ソシオネクスト 【東証プライム:6526】「電気機器」 へ投稿
企業概要
当社グループの経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は、以下のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において当社グループが判断したものであります。
(1)経営の基本方針
①基本理念
当社グループは、企業として果たすべき使命、重視する価値観について、以下のとおりグループ共通の考え方を定めております。
この基本理念の下、新しいサービス・製品の差別化のために独自の先端SoCを必要とするお客様のパートナーとして、また、進化する半導体のエコシステムにおいてファウンドリ・OSATをはじめIP・EDAツール・ソフトウエアに至るまで最新の技術を提供するサプライヤーのパートナーとして、お客様、さらにはその先にいる世界中の人々に新しい価値を提供し、豊かな社会の実現に貢献していきたいと考えています。
・Mission(企業としての使命)
Together with our global partners, we bring innovation to everyone everywhere.
・Values(重視する価値観)
「Change」
非連続な変化への適応。ビジネス・技術・マインド・オペレーション等環境の変化に合わせ我々自身も変化していく。
「Technology」
最先端技術の追求により、世界のイノベーションを支える開発競争力を持つ会社を目指す。
「Growth」
私たちの成長が株主・お客様・パートナー・社員等のあらゆるステークホルダーへの貢献に繋がる。
「Speed」
ダイナミックかつ急激に変化する市場・お客様への迅速な対応。
「Sustainability」
お客様・パートナー・社会との共生により持続可能な未来を創る。
・行動指針
・各人が自身の仕事にオーナーシップを持ち、環境の変化に合わせ、お客様視点・マーケットインの視点から自立的に考え行動を起こす。
・成長市場・成長企業にアクセスし続けるために、最新の技術・知識に裏付けられた、お客様にとって価値のある課題解決に向けた提案を行う。
・各人が意欲的にあるべき姿に向かってチャレンジしプロフェッショナルを目指すことが、個人の成長・会社の成長に繋がる。
・個人単位・組織単位での迅速な判断と意思決定を行い、常に先を見て、お客様にとっての価値を生み出す。
・グローバル社会の構成員として、企業としての社会的責任を果たし、持続可能で豊かな社会の実現に向け貢献する。
・CSR基本方針
・法令・社会規範の遵守
私たちは法令・社会規範の遵守を徹底し、社会の信頼に応えます。
・人権の尊重
私たちは一人一人の人権を尊重し、差別等の人権侵害行為を許しません。
・社員の労働環境整備
私たちは社員の幸せを目指し、個性を尊重し、公平な処遇を実現するとともに、健康で働きやすい環境をつくります。
・環境への配慮
私たちは地球環境に配慮した企業活動を進めていきます。
・公正な商取引の推進
私たちは常に公正な商取引に則り、お客様・お取引先との信頼関係を築きます。
・情報管理の徹底
私たちは自社情報、お客様やお取引先等の第三者情報や個人情報等の管理を徹底し、機密を保持します。
・知的財産の尊重
私たちは企業価値の源である知的財産を守り、尊重します。
②経営方針
上記の基本理念実現のために、当社グループは、独自の先端SoCを必要とするお客様に向けて、最適な技術の組み合わせにより、お客様が求める機能を実現するSoCを開発・提供する事業を、ソリューションSoCという独自のビジネスモデルにより展開しています。「オートモーティブ」、「データセンター/ネットワーク」及び「スマートデバイス」といった先端分野に加えて、「産業機器」や「IoT&レーダーセンシング」の分野で、グローバルなお客様から地域的なバランスをとりながら、より多くの商談の獲得を目指します。
事業活動を通して、お客様の信頼を獲得し、世界の主要/成長企業のSoC部門となりお客様の成長を支えるとともに、当社グループの低消費電力技術等を活用して社会の課題解決に貢献します。また、お客様と協力した開発を通して、エンジニアの成長と会社の成長との好循環を実現し、会社の成長による企業価値の向上により株主への還元を図ります。
(2)経営環境及び対処すべき課題等
①経営環境
近年、ネットワーク、クラウド、AI等様々な革新的技術の普及と融合により、自動運転、AR/VR等今までにない新たなサービス/製品が次々と出現しています。それらのサービス/製品を取扱う企業においては、自社のサービスや製品を差別化するために独自のSoCへのニーズが増加しており、カスタムSoCの需要は拡大しています。
他方、半導体産業のエコシステムの進展により、カスタムSoC開発のコア技術であるIP、EDAツール、ソフトウエアからプロセス、アセンブリ、テストに至るまでの最先端技術をエコシステムから入手することが拡がっていますが、差別化の要求を実現するための組み合わせが増えたことで、最適な組み合わせによる独自SoCの開発が複雑化しています。
こうした事業環境を背景に、独自のカスタムSoCを開発したい顧客と進化する半導体のエコシステムとを繋ぐソリューションSoCビジネスモデルに対する需要が高まってきています。
