企業セレンディップ・ホールディングス東証グロース:7318】「輸送用機器 twitterでつぶやくへ投稿

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企業概要

 当社グループの経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は、以下のとおりであります。

 なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において、当社グループが判断したものであります。

(1)経営方針

 当社グループは、「すべてのステークホルダーに価値と成長をもたらす100年企業グループ」創出というグループビジョンを掲げ、中小企業経営の近代化(使命)と、よき伝統の尊重と戦略合理的経営を追求していくこと(価値観)を目指しております。中小企業経営において変化が求められる今の時代に、古き良き伝統のみに縛られるのではなく、経営の変革により企業価値を継続・発展させていくことを基本的な経営方針としております。

(2)経営上目標とする客観的な指標

 当社グループは経営上目標とする指標として、経常利益を選定しております。

 当社はM&Aを実行する際、主に各子会社の正常収益力を基にLBOファイナンス(※)によって買収資金を調達しており、各子会社の事業活動そのものだけでなくM&Aスキーム一連のファイナンスアレンジの巧拙も、事業パフォーマンスの評価軸として重要と考えております。そのため、各子会社の本業からもたらされる収益力の改善のみならず、財務の健全化に取り組み金融費用の最適化を行い、当社及び子会社ごとに経常利益の確保を目標に設定、管理しております。

(※)LBOファイナンスとは、企業やファンドが他社を買収する際、自己資金だけではなく、買収先の資産や将来のキャッシュ・フローを見合いとした借入等で調達した資金を元手に買収を行う方法です。

(3)経営環境

①事業承継・M&A市場

 帝国データバンクより2021年に発表された「全国社長の年齢調査」および2020年に公表された「全国企業『後継者不在率』動向調査」によると、経営者の平均年齢が62.49歳と高齢化が進んでいるにも関わらず、6割以上が後継者未定と発表されております。

 また、中小企業庁より2019年12月に発表された「第三者承継支援総合パッケージ」によると、日本企業が関連したM&A件数は、年間4,000件程度に留まり、潜在的な後継者不在の中小企業数(127万弱)からして不十分であり、このうち2025年までに黒字廃業の可能性のある約60万社の第三者承継を促すことを目標とした施策が報告されています。

 このような環境のもと、国内M&A件数は、レコフデータによると、我が国全体で2017年の3,050件から2023年では4,015件と増加しております。事業承継課題を抱える中小企業は今後も益々増加していくものと考えられ、市場は拡大傾向にあります。

②自動車内外装部品・自動車精密部品製造市場

 日本自動車部品工業会がまとめた2022年度「自動車部品出荷動向調査結果」によると、自動車車体部品合計で4兆6,483億円の出荷額(2022年4月~2023年3月)となっています。今後、自動車の電動化が進む中、防音性・静粛性は益々求められる傾向にあり、市場は拡大傾向にあります。

 電動化や自動運転など次世代技術の開発競争が激化し、「100年に1度」と言われる自動車業界の変革期を生き抜くため規模拡大で競争力を強化する動きが活発化しております。業界再編の波が押し寄せる中、サプライヤーも大手・中堅を中心に再編が進む一方、中小サプライヤーの事業継続が大きな課題となっております。

③FA装置製造市場

 経済産業省の「スマートファクトリーロードマップ」によると、IoT・AI・ロボット等の活用によるモノづくりのスマート化に向けた取り組みがグローバル競争を勝ち抜くために必要である旨発表されています。IoTやロボットによるデータ活用により、エンジニアリングチェーンやサプライチェーンのネットワーク化・最適化・自動化を進め、製品化・商品化の時間短縮や生産性向上等を実現していくことが未来のモノづくりに求められております。

 安全性や快適性、環境性能の向上から電子化が進む車載向けでは、高速・大容量のデータ伝送性能を持つコネクタや高電圧対応の小型コネクタなどが開発され自動車技術の進化に貢献しております。これらコネクタを製造する自動機においても需要は継続的に見込まれるものと推測されます。

④試作品製作市場

 経済産業省の「自動車部品産業の変遷に関する調査」によると、自動運転技術の進展に伴い、車両の部品構成に変化が生じています。自動運転における顧客価値の変化により、自動車部品産業の事業環境にも変化が生じ、「より高付加価値の提供」が求められる自動車メーカーの研究開発が活発化しています。

