シスメックス 【東証プライム:6869】「電気機器」 へ投稿
企業概要
当社グループはヘマトロジーをはじめとした既存領域の成長を目指し、ダイアグノスティクス事業における技術拡充を図っております。
また、個別化医療・検査の精緻化を実現するための、臨床価値の高い診断技術、リキッドバイオプシー技術の社会実装を目指して、新たな技術開発に取り組んでおります。
新規領域への挑戦として、検査・診断の価値を検査の場及びその対象を拡大することで高めると共に、個別化予防・予後モニタリングを実現するための技術開発にも取り組んでいきます。また、メディカルロボット事業や再生細胞医療などの治療領域に対しても、シスメックスの強みを活かしていきます。
当連結会計年度における、主な研究開発活動の状況は以下のとおりであります。
(1) 2023年5月 当社は、日本国内において、「フローサイトメーター XF-1600」、「検体前処理装置 PS-10」を合わせたクリニカルフローサイトメトリー※1システム、及び抗体試薬等の関連製品を発売いたしました。
※1 フローサイトメトリー(FCM):
微細な粒子を流体中に分散させ、その流体を細く流して、個々の粒子を光学的に分析する手法のこと。主に細胞を個々に観察する際に用いられる。
(2) 2023年6月 当社は、血液からアルツハイマー病の原因となる脳内アミロイドβ(Aβ)の蓄積状態を調べる検査試薬「HISCL™ β-アミロイド 1-42 試薬」及び「HISCL β-アミロイド 1-40 試薬」を日本で発売いたしました。
(3) 2023年6月 当社は、尿路感染症※2が疑われる患者さんの尿検体を用いて、測定開始後最短約30分で細菌の有無及び抗菌薬の有効性を判定する迅速薬剤感受性検査システムを欧州で発売いたしました。
※2 尿路感染症:
尿路(腎臓から尿の出口まで)に細菌が進入し炎症が生じたものを尿路感染症という。膀胱では膀胱炎、腎臓では腎盂腎炎を引き起こす。日常診療において最も頻度が高いとされる細菌感染症の一つで、女性の約6割が生涯に一度は感染するとされている。
(4) 2023年7月 当社と川崎重工業株式会社が共同出資する株式会社メディカロイドは、手術支援ロボット「hinotori™サージカルロボットシステム」において、手術操作と鉗子動作の接続を遮断するクラッチ操作を、足元のフットペダルに加え、手元でも操作できる「ハンドクラッチ機能」を搭載したバージョンアップモデルの販売を開始いたしました。
(5) 2023年8月 当社は、血液中のAβを測定する試薬を米国におけるLDT※3向け試薬として大手検査センターに供給を開始いたしました。本LDTは、アルツハイマー病の原因とされる脳内のAβの蓄積状態の把握を補助する検査であります。
※3 LDT:
Laboratory Developed Test(自家調製検査)の略。医療機関や検査センター等の臨床検査室内において、独自の品質管理規程に基づき行われる検査。
(6) 2023年8月 当社は、遺伝性網膜ジストロフィ(Inherited Retinal Dystrophy: IRD)※4の患者さん又はIRDと疑われる患者さんの血液から包括的なゲノムプロファイル※5を取得することで、IRDの原因遺伝子の同定に有用な情報を提供する「PrismGuide™ IRDパネル システム」(2023年5月に国内での製造販売承認取得)が、IRDの遺伝子パネル検査※6システムとして国内で初めて保険適用を受けました。
※4 遺伝性網膜ジストロフィ(Inherited Retinal Dystrophy: IRD):
遺伝子変異が原因と考えられる遺伝性進行性の疾患。類似の症状を示すいくつかの疾患を総じて遺伝性網膜ジストロフィと呼ぶ。夜盲(暗いところでものが見えにくくなる)や視野狭窄(視野が狭くなる)、視力低下が主な症状であり、進行すると場合によっては失明に至ることもある。代表的な疾患は網膜色素変性症(指定難病:告示番号90)であり、頻度は4,000~8,000人に一人とされている。
※5 包括的なゲノムプロファイル:
疾患の診療上重要な、検体中の複数の遺伝子の変異を同時に解析して得られる情報。
※6 遺伝子パネル検査:
関連する複数の遺伝子の変異状況を一度に調べる検査法。
(7) 2023年9月 当社は「OncoGuide™ NCCオンコパネルシステム」が、大鵬薬品工業株式会社が開発した「がん化学療法後に増悪したFGFR2融合遺伝子※7陽性の治癒切除不能な胆道がん」への治療薬フチバチニブ※8の胆道がん※9患者さんへの適応を調べるコンパニオン診断として、日本における保険適用を受け、子会社である株式会社理研ジェネシスでの保険適用に対応したアッセイサービスを開始いたしました。
※7 FGFR2融合遺伝子:
FGFR(fibroblast growth factor receptor)はFGFR1-4の4種類が同定されており、細胞の成長や増殖に関わる線維芽細胞増殖因子受容体と呼ばれるタンパク質である。FGFR遺伝子異常には、融合、変異、増幅等があり、これら遺伝子異常により機能が活性化されると、がん細胞の増殖、生存、遊走、腫瘍血管新生、薬剤耐性等に結び付くと考えられている。日本において胆道がんの一種である切除不能な胆管がんの患者さんを対象とした研究では、FGFR2遺伝子再構成の陽性率は、肝内胆管がんで7.4%、肝外胆管がん(肝門部領域胆管がん)で3.6%との報告がある。
※8 フチバチニブ:
大鵬薬品工業株式会社が創製した新規経口抗がん剤で、遺伝子異常を持つ線維芽細胞増殖因子受容体(FGFR)と呼ばれるタンパク質の働きを阻害することにより、がん細胞の増殖を抑制する。2022年9月には、米国において「前治療歴を有するFGFR2融合遺伝子又はその他の再構成を伴う切除不能な局所進行又は転移性肝内胆管がん」の適応での迅速承認、2023年7月には、欧州において「全身療法後に進行したFGFR2融合又は再構成を伴う局所進行又は転移性の胆管がん」の適応で条件付き販売承認を取得している。
※9 胆道がん:
胆道に発生するがんの総称で、発生部位により、胆管がん(肝臓内の胆管に発生する肝内胆管がんを含む)、胆のうがん、乳頭部がんに分類される。
(8) 2023年10月 当社と富士レビオ・ホールディングス株式会社(以下、富士レビオHD)は、免疫検査領域における研究・開発、生産、臨床開発、販売等多面的な協業の強化に合意し、業務提携基本契約を締結いたしました。11月には本契約に基づき、富士レビオHDの子会社が行っている当社の全自動免疫測定装置 HISCLシリーズを対象とした検査試薬の開発に、神経変性疾患関連領域の項目を追加する旨のCDMO(Contract Development and Manufacturing Organization:受託開発製造)契約を締結いたしました。また、12月には両社が保有する試薬原料供給に関し基本合意いたしました。
(9) 2023年11月 当社と川崎重工業株式会社が共同出資する株式会社メディカロイドは、手術支援ロボット「hinotori サージカルロボットシステム」の呼吸器外科への適応について、独立行政法人医薬品医療機器総合機構(PMDA)に申請を行いました。
(10) 2023年12月 慢性肝炎・肝硬変の患者さんの診断・治療において、血液のみで肝臓の線維化の進行度を定量的に評価できる当社の検査用試薬「HISCL M2BPGiTM-Qt 試薬」について、国内の保険適用が開始されました。
(11) 2023年12月 当社は、再生細胞医療領域への取り組み加速に向けて、ヒトiPS細胞※10から血小板を産生させる基盤技術を有する株式会社メガカリオンの株式を追加取得し、連結子会社化いたしました。
※10 iPS細胞(人工多能性幹細胞:induced pluripotent stem cell):
ヒトの皮膚の細胞等にいくつかの因子を導入することによって作製された、様々な組織や臓器の細胞に分化する能力を持った幹細胞。山中伸弥教授率いる京都大学の研究グループによって発見された。この細胞を分化誘導することにより、理論上は体を構成する全ての組織や臓器に分化させることが可能と考えられており、再生医療の実現に向けて注目が集まっている。
(12) 2024年1月 当社はアルツハイマー病の原因とされる脳内Aβの蓄積状態を微量の血液から調べるAβ検査試薬を日本、米国に続き、欧州へ販売を拡大いたしました。
(13) 2024年2月 当社とCellaVision ABは次世代の血液像分析装置を含むポートフォリオの拡大により、ヘマトロジーソリューションの進化を目指すStrategic Alliance Agreementを締結いたしました。
(14) 2024年2月 当社と株式会社日立ハイテクは、キャピラリー電気泳動シーケンサー※11を基盤とした新たな遺伝子検査システムの共同開発に向けて合意いたしました。
※11 キャピラリー電気泳動シーケンサー:
DNAの塩基配列や塩基長を短時間かつ比較的安価に分析できる解析装置。個々のDNAの違いを分析する医療・健康分野や犯罪捜査のためのDNA鑑定等に幅広く利用されている。
(15) 2024年2月 当社は「HISCL TARC試薬」及び「HISCL ANP試薬」の製造販売承認を塩野義製薬株式会社から承継し、自社による製造を開始いたしました。
(16) 2024年3月 当社は婦人科・性腺ホルモンの免疫検査パネル6項目(「HISCL LH 試薬」、「HISCL FSH 試薬」、「HISCL プロラクチン 試薬」、「HISCL エストラジオール 試薬」、「HISCL プロゲステロン 試薬」、「HISCL テストステロン 試薬」)の国内販売を開始いたしました。
なお、当連結会計年度における研究開発費は31,402百万円であります。
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