トクヤマ 【東証プライム:4043】「化学」 へ投稿
企業概要
文中の将来に対する記載事項は、当社グループが有価証券報告書提出日現在において合理的であると判断する一定の前提に基づいており、実際の結果とは様々な要因により異なる可能性があります。
(1)サステナビリティに関する考え方
「化学を礎に、環境と調和した幸せな未来を顧客と共に創造する」という存在意義のもと、当社グループの持続的成長と中長期的な企業価値向上を目指して、8項目から成る「トクヤマグループ サステナビリティ基本原則」を制定しています。当社グループは事業活動に起因する環境負荷を最小化しながら、社会課題の解決に資する製品の供給を通じて、環境と調和した新しい価値を創造していきます。
① ガバナンス
サステナビリティに関する方針と目標を決定し活動を円滑に進めるため、社長を議長とし全執行役員を委員とする「CSR推進会議」(開催頻度:原則1回/年)が設置されており、適切なコーポレート・ガバナンスの推進及びサステナビリティ課題に関する重要事項を議論しています。本会議で決定した内容は取締役会に報告を行い、当社戦略へと反映させると同時に、取締役会からは監督を受けています。
また、CSR推進会議の中に、CSR担当取締役を委員長とする「リスク・コンプライアンス委員会」(開催頻度:原則2回/年)を設置し、本委員会を中心に内部統制の中核かつ両輪と位置付けているリスクマネジメントとコンプライアンスの推進を図っています。併せて、特に専門性・重要性の高い分野については、リスク・コンプライアンス委員会から分離させた専門委員会(委員長:各担当取締役)を設置しています。
② 戦略
サステナビリティを巡る課題を重要な経営課題であると認識し、「中期経営計画2025」の重点課題の一つとして「CSR経営の推進」を掲げ、持続的な成長と中長期的な企業価値向上のため、取り組みを強化しています。
その土台となる姿勢・考え方として掲げた「トクヤマグループ サステナビリティ基本原則」及び「トクヤマグループ行動憲章」に基づき、方針類の体系を下図のように整備し、マテリアリティ(CSR重要課題)への取り組みを進めています。
③ リスク管理
当社グループでは、企業価値毀損に繋がる、事業の持続性に影響を及ぼす、組織目標の達成を阻害する事象・要因のうち、組織横断的な対応が必要となるものを企業経営にかかるリスクととらえ、確実に対応するためのマネジメントシステムを構築しています。
下図に、リスクの特定プロセスを示します。リスク・コンプライアンス委員会では、社会情勢のモニタリングや各専門委員会との連携を通じ、新たに発現したり影響の度合いが変化したりした事象・要因を抽出します。
それらを影響度(損失金額、マーケットシェアの減少、影響規模など)や発生頻度・蓋然性、脆弱性の観点で定量・定性の両面からリスクの度合いを下図のように可視化・マッピングし、リスクとして識別し優先順位づけをするとともに、対応する専門委員会の決定を行っています。
[重要リスクのマッピング]
各担当役員が委員長となる専門委員会では、管掌するリスクの対応方針(低減、回避、移転、保有)を検討・決定します。決定した方針に基づき、リスクへの施策を立案・実行し定期的なレビューを行うなど、マネジメントシステムに沿った実行管理をしています。
なお、それぞれのリスクの詳細及び対応については、次項の「3 事業等のリスク」で記載します。
[重要リスク一覧(2023年度)]
④ 指標と目標
当社グループは、各種サステナビリティ課題でもあり、当社グループの成長の土台となるマテリアリティへの取り組みを強化することで、社会との信頼関係をより強固なものとすることを目指しています。
各マテリアリティには指標(KPI)と目標などが設定され、それぞれの進捗状況については、サステナビリティに関する方針と目標を決定し活動を推進していくCSR推進会議において定期的にモニタリングされ、取り組みの調整・強化などを図っています。
[マテリアリティ及び指標]
マテリアリティ | 目指す姿 | 2025年度目標・KPI | 2022年度の実績 |
地球温暖化防止への貢献 | 2030年度GHG△30%(2019年度比) 2050年度カーボンニュートラル(CN) | ・トクヤマグループGHG排出量削減 ・気候関連情報の積極的な開示 | ・CNに向け地域・自治体・コンビナート内の連携を推進 ・バイオマス等代替燃料について検討 ・CDP気候変動質問書回答(評価:B) ・GHG排出量の算定方法をGHGプロトコルに沿うよう変更 ・投資案件審査にインターナルカーボンプライシング(ICP)を導入 |
