企業トライト東証グロース:9164】「サービス業 twitterでつぶやくへ投稿

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企業概要

 当社グループの経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は、以下のとおりです。

 なお、文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものです。

 また、当社が事業を行う市場の状況及び競合他社との競争優位性に関する経営者の認識については、上記「第1 企業の概況 第3 事業の内容」も併せてご参照ください。

(1)経営の基本方針

 当社グループでは、「医療福祉を中心とするエッセンシャル産業が抱える課題の解決に挑み、誰もが幸せに暮らせる未来を創造する。」というパーパスを掲げ、人材事業で培った経験・ノウハウ・強みを活かした幅広いサービス及びソリューションを提供することで、医療福祉業界の従事者にとって働きやすい職場環境づくりを推進し、さらには同業界に携わる全てのステークホルダーの課題解決に貢献したいと考えています。

 医療福祉業界においては、社会保障費の増大や深刻な労働力不足のほか、医療福祉従事者及び求職者における医療福祉施設が持つ情報との非対称性、精神的・肉体的に負担のかかる職場環境、医療福祉施設側が求めるスキルとのミスマッチや給与水準の課題、また、医療福祉施設における労働生産性を高める取組みが不十分であること(他業種対比でオートメーション・ICT活用が進んでいない)や医療福祉従事者の早期離職等の課題があると認識しています。当社グループは、主軸サービスである人材紹介・人材派遣サービスに合わせて人材採用支援、人材育成・キャリア支援機能の強化及びICT並びにDXを活用した医療福祉施設の経営効率化を支援することで、上記基本方針を実践します。

(2)経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な経営指標

 当社グループは、目標の達成状況を判断するための客観的な経営指標として、売上収益、EBITDA(※1)及び営業利益を重視しており、併せて当期利益及び基本的1株当たり当期利益にも留意しています。また、財務健全性の観点より、純有利子負債(※2)÷EBITDAを重要な経営指標と考えています。

※1 EBITDA=当期利益+法人税+金融費用-金融収益+償却費(使用権資産、顧客関連資産、その他資産を含む)+固定資産減損・除却損

 2 純有利子負債=借入金+リース負債-現金及び現金同等物

(3)経営環境

① 当連結会計年度の経営環境

 当連結会計年度においては、多くの業界で新型コロナウイルス感染症の影響による厳しい状況を脱し、日本全体で人手不足に陥っています。特に当社グループが事業対象としている医療福祉・建設業界につきましては、その必要性の高さから人材不足が慢性化していることから、当連結会計年度の有効求人倍率も引き続き全産業平均対比で高い水準で推移しました。

② 中長期的な経営環境

 当社グループが事業を営む医療福祉業界においては、中長期的には、少子高齢化(※)の進展により生産年齢人口が持続的に減少を続けることが予測され、構造的な採用難から労働力確保及び生産性改善が求められていくものと認識しています。

※ 内閣府「令和4年版高齢社会白書」(2022年6月14日)によれば、高齢化率(65歳以上人口割合)は、2019年で28.4%、2025年で30.0%、2040年で35.0%とされています。

 特に医療福祉業界では、専門人材の獲得と非付加価値業務におけるDX推進による生産性改善への需要が今後も高まることが予測されます。

 政府の計画ベースでは、医療福祉業界の従事者数は、2025年度には940万人になると見込まれています(※1)。他方で、2025年には約254万人、2040年には約291万人の介護従事者が必要とされ、2019年の介護職員数対比でそれぞれ約43万人、約80万人不足すると推計しており(※2、3)、当該領域での人材不足は業界の構造的な問題として解決が望まれます。

※1 厚生労働省「令和4年度版厚生労働白書」(2022年9月)図表1-1-6「医療・福祉分野における就業者の見通し」

2 かかる数値は、下記※3に記載の外部資料記載のデータ及び計算方法に基づき、当社が算出した推計値です。外部資料記載のデータの精度や推計に用いる計算方法には固有の限界があるため、実際の数値はかかる推計値と異なる可能性があります。下記「第2 事業の状況 3事業等のリスク (2)ビジネスに関するリスク ⑨ 市場規模等の推計に関するリスク」をご参照ください。