⑤ビューティーテック市場

 矢野経済研究所がまとめた「エステティックサロン市場に関する調査(2024年)」によると、2023年度のエステティックサロン市場規模は、前年度比99.2%の3,139億円(事業者売上高ベース)と、4年連続マイナス推移となる見込みであるものの、コロナ禍に伴う生活様式の変化によりオンライン会議等において男性自身が体型や肌の状態を気にする機会が増えたこと等によりメンズエステ市場が前年度比102.5%と、新規顧客として美容意識が高くジェンダーレスな考え方を持つ若い世代の取り込みが進行する可能性が高まっております。

 また、株式会社リクルート ホットペッパービューティーアカデミーが公表している「美容消費係数(総務省「家計調査」の総世帯のデータより、理美容サービス・用品費用の「消費支出」における比率を計算した指標)」は、2023年10月~12月において初の3%超となる3.11%と美容に対する消費マインドは高まっております。

(4)経営戦略

①基本方針

 上記経営環境のもと、M&Aを通じモノづくり企業をグループ化し、当社独自の「モノづくり事業承継プラットフォーム」に組み込むことで、グループ会社を変革・進化させ、グループ全体の成長を図るのが当社グループのビジネスモデルです。

 「モノづくり事業承継プラットフォーム」とは、a.M&A実行基盤(投資)、b.経営管理基盤(整備)、c.モノづくり基盤(育成)の3つの基盤で構成され、事業承継に必要なすべてのソリューションをワンストップで提供する当社独自の仕組みを指します。

 a.M&A実行基盤(投資)

 M&Aプロセス全体(M&Aの戦略立案、デューデリジェンス、資金調達、PMI等)を、モノづくり事業とインベストメント事業に精通したプロフェッショナル人材が一気通貫で遂行していきます。

 b.経営管理基盤(整備)

 プロ経営者のタレント・マネジメント・システムの構築、業務のシェアード化、CMS(キャッシュ・マネジメント・システム)の構築及びグループ全体のGRC(ガバナンス・リスクマネジメント・コンプライアンス)体制の構築を、経営管理に精通したプロフェッショナル人材がチームで推進していきます。

 c.モノづくり基盤(育成)

 標準化された、品質管理強化・製造効率化・IoTを活用した省人化・そして新製品開発を、モノづくり事業と経営に精通したプロフェッショナル人材がチームで推進していきます。

 さらに、当社グループは、モノづくり事業承継プラットフォームで蓄積したノウハウを、グループ内に留まらず、フィナンシャル・アドバイザリー、経営コンサルティングを始めとした事業化を進め、当社グループ全体の企業価値最大化を図ります。

②成長戦略

 当社グループは、更なる成長に向けた戦略として、以下の方針を立てています。

 (ⅰ)事業ポートフォリオの強化

 当社は、M&Aによる非連続的成長と既存事業のオーガニック成長(※)を両輪で推進し、事業ポートフォリオを強化していきます。

 M&Aによる非連続的成長においては、M&Aを戦略的に実行し、スピード感を持ってグループの成長を推進します。投資企業の選定には「国際競争力が高く、サプライチェーンが強固な分野」を重点投資領域に設定し、製造業において安定的な成長が期待できる分野や、高成長・高付加価値の創造が期待できる分野を主なターゲットとした独自の投資ポートフォリオを構築していきます。

 一方、既存事業のオーガニック成長においては、M&A後のPMIフェーズで、当社から派遣されたプロ経営者チームが、経営環境及び製造現場の可視化を前提とした「標準PMI」で再現性の高い統合プロセスを実現します。PMIフェーズで得た知見を当社グループの独自ノウハウとして蓄積し、「標準PMI」のアップデートを重ねることで、PMIの効果・スピードを高めていきます。

 また、当社グループは自動車内外装部品製造事業、FA装置製造事業、試作品製作、業務用美容機器開発製造等において、成長に必要なR&D(新技術の研究開発活動)を積極的に行っていきます。具体的な取り組みとしては、「リサイクル率向上」「低騒音化」といった環境に配慮した取り組み、「工場の自動化」「DX化」といった効率性と品質向上への取り組み及び産学共同研究を通じた「伝送効率の改善」を実現する新素材の開発・製品化に向けた取り組み等を行っていきます。

(※)当社がいう「オーガニック成長」とは、当社グループが買収した企業を含む既存事業の持続的な成長を指しています。当社グループは、既存事業の強みを活かしながら、標準化、省力化及びDX化を推進し、生産性を向上させています。また、既存事業から派生した新たな事業の創造や研究開発への取り組みもオーガニック成長の一環として位置づけています。

