トレイダーズホールディングス 【東証スタンダード:8704】「証券業」 へ投稿
企業概要
当社グループの経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は、以下のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末日現在において当社グループが判断したものであります。
(1)経営方針
当社は、経営理念として掲げている「金融サービスを通じて、社会・経済の発展に貢献する」、「金融サービスにおける革新者を目指す」、「健全な事業活動を通じて、関わる全ての人を大切にする」の三つの基本理念を踏まえ、各事業の企業価値を向上させ、株主利益を最大化させていくことを会社経営の基本的な方針としております。
(2)経営戦略等
当社グループは、1999年の創業以来、個人投資家向けに最先端の金融デリバティブ取引サービスを提供するリーディング・カンパニーとなることを目指して成長を遂げてきた実績と、高いノウハウによる安定性と豊富な実績を誇るシステム開発能力で、多くの方にご支持いただけるサービスを構築してまいりました。スピード感あるサービス提供及びシステムの開発体制を原動力とし、新たな金融サービスの創出、協業先との連携をさらに強固に推し進め、更なる価値を創造してまいります。
金融商品取引事業においては、高金利通貨にフォーカスした競争戦略を起点として、顧客に訴求できる特徴を打ち出したサービスの強化及び顧客データを徹底的に分析し費用対効果の追求とターゲット層を明確にしたマーケティング戦略を実行してまいりました。また、金融商品取引事業の収益性を左右するカバーディーリング手法の精度向上にも注力し、効率的かつ収益性を高める手法の研究を重ね、着実に実績を積み上げてまいりました。さらに、『みんなのFX』と商品趣向を変えた『LIGHT FX』を立ち上げ顧客層の拡大、顧客資産の増加を達成し、更なる収益力の強化を図ることにも成功しました。
グループ体制としては、2015年12月に実施した株式交換により完全子会社となったシステム事業会社がシステム開発の中核となり、自社システムを稼働させ、高い安定性と企画開発スピードの早期化、システム関連の低コスト化を実現したことで競争力を高めてまいりました。
グループの中核事業である金融商品取引事業とシステム開発・システムコンサルティング事業が連携し、早期に問題抽出・分析・改善が行える体制を構築することにより、事業シナジーを生み出しています。
以上のような取り組みによる成果が結実したことにより、金融商品取引事業の顧客預り資産はFX業界の中でも著しい増加を達成し、連結業績の飛躍的な改善によってFX事業の根幹となる自己資本の充実と資金確保を継続的に図ることができました。
今後当社グループが経営の健全性を保ちつつ成長を加速させるための経営戦略としては、これまで獲得した強みを武器に、さらに業界トップ3へ到達するための各分野の戦略を遂行しつつ、事業リスクを過小評価せず、慎重な経営判断を行うことをベースに、強い経営体質の確立を目標としてまいります。
具体的には、限られた経営資源を金融デリバティブの事業とシステム事業の拡大に集中し、本業の収益強化を目指します。スピード感をもって提供する商品の多様化を図り収益力を強化すること、システム事業会社が高付加価値と競争力あるシステムを開発し続けるための開発体制を拡充することに重点的に取り組むとともに、体制面では経営監視が適切に機能するガバナンスの強化にも力を入れてまいります。
なお、各分野における具体的な取り組みについては、「(5)優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題」に記載しております。
(3)経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等
2027年3月期末までに顧客預り資産を約1,450億円まで積み上げ、業界ポジションにおいてトップ3に位置付けることを中期的目標としております。
(4)経営環境