3 2019年度における介護職員の不足数(11万人)に、追加で必要となる介護職員の必要数(2025年度:約32万人、2040年度:約69万人)(厚生労働省「第8期介護保険事業計画に基づく介護職員の必要数について」)を加算して算出。

2019年度における介護職員の不足数(11万人)は、2019年度の介護職員の必要数(2,220千人)から、2019年の介護職員数211万人(厚生労働省「第8期介護保険事業計画に基づく介護職員の必要数について」)を差し引いて算出。

2019年度の介護職員の必要数(2,220千人)は、2019年3月31日時点の要介護者数6,670千人(厚生労働省「第8期介護保険事業計画に基づく介護職員の必要数について」)に、3分の1(介護職員の人員配置基準である要介護者3人当たり介護職員1人(厚生労働省社会保障審議会介護給付費分科会第190回資料「介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム)の報酬・基準について(検討の方向性)」(2020年10月)に基づく)を乗じて算出。

 医療福祉分野における就業者数及び介護従事者の必要数の見通しは以下のとおりです。

 

2018年度

2025年度

(計画ベース)

2040年度

(計画ベース)

医療福祉分野における就業者数(万人)

823

931

1,065

就業者数全体(万人)

6,580

6,353

5,654

就業者数全体に対する医療福祉分野における就業者数の割合(%)

12.5

14.7

18.8

 出典:厚生労働省「2040年を見据えた社会保障の将来見通し(議論の素材)(内閣官房・内閣府・財務省・厚生労働省 平成30年5月21日)」

 

2019年度

2023年度

2025年度

2040年度

介護従事者の必要数(万人)

約211

約233

約243

約280

追加で必要となる介護従事者数

(万人、2019年度比)

約22

約32

約69

 出典:厚生労働省「第8期介護保険事業計画に基づく介護職員の必要数について」(2021年7月9日)

 上記のとおり国内の生産年齢人口が減少する状況下においても、医療福祉業界における構造的な人材不足に照らせば、他業種からの流入が見込まれるものの、医療福祉業界における人材サービス事業への需要は、今後より一層増加することが予想されます。

 また、労働力不足が深刻化する中、生産性改善・効率化の推進のために「採用・人材育成」、「経営効率化」等の分野におけるDX推進が一層求められるとともに、中小事業者及び従事者に対する「財務支援」に対する需要も顕在化していると認識しています。

③ 競争環境

 当社グループは、法人顧客の現場に精通した豊富な営業社員を有することで職種ごとに異なる法人顧客のニーズに対応できるとともに、豊富な登録求職者データベース及び法人顧客との強固な関係性を有することから、強い競争力を有していると考えています。これらに加えて、デジタルマーケティングによる求職者の獲得ノウハウが競争力の源泉になると考えています。

(4)中長期的な経営戦略

 当社グループでは、「医療福祉を中心とするエッセンシャル産業が抱える課題の解決に挑み、誰もが幸せに暮らせる未来を創造する。」というパーパスを掲げ、人材事業で培った経験・ノウハウ・強みを活かし、幅広いサービス及びソリューションを提供することで、医療福祉業界の従事者にとって充実した職場環境づくりを推進し、さらには同業界に携わる全てのステークホルダーの課題解決に貢献したいと考えています。

 当社グループは、これまで「超高齢社会への進展」及び「女性の社会進出」といった社会構造の変化を契機として、強い求人需要が見込まれる介護・看護・保育領域を中心とした医療福祉分野の人材事業を積極的に拡大してまいりました。

 上記のような経営環境の中、当社グループは2023-2025年度中期経営計画において、①人材ソリューション、②ICTソリューション、③データ活用などの複合的なサービスを提供することで、連結売上収益、調整後EBITDA、調整後当期利益の成長を目指し、以下の各施策を実行してまいります。