 (ⅱ)グループ財務機能の強化

 当社グループは、グループ経営の課題として収益基盤の安定化と子会社財務の健全化を目指しています。具体的には、超過利潤であるROICスプレッド(ROIC(投下資本利益率)とWACC(加重平均資本コスト)の差)の拡大、当社グループ内の資金を有効活用し最適配分を行うための事業ポートフォリオ戦略によるグループ財務の安定、更には予算精度向上による継続的な収益力の改善を図っていきます。

 事業ポートフォリオ戦略による投資余力の確保、金融、会計、法律等の多分野にわたる複雑で高度な専門知識やノウハウを組み合わせて「全体最適」な資金調達手段を導き出し、機動的・多様な資金調達を目指します。

 (ⅲ)人的資本への投資

 人的資本投資については、「第2 事業の状況 2.サステナビリティに関する考え方及び取組」をご参照ください。

(5)優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題

 当社グループは、M&Aによる事業承継により傘下に収めた子会社の成長を通じてグループ全体の成長を図るビジネスモデルとなっており、子会社における既存事業の成長のため、及び上記のソリューション拡充のため、以下の課題に注力してまいります。

①M&A対象企業の発掘・事業の成長

 当社グループはM&A案件の発掘に際し、金融機関、M&A仲介会社等様々なリソースを活用し、精緻な企業分析、M&A後の成長戦略、PMI戦略、グループシナジー等を十分に勘案した上で投資判断を実行していくことが重要であると認識しております。ターゲット案件に対しては、当社取締役を中心とした経営層及び関係部門で構成する投資委員会において、十分な審議、戦略立案等を行い、当社グループの成長に結び付くM&Aの実行に注力してまいります。

②プロ経営者の積極的採用・育成強化

 当社グループの最も重要な経営資源は人材であり、M&A後のプロ経営者派遣を行う上で人材の採用・育成強化は継続的な経営課題であると認識しております。他社との差別化を推進していくため、更にはM&A案件の成功に対応するため、当該分野における優秀な専門家人材を積極的に採用し、育成強化してまいります。

③当社グループの一体化・意思統一

 当社グループは、M&Aを実行しグループ内に取り込み成長することを基本的な事業戦略としております。グループ企業が増加する過程においては、各社のこれまでの歴史・企業風土・文化の違いから価値観の相違が生まれる等、一つのグループ企業として全社が同じ目標に向かい一体化していくことは容易では無いものと認識しております。

 これらの課題に対し、各社横断的な会議体やコミュニケーションの場を設け、積極的な信頼関係の構築に努めてまいりたいと考えております。更には年に一度、方針説明会を開催しており、グループ方針を理解するとともに一体化・意思統一を図ってまいります。

④販売チャネルの拡大

 当社グループは、グループ会社間で経営層・マネジメント層を兼任させることで、子会社各社にとっては新規となりうる顧客に対して総合的な提案を実施することにより新たな販路、新製品の開発・製造を実施し、販売チャネルの拡大を実行してまいります。

⑤グローバル展開

 当社グループは、子会社における海外人材の採用や海外取引は存在するものの、グローバル案件を遂行するため、業務提携・技術提携、新たな販売先・仕入先開拓等のグローバルな事業展開に対応できる人材の強化、ネットワークの構築等は必要であると判断しております。今後、グローバルな事業展開力や経営執行力を当社グループの機能に取り込むことにより、グローバル対応力の充実に努めてまいります。

⑥新市場への挑戦、技術革新・現場改革

 当社グループの一部の子会社が身を置く自動車業界では、環境規制の強化による電動化の進展、自動運転技術の進化、コネクティッドカーの普及、クルマが所有するものからシェア(共有)するものへ変わるといったライフスタイルの変化など、いわゆるCASE領域の進展がめざましく、自動車産業の構造は、『100年に一度の大変革期』を迎えています。事業の枠組みや前提条件が大きく変わろうとする中、新市場への挑戦、新しい技術(技術革新)・新しいやり方(現場改革)に果敢に挑戦してまいります。

⑦財務体質の改善

 当社グループはM&Aを実行する際、各子会社の正常収益力を基にLBOファイナンスによって買収資金を調達しているため有利子負債比率が高い水準にあります。利益の蓄積のほか、様々な資金調達手法を活用し、財務体質の強化を図ってまいります。

⑧内部統制の充実

 企業経営の透明性と開示情報の正確性の確保、諸法規等の遵守のため、内部統制システムの整備・充実を継続的に推進し、内部管理体制の強化に取り組んでまいります。

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