トーカロ 【東証プライム:3433】「金属製品」 へ投稿
企業概要
当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取組は、次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
(1) ガバナンス
サステナビリティに関する方針の策定、計画の立案、取り組みの進捗確認を担う組織としてサステナビリティ委員会を設置し、気候変動に関する対応についても審議しています。同委員会は、社長を委員長とし、常勤取締役や各部門長などから構成され、基本的に年4回開催することとしています。
取締役会は、同委員会から気候変動を含むサステナビリティ課題全般に関する報告を受け、審議・承認を行っています。2021年10月に開催した取締役会では気候変動に関する目標を含む中期経営計画を、2021年12月に開催した取締役会では気候変動に関する取り組みを含むマテリアリティ(当社が重点的に取り組むべき課題)を承認しました。
(2) 戦略
当社は、2021年12月に「先進的皮膜開発と潜在市場の開拓」「環境負荷低減への対応」「ものづくりの高度化と品質向上」「多様な人財の育成と活躍」「コンプライアンスの徹底(企業倫理に則った行動の実践)」の5つのマテリアリティを特定し、各マテリアリティに対する取組みを進めています。
(a) 気候変動対応
当社は「人と自然の豊かな未来に貢献する」ことをビジョンに掲げ、気候変動対応を経営における重要課題の一つと位置づけています。
2022年からTCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)提言に基づくシナリオ分析を開始し、気候変動に関するリスクと機会の洗い出しに着手しました。2022年6月にはトーカロ株式会社単体を対象範囲とし、主要なリスクと機会、およびその対応策を抽出しました。
2023年はさらに分析を深化させるため、それぞれのリスクと機会について財務インパクトの試算を行い、その結果から特に重要と思われる対応策について指標及び目標を設定しました。今後は、分析のさらなる精緻化とともに、設定した指標及び目標に基づきリスク軽減と機会増加の対応策を推進してまいります。
<リスク・機会の内容と財務インパクトおよびその対応策>
・対象範囲:トーカロ株式会社(単体)
・対象期間:現在~2050年
・主な参照シナリオ:
IEA WEO 2019 SDS・STEPS(2℃)、CPS(4℃)
IPCC第5次評価報告書 RCP2.6(2℃)、RCP8.5(4℃)
区分 | 種類 | 内容 | 時間軸 | 事業への影響 | 財務インパクト [ ]で注記を記載していないものは、+2℃シナリオ・2030年度 | 対応策 |
移行 | 政策 ・ 規制 | カーボンプライシング制度導入に伴うエネルギー調達費の増加 | 中期~長期 | 中 | 炭素税 1.2億円※ ※2030年時点の炭素税額は130ドル/t-CO2と想定 ※為替レートは1ドル=133円で計算 | 再生可能エネルギー ・グリーン電力の長期契約 ・再生可能エネルギー(太陽光発電)の追加導入検討(再生可能エネルギーへの切り替えによる再生可能エネルギー比率の向上) ・太陽光発電で発電した電気の蓄電方法の検討 設備 ・生産性向上のための設備更新 ・エアコン、冷却設備、LED電球、コンプレッサーなどの省エネトップランナー機器への更新 ・ノンフロン設備への更新 車両 ・社用車のハイブリッド車への切り替え ・電気自動車の導入検討 |
カーボンプライシングの導入による資材調達費の増加 | 中期~長期 | 中 | ― | 情報収集の強化 | ||
市場 | 石炭火力発電など、化石燃料を使用する発電設備向けのコーティング需要減少 | 短期~中期 | 中 | 火力発電等関連事業の ※火力発電等の減少率は、日本政府の第6次エネルギー基本計画に基づく | 水素・アンモニア・バイオマス等の代替燃料への技術対応 | |