① CA型人材紹介サービス事業のさらなる成長の加速

 当社グループの医療福祉業界におけるCA型人材紹介サービスの成長には、営業社員数と営業社員1人当たり売上高(※1)の向上が必要不可欠です。したがって、営業社員の離職率(※2)を適切に低減し、育成することが重要となります。

 当社グループはCA型人材紹介サービスの成長のため、以下の施策を実行することを計画しています。

・営業社員数:離職率の低下及び継続的な採用により、営業社員数の着実な増加を推進します。なお、離職率の低下により、キャリアアドバイザー全体に占める当社在籍期間が1年を超える者の割合は、2023年12月末時点で72%となっており、2022年の同時点における割合である58%から上昇しています。

・営業社員1人当たり売上高:ITシステムの導入を通じた営業プロセスの自動化、高パフォーマンスの営業社員の定着率(※3)向上を推進し、営業社員1人当たりの生産性向上を目指しています。

※1 医療福祉紹介売上高÷医療福祉紹介事業における年平均営業社員数。なお、営業社員にはキャリアアドバイザーの他、管理職、営業企画に係る人員が含まれています。

2 離職率:当年退職者数/(前年末の在籍人数+当年入社数)

3 定着率:1-離職率

② DR型採用支援サービスの一体提供による成長拡大

DR型採用支援サービスは、CA型人材紹介サービスでは対応が難しい低コストでの採用という契約施設のニーズに合致しており、今後成長すると見込んでおります。DR型採用支援サービスの本格化は当社グループの更なる成長に貢献すると期待しています。

 当社グループは、2021年8月の株式会社HAB&Co.買収を通じて、開発・エンジニアリングリソースを確保し、株式会社HAB&Co.の自社プロダクトである「SHIRAHA」をベースとしたDR型採用支援サービスの機能を実装することで、迅速な事業の立ち上げを実現しました。また、2022年1月には、保育領域において8万人の登録求職者数を擁してDR型採用支援サービスを展開していた株式会社ウェルクス(※)を買収することで更なる事業拡大に取り組んでおります。

 これらの施策に加えて、今後は、登録求職者数が事業拡大の鍵になると考えており、当社グループは既存の約200万人(2023年12月末時点)の豊富な登録求職者のデータベースを活かした成長を目指します。CA型人材紹介サービスへの登録求職者は求職意欲が高い傾向があり、そこで培われたデータベースは量・質ともに競争優位性が高いと当社では考えています。したがって、CA型人材紹介サービスにより今後も拡大する登録求職者数をDR型採用支援サービスと連携させることで、成長が可能と考えています。

※ 株式会社ウェルクスは、2022年7月1日付で、株式会社トライトキャリアを存続会社、株式会社ウェルクスを消滅会社とする吸収合併により消滅しています。

③ 更なる成長ドライバーとしてのICTソリューション事業への取り組み

 当社グループは、中期経営計画の期間において、これまでの人材紹介及び採用支援事業で培ってきた豊富な登録求職者データベース、豊富な契約施設とのネットワーク、強固な営業体制を基に、ICTを活用した医療福祉現場の業務効率化支援事業を加速させていく予定です。介護ソフトウエア等を通じた介護関連業務を支援するサービス展開を検討してまいります。

 また、ICTソリューション及び、データ活用のサービスを迅速に拡大・展開するために、M&A・事業提携・共同研究等の機会を積極的に追求してまいります。

④ 非医療福祉事業の持続的な成長

 非医療福祉事業である建設人材派遣サービスにおいては、派遣社員数(※)の向上をドライバーとして持続的な成長を目指します。

※ 建設人材派遣サービスにおける年平均月末在籍派遣人数。

(5)対処すべき課題

 当社グループは、上記の経営戦略を遂行することで、以下の課題の解決を目指します。

① 医療・介護・保育人材のキャリア支援

 医療・介護・保育業界では、年々深刻化する人材不足により1人当たりの業務量が増加していることに加え賃金格差が拡大した結果、退職者が増え、さらなる人材不足を生むという悪循環が生じています。このように、これまでは安定して長く勤めることができると言われていた専門職においても、長期にわたって勤務することに不安を覚える人が増加しています。

