企業ナレルグループ東証グロース:9163】「サービス業 twitterでつぶやくへ投稿

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企業概要

 文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において当社グループが判断したものであります。

(1)経営方針

① ミッション

 当社グループは、『深刻化するプロ人材の枯渇を解決し、日本を「課題解決先進国」にする。』をミッション(存在意義)として掲げております。

 日本に限らず、先進国の多くは枯渇とも言えるレベルで「プロ人材の不足」に悩まされており、国・産業・企業それぞれの単位での隆盛に影響を与える大きな課題となっていると考えております。今日の日本では、少子化によって新規就業者数が減少するなどによってプロ人材は慢性的に不足しており、既存のプロ人材も高齢化が進んでおり技術の継承も課題となっております。また、かかるプロ人材の不足を補うことが期待されるIT化・デジタルトランスフォーメーション(DX)による業務効率化も、当社グループが事業領域としている建設業をはじめとする多くの産業分野において遅れているのが現状です。当社グループは、このような「プロ人材不足による問題」を解決し、日本を「課題解決の先進国」に押し上げるという強い意思をミッションに込めております。

 また、「プロ人材」という表現は、専門技術を持つ人材不足の問題解決に事業領域を絞る意図をもっており、この「プロ人材」に焦点を絞っていることが他の人材会社との違いと考えております。

② ビジョン

 当社グループは、『ITと人材育成の2つの技術をかけ合わせ、プロ人材の減少を補う「生産性を高める業務変革」と「プロ人材の育成と安定供給」を提供・実現する。』をビジョン(目指す姿)としております。

 これは、「人材育成」の技術は、体系的な専門技術のインプットも大切ですが、それぞれの人の成長段階やタイミングに合わせた感情的なフォローも重要と考え、当社グループは、血の通った「人材育成」の組織文化と育成技術を基盤に、「育成できる人の数」をスケール(拡大)し、各業界で求められる専門知識とスタンス育成を経た人材を数多く安定供給すると同時に、若手技術者を着実に育成できる体制を構築してまいります。

 また、プロ人材が減って不足する問題への解決策は、プロ人材の供給だけではなく、当社グループは、顧客企業に対し、「プロ人材が減った少人数体制でも、生産性が高まるような業務変革の支援」もITを用いて提供してまいります。

 このような業務効率化支援と、プロ人材の安定供給という2つのサービスの掛け算によって、各業界の課題解決支援を力強く実現してまいります。

(2)経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等

 当社グループは、2023年10月に策定した中期経営計画において、「安定的な高成長に向けた事業基盤の構築」を経営テーマとして掲げ、売上収益及び営業利益の中長期的な成長を重視しております。また、売上収益の構成要素である在籍人数、稼働人数、採用者数、退職者数、退職率、稼働率、一人あたり契約単価を主要なKPIとして管理しております。

(3)経営環境

 当社グループの主要顧客である建設業界においては、公共土木・民間建築ともに老朽化に伴う維持・修繕工事の増加など、今後も建設市場は底堅い需要が見込まれており、2022年の建設業の有効求人倍率は5.51倍(注1)となりました。一方では、建設業における人手不足、高齢化が深刻化する中、2024年の時間外労働上限規制の適用開始等の法規制強化もあり、技術者の安定確保が喫緊の課題となっており、また厚生労働省「一般職業紹介状況(職業安定業務統計)」の調査でも建築・土木・測量技術者の新規求職者数は年々減少しております。このような環境下において、技術者人材の需要は引き続き旺盛であります。また、就業人口不足を補うために、建設現場の生産性向上を目的としたICT導入支援のニーズも高まっております。

(注) 1. 厚生労働省「一般職業紹介状況(職業安定業務統計)」


(出所) 一般財団法人建設経済研究所「No.74 建設経済レポート」(2022年3月)に基づき、当社にて作成しております。

 建設就業者比率:全産業に占める建設業の就業者数の割合

 双方ともに建設業の全要素生産性(TFP 上昇率)が2002年以降の平均値である1.9%程度で今後も推移すること、その他建設経済研究所による一定の想定・試算に基づく「ベースラインケース」での予測

(*1) 働き方改革や国内人材確保が進展せず、建設就業者数が平成30年度雇用政策研究会において示された「経済成長と労働参加が一定程度進むケース」で推計された就業者数まで減少する場合


