ポーラ・オルビスホールディングス 【東証プライム:4927】「化学」 へ投稿
企業概要
当社グループの事業その他に関して、投資者の投資判断上重要であると考えられるリスクは、以下の通りです。なお、本項においては、将来に関する事項は、別段の表示がない限り、当連結会計年度末現在において、当社グループが判断したものであります。
(1) 事業に係るリスク
①ブランド価値の毀損・人権課題
当社グループは、「POLA」「ORBIS」等のマルチブランド戦略による展開を図っており、各ブランドは、誠実な企業経営とお客さまの信頼に応えた製品・サービスの提供により、ブランドイメージの形成とその維持向上に十分努めております。しかしながら、当社グループにおける研究開発・調達・製造・物流・広告/宣伝・販売・使用・廃棄に至るサプライチェーンへの否定的な評判や評価が世間に流布することによって信用が低下し、ブランドイメージが毀損された場合、当社グループの経営成績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。また、近年では、企業のサプライチェーンにおける、強制労働や児童労働等の人権に関する問題が提起されており、化粧品事業を展開する当社グループとの関連性が高いものとして、インドネシアやマレーシアを調達先の中心としているパーム油を生産する農園での強制労働や児童労働は重大な人権課題として懸念しております。当社グループでは、今後、認証パーム油を調達していくとともに、パーム油農園への支援の一環として、「持続可能なパーム油のための円卓会議:Roundtable on Sustainable Palm Oil(RSPO)」を通じたクレジットの購入やサプライチェーン認証を伴った認証品の調達を行ってまいります。また人権デュー・デリジェンスを毎年実施し、事業への影響も評価することで、実効性を確保した企業としての責任ある行動に取り組んでおります。
②グループ内の競合
当社グループは、マルチブランド・マルチチャネル戦略を掲げ、既存の各ブランド及び新規ブランドをターゲット(購買層)別・価格帯別・販売チャネル別にカテゴライズして展開しており、競合は軽微であると認識しております。しかし、グループ戦略として既存ブランドの価値最大化及びマルチブランド化への展開を加速させていく過程において、当社グループ内での競合が発生する可能性があり、当社グループの経営成績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。このことから、取締役会では、各ブランドの事業が意図した成果を得られていることが確認できるよう、ブランド別、事業別の重要指標を複数設定し、各ブランドにおける独自性の維持・管理の状況をモニタリングすることで、リスク低減に取り組んでおります。
③販売パートナー(ショップオーナー/マネージャー、ビューティーディレクター)の確保
当社グループのビューティケア事業の主軸となる株式会社ポーラでは、委託販売契約に基づく事業展開を行っております。委託販売契約先となる販売パートナーの人材確保は、事業拡大に向けた重要な事業活動の一つであり、恒常的に取り組んでおります。しかし、特定商取引に関する法律の規制強化や労働環境の変化があった際に、人材確保のための施策が困難になる場合や、ビューティーディレクター希望者の減少等から、十分な人材の手当が行えない可能性があり、当社グループの経営成績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。このため、従来の委託販売契約に追加して、新たなパートナーシップの導入を進めており、また、今後も継続的に検討を進めてまいります。
④戦略的投資活動
当社グループは、アジア太平洋地域を中心とした海外展開、M&A及び新規事業に対し戦略的投資を行っております。戦略的投資活動の意思決定に際しては、必要な情報収集及び検討を実施しておりますが、予期し得ない環境変化等により、当初意図した成果が得られない場合には、当社グループの経営成績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。また、事業用資産やM&Aに伴い計上されるのれん等の資産については、今後の業績動向によって、期待されるキャッシュ・フローを生み出さない場合には、減損損失を計上する可能性があります。このため、M&A対象会社に関する各種のデュー・デリジェンス及び企業価値並びに株式価値算出に際しては、外部の専門家を活用し、精度向上に努め、適切な買収プロセス及び適正な企業価値評価に努めてまいります。
⑤化粧品市場環境
国内化粧品市場は成熟期を迎えており、M&Aによる企業グループの再編、異業種からの新規参入、流通業及び小売業の提携・統合に伴う影響力の増大等、競争環境は厳しさを増しております。従って、当社グループが予期せぬ競争環境の変化に的確に対処できない場合には、当社グループの経営成績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。このため、特に中国、ASEAN地域を中心とした海外市場の開拓を積極的に進める他、新中期経営計画では、新たな事業領域の開拓にも注力すること等に努めてまいります。
