームは、化学メーカー等とのアライアンス戦略における競争優位の源泉となっています。したがって、今後も継続的に充実を図り、当社の競争優位をより強固とするための研究開発の継続が重要であり、それを可能とする体制の構築・強化が課題であると認識しており、継続的な人材採用及び育成が重要と考えております。
④ 人材確保
マイクロ波化学は業際分野であり、化学、物理(電磁気学)、エンジニアリングなどの専門家から構成される開発体制を構築する必要があります。また、単に技術を提供するだけでなく、顧客の製造迄支援するためには、エンジニアについても、プロセスエンジニア、機械、電気計装、生産技術、及びシミュレーション技術者からなる多様な技術者をバランス良く継続的に採用する必要があります。 さらに、当社が、今後も持続的に成長するためには、パイプラインの拡大を常に行う必要があり、それを推進する人材の確保は重要な課題となります。特に、各プロジェクトの研究開発から事業化までをマネジメントできるプロジェクトリーダー級の即戦力人材の確保に努めてまいります。 |
⑤ 経営管理体制
当社が継続的な開発パイプラインの拡充及び事業開発の展開を進める上で、パイプラインの進捗管理、予実管理等を行うための経営管理体制の強化は重要な課題と認識しております。当社は、組織が健全かつ有効、効率的に運営されるように、パイプラインの進捗モニタリングを行うための内部統制の整備、強化、見直しを行っていく方針です。
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