企業兼大株主テレビ東京ホールディングス東証プライム:9413】「情報・通信業 twitterでつぶやくへ投稿

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企業概要

文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において、当社グループが判断したものであります。

(1) 会社の経営の基本方針

当社は、㈱テレビ東京による地上波放送事業を中核として、BS放送(㈱BSテレビ東京)、CS放送(㈱エー・ティー・エックス)、そしてインターネットによる配信事業を総合的に運用してコンテンツの制作とメディアビジネス展開の戦略機能を担う認定放送持株会社です。

2024年4月のテレビ東京開局60周年を契機に、グループは新しい企業理念「心を温かく、時に熱く。一人ひとりに深く届け、 ちょっといい明日へ。」(パーパス=存在理由)、「『あたりまえ』に挑み、 まだ見ぬ『おもしろい』を共に創る。」(ミッション=果たすべき使命)などを制定しました。この企業理念を体現するため、報道、アニメ、バラエティ、ドラマ、音楽、スポーツ、イベントなど各分野で競争力のあるコンテンツを制作し、「ちょっといい明日」を実現させることで、テレビ東京グループの存在感を一段と高めていきます。

 グループの成長戦略といたしましては、アニメ・経済報道・独自IP(知的財産)事業を一段と強化してさらに成長することを中心に据えました。コンテンツ力を新技術の活用などにより高めるとともに、IP事業を国際的に展開する「グローバルIP企業」へと進化します。同時に、新規事業の開発などでフロンティアを開拓し、収益源をさらに多様化させてまいります。

(2) 経営環境

2023年の日本の広告費(電通調べ)は3.0%増の7兆3,167億円と過去最高となりました。テレビ広告(地上波・衛星メディア関連の合計)は、1兆7,347億円と前年より3.7%減少しました。一方、ネット広告は2019年にテレビ広告を抜き、2023年も前年比7.8%増の3兆3,330億円となりました。

(3) 目標とする経営指標

当社は各ステークホルダー(視聴者、社会全般、株主、取引先、社員)への責任をバランスよく果たし、企業価値の向上を通じて満足の総和を高めていくことを基本方針としております。2020年代後半にROE(自己資本利益率)8%の達成を目指すとともに、中長期的には配当性向35%を目途とすることにします。当社は資本コストを含む様々な経営指標を適切に認識しつつ、コーポレートガバナンス・コードを着実に実行してまいります。

(4) 中長期的な会社の経営戦略

 地上波放送事業を中核として、BS放送、CS放送、配信事業を一体的に運用し、放送・配信に加え、アニメ・経済報道・独自IP(知的財産)事業を一段と強化してさらなる成長を目指します。様々なデバイスでコンテンツを提供し、下記の経営戦略を着実に実施することで、放送と配信との相乗効果によりコンテンツの価値を高めていきます。

① アニメ事業の国際ビジネス機能を強め、「グローバルIP企業」に進化

 アニメ事業はテレビ東京グループの強みであり、グローバルなコンテンツとして主に海外で大きな収益をあげてきました。アニメ事業を巡る競争が激化するなか、先行優位を維持しつつ、世界における「アニメのテレ東」の評価をいっそう高めるためにも、グループを挙げて同事業の拡大に全力を注ぎます。有力アニメ作品の権利獲得、コンテンツ制作+放送・配信、商品化、ゲーム化の好循環で事業を拡大して参ります。

 アニメ事業の拡大に向け、㈱テレビ東京ホールディングスに2024年4月、アニメビジネス機能の強化を具現化する組織として「アニメ・IP戦略室」を設置しました。コンテンツやキャラクターなどの豊富な知的財産(IP)をリアルとデジタルの両面で活用し、海外商品化やゲーム化事業をさらに推進します。中国市場の維持に努めると同時に、重点開拓先を北米・アジア・中東などに定めます。

 これまでの海外展開のノウハウを活かし、アニメ作品の海外展開を受託するビジネスを進め、アニメ業界の発展にも寄与したいと考えております。

② 配信事業は「テレ東BIZ」事業の拡大とAVODの営業体制の再構築へ

 当社は、配信分野での収益を最大化するために、SVOD(定額制動画配信)とAVOD(広告付動画配信)の事業について、一体的に戦略を立案しています。配信のために必要な権利処理や収益管理などの実務を一括して効率化しているほか、放送とAVOD、SVODなど配信からのデータを最大限活用して、番組・コンテンツ制作に生かし、放送と配信双方の営業強化につなげています。

 配信事業においては、「テレ東BIZ」を成長戦略の柱に据えて、報道局・配信ビジネス局一体で抜本リニューアルいたします。報道局は企業報道(ミクロ経済)やマーケット報道に注力し、報道の「デジタルファースト」を徹底して「経済映像報道ナンバーワン」にまい進します。

 報道コンテンツに関してもリニューアルを実施しました。看板番組「WBS」「Newsモーニングサテライト」などは2024年4月から大幅改編し、バーチャルプロダクション(VP)技術を全面活用します。キャスターの刷新や現場取材の豊富な経済記者の積極的な活用などで、躍動感&臨場感のある経済ニュースへとさらに発展させる所存です。金曜日夜は「WBS週末版」として、その週の大きな経済ニュースを深掘りしています。