環境保全 | ・リサイクルの推進と廃棄物ゼロエミッション率の維持継続 ・環境負荷物質の低排出状態の維持 ・法的要求事項等の遵守と環境事故ゼロの継続 ・生物多様性保全への貢献 | ・廃棄物有効利用率≧94%(維持) ・廃棄物ゼロエミッション率≧99.9%(維持) ・環境負荷物質の低排出状態の維持 ・法的要求事項等の遵守と環境事故発生件数0件 ・生物多様性保全への貢献 | ・廃棄物有効利用率:94.7% ・廃棄物ゼロエミッション率:99.9% ・環境負荷物質の低排出状態の維持 ・法的要求事項等の遵守と環境事故 発生件数0件 ・特定外来種への対応 |
無事故・無災害 | ・無事故・無災害 ・保安管理レベルの向上 ・安全文化の醸成・向上 | ・事故・休業災害ゼロ ・リスクアセスメントの深化 ・スマート保安の推進 | ・重大な事故・災害の発生 0件 ・リスクアセスメントによる各種リスクの特定と低減対策の実施 ・スマート保安の推進:異常予兆の検知の保全業務への活用検討 |
社会課題解決型 製品・技術の開発 | ・SDGsを意識した社会課題解決型製品 ・技術開発の拡充 | ・SDGsを意識した社会課題解決型製品 ・技術開発の推進 | [電子]顧客起点のマーケティング活動により製品化に向けた取り組みが加速 [健康]複数テーマでの製品化推進と次期テーマの企画強化 [環境]中計戦略に基づき推進、複数テーマで事業化進行 |
化学品管理・製品安全の強化 | ・トクヤマグループの適正な化学品管理の維持、製品安全の推進 | ・各国の化学品法令遵守、化学品規制違反ゼロ、製品安全に起因した事故ゼロ ・グループを含めた化学製品のリスクマネジメント | ・製品審査(2次・3次) 計63件、表示審査 計706件 ・国内外規制動向を把握して対応実施 ・部門・グループ会社に教育を行い、管理状況について定期点検・ヒアリングを行った ・製品含有化学物質管理の推進 |
マテリアリティ | 目指す姿 | 2025年度目標・KPI | 2022年度の実績 |
地域社会との共存、連携、貢献 | ・地域社会との共存・連携 ・地域社会への貢献 | ・地域社会との共存・連携 ・地域社会への貢献 | [地域との対話]地域対話・工場見学の開催、徳山夏まつり、周南冬のツリーまつり協賛 [社会貢献活動]ボランティア活動、近隣学校への教育支援 [事業による貢献]周南市への電力特定供給 |
CSR調達の推進 | ・CSR調達のサプライチェーン全体への理解・浸透
| ・CSR調達ガイドラインに基づくサプライチェーンの管理 | ・「CSR調達ガイドライン」の改正・周知 ・一定額以上の取引先に対して、ガイドライン遵守の承諾書の要請と、サプライヤー評価の実施 |
人材育成 | ・企業競争力の源泉となる人材の育成・強化 ・次世代を担う人材の充実 | ・次世代経営人材の育成 ・事業遂行を支える高度技術者の育成 ・キャリアプラン・ジョブスキルに基づく適材配置・ローテーション活性化 ・目標設定とフィードバックの連環による人材育成の定着
| ・ニュービジネスリーダー研修、グローバル人材育成関連研修等の実施 ・DX教育計画の立案 ・「目指す人材像」と「スキル」を職群ごとに定義・公開 ・戦略的ローテーションの仕組みづくり/HRビジネスパートナーの設置/人材マネジメントシステムによる人材情報の整理 ・考課者研修の実施(計4回) |
多様性(ダイバーシティ)と働きがいの重視 | ・多様な人材の受容・活用 ・人権の尊重 | ・ダイバーシティ&インクルージョンの推進 ・女性活躍推進:新卒採用20%、主任≧10%、管理職≧5% 他(当社) ・障がい者雇用の推進:法定雇用率の達成 ・ワークライフバランスの推進:年休取得率≧75% ・男性育児休業取得≧10名 | [ダイバーシティ&インクルージョン/ワークライフバランスの推進] キャリア採用の継続、女性管理職登用比率:2.7%(当社) 4.7%(連結) 障がい者雇用率:2.0%(当社)、障がい者雇用創出を目的とした農業法人の稼働準備 ・男性の育児休業取得者 22名(平均32日間) [人権の尊重] ・人権方針を制定・公開 |