⑥研究開発
研究開発は当社グループの競争力の源泉の一つであり、継続的に研究開発投資を行っております。年度研究開発計画に基づき、効果的・効率的な研究開発活動を行っておりますが、新製品の開発が長期にわたる場合、成果が翌期以降に及ぶことがあります。また、予定どおりの成果が得られない場合や、期間の延長や投資額の増加を強いられる場合、結果として製品化できない場合もあります。更に、製品化できた場合でも、様々な要因による不確実性が伴うため、必ずしもお客さまに受け容れられるとは限りません。このように当初意図した成果が得られない場合には、当社グループの経営成績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。このことから、製品化に向けた開発期間の短縮及び確度向上を企図して、新研究開発拠点(Technical Development Center)を設置し、2024年から稼働してまいります。
⑦製造及び品質保証
製品生産に不可欠な原材料等は、購買を担当する部署の統括管理のもと、調達先を分散するとともに、調達先と良好な関係を保ち、常に適正な価格で必要量を調達できるよう努めております。しかしながら、外的要因により不測の事態が発生した場合は、必要な原材料の調達に支障が出る可能性があります。また、当社グループの化粧品製造はポーラ化成工業株式会社の袋井工場(静岡県袋井市)、Jurlique International Pty. Ltd.のマウントバーカー工場(オーストラリアサウスオーストラリア州)の2ヶ所で行われており、品質管理基準に基づいた製品品質の維持及び向上に努めておりますが、万一製品の品質について何らかの問題が発生した場合は、当社グループの経営成績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。これらの問題を未然に防止するため、グループ各社の品質保証担当者で構成した品質保証委員会では、グループ品質保証指針の策定、外注先監査結果の共有を行い、グループ品質保証体制の強化に取り組んでおります。
⑧海外での事業活動(グローバル経済の不安定等)
当社グループの主たる販売拠点は国内ですが、マーケットの拡大が期待されるアジア太平洋地域にも展開しており、今後一層の拡大を目指しております。これらの海外での事業活動におきましては、予期し得ない経済的・政治的な不安、労働問題、テロ・戦争の勃発、感染症の流行による社会的混乱等のリスクが潜在するため、当社グループの経営成績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。これらのことから、子会社である海外現地法人や当社の海外事業担当部門による情報収集に加え、当社グループの経営及び事業を展開する上で重要な情報収集を行うMultiple Intelligence Research Center(MIRC)にて世界中の情報をいち早く収集することで、早期のリスク認識によるリスク回避は勿論、機会認識することにより、既存事業の拡大や新事業領域の開拓、更には他企業や異業種、大学や研究機関とのアライアンスの強化を進めており、中長期的な企業価値向上に資する活動に取り組んでおります。
⑨為替
当社グループでは、海外事業活動の展開により生じた輸出入取引等の外貨建て決済や、海外子会社への貸付金について、為替レートの変動リスクを負っております。また、在外連結子会社の現地通貨建ての報告数値についても、連結財務諸表作成時に円換算することから、為替レートの変動が当社グループの経営成績及び財政状態に影響を与える可能性があります。このため、為替の動向を踏まえつつ、必要に応じて為替予約等のリスクヘッジをしております。
⑩知的財産権保護の限界
当社グループでは、知的財産権を確保する措置を講じておりますが、第三者による予測を超えた手段等により知的財産が侵害され、結果として技術の不正流用や模倣品の開発等により当社グループの事業活動に悪影響を及ぼす可能性や、当社グループにおける認識の範囲外で第三者の知的財産権を侵害する可能性があります。このことから、当社にグループの知的財産の管理及び戦略を専門とする知財・薬事センターを設置し、国内外の活動拠点において、当社グループにおける特許権や商標権の確保といった知財戦略の策定と実行、及び当社が保有する権利への不当な侵害の有無についてのモニタリングを実施しております。また、当社グループによる意図しない第三者への権利侵害を防止するため、社内審査等を実施しております。
⑪情報セキュリティ
当社グループでは、個人情報や研究開発情報等の機密情報の取扱いについては、情報セキュリティシステムの整備、情報セキュリティ委員会による社内規程の制定・教育を実施しております。また、内部監査の実施や外部機関を活用したセキュリティシステムの脆弱性診断等を実施することでセキュリティ管理の徹底を図っております。しかしながら、何らかの原因によりこれらの情報が流出した場合には、当社グループに対する損害賠償請求の提起、信用失墜等が生じることにより、事業に悪影響が及ぶ可能性があります。昨今高まりを見せるサイバー攻撃等による情報漏洩リスクには、定期的にサーバへのアタックテストを実施する等、最新の防御体制を整えて対応しております。