 また、2024年度から「FAST(Free Ad-supported Streaming TV)」の実証事業を本格的に始めました。2024年度は年間3000本の動画を公開して国内外で収益力の高いコンテンツを開発し、2025年度以降の事業化を目指します。

 さらに、2023年6月には、当社などが手掛けた動画配信サービス「Paravi(パラビ)」と動画配信大手「U-NEXT(ユーネクスト)」の統合により、国内勢首位の有料動画配信サービスが誕生しました。「U-NEXT」を運営する㈱U-NEXTとは包括的な戦略的業務提携を結んでおり、マーケティングからクリエイティブまで幅広い分野で協力を進めることで、売上・利益の最大化を目指しています。

 引き続きTVerなどのAVOD事業も拡大します。

③ IPビジネスを拡大展開、AI新分野にも進出

㈱テレビ東京が権利を持つ「独自IP」を開発し、事業を拡大することにも力を注ぎます。2024年4月に㈱テレビ東京ホールディングスに「グループIP・新事業統括会議」を設置し、IP・新規事業の司令塔としました。㈱テレビ東京にも「IP・新事業推進会議」を設け、グループ横断で情報を集約し、具体的な施策を定めてスピーディーに事業を実行します

 イベント局はIP事業局に改称し、イベント運営事業だけではなく、IPの開発や自社コンテンツと連携したイベント・ビジネスイベントなどを多角的に展開し、利益を拡大します。

 テレビ東京グループを代表する独自IPである「シナぷしゅ」は、番組、商品化、映画、コンサートなど、中期計画を立てて利益を拡大する方針です。

 ドラマ・バラエティなど番組と連動したIPビジネスについては、番組を活用したIP開発の専従チームを配信ビジネス局に設置し、ドラマIPのマルチ活用を強化します。Z世代に人気のイラストレーターと共同でIPを開発するほか、住友商事㈱と取り組む「エシカルメディアコマース」も事業化いたします。

2023年度から新規事業として始めたAIデジタルヒューマン事業「いしとほしプロジェクト」はキャラクターを量産し、アジアを中心にグローバル展開を進めます。

④ 放送事業の収益力強化について

 放送広告収入はテレビ東京グループの最大の収益の柱です。放送を取り巻く環境は厳しくなると予想されますが、収益バランス重視の編成方針と新番組の開発などによる新規スポンサーの獲得、営業力強化により、地上波、BSともに放送収入を伸ばしていきます。

 広告主やユーザーのニーズを汲み取るとともに、テレビ東京グループの優良な視聴者層を示す新しい指標を運用することで、放送事業の再成長を目指します。またVP技術による映像の魅力アップなどをテコに広告価値の引き上げを目指します。

⑤ 成長のための投資戦略と新規事業の開拓

 テレビ東京グループが新たな分野の収益を強固なものとしていくため、2022年度下期から3年間で200億円の「成長投資枠」を設定していましたが、2024中期経営計画の策定に合わせて200億円の「成長投資枠」を新たに設定しました。アニメ事業などを軸にM&A等を検討するほか、デジタル投資も不可欠と考えており、基幹システムの刷新などDXを積極的に進めます。

2022年度から着手している、テレビ東京グループの基幹システムの全面刷新については、2024年度から一部の運用を開始します。新システムへの移行により、編成、営業、コンテンツ制作を支援する新たなソフトの導入や開発も柔軟で迅速な対応が可能になり、配信の収支、配信を含むコンテンツ別の総合収支など経営指標を機動的に算出できることになります。

 さらに、AI、メタバースなどのXR(クロスリアリティ=新技術を活用した映像やイベント)、コンピュータグラフィックスを生かしてコンテンツDXを推進していきます。

 新規事業については、社内公募でアイデアを集約しすみやかに実証実験につなげることで、事業化を模索します。

(5) 会社が対処すべき課題

① コーポレート・ガバナンス強化

 コーポレート・ガバナンス(企業統治)の強化は社会の要請であり、テレビ東京グループにとっても重要な課題です。

 当社は取締役の3分の1を独立社外取締役にしており、取締役会の諮問機関として独立社外取締役と代表取締役社長により構成する「人事諮問委員会」「報酬諮問委員会」を設置しております。両委員会とも独立社外取締役が委員の過半数を占め、独立社外取締役を委員長に選任しています。委員会は㈱テレビ東京ホールディングスの取締役の人事案や報酬の方針などについて議論し、取締役会に答申しています。

 また、代表取締役社長の助言機関として、社外取締役と代表取締役が出席する「経営懇談会」を設けております。「人事諮問委員会」「報酬諮問委員会」「経営懇談会」があわせて機能することでコーポレート・ガバナンスを強化し、経営の透明度を高めてまいります。