心と体の健康推進 | ・心と体の健康づくりの推進 ・生活習慣病対策の推進 | ・個人の健康意識の向上 喫煙率<15% ・有所見率の維持・低減 ・定期健康診断受診率:100% ・再検査受診率:≧90% ・特定保健指導実施率:≧80% ・休業率の低減 <0.5% ・ストレスチェック受検率 ≧95% (当社) | ・喫煙率低減:2021年度 18.9% → 2022年度 17.6% ・定期健康診断受診率:100%、再検査受診率:89.2% ・特定保健指導実施率:84.5% ・休業率:0.75% ・ストレスチェック受検率:2021年度 98.1% → 2022年度 97.5% ・メンタルヘルス研修、eラーニング実施 ・2023年度 健康経営銘柄選定、健康優良法人ホワイト500 認定 (当社) |
(2)気候変動への対応(TCFD提言への取り組み)
当社グループは、TCFD提言に賛同し、TCFDのフレームワークに基づいて気候変動に対する検討を重ねております。
① ガバナンス
当社グループでは、気候変動を最も大きな経営リスクの一つに位置づけており、2021年度を初年度とする現中期経営計画では「地球温暖化防止への貢献」を重点課題の一つとして掲げています。
2021年2月にはTCFD提言への賛同を表明し、同年4月には社長直轄組織として「カーボンニュートラル戦略室」を設置、その後2023年4月からは、取り組みが構想段階から実践フェーズへ移行したことに伴い、独立した部門相当となる「カーボンニュートラル戦略本部」とし、その取り組みを加速させております。
a)取締役会の監督
気候変動に係る事項(気候変動に取り組む会社方針や、それらに対応するための中長期戦略の策定や投資案件の選定など)は随時経営会議での審議を経て決議され、取締役会に報告されます。また、その中でも特に重要性が高い案件については経営会議での審議を経て取締役会で決議されます。
b)経営陣の役割
当社グループの気候変動に対する責任者は社長です。環境測定の全体統括や省エネ活動等は環境対策委員会で報告され、気候変動に関する組織横断的な課題についてはサステナビリティ委員会で検討しています。これら専門委員会での検討事項はCSR推進会議にて報告・議論され、決定した内容は必要に応じて取締役会に報告を行い、当社戦略へと反映すると同時に取締役会からは監督を受けています。更に、全執行役員や社外取締役を対象とした気候変動に対する勉強会も2022年度は2回実施し、気候変動に係る最新動向や法制度を確認し、速やかに対応していく準備も行っています。
② 戦略
IEA(国際エネルギー機関)作成のNZE等の移行リスクシナリオ、IPCC(気候変動に関する政府間パネル)のRCP8.5やSSP3-7.0等の物理リスクシナリオを参照し、現時点から2050年までの時間軸で、1.5℃シナリオと4℃シナリオ分析を実施しました。これに基づき中期経営計画2025では、エネルギー多消費型から価値創造型企業へのポートフォリオ転換によって、気候変動のリスクを低減しつつ有望な事業機会の収益化を目指しています。
a)短期・中期・長期の気候関連のリスクと機会 及び c)組織戦略のレジリエンス
2021年度より気候変動による当社グループのリスクと機会の分析を行っております。2022年度は、それらリスクや機会が当社に及ぼす財務への影響度、発生時期、事業への影響度、優先順位を評価しました。
リスク分析とそれに基づく具体的な対策を定期的に見直すことにより、組織戦略のレジリエンスを高めています。
[気候変動によるリスク(シナリオ分析)]
シナリオ | リスク区分 | リスクの 評価対象 | 当社グループへの影響(財務) (特定されたリスク) | 財務への影響度 | リスク 発生時期 | 事業への影響度 | 優先順位 | 対応策 |
1.5℃ | 政策 法規制 | カーボンプライシングとエネルギー調達コスト | ・カーボンプライシング強化に伴う操業コストの増加 | 中 | 中期~長期 | 大 | 低 | ・カーボンプライシング政策動向のモニタリングと非化石燃料への転換 ・インターナルカーボンプライシングによる評価と施策の実施 ・GXリーグへの参画 |
・GHG排出規制強化による対策コストの増加 | 中 | 中期~長期 | 大 | 高 | ||||
技術 | グリーン化対応 | ・グリーンエネルギー生産・調達コストの増加 | 大 | 中期 | 大 | 高 | ・大規模サプライチェーンの構築と効率的利用技術の高度化 ・調達システムとプロセス開発 | |