評判 | 気候関連課題への対応不備・開示情報不十分によるステークホルダーからの評判失墜、 | 短期~中期 | 中 | ― | CO2排出量の管理、開示情報の充実化 ステークホルダーとのコミュニケーション強化 開示情報の信頼性向上に向けた第三者保証取得の検討 |
区分 | 種類 | 内容 | 時間軸 | 事業への影響 | 財務インパクト [ ]で注記を記載していないものは、+2℃シナリオ・2030年度 | 対応策 |
物理 | 急性 | 台風、豪雨、落雷などに伴う工場被災、作業中断による回復費用の発生 | 中期~長期 | 大 | 当社では臨海部に所在する事業所が多く、河川氾濫等の洪水よりも、高潮による浸水被害の発生リスクの方が高い。 高潮浸水想定区域に所在する6事業所※1において、浸水級の災害が1回発生した場合 操業停止による売上損失 被災する設備の回復費用 ※1 事業所所在自治体のハザードマップにより、高潮浸水想定区域に所在する事業所は、名古屋工場、本社、明石工場、溶射技術開発研究所、倉敷工場、北九州工場の6事業所 ※2 操業停止の日数は、国土交通省の治水経済調査マニュアルに基づく ※3 1回の浸水で、機械装置の70%に修理不能な故障が発生すると想定 | 高潮・高波による浸水リスクの高い海辺に立地する工場の防災計画、移転検討 落雷による瞬時停電対策(UPS導入完了、油圧コントロール機械の対策) サプライチェーンを含めたBCP対策の強化 |
慢性 | 金属の需要増加、採掘減少による調達困難・価格高騰 | 中期~長期 | 大 | 加工材料費増加額 15.2億円 (2022年度比 48%増※) ※加工材料価格の上昇率は、当社が主に使用する金属材料の市場成長率予測に基づく | 材料使用量の削減・効率化(リサイクルを含む)、価格転嫁 原材料である金属採掘規制に伴う鉱山変更によるサプライヤーの価格変動の注視 鉱山変更に伴う品質への影響把握、顧客の品質満足度の追求 | |
海面上昇に伴う工場被災等 | 長期 | 大 | [+4℃・2050年] 浸水想定地域に所在する名古屋工場で、浸水または近隣の大半が水面下※となった場合 工場移転費用 16.3億円 ※2022年から2050年までの海面上昇を0.3mと想定 | 情報収集の強化、浸水対策 | ||
熱中症や感染症など、従業員の健康被害増加 | 短期~長期 | 中 | ― | 最適な空調による労働環境整備 |
区分 | 種類 | 内容 | 時間軸 | 事業への影響 | 財務インパクト [ ]で注記を記載していないものは、+2℃シナリオ・2030年度 | 対応策 |
機会 | 技術 | 気候変動に適応する顧客ニーズ、新規顧客獲得機会の増加による収益拡大 | 短期~長期 | 中 | 環境エネルギー関連事業 (2022年度比 135.3%増) | 顧客のGHG排出削減(水素・アンモニア・バイオマス等の代替燃料、リサイクル設備など)に対応したコーティング技術の開発とPR 自然エネルギー発電の普及・効率化(風力、水力、地熱、蓄電池など)に対応したコーティング技術の開発とPR 原材料メーカーで使用するエネルギーが再生可能エネルギーに置き換わった場合、顧客へスコープ3のGHG排出ゼロコーティングの供給が可能であることのアピール |
評判 | コーティングが省エネ、GHG排出低減に結びつく技術であることの理解促進が進むことによる受注機会の増加 | 短期~長期 | 大 | 補修・再生関連事業 (2022年度比 87.4%増) | 溶射コーティングのリーディングカンパニーであることの積極的なPR |
(b) 人財育成方針
当社が求める人財像は、社是である「技術とアイデア」「若さと情熱」「和と信頼」「グッド・サービス」をもとに、「今よりもっと」を考えて取り組む人財です。