 今後、さらなる人材の流出を防ぐためには、働く人々がどのような人生を歩んでいけるのか、長期的なキャリアの形成を支援していく必要があります。また、人生100年時代と言われている現代において、当社グループとしてもパラレルワークや仕事と育児の両立支援といった新しい働き方の価値観の創造に取組んでおります。

② 地方部の医療・介護・保育人材不足解消

 医療施設、介護施設及び保育施設における人材不足は年々深刻化し、特に都市部と地方部では介護士、看護師及び保育士の数に差があり、一般利用者が受けられるサービスに地域格差が生じています。当社グループの提供する人材紹介サービスにおいても、地方の医療施設、介護施設及び保育施設による求人は増加しています。当社グループが新たに営業支社を地方に設立することにより、それら地域の医療施設、介護施設及び保育施設に対し、法人訪問によるニーズの把握や面接への同行など、より地域に根ざしたサービス提供をすることが可能となります。

 当社グループは今後も事業拡大を推進するとともに、人材不足解消や地域経済への貢献に取組みます。

③ 労働移動支援

 労働力不足を解消するための一手段として、新たなキャリアへ踏み出す方を応援するリスキリングの重要性が増しています。この様な環境下において、当社グループが運営している介護ワーカーカレッジ事業では、介護現場で即戦力となる人材育成を企図して、食事・入浴・排せつの支援などの実務講義を受講する機会を、介護業界への転職を希望する方に提供しています。

 当社グループでは、今後も慢性的な人材不足が課題となっている介護業界への異業種からの労働移動支援に積極的に取組みます。

④ 建設派遣における安定的な雇用確保

 当社グループとしては特定の派遣先の需要が減少した場合にも、別の法人へ派遣するなどの柔軟な対応により、派遣従業員の非稼働時間が可能な限り起こらないように努めています。また健全な事業成長のために、業法遵守は今後より重要なテーマになるものと認識しています。特に契約内容と実務上の作業の齟齬を防止するため、定期的な監査、当社グループ営業担当者による派遣先への訪問・確認作業を行うなど、より強固な管理体制の構築に取組みます。

⑤ 業務改善の更なる推進

 ここ数年、システムの導入を積極的に進めた結果、業務改善が大幅に進みました。しかし、派遣先企業との情報連携が重要な派遣事業においては、現在においても一部の派遣先企業との間ではExcelによる管理やFAXによる情報連携が残っており、その後の作業工程での非効率な作業が発生しやすい状況です。当社グループとしては、これらに代表される事務業務・管理業務のシステム化を引き続き促進することで、効率性の改善のみならず統制の強化をも実現できるよう取組みます。

⑥ ダイバーシティ等への対応

 近年、女性社員の活用について会社を挙げた戦略的な施策が社会的な要請となっています。これまで当社グループでは女性社員の積極的な採用に取組み、2023年12月末時点で34.0%が女性社員となり、その比率は本社部門においてより大きくなっています。また、営業部門においても、管理部門でも高い成果を収めてきた女性社員も多く存在いたします。常勤の取締役、監査役及び執行役員においては、11名中3名が女性(27.2%)とダイバーシティが進んだ状況にあります。一方、非執行役員の管理職においては、依然として女性比率は低く(12.5%)、採用・育成・登用の観点から制度の見直しを図っています。2021年3月に、女性が活躍する企業の実現を目的として代表取締役社長直轄の「女性活躍推進室」を設置し、定期的な研修や議論の場を設置するなど、さまざまな施策を展開しています。今後も女性が活躍できる組織の実現を目指します。

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