・技術・市場が成熟していないことによるグリーン材料調達・グリーンプロセス切替コストの増加 | 大 | 中期~長期 | 大 | 高 | ||||
評判 | ステークホルダーからの評価 | ・取り組み劣後との評価による市場価値の下落、資金調達コストの増加 ・当社が所有する石炭火力発電設備に対する停止、廃止の住民訴訟リスク ・バイオマス燃料のサステナビリティリスク | 大 | 中期~ 長期 | 大 | 高
| ・開示情報の充実とGHG排出量削減目標設定 ・事業ポートフォリオの転換 ・バイオマス燃料のサステナビリティ確保 | |
市場 | 顧客によるグリーン調達の浸透 | ・GHG多排出製品と評価されることによる市場からの排除 ・グリーン化に係るコストが適切に価格転嫁できないことによる収益性の低下 | 大 | 中期~ 長期 | 大 | 高 | ・着実なGHG排出量削減 ・マスバランス認証によるグリーン製品の生成 ・適切なグリーン市場形成のためのサプライチェーン連携強化 ・CFP評価システム構築 |
シナリオ | リスク区分 | リスクの 評価対象 | 当社グループへの影響(財務) (特定されたリスク) | 財務への影響度 | リスク 発生時期 | 事業への影響度 | 優先 順位 | 対応策 |
4℃ | 物理 リスク (急性) | 異常気象の激甚化/海面の上昇 | ・風水害による生産設備への浸水被害、サプライチェーンの寸断などによる生産計画の遅延やコスト増加 | 中 | 長期 | 中 | 中 | ・BCP対応を拡充 |
物理 リスク (慢性) | 長期的な異常気象の激甚化/海面の上昇 | ・平均気温上昇によるプラントの冷却能力不足による生産能力減少 ・海面上昇に伴う高潮の発生による稼働停止 | 小 | 長期 | 小 | 低 | ・GHG排出量削減目標設定 |
短期:2025年度 中期:2030年度 長期:2050年度
[気候変動による機会(シナリオ分析)]
シナ リオ | 機会 区分 | 機会の 評価対象 | 当社グループへの影響 | 影響度 | 時間的 範囲 | 優先 順位 | 対応策 |
1.5℃ | 市場 | 環境産業の 需要拡大 | 廃棄物処理・資源有効利用産業の拡大、地球温暖化対策産業の拡大 | 大 | 中期~ 長期 | 高 | ・再生可能資源・エネルギー (バイオマス、水素)の事業化
|
地域・コンビナートのカーボンニュートラル化 | エネルギー・マテリアルの大規模グリーンサプライチェーン化推進による拠点競争力の強化 | 大
| 中期~ 長期 | 高 | ・脱炭素推進協議会、サプライチェーン構築、技術開発の積極参画と推進 | ||
資源 効率 | CCU関連製品の要請 | カーボンリサイクルシステムの確立による新たな事業分野への進出 | 大 | 中期 | 中 | ・研究開発、実証実験を加速し、実ビジネスへの実装を加速 |
短期:2025年度 中期:2030年度 長期:2050年度
b)事業、戦略、財務計画に及ぼす影響
気候変動による機会の分析から、環境領域での新たな「事業機会」の検討についても、より内容を具体化すると共に、時間的範囲、財務への影響度、優先順位を評価しました。
[気候変動による事業機会の検討]
シナリオ | 顕在化する事象 | 事業機会 | 製品・技術 | 時間的 範囲 | 財務 影響度 | 優先 順位 |
1.5℃ | グリーン水素の普及 | 水電解設備への需要急増 | 水電解装置 | 中期~長期 | 中 | 高 |
モビリティの電動化の拡大 | リチウム電池の需要拡大 放熱材料の需要拡大 | イオン交換膜 放熱材料 | 短期~中期 | 中 | 高 | |
急速なデジタル化 | 半導体需要の拡大 | 多結晶シリコン フォトレジスト用現像液 CMP用シリカ 電子工業用高純度IPA 放熱材料など | 短期 | 大 | 高 | |
省エネ住宅の普及 | 断熱材等 機能材料への需要増加 | 高断熱・高気密樹脂サッシ 漆喰シート | 短期 | 小 | 低 | |
循環型社会の形成 | 廃材、廃棄物の再資源化の需要増 | 廃石膏ボードリサイクル技術 イオン交換膜 バイオマス燃焼灰の有効活用(CCUS) カーボンネガティブコンクリートの開発 | 短期 | 小 | 中 | |
太陽光パネル 大量廃棄への対応 | 太陽電池モジュール リサイクル技術 | 中期 | 小~中 | 中 |