当社グループの事業領域である金融サービス分野では、AIやビッグデータ解析等の情報技術の進歩により投資対象となる金融商品や投資手法の多様化・高度化が進んでおります。我が国経済は、2022年3月より米国金利の上昇により日米に金利差が生じたことによる歴史的な円安局面を迎えております。そうした中、FX取引業界においては、個人投資家を中心に資金の流入は継続し取引量も拡大していますが、競合他社とのスプレッド競争及びスワップポイント競争の激化により収益は圧迫され、顧客獲得のための広告宣伝費等の支出増加が避けられない厳しい状況が続いています。また、相場変動でFX取引高が膨らんでも、上位数社に取引シェアが集中する傾向が顕著となっており、すべての店頭FX業者に対して決済リスクの管理強化のため、事業遂行上の財務の健全性を継続的に向上させることを求める規則(ストレステスト)を遵守していくには、中位・下位に位置する店頭FX業者にとって、とりわけ厳しい経営環境が続いており、FX業界での生き残りを図るため競合他社同士の合併・業務提携が行われる等、競争は一段と激化しています。
このような経営環境において、業界中位に位置するトレイダーズ証券は、近年、顧客預り資産の増加額及び増加率において順調な伸びを記録しており、安定した利益を確保できるようになってまいりました。今後は、自社グループ内にシステム事業会社を有する強みを活かし、早期に業界トップ3へ到達できるよう、より一層の努力を重ねてまいります。
当社グループにおいては、「(5)優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題」への取り組みを着実に推進し、今後、外部環境に大きな変化があった場合にも対応できる経営体制を整備し、持続的成長と企業価値の向上を図ってまいります。
(5)優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題
当社グループは、下記の課題について重点的に取り組み、預り資産の増加による収益力の強化並びに経営基盤の強化に努めるとともに、法令を遵守する内部管理体制を充実させることで、企業体質の健全性をより一層高めてまいります。
①店頭デリバティブ取引の充実・強化
業界競争が熾烈を極める金融デリバティブ取引の事業領域において、今後、当社グループが力強く成長して行くためには、主力商品であるFXサービス(外国為替証拠金取引サービス)を始めとする店頭デリバティブ商品がお客様のニーズに沿った商品としての魅力を高めていくことが重要であると認識しております。
そのため、『みんなのFX』においては、業界最高水準のスプレッド・スワップ等の取引条件面で競争優位性を維持しつつ、機動的・効果的に高金利通貨・新興国通貨の取り扱いを開始するなど、ニッチトップ戦略による他社との差別化を図ってまいります。また、カバーディーリング手法のさらなる高度化に向けた研究と実践を積み重ねていくことにより、収益率の極大化を目指してまいります。
一方、『LIGHT FX』については『みんなのFX』とは差別化した商品性を打ち出し、特定通貨ペアを業界最高水準のスワップに設定するなど、中長期的な投資メリットを好む顧客層へ効果的に訴求し、口座開設と預り資産の純増を図ってまいります。また、新規の口座開設を通じた顧客基盤の拡大及び預り資産の増加を目指すため、WEBメディアやマス広告等の各種媒体への短期的かつ効果的なマーケティング展開による宣伝・露出の拡充を図ることに加えて、中長期的な認知度向上のためのブランディング広告を積極的に実施するとともに、お客様との持続的なリレーションを強化する営業施策にも力を入れていくことで、顧客ロイヤリティを高めてまいります。
今後もお客様の投資・運用に関する新たな価値を提供し、多様な投資家層に訴求しうる良質な商品・サービスを提供し続けていくことで、収益の安定性をより強固なものとし、事業の持続的な成長を追求してまいります。
②システム開発力の強化
金融事業においてシステムは事業基盤の中枢であり、システム開発力は金融商品の画一的な商品性の中で唯一お客様に対する競争力の差が出る部分であり、さらに、システムのリリースの早さそのものが新商品のその後の市場シェアの獲得の優劣を決める重要な要素にもなります。
そして、当社グループは、金融・証券業界の中でも数少ない自社グループ内ですべてのシステム開発を行うことができる体制を有しており、技術力の高さと現場の緊密さがリリースの早さと付加価値の差を生み出し、これらが成長戦略を追求する上で重要な優位性につながるものと自負しております。
このようなシステム開発を担う事業会社がシステム開発を計画どおりに行いクオリティが高いシステムを提供するためには、今後も国内・海外の開発拠点において優秀なエンジニアの確保が益々重要になってまいります。