(出所) 厚生労働省「一般職業紹介状況(職業安定業務統計)」に基づき、当社にて作成しております。

 パートタイムを含む常用


(出所) ヒューマンリソシア株式会社「建設技術者の『2030年未来予想』2023年版」に基づき、当社にて作成しております。

 ベースライン成長シナリオ:足許の潜在成長率並みの成長率で推移した場合

(4)経営戦略

 成長性・収益性を支える当社グループの強みとなる戦略は、以下のとおりです。

① 採用力

 他業種を含めた幅広い求職者層を母集団として採用活動を行うことができるため、当社グループは未経験者採用に特化しております。

未経験者採用は応募から入社までのハードルが高くなりますが、未経験者採用に特化することにより、大手求人メディアによる採用によって大量採用ができることから採用単価は経験者採用対比で低く抑えることができます。また、採用単価を抑制するために、応募から書類選考、面談設定までを24時間自動対応可能な採用自動化ツールを導入し、採用の効率化を図っております。また、経験者のみを対象とする場合と比較して優位な人材供給力を発揮することができると考えております。なお、一定数の退職者も生じますが、採用者数の増加により在籍人数は増加しております。

 在籍人数(人)

 

2020年10月

2021年10月

2022年10月

2023年10月

㈱ワールドコーポレーション

(正社員)(注)2

1,657

(1,461)

1,847

(1,604)

2,240

(1,961)

2,696

(2,320)

㈱ATJC(注)3

179

195

282

364

(注) 2. ㈱ワールドコーポレーション単体の数値であります。当月1日から月末までに1日以上在籍していた技術者数であります。括弧内は正社員の技術者数であります。

3. ㈱ATJC単体の数値であります。当月1日から月末期間中に1日以上在籍していた技術者数であります。

 採用者数(人)

 

2020年10月

2021年10月

2022年10月

2023年10月

㈱ワールドコーポレーション(注)4

798

918

1,262

1,559

㈱ATJC(注)5

44

63

169

186

 退職者数(人)

 

2020年10月

2021年10月

2022年10月

2023年10月

㈱ワールドコーポレーション(注)4

645

732

885

1,125

㈱ATJC(注)5

47

45

85

111

 退職率(%)

 

2020年10月

2021年10月

2022年10月

2023年10月

㈱ワールドコーポレーション(注)4

27.4

27.9

29.1

30.2

㈱ATJC(注)5

21.1

18.8

23.5

23.9

(注) 4. ㈱ワールドコーポレーション単体の数値であります。

5. ㈱ATJC単体の数値であります。

② 教育力・単価向上余地

 当社グループでは、技術者の経験年次に応じた研修を実施することで、経験年次相応のスキルを身につけた人材を供給することができるような若手人材の育成メソッドが確立できております。2023年10月末の技術者の年齢構成は、29歳以下約62%、30歳~39歳以下約26%、40歳以上約12%と、39歳以下が全体の約88%(注6)であり、高齢化が進む建設業界に対して若年層の派遣が可能となっております。

 具体的には、未経験者である1年目は基礎技術研修(建設業界の基礎知識や専門用語、社会人スキルの基礎などの研修)、2~3年目には専門技術基本研修(最初のプロジェクト配属で得た経験をベースに、次のプロジェクトの知識の基礎などの研修)、4~6年目には専門技術実践研修(より密度の高いプロジェクトを担当しながら一級建築士や施工管理技士等の資格取得を視野に入れた研修)、7年目以降は専門技術研修(建設現場に欠かせない存在としてプロジェクトをけん引するための研修)を行っております。

 これにより、顧客からの評判を得て、よりレベルの高いプロジェクトにチャレンジし、そこで得られたスキルにより、さらなる評判が獲得できるという好循環により、成長を実現しております。また、建設業界で特に不足している若手人材の安定供給が可能となることで、当社グループは構造的に契約単価を引き上げやすい年齢構成となっております。

 なお、一人あたりの契約単価、稼働人数、稼働率は以下のとおり推移しております。

(注) 6. ㈱ワールドコーポレーション単体の数値であります。派遣契約中の従業員を対象としております。

 一人あたり契約単価(千円/月)

 

2020年10月

2021年10月

2022年10月

2023年10月

㈱ワールドコーポレーション

(1年目平均)(注)7

448

(400)

468

(404)

471

(414)

487

(441)

㈱ATJC(注)8、9

543

537

524

499

(注) 7. ㈱ワールドコーポレーション単体の数値であります。経験者・未経験者を含む全派遣従業員の各契約単価(残業代は除く)の平均値であります。括弧内は1年目の平均値であります。

8. ㈱ATJC単体の数値であります。経験者・未経験者を含む全派遣従業員の各契約単価(残業代は除く)の平均値であります。

9. 未経験者採用人数の増加により、契約単価の低い未経験者の割合が増加したことで、一人あたり契約単価低下しております。

 稼働人数(人)