短期:2025年度 中期:2030年度 長期:2050年度
③ リスク管理
a)リスクの特定と評価プロセス、b)リスクマネジメントのプロセス
当該項目の説明につきましては、前述の「(1)サステナビリティに関する考え方 ③ リスク管理」を参照下さい。
c)全社リスクへの統合(“重要リスクの確定プロセス”)
当社グループの「中期経営計画2025」では、社会の潮流が脱炭素へと加速する中、これまで強みとしてきたエネルギー多消費型事業を中心とした事業構造からの脱却が不可欠であると判断しました。
リスク・コンプライアンス委員会では「脱炭素社会への対応」を最も大きなリスクと位置づけ、複数の専門委員会による対応を決定しました。環境に関する法規制は環境対策委員会、製造拠点における高潮などの物理リスクは保安対策委員会、気候変動に対するイニシアチブや外部開示に関するソフトロー対応はサステナビリティ委員会が受け持ち、連携して対応を進めています。
④ 指標と目標
当社グループは、短期を2025年度(中期経営計画2025の設定年度)、中期を2030年度、長期を2050年度ととらえ、指標と目標を定めて管理しています。
a)気候関連の指標
当社グループはこれまで、GHG排出量及び原単位、エネルギー消費原単位を管理してきましたが、中期経営計画2025ではGHG排出量を全社の測定・管理指標に定め、下図のとおり2030年度には2019年度比で30%の削減、2050年度にはカーボンニュートラルを達成することを目標に定めました。また、全執行役員の役員報酬算定時に、当社が定めたマテリアリティのうち関連するものを指標として組み込み、貢献度による評価を行っています。これにより、具体的な役割や責任などを一定の要素として勘案しています。その他、気候変動に関連する重要な目標は下記のとおりです。
・SBT(Science Based Target)認証を目指し検討を開始
2023年3月に認定機関へコミットメントレターを提出、2年後の次期中期経営計画の策定では、SBTに沿った目標に更新すべく、検討を開始しました。
・エネルギーに関する目標
当社グループは、2030年度に燃料起源GHG排出量を2019年度比で50%削減する努力目標を設定しており、自家発電における非化石燃料(バイオマス、アンモニア)への転換を行う計画にしています。バイオマスは2023年度から段階的に混焼率を上げていき、アンモニアは2025年度以降に導入する予定にしており、現在導入に向けての基本設計を実施しています。(資源エネルギー庁『令和5年度石油供給構造高度化事業費補助金(次世代燃料安定供給のためのトランジション促進事業)』)
この取り組みにより、2030年度における再生可能エネルギー(アンモニア燃焼含)の比率は30%を目指しています。
2022年度におけるグループ全体での再生可能エネルギーの比率は約6%でした。
・インターナルカーボンプライシング(ICP)の導入
GHG排出量削減策を促進するため、2019年度に投資案件の評価基準にICPを導入しました。当初は欧州連合域内排出量取引制度(EU-ETS)取引価格を参考にして、3,700円/t-CO2に設定していましたが、GHG排出量削減の更なる取組強化のため、2022年度に10,000円/t-CO2に引き上げました。これにより短中期的に脱炭素に向けた活動を推進していきます。
b)Scope 1、2、3のGHG排出量
下図は、GHG Scope1、2の排出量の推移を表したグラフです。2022年度は、バイオマス混焼の実証実験や積極的な省エネ活動により、GHG Scope1、2排出量は 2021年度から約3.6%削減できました。
c)目標及びその目標に対するパフォーマンス
当社グループは、エネルギー起源CO2削減を目指すとともに、原料起源CO2削減や環境貢献製品の開発などによりカーボンニュートラルを目指しています。下図は、多方面に向けたアプローチのうち2022年度の取り組みを表しています。
GHG排出量削減を着実に進めることが企業としての責任である一方で、製品が世の中で使われることによるGHG排出量削減も重要な役割であると認識しています。今後、環境貢献製品を拡充していくとともに、更なる革新的技術開発を行っていくことで、世界のカーボンニュートラル達成に貢献していきます。
(3)人的資本の拡充(人材育成、多様化推進に向けた取り組み)
