ジャパン・ティッシュエンジニアリング 【東証グロース:7774】「精密機器」 へ投稿
企業概要
文中の将来に関する事項は、当事業年度末現在において当社が判断したものであります。
(1)経営方針
当社は、「医療の質的変化をもたらすティッシュエンジニアリングをベースに、組織再生による根本治療を目指し、21世紀の医療そのものを変えてゆく事業を展開する。」ことを会社設立の趣旨とし、次の経営理念・ビジョン・行動指針に基づいて、再生医療製品事業、再生医療受託事業及び研究開発支援事業を展開しております。
経営理念:再生医療の産業化を通じ、社会から求められる企業となる。法令・倫理遵守の下、患者様のQOL向上に貢献することにより、人類が生存する限り成長し続ける企業となる。その結果、全てのステークホルダーがより善く生きることを信条とする。
ビジョン:再生医療をあたりまえの医療に
行動指針:一、一貫性と柔軟性のバランス感覚を持つ。
一、勇気を持って変化に挑戦する。
一、異なる文化や考え方を尊重する。
一、徹底的に現場を重視する。
一、J-TECを代表する社員として深く考え行動する。
サステナビリティ方針:
私たちは、「再生医療をあたりまえの医療に」というビジョンのもと、再生医療のリーディングカンパニーとして持続可能な社会の実現に貢献し、企業価値の向上に努めます。
(2)経営戦略
成長戦略1(基盤強化):再生医療製品の提供活動で培ったノウハウを強みとして、既存事業の売上利益を最大化し、黒字体質の基盤を確立する。
①再生医療製品事業
・ジェイスは重症熱傷治療の標準治療として浸透。広範囲な重症熱傷に加え、受傷面積の小さい症例でも使用実績を増やし、当社の事業基盤を支える。母斑・表皮水疱症向けは拠点施設及び患者団体との関係強化で確実に発生症例を獲得し、ゴールドスタンダード化を進める。
・ジャックはコロナ禍で苦戦したが、その影響の緩和を受け医療機関への営業活動を再開。7年間に渡る全例を対象とした使用成績調査を終え、再審査により有効性と安全性が改めて確認されるなど、良好な治療エビデンスを蓄積したオンリーワンの製品として訴求し、事業拡大を目指す。
・ネピック、オキュラルは株式会社ニデックとの連携により、拠点施設を中心に販売体制を構築している。眼科の主要学会にて製品の認知度向上や治療成績の情報発信を行うなど、一層の普及に向けた施策を実施し、根治療法の存在しなかった角膜上皮疾患に対する治療を提供する。
②再生医療受託事業
・顧客である企業やアカデミアはコロナ禍で中止していた開発を再開。優良な案件に注力して安定的に収益を獲得する。親会社である帝人と連携し新たなCDMO事業を構想・実行する。
③研究開発支援事業
・ラボサイトシリーズは、コロナ禍でも安定して受注を獲得。更なる成長に向けて、市場の大きい皮膚感作性試験のOECDガイドライン化を進めつつ、欧州やアジア圏への海外展開も積極的に推進する。
成長戦略2(市場拡大):既存製品とは異なる対象患者の多い市場をターゲットとした新規自家製品の上市・適応拡大により、売上を大幅に拡大させる。
①再生医療製品事業
・皮膚領域では、白斑を対象としたメラノサイト含有自家培養表皮(販売名:ジャスミン)の製造販売承認を取得。ジェイスで培った販売ノウハウや医師との関係を最大活用し、早期の普及を狙う。
・膝領域では、ジャックの変形性膝関節症への適応拡大により、本来ジャックが狙っていた巨大市場に改めて挑戦する。先行してヘビーユーザーの医療機関と連携し、自由診療による同疾患の治療(メディカルツーリズム等)に着手し、承認後の迅速展開を図る。
・ネピックとオキュラルをラインナップすることで、片眼性と両眼性の両方の角膜上皮幹細胞疲弊症患者に根治療法を提供し、眼科領域における再生医療のスタンダードとなる。これまで根治療法がないため治療を諦め埋没した患者に訴求し、潜在市場を開拓する。
②再生医療受託事業
・帝人と連携した新たなCDMO事業により、顧客(国内・海外)を拡大する。
・従来のCDMO事業に加え、海外での承認品目の国内製造受託(CMO)を積極的に獲得する。
③研究開発支援事業
・帝人の海外ネットワークを活用し、海外展開を加速する。
・薬機法の制約がない製品であるため、製法改良等のコストダウンで利益率向上を図る。
成長戦略3(領域展開):同種製品やがん免疫治療等の新たな製品・領域への展開を実現し、中期目標:売上高50億円、営業利益率10%超を達成する。
①再生医療製品事業
・皮膚領域では、当社初となる同種細胞を用いた培養表皮を上市する。Ⅱ度熱傷の新たな治療方法として、ジェイスで開拓した販路や医療機関とのネットワークを生かし普及させる。
・膝領域では、ジャックで実施してきた営業施策と適応拡大に加え、施設基準緩和に取り組み、これらの相乗効果で売上を飛躍させ、膝領域の再生医療として確たる地位を築く。