当社は、表面改質技術(皮膜)による価値創造を通じて顧客のベストパートナーとなるために、4つの重点テーマ「市場開拓の強化」「技術開発体制の強化」「ものづくりの高度化」「100年企業を目指した持続的成長」に自律的に取り組む人財を育成する必要があります。そのために、社員が持っている可能性や意欲を引き出すとともに、一人ひとりのキャリア開発を支援するさまざまな成長機会を提供します。
具体的な人財育成の方策は、以下のとおりです。
(ⅰ)最適なソリューション提供に向けた提案営業力の向上
顧客の多種多様なニーズを捉え、その課題に対して最適なソリューションを提供するため、重点分野ブロジェクト参画や営業事例発表大会などの社内連携の機会を通して専門知識やアプリケーション事例の吸収・展開を促進し、提案営業力をさらに高める。
(ⅱ)ものづくりの創意工夫とその基盤固め(ひとづくり)
顧客の要望に応じたオーダーメイド皮膜の実現と生産能力の増強を両立するため、QA発表大会(ものづくり改善活動)などで生産効率化に向けた創意工夫の動機付けを行う。また、職長の指導・監督下で仕様書や作業手順書どおり確実に施工するための仕組み(ひとづくり)を維持・発展させる。
(ⅲ)品質管理手法を探求するためのスキル獲得
皮膜の状態は施工後に確認することが難しく、製造プロセス管理が極めて重要であることから、品質マネジメントシステムの運用を基礎とし、QC検定や非破壊試験技術者資格を奨励する。それによって、もっと優れた品質管理手法を探求するためのスキル獲得を促す。
(ⅳ)技術開発に柔軟な発想で取り組む風土の醸成
技術的成果を競う技術レポート発表大会や技術会議は、当社の社是「技術とアイデア」の原点ともいえるイベントである。このような取り組みで技術開発への情熱を湧き上がらせ、既成概念にとらわれない柔軟な発想で開発に取り組む風土を醸成する。
(ⅴ)デジタル教育の実施とDX人財の選出
デジタル化・DXはあらゆる業務の生産性や品質を向上するための手段として重要であり、デジタル教育を幅広く実施して全社のデジタルリテラシー(理解して活用できる能力)向上に取り組む。また、データやデジタル技術を活用してイノベーションに結び付けることのできる社員(DX人財)を選出し育成していく。
(ⅵ)グローバルチャレンジ制度で視座を高め戦略的思考を育む
グローバル展開の核となる人財のみならず、中長期的目線で当社を将来担っていく中核人財を育成するために、新たにグローバルチャレンジ制度を発足させる。それによって、チャレンジ精神をもった社員の視座を高め戦略的思考を育む。
(c) 社内環境整備方針
当社は、社員がその個性と能力を発揮し、仕事と生活の調和を図ることができるよう、すべての社員が働きやすい社内環境の整備を行います。
具体的な社内環境整備の方策は、以下のとおりです。
(ⅰ)心理的安全性のある企業風土の醸成
自分の意見や気持ちを誰に対しても安心して発言でき、チャレンジングな姿勢をみんなで後押しする風通しのよい企業風土を醸成する。
(ⅱ)安全衛生に配慮した快適な作業環境の維持向上
労働基準法・労働安全衛生法などに基づき、職場における社員の安全と健康を確保するとともに、きれいで、機能的で、人にやさしい作業環境の維持向上に努める。
(ⅲ)成長機会の公平な提供と実力本位の評価
女性活躍の推進をはじめ、さまざまな属性(国籍、年齢、障碍の有無など)の社員が働きがいをもって能力を発揮できるよう、多様な人財を積極的に採用する。また、成長機会の公平な提供と実力本位の評価を行う。
(ⅳ)仕事と育児・介護の両立支援
育児や介護の状況にあっても安心してキャリア(仕事を通じた成長)を継続できるよう、育児や介護に関する各種制度(休業、休暇、時短勤務など)の整備・周知を行う。また、上司を含めた職場の理解と協力を促す。
(ⅴ)柔軟な働き方と健康的に働くことのできる職場環境づくり
柔軟な勤務制度(勤務場所、労働時間など)の導入・拡大と、社員が心身ともに健康的に働くことができる職場環境づくりに努める。それによって、生産性の向上とワーク・ライフ・バランスの実現を図る。
(ⅵ)学習機会の提供と表彰制度の設置