当社グループは、トクヤマのビジョンで掲げた4つの価値観の浸透を図るとともに、一人一人の個性と能力を十分に発揮できるよう人材育成と多様性(ダイバーシティ)の推進を積極的に取り組んでいます。
① ガバナンス
人的資本における重要な施策や戦略の実行に関しては、取締役会の決定・監督のもと進めています。また、重要な制度の改定については、経営会議での決定のもと、取締役会に報告し、取締役会の監督を受けています。管理職の人事異動に関しては、経営会議の承認のもと進めています。その他人的資本・人事に関する会議体を定期的に運営することで、人事施策や人材配置等の適正化及び透明性の確保を図っています。さらに人事施策や人事異動の実施に際しては、予め労使間での協議を行った上で進めています。
[人事に関する報告・決定プロセス・モニタリングの仕組み]
会議体名称 | 構成員 | 内容 |
取締役会 | 取締役(社外取締役を含む) | 役員の人事異動の決定 重要事項の決定 |
経営会議 | 執行役員 | 管理職の人事異動の決定 人事制度の制定、改廃の決定 |
人材委員会 | 代表取締役 社外取締役 | 役員の人事異動等を協議 |
人材定例部会 | 社長・人事担当執行役員・執行役員のうち社長が指名した者 | 管理職の異動・配置、処遇、グループ会社の社長及び取締役の人事・報酬等の協議 |
人材評価部会 | 人事担当執行役員及び専務・常務・執行役員のうち人事担当執行役員が指名した者 | 管理職の評価の決定、登用・昇格の協議 |
健康経営推進委員会 | 人事担当執行役員・事業所等の総括安全衛生管理者・人事グループリーダー・労働組合執行委員長・健康保険組合事務長 | 健康経営方針の計画・目標を制定 |
労使協議会 | 会社:人事担当執行役員をはじめとする代表者(非組合員) 労働組合:執行委員長をはじめとする組合員の代表者 (各13名以内及び幹事各1名) | 労働協約及び規程の制定、改廃の協議決定 組合員の人事異動の協議決定 |
② 戦略
当社グループでは、マテリアリティに「人材育成」、「多様性(ダイバーシティ)と働きがいの重視」を掲げて各種人事施策を推進しています。
[人材育成]
当社では2019年に、従業員に期待するあるべき姿、成長の方向性などを「人事ポリシー」として制定し、人事施策の軸として、また人事制度の改定や運用の際の基本原則として活用しています。現在、グループ会社への「人事ポリシー」の浸透を進めており、それを基幹とした個社の業態に合った人材育成体系の整備を進めています。
当ポリシーに基づき、人材育成体系として「トクヤマGr.人材育成プラットフォーム」を整備し、2022年4月に社内に公開しました。目指す人材像と必要なスキルを職種ごとに整理し、個々のスキルアップはもちろん、将来的なキャリア形成に必要となる能力開発のガイドラインとしても活用できる内容になっています。
また、「中期経営計画2025」に先駆け、2020年に当人事ポリシーに基づき複線コース型の役割資格等級人事制度を導入しています。従業員の働きがいを高めるため、メリハリのついた評価制度のもとで公正な処遇を受けるという、基本に忠実な運用を徹底させるとともに、多様な価値観と働き方に対応しています。また、トクヤマの4つの価値観に対する行動評価が人事評価項目に追加され、トクヤマのビジョンの達成を人事制度面から後押ししています。 2022年度は、「中期経営計画2025」と人事戦略との一層の連動を図るため、「事業部門と協働する人材マネジメント」、「トクヤマに馴化した人材の活性化」、「戦略人材の積極採用・定着・戦力化」を掲げた「人材マネジメント戦略」を策定し、各種施策に取り組んでいます。
[多様性]
a)ダイバーシティの推進
当社グループのダイバーシティ推進活動は、会社の持続的な成長の推進のために、社員がイキイキと活躍できる状態を目指しています。「知」(知識や知恵)の多様性を重視し、職場風土改革を通じて、生産性向上を志向しながら、働きやすさと働きがいを追求しています。
女性の活躍については、女性管理職比率などの目標値を設定し、目標の達成に努めています。
障がい者の雇用については、法定雇用率の充足を目指し、バリアフリー化など職場環境の整備に努めています。加えて、2021年10月には障がい者雇用施設「ゆうゆうてらす」を開設したり、2021年12月には、障がい者の自立支援と地域社会への貢献に向けた農業法人「株式会社トクヤマゆうゆうファーム」を設立したりするなど、新しい取り組みも始めています。