⑫重要な訴訟
当連結会計年度において、当社グループに重大な影響を及ぼす訴訟等は提起されておりませんが、将来、重要な訴訟等が発生し、その結果、当社グループの経営成績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。
⑬災害等
当社グループの主たる生産拠点は、化粧品については、ポーラ化成工業株式会社の袋井工場であります。そのため、東海地方における大規模な震災、水害等が生じた場合、長期にわたって製品供給が不可能になる可能性があります。更に、東海地方以外においても想定外の大規模災害や事故等が発生した場合においては、原材料の調達、商品供給及び販売の中断等により当社グループの経営状態に影響を及ぼす可能性があります。このため災害発生に伴う一定期間の袋井工場操業停止や製品・原料調達困難を想定して、事業継続上重要な品目(グループ優先品目)を選定し、製品や代替困難な原料のBCP在庫を確保しております。また、当社グループの主軸である株式会社ポーラ及びオルビス株式会社を中心に、一部の品目を外部の製造委託先による生産に切り替える他、新研究開発拠点(Technical Development Center)にもグループ優先品目の生産機能を持たせることで、リスク回避と分散化に取り組んでおります。
⑭感染症の流行
社会的影響の大きい感染症の拡大が発生した場合、日々の活動でお客さまや取引先と直接対面する事業の特性から、接客活動や営業活動の自粛、又は販売店の営業停止等により、国内外において当社グループの経営成績及び財政状態に影響を与える可能性があります。感染症の拡大により外出の自粛や時短営業等の措置がとられた際は、対面型サービスを利用した消費行動は著しく制約を受けるため、EC等通信販売へ購買がシフトすることが想定されます。通信販売を主要な販売チャネルとして展開するオルビス株式会社や株式会社DECENCIAではデジタルマーケティングを一層強化し、対面販売を主要な販売チャネルとする株式会社ポーラ及び株式会社ACRO等においても、オフラインとオンラインの融合等を図るチャネル強化を実行し、更なる事業成長に向けて取り組んでまいります。
⑮気候変動
気候変動の深刻化が進むことで、自然災害の頻発化や生態系の変化等の悪影響が想定され、当社グループにおいても、企業活動を行う上でのリスクとして、温暖化による化粧品商品選択の変化(サマー品、紫外線対策品へのシフト、清涼感促進商品の増加)による影響が生じる可能性があります。また洪水による河川や海浜沿岸の事業所・工場の操業停止、温暖化要因による山火事の頻発による近隣の事業所・工場の操業停止(主にオーストラリア)、調達が困難になる原料の増加により、製品の成分や処方変更を強いられる可能性があります。
化粧品の製造・販売を主たる事業として展開する当社グループにおいても、温室効果ガス(CO2)の排出削減に取り組んでおります。SBT(Science Based Targets)に基づき、2029年までのCO2排出量の削減目標を定め、太陽光発電システムの増設や再生可能エネルギー由来の電力への切り替え等、具体的な対策を進めております。また、当社グループの役員を対象に支給する株式報酬(LTI)と連動させることで、気候変動課題の解決に向けた実効性の向上を図っております。
⑯国内人口の減少
化粧品市場に限らず国内の多くの業種において、今後は人口減少によりインバウンド需要等の影響を除いた国内需要の大幅な拡大が想定しづらく、事業の停滞等の悪影響を及ぼすおそれがあります。このことのから、当社グループでは、海外事業展開の飛躍を重点テーマに掲げ、海外ブランドのM&A、既存ブランドの海外展開を加速させてまいりました。新中期経営計画(2024年~2026年)においても、引き続き、海外事業の更なる成長と新市場での基盤確立をテーマに、グローバル展開を強化してまいります。
また、人口減少による影響は業績のみに留まらず、事業運営に携わる人材獲得という点においても、悪影響を及ぼす可能性があります。当社グループでは、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)拡大を機に、今後も進むことが想定される新しい生活様式への対応として、在宅勤務制度の拡大や副業制度の導入等の働き方改革、雇用延長の無制限化の一部導入を行ってまいりました。今後も多種多様な働き方をグループ全社で促進し、労働力確保に注力してまいります。
(2) 業界に係るリスク
①法的規制等
ビューティケア事業 :医薬品医療機器法、食品衛生法、栄養改善法、保健機能食品制度等
委託販売・通信販売 :特定商取引に関する法律等
全般 :製造物責任法、特許法、消費者基本法、不当景品類及び不当表示防止法等
イ 医薬品医療機器法