② 気候変動リスクへの対応

 当社グループは、代表取締役社長を委員長とする「サステナビリティ委員会」を設置して、地球環境問題をはじめ、人権の尊重、従業員の健康、労働環境への配慮や公正・適切な処遇を実現するための啓蒙活動などサステナビリティを巡るあらゆる課題に対してグループ全体で取り組んでいます。気候変動への対応については、消費電力の削減や再生可能エネルギーの導入、自社のCO2排出を相殺できる「J-クレジット」等の活用を組み合わせて2023年度にグループ全体のCO2排出量の実質ゼロを達成しました(対象はScope1とScope2)。当初は「2024年度末までのCO2排出ゼロ」を目標に掲げていましたが、1年前倒しで実現しました。

 また、当社は「気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD:Task Force on Climate-related Financial Disclosures)」へ賛同し、TCFDが提言するフレームワークを活用して定期的に情報開示をしています。複数の将来シナリオを用いて気候変動が事業に与えるリスクと機会を評価し、気温上昇に伴う事業活動への恒常的な悪化と、緊急的かつ頻発の恐れのある自然災害の影響を分析してBCP(事業継続計画)体制をグループ全体で構築しています。

 世界的な課題となっている気候変動リスクへの対応はメディアグループとしても、企業としても重要な課題の1つと認識しています。当社グループではSDGs(持続可能な開発目標)に本格的に取り組むため、国連が報道機関に協力を呼び掛ける「SDGメディア・コンパクト」に署名・加盟しております。報道機関だからこそ出来る取り組みとして、放送や配信、イベントなどを通じてSDGsを伝えてサステナビリティの浸透に取り組んでいます。

③ 人材の多様性に向けた取り組み

 テレビ東京グループは女性採用に積極的に取り組んでおり、中核会社である㈱テレビ東京における最近の新卒採用の男女数はおおむね同数で、2024年4月時点の女性社員比率(専門社員を含める)は30.0%となっております。また、女性管理職比率は21.1%となっていて2017年度末の11.2%から増加基調にあり、2025年度末には20%台半ばに引き上げることを目指します。㈱テレビ東京の外国籍の社員は11人が在籍し、今後も事業展開に合わせて採用増に取り組みます。年間採用数のうちキャリア採用(中途採用)の比率は53.8%(2023年度)であり、クリエイティブな人材などの即戦力を随時採用し、組織の活性化と社員全体のスキル向上を進めております。

 組織の潜在能力を引き上げるには人材の多様性が不可欠であると考え、多様な社員が働きやすい環境の構築に努めています。在宅勤務制度、フレックスタイム制度、育児時短勤務制度、パートナーシップ制度などを通じてすべての社員が働きやすく、能力を発揮できる制度の充実を目指します。

 なお、当社の女性役員比率は10.7%、㈱テレビ東京の女性役員比率は22.6%となっております。(2024年6月20日時点)

  ※女性役員比率は社内における指導的な役割を担う者として、取締役、監査役、執行役員、フェロー等を対象として算出しております。

④ 人的資本への投資

 当社は人材を成長力の源泉と位置づけ、人的資本への投資を強化してまいります。2024年度は基本給を引き上げるベースアップを9社で実施し、㈱テレビ東京では定期昇給分と合わせて平均5.2%の賃上げを行いました。2024年度~26年度の中期経営計画では、業績向上分の社員への還元やリスキリングの強化などを一層進め、人的投資の総額をテレビ東京グループ全体で35億円拡充する方針です。

⑤ 人権方針の策定など人権尊重の取り組み

 テレビ東京グループは人権尊重の重要性を改めて認識するとともに、社会から信頼される企業集団として認められるよう、「国際人権章典」や「労働における基本的原則及び権利に関するILO宣言」といった国際規範に加え、国連「ビジネスと人権に関する指導原則」「OECD多国籍企業行動指針」および政府による「責任あるサプライチェーン等における人権尊重のためのガイドライン」に基づき、2023年11月に「人権方針」を定めました。テレビ東京グループはメディア企業としての責任を果たすための「テレビ東京グループ行動規範」における「行動基準」や「報道倫理ガイドライン」で、既に人権尊重の考え方を盛り込んでおりましたが、新たに人権方針を設けることで人権に対する考え方をより明確にしました。同時に人権方針の推進のため「人権委員会」を設置し、取引先を含めた人権侵害の予防や改善に取り組む「人権デューデリジェンス」を実行していきます。

⑥ 激動する国際情勢への対応

 国際通貨基金(IMF)によると世界景気の成長は続く見通しですが、金利上昇や原材料高による減速懸念もあります。ロシアによるウクライナ侵攻が長期化し、イスラエルのガザ地区侵攻に伴う中東情勢の緊迫化は、世界経済に暗い影を落としています。米中間の緊張が高まり、中国や台湾のビジネス環境の変化を注視する必要もあります。テレビ東京グループは基本的人権を尊重しつつ、公平・公正な報道姿勢を貫くことにより、自由で豊かな社会の実現に貢献することを目指します。

⑦ 景気の下振れリスク

 インフレ長期化、金利上昇、中国経済の減速、サプライチェーン(供給網)混乱などにより、世界経済の下押し懸念があります。国内では、物価高による消費マインドの低迷、急激な為替の変動、資源高による企業業績への圧迫などにより、景気の下振れリスクが指摘されています。経済の不透明感が増すなかでも、テレビ東京グループは着実な利益の計上に努めます。

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