b)ワークライフバランス支援
当社グループでは、ライフスタイルに応じた柔軟な働き方の実現を目指しています。
例えば、当社ではフレックスタイム勤務や在宅勤務を導入しています。仕事と育児の両立支援制度では、短時間勤務、フレックスタイムの弾力運用、育児休暇(有給)、育児休業など、法定を超えて取得することができます。介護休業についても法定を超えての介護休暇の取得が可能な制度となっています。また、育児・介護によりやむなく退職した社員の復職を受け入れる退職者復職登録制度も整えています。
c)健康経営の推進
当社グループは、従業員とその家族の心と体の健康づくりと働きやすい職場づくりを目指しています。この考えに基づき、当社は2020年10月1日に「健康経営宣言」を表明し、その後2021年度、2022年度と「健康経営優良法人(ホワイト500)」に認定されるとともに、経済産業省と東京証券取引所が共同で選定する「健康経営銘柄2023」(31業種49社)に初めて選定されました。
③ リスク管理
会社の事業活動において、多様な人材が集い、一人ひとりが持てる能力と個性を最大限発揮できることが重要です。日本国内においては少子高齢化が進み労働力人口が減少すると見込まれ、人材の流動化が高まる中、採用競争力が低下して計画通りの人材獲得が進まなくなること、社員の離職により組織の総合力が低下することが最大のリスクと考えています。社員に成長の機会を提供し、活躍しやすい環境を整えることで、リスク低減に努めています。
④ 指標及び目標
[人材育成]
人材育成については、「CSR重要課題」の「マテリアリティ」のひとつとして挙げられており、目標となる「2025年度に目指す姿」を達成すべく、指標として「KPI」が設定されています。
[指標・目標・実績](注)1
指標 | 2025年度目標 | 実績(注)2 |
a)人材のレベルアップ |
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従業員一人当たりの研修費用 | 30千円/人 | 30千円/人(注)3 |
自己啓発支援費用 | 8百万円/年 | 6百万円/年 |
離職率 | 3%以下を維持 | 1%(注)3 |
b)次世代経営人材の育成 | NBL研修受講者累積60名 | 20名(累積37名) |
c)事業遂行を支える高度技術者の育成 |
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ⅰ)グローバル人材育成 | 関連研修の継続実施 | 関連研修33名受講 新規自己啓発プログラム開講 |
ⅱ)DXの推進 | 全社員のリテラシー教育実施 | 教育計画の策定 |
d)キャリアプラン・ジョブスキルに 基づく適材配置・ローテーション活性化 |
| ローテーションの仕組み作り 人材情報整理 HRBPの設置 |
e)目標設定とフィードバックの連環 による人材育成の定着 | 考課者研修の継続実施 | 考課者研修4回実施 延べ75名受講 |
(注)1 目標及び実績は当社のもの
(注)2 注記の無いものは2022年度の実績
(注)3 2020-2022年度の平均
a)人材のレベルアップ
当社グループでは、変化の激しい時代に対応できるよう人材育成を実施しています。新卒の新入社員導入教育は希望するグループ会社の新入社員も受け入れており、また、選抜型の一部の研修にもグループ会社社員と当社社員とが一緒に受講し、成長の機会を共有しています。当社では下図の人材育成体系図に沿った全従業員に向けた人材育成を実施しています。従業員一人当たりの研修費用は30千円/人以上を目標と設定しており、全体の底上げに繋がる全従業員を対象とした階層別研修、選抜型として次世代の経営を担う人材に向けた研修など、様々な研修を実施しています。さらに、自己啓発支援として、公的資格受験費用補助や通信教育費用補助なども予算化しています(約8百万円/年)。
また、離職率3%以下を維持できるよう、人材育成の観点からも取り組んでまいります。
[人材育成体系図]
b)次世代経営人材の育成
将来会社の発展を担う「経営人材」を早期に育成することを目的として、2018年度から次世代リーダー研修(NBL研修)をスタートさせました。
2021年度から2022年度にかけては20名を対象に研修を実施いたしました。2025年度までに60名の受講を目標としており、2018年度からの受講者累計は37名となっております。