 

2020年10月

2021年10月

2022年10月

2023年10月

㈱ワールドコーポレーション(注)10

1,544

1,594

1,922

2,351

㈱ATJC(注)11、12

168

155

214

299

(注) 10. ㈱ワールドコーポレーション単体の数値であります。派遣契約中の従業員を対象とし、期中平均にて算出しております。

11. ㈱ATJC単体の数値であります。派遣又は請負契約中の従業員数を対象とし、期中平均にて算出しております。

12. 2021年10月期の稼働人数が減少したのは、コロナ禍での営業活動が低調であったためであります。

 稼働率(%)

 

 

2020年10月

2021年10月

2022年10月

2023年10月

㈱ワールドコーポレーション

(注)17

研修中含(注)13

91.0

89.4

93.1

93.8

研修中除(注)14

92.0

90.8

95.3

96.2

㈱ATJC

(注)17

研修中含(注)15

91.0

87.1

86.5

85.6

研修中除(注)16

93.2

90.8

94.3

92.9

(注) 13. ㈱ワールドコーポレーション単体の数値であります。技術者数(研修中の従業員を含む)に対する稼働人数の割合を期中平均にて算出しております。

14. ㈱ワールドコーポレーション単体の数値であります。技術者数(研修中の従業員を除く)に対する稼働人数の割合を期中平均にて算出しております。

15. ㈱ATJC単体の数値であります。稼働可能人数(研修中の従業員を含む)に対する稼働人数の割合を期中平均にて算出しております。

16. ㈱ATJC単体の数値であります。稼働可能人数(研修中の従業員を除く)に対する稼働人数の割合を期中平均にて算出しております。

17. 2021年10月期の稼働率が低下したのは、コロナ禍での営業活動が低調であったためであります。

 今後の当社グループの中期的な成長戦略は以下のとおりであり、事業ポートフォリオの拡大により、収益基盤を強固なものにしてまいります。

① 派遣領域の拡大

 低コストで採用できる自社メディア(セコカンNEXT)では、経験者向けに求人情報を掲載することができ、幅広い年齢層の施工管理経験者が登録されています(2021年10月期197人、2022年10月期319人、2023年10月期435人)。低コストで採用できる自社メディア(セコカンNEXT)による経験者の採用力強化や、当社グループ独自の採用力、教育力、営業力の強みを活かし、IT領域、プラント領域、BIM領域(注18)等新たな派遣領域を開拓しており、拡大してまいります。

 また、プラント領域については、これまで㈱ワールドコーポレーションで培った採用戦略を踏襲し、プラントのメンテナンス会社と提携し、プラント現場の実地研修を実施しております。このような取組みにより、多くの専門技術者を擁する当社グループは、設計・調達・建設を行うプラントエンジニアリング会社からのCADオペレーター等設計段階の派遣ニーズ、プラントのメンテナンス会社からの日常保全業務・定期修繕を実施できる技術者への派遣ニーズに対応することができます。

BIM領域については、施工図/BIMに関する専門の部門を設置し、BIM技術者派遣を本格的に始動したことにより、クロスセルを強化し、BIM技術者の派遣者及びその他の施工図技術者双方の派遣者数の増加に繋げております。3ヶ月研修や請負業務における先輩社員のOJT等、教育体制の整備によって、BIM技術者の育成に注力してまいります。

IT領域については、当社グループが確立してきた採用ノウハウや人材育成メソッドを株式会社ATJCへ移植し、低コスト採用と契約単価向上を目指してまいります。

(注) 18. BIM(Building Information Modeling)は、コンピューター上で作成する3Dデジタルモデルにより、建設過程における設計から施工、維持管理までを可能にするツール。


(出所) 国土交通省第10回BIM/CIM推進委員会(令和5年8月10日)に基づき、当社にて作成しております。

(*1) BIM/CIM:コンピューター上で作成する3Dデジタルモデルにより、建設過程における設計から施行、維持管理までを可能にするツールBIM(Building Information Modeling)は建築分野、CIM(Construction Information Modeling)は土木分野