・新たな領域として、名古屋大学と開発中の自家CAR-T細胞製剤を上市する。低コストで供給できる強みを生かし、他社との差別化を図る。
・細胞培養に関する実績・ノウハウと、帝人の有するエンジニアリングでシナジーを発揮し自家製品の製造自動化や同種製品の大量生産に向けた生産革新を実現し大幅なコスト低減を図る。
②再生医療受託事業
・CDMO事業の拡大に伴い、帝人グループとして新規生産拠点を立ち上げ、製造受託のキャパシティを増大させる。
・皮膚、整形外科等の領域戦略に加え、培養法の相同性など、当社事業との親和性を活用する。
③研究開発支援事業
・ラボサイトシリーズでは、感作性試験OECDガイドライン化の実現と、帝人との連携による海外展開のシナジーにより、事業規模を飛躍的に成長させる。
(3)経営環境
2012年に京都大学iPS細胞研究所 所長 山中伸弥教授がノーベル生理学・医学賞を受賞したことを契機に、わが国は再生医療を成長戦略の一つとして位置付けました。再生医療への期待が急速に高まる中で、再生医療の普及を迅速に進めるための法整備が進められ、2014年11月に薬事法は医薬品医療機器等法として改正され、新たに再生医療等製品が定義されると同時に、再生医療等製品に条件・期限付承認制度が導入されました。また、再生医療を安全かつ迅速に実施するための再生医療等安全性確保法が施行されました。
このような状況の下、同種細胞を用いた再生医療製品の開発や、国内外技術導入による製薬企業の参入、iPS細胞による再生医療が臨床応用ステージに入る等の動きが加速しており、承認を取得した再生医療等製品も増えてきております。その一方で、国民医療費は、高齢化の進展、疾病構造の変化、医療の高度化、高額な製品の登場などによって年々増大しており、医療保険制度の持続可能性の確保が喫緊の課題となっております。
(4)優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題
当社は、再生医療の産業化を推進するために、会社が対処すべき課題を以下のとおり認識し、その解決に向けた取り組みを展開しております。
①再生医療製品事業
(a) 自家培養表皮ジェイス
自家培養表皮ジェイスは、重症熱傷、先天性巨大色素性母斑及び表皮水疱症の治療のための再生医療等製品です。先天性巨大色素性母斑及び表皮水疱症への使用については、現在、使用成績調査が課せられています。調査には人員や費用の負担がありますが、当社は調査で得られた情報を適切に医療機関に提供することで、有効性及び安全性の確保・向上に努め、医療機関や医師、患者さんの信頼を獲得していきます。
また、保険収載における留意事項において、重症熱傷では40枚(医学的に必要がある場合に限り50枚)、先天性巨大色素性母斑では30枚、表皮水疱症では50枚が保険算定できる最大使用枚数として制限されています。当社は、引き続き使用実績を踏まえて更なる算定限度の緩和を追求し、ジェイス治療の質向上を目指します。
(b) 自家培養軟骨ジャック
自家培養軟骨ジャックは、外傷性軟骨欠損症又は離断性骨軟骨炎(変形性膝関節症を除く)の治療のための再生医療等製品です。当社は、本品移植時の患者さんや医師の負担を少しでも軽減させるため、患者さん自身の骨膜に代えて人工のコラーゲン膜を使用するなど、低侵襲化や移植手技の簡便化を行ってまいりました。今後もこれら活動を通じて、製品価値の向上に取り組んでまいります。
また当社は、2018年7月から変形性膝関節症を対象とする適応拡大のための治験を実施し、2024年2月に治験終了届を独立行政法人医薬品医療機器総合機構(PMDA)に提出しました。本試験においては、統計的に有意な臨床症状の改善が示されたことに加え、変形性膝関節症による軟骨欠損部において硝子軟骨様組織による修復が確認されました。これらのデータをまとめて、2024年6月に一部変更承認申請書をPMDAに提出しました。今後もジャックのさらなる市場拡大に努めます。
(c) 自家培養角膜上皮ネピック・自家培養口腔粘膜上皮オキュラル
自家培養角膜上皮ネピックは、2020年6月に保険収載された眼科領域で国内初となる再生医療等製品であり、角膜上皮幹細胞疲弊症(スティーヴンス・ジョンソン症候群・眼類天疱瘡・移植片対宿主病・無虹彩症等の先天的に角膜上皮幹細胞に形成異常を来す疾患・再発翼状片・特発性の角膜上皮幹細胞疲弊症の患者さんを除く)を適応対象としています。
自家培養口腔粘膜上皮オキュラルは、2021年12月に保険収載された眼科領域の再生医療等製品であり、角膜上皮幹細胞疲弊症(原因を問わず)を適応対象としています。本品は、角膜上皮細胞を用いるネピックとは異なり、口腔粘膜上皮細胞を用いて角膜上皮幹細胞疲弊症を治療する世界初の再生医療等製品です。
当社は、眼科領域で2つの再生医療等製品を有することを強みとして株式会社ニデックと連携し、営業活動を実施します。さらに、両製品を通じて、根治療法の存在しなかった角膜上皮疾患に対する新たな治療の選択肢を提供することにより、眼科領域における再生医療の普及を加速させます。