当社グループは、システム事業会社がさらに競争力の高いシステムの開発を加速するため、経営計画においてシステム開発の人員の拡充及び国内拠点の育成を中期的な重要テーマと位置づけ、これに積極的な投資を行ってまいります。
③地政学的リスクへの対応
当社グループでは、子会社であるトレイダーズ証券等で利用する金融商品取引システムの開発、運用保守を、主に、中国(大連市)及びベトナム(ハノイ市)に所在する海外子会社2社において行っており、金融商品取引システム開発のコア領域や高度な運用保守業務を担う重要なオフショア開発拠点に成長しております。
一方で、米中関係の動向や北朝鮮・ウクライナの情勢をはじめ、国際関係の緊張化や各国での保護主義的な経済・通商政策への転換、情報・通信に関する法規制・監視の強化や政治情勢の急変等、当社グループが事業や投資(出資)を行う国・地域で地政学的リスクが顕在化した場合、事業活動にも大きな影響を及ぼす可能性があります。
当社グループでは、こうした地政学的リスクへの対応として、事業継続計画の見直しを行うとともに、一定規模の人財投資を行い、高度な技術者集団を確保し、国内におけるシステム開発体制の強化・拡充を図るとともにシステム品質の向上に継続的に取り組むことで、各海外子会社で行っているシステムの保守・運用を日本国内及び海外子会社二社間で相互に補完できる体制の構築を図ってまいります。
④優秀な人財の確保
当社グループが今後も持続的に成長し、業容を拡大させていくためには、優秀な人財を確保し続けていくことが最も重要な課題であると認識しております。
一方、国内経済において、労働力人口の趨勢的な減少と、コロナ禍に起因した労働供給の低下を背景に、人手不足が常態化しております。こうした中、大手企業は労働力を優位に確保するためいち早く賃上げを実施するなど、企業間における人財獲得競争は一層激化し、特に専門スキルや高度な技術を有する優秀な人財を安定的に確保することはますます難しくなっております。
当社グループでは、社会的な信用力や認知度の向上のため、2023年4月に立地条件がよく知名度が高いオフィスビルに本社移転を行い、また、従業員の労働意欲と生産性を高めるべく魅力的なオフィス環境の構築に積極的な設備投資を行いましたが、今後は、専門性の高い優秀かつ多様な人財の確保と長期定着化に資する人事諸制度の改善、高度な技術や知見を有する人財を公正に評価し処遇できる体系の整備等によって、人的資本への重点的な投資を実践し、グループの持続的な業績拡大と価値創造に寄与する人財獲得戦略を強化することで、優秀な人財の安定的な確保を目指してまいります。
⑤コーポレート・ガバナンスの充実
当社の持続的な成長及び中長期的な企業価値の向上には、実効性あるコーポレート・ガバナンスのあり方を不断に追求しながら確立・強化していくことが不可欠であり、当社グループに対する経営の健全性、信頼性を向上させる観点から、内部管理体制の強化を図り、特に、東京証券取引所が定めるコーポレートガバナンス・コードの趣旨・精神を尊重して、コーポレート・ガバナンスの充実に向けて、特に以下の課題に重点的に取り組んでまいります。取締役会等の責務・役割については、多角的な意見を反映した公正性の高い経営の意思決定の実現のため、取締役会等の実効性を高める制度・仕組みの検討・整備や独立社外役員の機能強化を図ること等により、株主様に対する受託者責任を全うしうる取り組みを実践してまいります。
株主様との対話については、当社の持続的な成長に対する支援と評価を得ていくために不可欠であると認識し、今後は経営陣幹部と機関投資家等との建設的な対話をより積極的に推進してまいります。
適切な情報開示と透明性の確保については、適時開示情報のみならず、当社の中長期的に目指す理念や方針をはじめ、投資家にとって有用な非財務情報等をわかりやすく記載し、幅広く提供してまいります。
また、すべてのステークホルダーとの適切な協働を図ることは、当社の持続的な成長に不可欠であり、当社経営理念にも掲げる重要なテーマと認識しております。今後は、社会問題や環境問題等のサステナビリティを巡る諸課題の対応に向けて、当社グループの事業内容や特性を活かし、課題の解決に貢献し得る活動内容を具体化し、積極的に取り組んでまいります。
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