ジャパンエレベーターサービスホールディングス 【東証プライム:6544】「サービス業」 へ投稿
企業概要
当社グループにおいて、研究開発活動は当社のみが行っております。
当社は、社会のエレベーター設置台数・依存度の増加に対応するため、各種最新要素技術をいち早く取り入れ、エレベーターメンテナンス品質の向上を図るための研究開発活動を行っております。
当連結会計年度の研究開発は、PRIMEサーバー・コンソールの機能向上及び高機能化、設備コスト・人員コストの削減を目的とした遠隔監視端末の高機能化並びに、リニューアルコストの削減と工事期間の短縮を狙ったQuick Renewal製品の開発をテーマとして取り組みました。
この結果、当連結会計年度の研究開発活動に要した費用は420,110千円(資産計上分含む)となり、遠隔端末の対応可能エレベーターの拡張、当社独自のメンテナンスコンソール開発による故障対応可能機種の拡張について成果を上げました。また、販売を開始している「Quick Renewal」については、運用を開始した現場からのフィードバックを吸収しながら、さらに継続して「Quick Renewal」の対応機種拡張のための開発作業に邁進してまいります。
なお、当社グループはメンテナンス事業の単一セグメントであるため、セグメントごとの記載を省略しております。
当社グループでは、技術本部において研究開発を継続的に実施しておりますが、その基本方針は以下のとおりです。
(1)リモート遠隔点検サービス「PRIME」に係る研究開発
「PRIME」は、当社が独自に開発したリモート遠隔点検システム及びそれを利用し提供するサービスの総称であります。
エレベーター遠隔監視システムは、エレベーターに接続し動作状況を監視する遠隔監視端末と、そこから報告・警告を受ける監視サーバー、及びその報告・警告を監視員が確認するための監視コンソールで構成されています。
(1-a)遠隔監視端末
遠隔監視端末は、様々なメーカー製のエレベーターを遠隔監視システムに対応させるため、動作状況の監視技術の研究開発を行っております。主に有線通信技術の検討になりますが、ハードウェア・ソフトウェアプロトコル、技術範囲を限定せず広範囲に検討・調査を進めております。
動作状況の収集手段としては、エレベーター制御盤からの取得のほか、加速度センサー、温度センサーなどの各種センサーを利用した取得など、動作状況監視方法多様化のための研究を継続しております。
遠隔監視端末から各種情報を伝達させるための通信インフラは、昨今の無線通信網の主流であるLTE(4G)通信を採用し、社外からの妨害や、コンピューターウィルスの侵入について耐性の高い、当社専用の閉域網を敷設することでネットワーク通信のセキュリティを担保しております。また、M2M/IoT通信端末として、さらに広範囲かつ安定した無線通信の検討を進めております。
(注)M2M/IoT通信:携帯電話通信を機器・装置間通信に適用することにより、広範囲での情報収集やサービス向上を実現する技術
(1-b)監視サーバー
監視サーバーは、遠隔監視端末からの情報を一時的に保存し、接続されている監視コンソールへ通知するための装置です。相当数のノードからの情報通信が集中するため、地震・台風のような災害時などの発報集中時や今後実装される遠隔端末の各種センサーの情報収集にも十分に耐え、かつ当社各所での監視作業のための多地点監視コンソール接続を可能にする必要があります。
これらの設備における事業継続対策として、災害対策が施されたデータセンターについて関東及び関西で稼働し、通信回線については複数の通信事業者の閉域網の敷設が完了いたしました。また、自社運用中の各種サーバーシステムとパブリッククラウド(クラウドサービス)を並行利用するインフラ・基盤の構築が完了いたしました。これにより、エレベーター管理台数の増加に伴うサーバーリソース調整の容易性、災害及び障害時の安全性・事業継続性の向上が期待できます。併せて、各種センサーやエレベーターの稼働状況などの情報をより迅速かつ正確に収集するためのデータ分析基盤を整備しています。これにより、AIによる予測や最適化を実現し、より高品質なサービス開発の検討を進めるとともに、これまでに蓄積された経験・知見を生かした生成AIの活用を検討いたします。
(1-c)監視コンソール
監視コンソールは、遠隔監視端末にて検出したエレベーターの異変をモニター上に表示し、エレベーターの動作状況の確認、エレベーターの遠隔操作を可能にするためのパソコンプログラムです。災害時のような大量のエレベーター異常検出状況下においても安定稼働させる仕組みを研究・開発し、コントロールセンターへ展開、稼働しております。また、機能向上及び情報処理の高速化、監視作業の高効率化のための施策、開発を継続しており、遠隔監視端末より送られる各種センサーデータの一部可視化を行い、スマートフォン端末やタブレット端末でも一部の監視・エレベーターメンテナンス作業ができるようにプログラム開発を実施しております。さらに、海外拠点での監視業務に対応するため、多言語化対応の検討を開始いたしました。
(2)自社製エレベーター制御盤に係る研究開発
現在、国内外の協力会社より制御盤を含めた各種部品を購入し、設置するエレベーターごとにカスタマイズした上でリニューアル業務を行っておりますが、今後は、当社で開発した制御盤の採用と併せ、Quick Renewal製品を組み合わせることにより、顧客のさまざまなニーズ(フルリノベーション、低コストリニューアル、超短工期リニューアル)に対応した提案を推し進めていくとともに、当社のエレベーター遠隔監視システムと密接に連携することによるメンテナンスコストの削減を図ります。さらに、海外のメーカーとの技術提携により、より低価格で高性能なエレベーター制御盤の開発を推し進めることで、リニューアル事業のさらなる低コスト化及び海外市場を見据えた製品開発を図ってまいります。
また、基本モデルの開発が完了した油圧式制御盤において、運用の幅を広げる為の追加開発を実施いたしました。この結果、群管理運転機能、不停止運転機能、警備会社・ビル管理室とエレベーター情報を共有する監視盤等の機能・装置が追加され、従来では対応できなかったリニューアル場面において、対応できるようになりました。
さらに、これまで社外製品でしか対応できなかった小荷物制御リニューアルにおいて、完全自社設計による小荷物リニューアル製品の開発が完了し、販売・運用が可能となりました。従来、小荷物については、部品の納期や品質のバラつきに課題があったものの、入手性の高い汎用部品を活用した設計で安定量産が可能となり、納期や品質についてのコントロールが容易になりました。また、将来的に特殊な顧客ニーズにも対応できるよう、拡張性をもたせた設計により、従来は対応できなかった場面での運用も想定しております。
引き続き、幅広い顧客ニーズに対応できるよう取り組んでまいります。
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