テルモ 【東証プライム:4543】「精密機器」 へ投稿
企業概要
当連結会計年度の研究開発費は691億円(売上収益比率7.5%)となりました。
心臓血管カンパニー
TIS事業では、薬剤溶出型冠動脈ステント「Ultimaster Nagomi」について、欧州連合(EU)の安全要求基準に適合していることを示す認証(CEマーク)を取得し、欧州市場での販売を開始しました。また、欧州においてUltimaster Nagomiの市販後臨床フォローアップ(Post-Market Clinical Follow-Up)調査を開始しました。本調査は、EU域内の医療機関60施設と協力し、3,000名の患者さんの参加を見込んでいます。多枝病変や慢性完全閉塞等の冠動脈の複雑な病変の治療にUltimaster Nagomiを用い、その治療成果を評価します。
ニューロバスキュラー事業では、脳動脈瘤用袋状塞栓デバイス「Woven EndoBridge」の5年間の臨床試験、WEB-ITのフォローアップデータを発表しました。Woven EndoBridgeには7つのGCP(Good Clinical Practice)試験と200以上の査読付き論文があり、現在市場で最も研究された脳動脈瘤塞栓デバイスです。新たに2サイズが展開され、様々なサイズや形状の脳動脈瘤に対する治療を可能にしています。ニューロバスキュラー事業の本部であるMicroVention社は、サンディエゴで開催されたSNIS2023において、この革新的なデバイスを披露しました。
血管事業では、胸部大動脈用ステントグラフト「RelayPro」について、米国食品医薬品局(FDA)から大動脈解離への適用に関する承認を取得しました。これにより、従来から米国で認められていた大動脈瘤の治療に加え、大動脈解離の治療でもRelayProを使用することが可能になりました。
当事業に係る研究開発費は406億円となりました。
メディカルケアソリューションズカンパニー
ホスピタルケアソリューション事業では、株式会社メドコム(2024年4月1日付で株式会社フロンティア・フィールドから株式会社メドコムに社名変更)と資本業務提携を行いました。メドコム社は、医療機関に対してスマートフォンサービスを提供するとともに、医療現場の働き方改革を推進するアプリケーションの開発・提供を行っています。今回の資本業務提携を通じて、医療従事者の働き方改革とチーム医療の促進を支援するソリューションの開発および医療機関への提案に共同で取り組みます。アプリケーションやテルモの輸液ポンプ・シリンジポンプ、通信機能付きバイタルサイン測定機器シリーズ「HRジョイント™」、腹膜透析関連機器等のデータを連携することで、プラットフォームを通して患者さんのリアルタイムな情報にいつでもアクセス可能になり、医療従事者が場所や時間の制約を超えて患者さんを常に見守ることができる環境を実現し、患者さん中心の医療を追求する医療機関の取り組みを支援します。
ライフケアソリューション事業では、血糖値管理アプリ「メディセーフデータシェア for Home」をバージョンアップし、健康やフィットネス情報を管理するGoogleのAndroidアプリ「ヘルスコネクト」との連携を開始しました。今回のバージョンアップにより、ヘルスコネクトに対応した他のアプリで登録した体重・歩数等のデータをメディセーフデータシェアに自動で反映・一元的に閲覧できるようになりました。生活習慣データを記録しやすくすることで、医療従事者がより豊富な情報を確認することができ、その情報をもとに適切な治療方針を提案することができます。スマートフォンやウェアラブルデバイスで記録される日々の歩数が自動でメディセーフデータシェアに記録されることで、医師が患者さんの運動量を参考に、適切なアドバイスをすることが可能になります。
当事業に係る研究開発費は77億円となりました。
血液・細胞テクノロジーカンパニー
血液自動製剤システム「Reveos」が、米国食品医薬品局(FDA)の認証を取得しました。Reveosは、全血採血で集めたドナーの血液(全血)から、血小板製剤をはじめとする血液製剤を製造するためのシステムで、世界52カ国で使用されています。全血を遠心分離して血小板、血漿、赤血球等の成分に分け、専用の血液バッグに充填するまでの一連の工程を完全自動化することで、製剤化プロセスの効率を改善し、血液センターの生産性向上に貢献します。今回のFDA認証を受け、テルモは米国初の全血用の血液自動製剤システムとして、Reveosを米国内の血液センターに拡販していく予定です。
また、公益財団法人京都大学iPS細胞研究財団と共同で、iPS細胞培養および分化の自動化を確立するための研究を開始することを発表しました。テルモBCTの細胞増殖システム「Quantum Flex」を用いることで、将来のiPS細胞を用いた治療のための適切な自動培養工程の確立を目指します。iPS細胞の培養は複雑な手順に基づき専門家が手作業で実施しており、臨床用iPS細胞の製造にかかる莫大な時間と費用が課題となっています。今回の共同研究では、Quantum Flexを細胞培養に活用し、iPS細胞の一貫した大規模生産と、汚染リスクが低減された閉鎖環境で細胞培養の自動化とその工程の確立を目指します。
当事業に係る研究開発費は128億円となりました。
その他
研究開発部門はグループの成長に貢献する中長期的テーマの探索に取り組むとともに、比較的短期的な商品・サービス開発にも寄与するコア技術の深化を進めてきました。その中で、経営戦略との一貫性および成長性の観点から複数の新しい有力テーマが創出されました。テーマの新陳代謝を図るとともに、これら有力テーマは事業出口を見据えてグローバルに最適な場所と体制で育てていきます。同じくコア技術もグローバルに展開する事業体に幅広く提供するための仕組みを整備しました。引き続き医療課題を解決するデバイス技術、それを具現する製造技術とマテリアル技術が絡まり合って差異化を生み出すような深い技術体系の構築を目指していきます。
デジタルトランスフォーメーション(DX)については、米国拠点を設けて、DX推進室の活動の重点を最先端市場である米国に移し、デジタルヘルスのスタートアップを探索し、投資・買収の機会をうかがっています。加えて、グループ内のデジタルソリューション事業に関わるテーマを全て把握し、その数をKPIとしてモニターできるようになりました。それらを支えるための能力強化にも取り組んでおり、特に本社内でも分散していたデジタル人財を統合する準備が完了しました。
なお、当連結会計年度の研究開発費総額には、各事業分野に配分できない基礎研究費用79億円が含まれております。
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