当社グループの主たる事業領域において、化粧品及び医薬部外品を国内にて製造販売するためには、医薬品医療機器法に基づく製造販売業・製造業の許可を必要とし、当社グループの該当事業会社各社ではその許可を取得しており、法令の定めに基づき5年毎の更新その他必要な手続きを行っております。当社グループでは、医薬品医療機器法及び上記の関連法規制の遵守を徹底しておりますが、医薬品医療機器法第74条の2(許可の取消し等)等に抵触し、業務の全部もしくは一部の停止を命ぜられ、又は化粧品事業の製造・販売に関する厚生労働省からの許可を取り消された場合、あるいは、これらの法規制が変更された場合、また予測していない法規制等が新たに設けられた場合には、当社グループの事業活動が制限され、当社グループの経営成績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。
(ビューティケア事業に係る主要な許可の取得状況等)
取得会社 | 許可の名称 | 有効期限 | 取消事由及び該当状況 |
株式会社ポーラ | 化粧品製造業許可 (株式会社ポーラ流通センター) | 2027年1月23日 | (取消事由) 医薬品医療機器法に定められる事由に該当した場合
(該当状況) 上記取消事由に該当する事項はありません。 |
| 化粧品製造業許可 (株式会社ポーラ流通センター袋井作業場) | 2024年5月25日 | |
| 医薬部外品製造業許可 (株式会社ポーラ流通センター) | 2027年1月23日 | |
| 医薬部外品製造業許可 (株式会社ポーラ流通センター袋井作業場) | 2024年5月25日 | |
| 化粧品製造販売業許可 | 2027年5月13日 | |
| 医薬部外品製造販売業許可 | 2027年5月13日 | |
オルビス株式会社 | 化粧品製造販売業許可 | 2024年4月30日 | |
| 医薬部外品製造販売業許可 | 2024年4月30日 | |
ポーラ化成工業株式会社 | 化粧品製造業許可 | 2024年10月31日 | |
| 医薬部外品製造業許可 | 2024年10月31日 | |
| 化粧品製造販売業許可 | 2024年10月31日 | |
| 医薬部外品製造販売業許可 | 2024年10月31日 |
ロ 特定商取引に関する法律(以下「特定商取引法」)
当社グループでは、特定商取引の関連法令の遵守に努めておりますが、当社グループにおいて販売パートナー(ショップオーナー/マネージャー、ビューティーディレクター)が特定商取引法に違反するような事態に至った際の社会的信用の失墜や、特定商取引法の改正により委託販売活動が著しく制限された場合等は、当社グループの経営成績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。
②原材料価格の高騰
当社グループでは、製品生産に不可欠な原材料等は、購買を担当する部署の統括管理のもと、調達先を分散するとともに、調達先と良好な関係を保ち、常に適正な価格で必要量を調達できるよう努めております。しかし、原油等素材価格の動向により、主要原材料の仕入価格が上昇した場合は、製品の製造原価も上昇し、当社グループの経営成績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。
(3) 持株会社としてのリスク
当社は持株会社であり、収入の大部分は当社が直接保有している子会社からの経営管理料、業務委託料及び受取配当となっております。このうち受取配当については、一定の状況下で、会社法等の規制等により、子会社が当社に支払うことのできる金額が制限される場合があります。また、子会社が十分な利益を計上することができず、当社に対して配当を支払えない状況が生じた場合等には、当社は株主に対して配当を支払えなくなる可能性があります。
(4) 公益財団法人ポーラ美術振興財団との関係について
公益財団法人ポーラ美術振興財団は、1996年5月、当社グループの元会長であった故鈴木常司が、「わが国の芸術文化の向上に寄与する」ことを目的に設立した財団法人であります。当社グループは、創業時より「美と健康に関わる事業を通じて社会に貢献すること」を企業理念としていることから、同財団に対して、設立当初よりその活動に賛同し、様々な支援(寄付の実施、美術館建設資金の借入に対する債務保証、学芸員等の人員を出向させる等の人的支援(注)、美術品の寄託(無償)等)を行ってまいりました。なお、寄付の実施及び債務保証は既に解消されており、今後もこれらの実施予定はありませんが、人的支援及び美術品の寄託(無償)等については今後とも継続する予定であります。
また、同財団は、期末日現在、当社株式78,616千株を保有しており、これは、発行済株式数の34.31%(議決権比率35.50%)にあたります。当社代表取締役会長鈴木郷史は同財団の理事長を兼務しておりますが、当社代表取締役会長を含む当社グループ関係者の理事は、同財団の保有する当社株式に係る議決権行使については関与しない方針です。
(注)出向者の人件費相当額については、同財団が負担しております。
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