c)事業遂行を支える高度技術者の育成
ⅰ)グローバル人材の育成:
当社グループの事業ポートフォリオ転換及び価値創造型企業となって世界市場を目指すためには人材の育成は不可欠であり、事業遂行に必要なスキルを持ったグローバル人材の育成を目的とした研修を実施しています。
2022年度は33名が研修を受講しました。また、グループ会社を含む若手社員を対象に、新規自己啓発プログラムを開講いたしました。
ⅱ)DXの推進:
当社グループはDX推進を、事業ポートフォリオ転換という大きな変革の実現に向けた重要施策と位置づけ、「トクヤマDX」として取り組んでいます。DX推進によって得られたキャッシュや人材余力などの経営資源を成長事業と定義した3つの領域に投入し、企業価値の向上を図っていきます。今後、全社員を対象としたリテラシー教育をはじめ、役割ごとのスキル向上研修を段階的に進めていきます。
d)キャリアプラン・ジョブスキルに基づく適材配置・ローテーション活性化
当社グループでは「トクヤマGr.人材育成プラットフォーム」にて、従業員個々の能力開発のガイドラインを示すとともに、ローテーションを含めて個々の成長を促し、事業ポートフォリオ転換に向けた適材配置を進めています。
2022年度は育成及び適正配置のための戦略的ローテーションの実行に向け、仕組みづくりを行いました。タレントマネジメントシステムによる人材情報整理などを行い、組織においては、2023年4月より、事業部門と人事グループとの連携を強化すべく、成長部門においてHRBP(Human Resource Business Partner)を設置しました。
e)目標設定とフィードバックの連環による人材育成の定着
メリハリのついた評価制度のもとで公正な処遇を受けるという、基本に忠実な人事制度の運用を徹底させるため、当社では継続的に考課者研修を実施しております。
2022年度は4回の研修において、延べ75名が受講しました。
[多様性]
多様性についても、「多様性(ダイバーシティ)と働きがいの重視」として「CSR重要課題」の「マテリアリティ」に挙げられています。
[指標・目標・実績](注)1
指標 | 2025年度目標 | 実績 |
a)ダイバーシティ&インクルージョンの推進 |
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ⅰ)学卒以上の女性採用比率 | 20%以上を維持 | 20.5% |
ⅱ)主任(係長クラス)の女性比率 | 10%以上 | 8.6% |
ⅲ)管理職(課長クラス)以上の女性比率 | 5%以上 | 2.7% |
ⅳ)女性の職域拡大 | 営業職15人以上 製造部30人以上 | 営業職13人 製造部32人 |
障がい者雇用の推進 | 法定雇用率の達成 | 2.0% |
b)ワークライフバランスの推進 |
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ⅰ)育児休業(有給育休含む)の取得 | 男性:育児休業取得10人以上 又は 有給育児休暇取得率75%以上 | 22人 136.1% |
| 女性:取得率75%以上を維持 | 100% |
ⅱ)年次有給休暇取得率 | 75%以上を維持 | 74% |
(注)1 目標及び実績は当社のもの
a)ダイバーシティ&インクルージョンの推進
当社グループでは、多様性(ダイバーシティ)と働きがいを重視しています。
当社人事グループに属するDIM推進プロジェクトグループ(ダイバーシティ・インクルーション・マネジメント)は、当社グループ会社社員も含めて構成されており、当社グループ社員の多様性に関する意識向上や多様性推進に向けた各種活動を実施しています。本活動には毎年約150万円を予算化しており、今後も維持する方針です。
b)ワークライフバランスの推進
当社ではワークライフバランス充実に向けた取組として、育児休業の取得率向上、年次有給休暇の取得率の向上を目指しております。
なお、当社はワークライフバランス充実に向けた取り組みが評価され、優良な子育てサポート企業として、2022年7月19日付で厚生労働大臣より「プラチナくるみん認定」を受けました。
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