2023年時点で、ソリューションSoCビジネスモデルで開発するSoCを含むカスタムSoCの市場規模は250億ドル(※2)であり、このうち自社製品のみにカスタムSoCを供給している会社を除くと、市場規模は120億ドル(※2)で、当社グループは約12%、第2位のシェア(※1)を有しております。半導体市場全体の2023年から2027年までの年間平均成長率は10.7%(※2)であり、そのうちカスタムSoC市場は、同期間において年間平均成長率2.9%(※2)で成長していくと見込まれております。また、当社グループの注力分野(「オートモーティブ」、「データセンター/ネットワーク」、「スマートデバイス」及び「産業機器」)は、2023年時点で74億ドルの市場規模(※2)で、上記期間において8.4%(※2)と高い年間平均成長率が見込まれております。
※1.Omdiaの“Competitive Landscaping Tool CLT, Annual-4Q 2023”及び当社内部データをもとに当社が推計したものです。当社は当該データにおけるLogic ASICをカスタムSoCと定義して推計を行っており、実際の当社の対象市場とは異なります。また、一定の前提及び外部資料にもとづき推計しているため、実際の市場規模と異なる可能性があります。なお、自社製品のみにカスタムSoCを供給しているApple社は除いており、また、台湾の従来型ASICベンダーは、当該データに含まれておりません。
2.Omdiaの“Application Market Forecast Tool-1Q 2024”をもとに当社が推計したものです。なお、当該データの“Data Center Servers”、“Solid State Drives”、“Enterprise Ethernet Switches & Routers”、“Carrier Ethernet Switches & Routers”、“Optical Equipment”、“Broadcast & Streaming Video”、“Data Center Network Switches”、“Mobile Comm Infrastructure”、“Other Consumer Electronics”、“Connectivity & Telematics”、“Infotainment & Cluster”、“ADAS”、“Chassis & Safety”、 “Security & Video Surveillance” 、“Automation”、“Test & Measurement”、“Other Peripherals”を当社の注力分野として推計しております。
②優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題
2019年3月期以降取り組んできた「第一の変革」の結果、2022年3月期以降、売上とともに営業利益が拡大し、利益率も改善してきています。この先も持続的な成長を実現するためには、開発競争力の強化、事業体制の変革、組織全体のグローバル化、さらなる利益率の改善等多くの課題があります。「第一の変革」で成し遂げた「量的な変化」を土台として、競争力のある開発体制の構築やグローバル企業に相応しい組織風土を目指す「質的な変化」を当社グループの「第二の変革」と位置づけ、大胆に進めてまいります。
〔開発体制の再構築及びビジネスプロセスの改善〕
当社グループはソリューションSoCのビジネスモデルへの転換に伴い、2021年3月期以降、開発力強化・開発効率改善のため、開発体制の再構築を進めてきました。今後もグローバルな顧客、半導体エコシステムを構成するプレーヤー、投資家等とのコミュニケーションを通じて、ソリューションSoCのビジネスモデルに相応しい開発基盤と標準的な開発プロセスの構築、開発の効率化・可視化、開発マネジメント改革を一体的に推進していきます。
また、さらにグローバルな顧客との商談が拡大していくことに伴い、生産管理グループのグローバル化及びオペレーション改善の施策を実施していきます。顧客と当社グループの生産システムを繋ぎ、デリバリーシステムにおける効率性や透明性の向上を目指していきます。それにより、精度の高い生産計画とタイムリーな調達を可能にする強固な体制を確立し、製造を委託するファウンドリやOSATとの関係を含むビジネスプロセスを改善していきます。
〔中長期的な成長を見据えた売上及び営業利益の拡大〕
当社グループは将来の売上管理のために、商談獲得残高という経営指標を採用しており、この商談獲得残高は商談獲得金額から売上実績を差し引いた金額です。この商談獲得残高により、現時点において2026年3月期までの売上の推移をある程度見通すことができております。2027年3月期以降も持続的な成長をしていくためには、当期と同レベルの年間2,500億円(1米ドル=100円で換算)程度の商談を継続して獲得していくことが必要であると認識しております。そのために、順調に商談を獲得してきているオートモーティブ分野に加え、データセンター/ネットワーク分野をはじめとして、各注力分野においてバランスよく商談獲得への取り組みを進めてまいります。
また、営業利益拡大への施策としては、従来に引き続き製造粗利益の改善、開発収支の改善、販売管理費の適正な管理等に取り組んでいきます。
〔サステナビリティに関する取り組み〕
当社グループでは、優先的に取り組むマテリアリティ(重要課題)を特定し、サステナビリティ活動を推進しています。
環境・気候変動への取り組みとしては、当社グループのGHG(温室効果ガス)排出量の削減を進めるとともに、当社グループが提供する低消費電力・省スペースな先端SoCにより、お客様のもとでのGHG排出量の低減へ貢献することで、脱炭素社会の実現を目指しています。