さまざまな学習機会を提供して社員の能力向上や自己啓発を支援する。さらに、表彰制度などを設けて社員の働きがいを高める。
(3) リスク管理
気候変動に関するリスクを経営における重要リスクの一つと位置付け、各部門においてその管理に取り組んでいます。また、サステナビリティ委員会がリスク管理の状況を横断的に監視しています。取締役会では、こうした監視結果等の報告を受けて全社的な対応策を検討・決定しています。
(4) 指標及び目標
(a) 気候変動
当社の使用するエネルギー(CO2換算)は、電気によるものが全体の94.67%にあたり、CO2排出量のほとんどを占めています。
当社は、スコープ1および2の2030年度の温室効果ガスの削減目標を「2013年度比46%減(54%以下に抑える)」と設定するとともに、その中間目標として、2025年度までに単体ベースで2013年度排出量の54%以下を達成することを目指して取り組んでいます。
また、金属の需要増加および採掘減少による加工材料費高騰への対応策として、廃棄物リサイクル率の向上(2025年度目標40%)に取り組んでいます。
受注機会の増加への対応策としては、当社のコーティング技術が顧客の省エネ、GHG排出低減に結びつくことから、環境分野の受注金額(環境エネルギー機器、補修・再生品)に2050年度目標を定めて、コーティング技術の開発とPRを推進しています。
対応策 | KPI(指標) | 2025年度目標 | 2022年度実績 | 2021年度実績 |
再生可能エネルギーへの切り替え、電力使用量の削減・効率化 | GHG排出量 (単体のスコープ1、2) | 7,900t-CO2 (2013年度排出量の54%以下を達成する) | 6,990t-CO2 | 17,450t-CO2 |
材料使用量の削減・効率化(リサイクルを含む) | 廃棄物リサイクル率 | 40% | 33.1% | 30.7% |
顧客のGHG排出削減・省エネ、自然エネルギー発電の普及・効率化に対応したコーティング技術の開発とPR | 環境分野の受注金額 ①環境エネルギー機器 ②補修・再生品 | ① 2,000百万円 ② 8,500百万円 合計 10,500百万円 | ① 1,326百万円 ② 6,401百万円 合計 7,727百万円 | ① 891百万円 ② 6,117百万円 合計 7,008百万円 |
(b) 人財育成に関するKPI(単体ベース)
テーマ | KPI(指標) | 2025年度目標 | 2022年度実績 | 2021年度実績 |
ものづくりの創意工夫とその基盤固め(ひとづくり) | 技能士の資格保有者数(延べ人数) | 240名 | 192名 | 178名 |
品質管理手法を探求するためのスキル獲得 | QC検定の合格者数(延べ人数) | 60名 | 46名 | 29名 |
非破壊試験技術者の資格保有者数(延べ人数) | 25名 | 18名 | 15名 | |
技術開発に柔軟な発想で取り組む風土の醸成 | 対外発表件数(学協会発表、論文や解説記事の投稿) | 25件 | 28件 | 18件 |
全体 | 従業員1人あたり教育費 | 80千円 | 63.2千円 | 54.2千円 |
(c) 社内環境整備に関するKPI(単体ベース)
テーマ | KPI(指標) | 2025年度目標 | 2022年度実績 | 2021年度実績 |
安全衛生に配慮した快適な作業環境の維持向上 | 労働安全度数率 | ゼロを目指す | 1.80 | 0.62 |
労働安全強度率 | ゼロを目指す | 0.03 | 0.00 | |
成長機会の公平な提供と実力本位の評価 | 女性正社員比率 | 13% | 11.0% | 9.5% |
女性管理職比率 | 5% | 2.3% | 1.4% | |
仕事と育児・介護の両立支援 | 男性育児休業取得率 | 90% | 68.0% | 31.3% |
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