(*2) BIM/CIM原則適用:国土交通省は2020年4月に「2023年までに小規模を除く全ての公共事業にBIM/CIMを原則適用」することを決定


(出所) 2023年度 エンジニアリング産業の実態と動向 一般財団法人エンジニアリング協会

 受注見通し回答社数は58社

② 人材紹介サービスへの展開

 現在の展開領域である技術者(施工管理等)の派遣に加えて、今後は技術者よりも圧倒的に多くの就業者が存在する技能労働者(職人)309万人・一人親方51万人(注19)の人材紹介ビジネスの展開に注力してまいります。建設業務の有料職業紹介事業は認定団体のみ職人職業紹介が可能であり、当社グループの一般社団法人全国建設請負業協会を含む全国で3団体のみが認定を受けております(注20)。当社グループの㈱コントラフトが運営する「職人(技能労働者)を探している企業」(求人企業)と「職人(技能労働者)として働きたい方」(求職者)のプラットフォームである「ジョブケンワーク」を活用して、一般社団法人全国建設請負業協会に求職者情報の提供を行っております。㈱コントラフト設立以降、プラットフォームの求職者数、求人情報を掲載する企業の登録会員数は順調に増加しております。これにより、建設業界で人手不足に苦しむすべての企業にサービスを提供できる唯一無二の存在を目指します。

(注) 19. 技能労働者:業者・技術者・技能労働者。総務省「労働力調査」(令和3年平均)を基に国土交通省で算出(国土交通省「最近の建設業をめぐる状況について」2022年6月15日)

 一人親方:総務省労働力調査(令和元年平均)を基に国土交通省においての推計人数(国土交通省「第一回建設業の一人親方問題に関する検討会」2020年6月25日)

20. 2023年2月時点、当社調べ(一般財団法人みやぎ建設総合センター、一般社団法人沖縄県建設業協会、一般財団法人全国建設請負業協会の3団体)

③ 建設ICTコンサルティングへの展開

 建設テック市場の拡大が期待される中で、建設ICTによる新規人材サービスを確立し、建設業界のIT/DX化をサポートしてまいります。建設業においては、人手不足や時間外労働削減を背景とした省人化・生産性向上を目的として、これをサポートするためのツールとしてICT技術(例:ドローンによる測量、3次元レーザースキャナによる点群計測、図面管理・情報共有ツールの活用、等)のニーズが高まっております。一方で、ICT技術に精通した人材層はまだ十分ではなく、外部にICT導入支援を求める需要は大きいものと認識しております。当社グループは、建設ICT導入のコンサルティングを実施するコンサルタントや支援員を養成し、複数名により編成したチームより建設ICTコンサルサービスを提供してまいります。

(5)優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題

① 技術者の確保及び育成

 技術者人材の確保、技術者のスキルアップは、当社グループの成長における重要な経営課題であります。

 採用者数の拡大施策としては、情報発信によるブランディング強化、自社メディア(セコカンNEXT)での柔軟な採用、グループ採用による幅広い職種採用、採用フロー見直しによる遷移率の改善、潜在的見込応募者の発掘等を推進してまいります。退職率の低減施策としては、研修及び配属後のフォロー強化、サービス領域拡大による技術者の成長機会創出、顧客と技術者の関係性構築支援、技術者コミュニケーションプラットフォーム構築、退職懸念の早期発見と早期解決体制強化等を推進してまいります。人材育成施策としては、技術者数の増加や、事業領域の拡大に対応するため、各種研修プログラムや資格取得支援制度の拡充等により、広範囲、高品質、高効率な人材育成の仕組みを構築してまいります。

 以上の施策により、採用者数の拡大と退職率の低減を図り、技術者の確保・育成に努めてまいります。

② テクノロジーの普及による省人化

 中期的なテクノロジーの普及により、工事現場における省人化が進展することで、技術者の人材派遣需要が停滞(人数減、業務時間減)する可能性があります。一方では、建設業界へのICT導入による効率化へのニーズが高まっているということでもあり、ICT導入に係る人材供給に取組んでまいります。

③ 法改正への対応(長時間労働の抑制)

 政府による「働き方改革」のもと、労働時間関連法令の改正や法令違反企業への罰則強化など、長時間労働に対する指導・監督が強化されております。時間外労働時間の上限規制も強化される中、建設業ではその適用を猶予されておりますが、2024年4月より適用されることとなります。派遣元である当社グループは、派遣先に対して当社グループの派遣技術社員が当社グループの36協定の範囲を超えて時間外労働を行うことがないように、勤怠状況を把握する体制を整備しており、派遣先に対する改善要請など、適切な対応を行っております。

④ 財務体質の強化

 当社グループは、金融機関を貸付人とする借入契約を締結し多額の借入を行っており、また、多額ののれんを計上しております。当該のれんは、主に2019年11月に株式会社ワールドコーポレーションの株式を取得したことにより生じたものであります。今後は、事業拡大に伴う運転資金及び投資資金の確保、配当政策、有利子負債とのバランス等を勘案しつつ自己資本の拡充を図ってまいります。また、事業の収益力を高め、負債の削減に努めることで、財務体質の強化に努めてまいります。

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