②再生医療受託事業
当社は、自社製品の開発・製造・販売を通じて蓄積したノウハウ等を活用し、再生医療等製品の受託開発及びコンサルティング、特定細胞加工物製造受託を行っています。受託案件は多種多様で、それぞれが異なる開発ステージに属するだけでなく、委託元のニーズも異なります。各々の課題を的確にとらえ、委託元と密に連携して着実に業務を進めています。当社は、既存案件及びさらなる良質な新規案件を獲得することで安定的に収益を獲得するとともに、帝人との協業により本事業の拡大を目指します。
③研究開発支援事業
研究用ヒト培養組織ラボサイトシリーズは、表皮細胞のエピ・モデルと角膜上皮細胞の角膜モデルをラインナップしており、動物実験を代替する試薬として使用されています。
本シリーズでは、これまでに使用方法の国際標準化に向けた対応を進めてきた結果、エピ・モデル24を用いた皮膚刺激性試験法及び皮膚腐食性試験法、ならびに角膜モデル24を用いた眼刺激性試験法がOECDテストガイドラインに収載されています。当社は、ラボサイトシリーズが信頼性の高い動物実験代替材料として活用できることを訴求し、一層の売上増加を目指します。さらなる成長に向けて、市場の大きい皮膚感作性試験法のOECDガイドライン化を進めつつ、海外展開も積極的に推進します。
④新規再生医療等製品の開発
当社は、既存の皮膚・軟骨・角膜領域に加え、新たな領域への展開を目指し、新製品の開発を進めています。新領域への挑戦は様々な課題が予測されますが、これまでの再生医療等製品の開発・適応拡大で培ってきた経験・ノウハウを生かしてこれらを解決していきます。また、帝人の医薬品・医療機器事業との連携による新技術の開発・事業拡大を目指します。
⑤生産技術の開発
当社の取り扱う自家の再生医療等製品や開発受託サービスは生産の計画性や汎用性が低く、受注等のタイミングに応じて繁閑が大きくなります。顧客に高品質な製品を安定して供給するために、このような変動の多い作業を効率化・平準化するよう生産体制の改善を進めてきました。今後の製品ラインナップの追加は売上増加に大きく寄与しますが、一方で繁閑拡大や量産化対応等の課題が予測されます。当社は、これまで着手してきた独自の生産体制のさらなる革新を目指し、生産プロセス効率化・最適化、生産設備拡大を図ります。
⑥販売力の強化
販売体制については、製品ラインナップの追加により新たな領域・分野での営業戦略・営業手法を確立する必要があります。当社は、これまで培ってきた営業ノウハウや顧客との信頼関係をもとに、適切な医療情報の収集・提供の仕組みを再整備し、当社の製品がより適切に使用されるよう万全を尽くすとともに、販売力の強化を図ります。
⑦働きがいのある企業風土の醸成
当社は、再生医療の産業化という新しい領域への挑戦を日々続けており、今後も想定を超えた課題に直面する可能性があります。これに際し、自ら考え行動して解決策を見出せる人材の獲得と育成がきわめて重要であり、社員のチャレンジ精神を阻害しない制度や企業風土を醸成すべく取り組んでいます。また、今日では働き方の多様化も求められており、公平かつ一層働きがいのある職場環境をつくりあげていきます。
⑧海外展開
当社は、さらなる事業の発展のために、帝人の海外ネットワークを活用して、海外展開に向けた取り組みを行っています。再生医療製品事業では、開発を進めている他家(同種)培養表皮において、海外展開による市場拡大を目指します。他家(同種)細胞を用いた製品であることや乾燥品であることの特長を生かし、国内だけでなく海外市場への展開も加速させていきます。研究開発支援事業では、研究用ヒト培養組織ラボサイトシリーズにおいて、皮膚感作性試験のOECDガイドライン化を実現するとともに海外展開を加速し、事業規模の飛躍的成長を推進していきます。
(5)経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等
当社の経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標は、売上高、対前期成長率、営業利益、営業利益率、経常利益、純利益となります。
当社は、2024年5月9日付の「事業計画及び成長可能性に関する事項」において、2024年3月期の黒字化を中期経営計画通り達成し、2026年3月期に売上高50億円、営業利益率10%超を達成することを目指しています。
※当社が展開する3事業(再生医療製品事業・再生医療受託事業・研究開発支援事業)の売上の相似拡大(うち再生医療製品事業は、主に今後上市予定の新製品による売上伸長)を主要因として売上目標を設定しています。
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