また、人的資本に関しては、人権、ダイバーシティ、健康推進・安全衛生に関する諸制度の充実、エンジニア人材育成に関する教育プログラムの策定等により、当社グループの人的資本の最大化に向けた活動を進めています。
当社グループは、パートナー企業も含めたサプライチェーン全体でサステナビリティ活動に取り組み、事業のさらなる成長を通じて社会課題の解決と持続可能な社会の実現に貢献してまいります。
当社グループは、グローバル企業としての社会的責任を全うし、全てのステークホルダーから信頼と共感を得られる存在であり続けたいと考えています。当社グループの最先端SoC技術で新しい価値を世界中に提供し、今後も中長期的な企業価値の向上を追求していきます。
(3)経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等
カスタムSoCは、一般的に商談獲得から設計開発及び顧客による評価期間を経て製品を出荷し売上計上するまで2年以上を要するため、当社グループは、より早い段階から将来売上見通しを見える化し、必要な対策をタイムリーに実行していくために、将来の売上見通しのベースとなる「商談獲得金額」、「商談獲得残高」を会社の重要経営指標としております。日々の商談獲得活動によるこれら指標の積上げ、見直しによる、中期的な売上高成長率の向上、並びに製品売上拡大による売上総利益の増加及び開発効率化等を通じた営業利益率の改善を目指しております。
当社グループの商談獲得金額は2018年3月期及び2019年3月期は1,000億円の水準でしたが、2023年3月期においては2,500億円の水準に増加しており、2024年3月期も同じレベルを維持しております。特に高成長が期待される車載を中心とした注力分野において大型の商談を多数獲得しております。その結果、商談獲得残高は2022年6月末時点の約8,800億円から2024年3月末時点で約1兆円と増加しております。
当社グループは、商談獲得後、SoCの設計開発を行いますが、一般的に顧客から設計開発に要する費用の大半をNRE売上として段階的に受領します。その後、顧客の評価を経て製品の量産段階に入り、製品売上を計上します。2024年3月期において、当社グループの連結売上高に占めるNRE売上高の比率は17%でした。商談獲得から設計開発及び顧客の評価完了を経て製品売上が計上されるまでには、一般的に2年以上を要し、その間に案件の中止や仕様変更等に基づく製品単価の変化が発生しうるため、商品獲得金額が将来の売上を確実に保証するわけではありません。
「商談獲得金額」は、ある会計期間に獲得された商談について、顧客との間で設計開発に係る契約を締結した時点(商談獲得時点)における、将来の設計開発及び量産に至る販売全期間における顧客需要として当社グループが予測した金額を、1米ドル100円により示したものです。商談獲得金額は、顧客需要の予測であるため、製造キャパシティの制約は考慮しておらず、また、商談獲得後の案件の中止、実際に計上された売上といった事後的な事象に基づき更新することはしていません。なお、商談獲得時において、製品単価は合意されます(但し、設計開発を経て製品の仕様が変更される場合には製品単価も変更されることがあります。)が、販売数量は合意されません。
当社グループは、商談獲得後、SoCの設計開発を行いますが、顧客から設計開発に要する費用の大半をNRE売上として段階的に受領します。その後、顧客の評価を経て製品の量産段階に入り、製品売上を計上します。商談獲得から製品売上の計上までに通常2年以上の期間が掛かり、製品の量産化、さらには量産を終了するまでには相当の期間にわたるビジネスとなります。このため、単価や数量の変動等個々の商談の状況変化を適時反映した「商談獲得残高」も重要な経営指標としております。
「商談獲得残高」は、その時点において存続している案件に関する商談獲得金額の累積値を当社グループが予測した金額で、同じく1米ドル100円で計算しています。商談獲得残高は、商談獲得金額についての、商談を獲得した時点以降の案件の進捗又は変化を反映又は更新したものであるため、商談獲得残高の算定時点により大きく変動する可能性があります。これらの進捗又は変化には、①商談獲得後の案件の中止(2020年3月期から2022年3月期における商談獲得金額のおよそ20%に相当する注力分野(オートモーティブ、データセンター/ネットワーク、スマートデバイス分野)の商談が事後的に中止となっています。現時点において、2020年3月期から2024年3月期までの商談獲得金額に対する商談獲得後の案件中止による影響額は、その他の商談の商談獲得後の単価上昇、数量増等の影響額により相殺され、当初の獲得額と概ね同水準となっております。これまでに獲得した商談について将来的なキャンセルが発生する可能性は否定できないものの、2023年3月期及び2024年3月期に獲得した商談に関する重大なキャンセルは発生していません。)、②実際に計上された売上の控除及び③仕様変更等に基づく製品単価の変化や製品の販売数量の見込みの変化が含まれます。
上記のほか、「商談獲得金額」及び「商談獲得残高」の留意事項については、下記「3 事業等のリスク (4)当社グループの経営指標について」もご参照ください。
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