企業サンクゼール東証グロース:2937】「食品業 twitterでつぶやくへ投稿

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企業概要

 文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において当社グループが判断したものであります。

(1) 経営方針

 当社グループは、「愛と喜びのある食卓をいつまでも」をコーポレートスローガンに掲げ、当社グループの商品を通じて、全世界に愛と喜びに満ちた食卓を増やすことを目指し、事業に取り組んでおります。

 当社グループは、グローバルな視野に立ち、以下を経営理念として定めております。

・企業目的

 私たちは、正しい経営活動により、顧客・株主・取引先・パートナー・及び地域社会に信頼される誠実な企業を目指します。

 私たちは、互いの違いを認め合う、豊かな成熟した大人の文化を創造し、居心地のよい楽しい社会の実現に貢献します。

 私たちは、世界中の人々に、おいしく健康で高品質な食をバリューを持って提案し、豊かな食卓と暮らしを楽しむ時間と、人と人が集いつながることのできる場を提供します。

・企業としてのあり方

 私たちは、企業目的を果たすために、健全な企業活動を行い、長期に社会貢献できるGood Companyを目指します。

 あらゆる人々に開かれたオープンな会社であり、経営理念を共有するパートナーたちによって運営される健全な会社を目指します。

 パートナー、カスタマー、カンパニーの三方共に満足のいく関係を構築することに注力します。

 私たちは、次世代に食文化を継承し、豊かな地球環境を手渡す努力を惜しみません。

 当社グループは上記の経営理念の下、食のSPA企業(製造・小売企業)として、当社グループを取り巻くステークホルダーの皆様のライフスタイルを豊かなものとすることを目指し、事業活動に取り組んでおりこれらの活動が居心地のよい楽しい社会の実現につながり、当社グループにおける株主価値及び企業価値向上につながると考えております。

(2) 経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標

 当社グループは、当社グループの製商品及びサービスに対するお客様の支持の大きさが将来の企業価値向上につながると考えております。お客様のご支持をいただけているかどうかについては、当社グループの製商品及びサービスの提供に必要な営業費用を上回って獲得することができる利益の額によって判断しております。そのため、当社グループでは、営業利益及び売上高営業利益率を重要指標としております。

(3) 経営戦略等

 当社グループの特徴は、当社グループをプラットフォームとして、多くのビジネスパートナーとともに商品開発、製造、販売を一気通貫で行う「食のSPA」を実現している点にあります。「食のSPA」を国内からグローバルへ拡大し、より一層の事業成長に取り組んでいく所存です。

 当社が中長期で目指す姿は以下のとおりです。

 国内事業

・ お客様のロイヤルティが高まり、ロイヤル顧客の数・売上構成比が向上している。

・ 国内の協力工場や商品生産者とデジタルサプライチェーンシステムで連携されており、生産状況の可視化と効率的な供給体制が実現されている。

・ 新業態「MeKEL(メケル)」が「サンクゼール」、「久世福商店」に続く国内事業における第3の柱として確 立されている。

 グローバル事業

・ 米国において、プレミアム日本食ブランドとして独自のポジションを確立し、十分に認知されている。

・ アジア地域(台湾、韓国、中国、その他)において、プレミアム日本食ブランドとして独自のポジションを確立し、十分に認知されている。

・ M&Aにより複数のブランドを傘下に持ち、ブランドポートフォリオが構築されている。

 上記で掲げた中長期で目指す姿を実現するために、2024年3月期において注力する成長戦略は以下のとおりです。

① 国内事業の成長戦略

a. 顧客ロイヤルティの向上

 当社のブランドが長期持続的に成長できるためには、それぞれのブランドのファンであるお客様の数を増やしていくことが最も重要な戦略であると考えております。当社ブランドの商品やサービスをご利用いただくお客様に当社ブランドのファンになっていただくために、以下に掲げる事項に注力いたします。

 イ.ブランドごとの顧客価値の提供

 当社の国内事業においては、これまで「店舗(直営・FC)」、「EC」、「ホールセール」の販売チャネルごとのお客様に対して、それぞれのお客様のニーズに合わせた商品やサービスを提供することに取り組んでまいりました。今後は、後述の「MeKEL(メケル)」の立ち上げとともに、「サンクゼール」、「久世福商店」及び「MeKEL(メケル)」と3つの国内ブランドが存在することになりますが、それぞれのブランドの商品特性やご家庭でのご利用シーンなどは異なっており、お客様のニーズもブランドごとに異なっております。そのため、これまでのチャネル別の視点から、ブランドごとのお客様に対して最適な商品・サービスを最適なチャネルでお届けできるように、ブランド視点で顧客価値の最大化に努めてまいります。

 ロ.Fan-Based Community Program(FBCプログラム)の充実化

 当社は、2022年より、当社の会員アプリに登録されているお客様から企画にご賛同いただいたお客様を対象とするコミュニティプログラム「Fan-Based Community Program(FBCプログラム)」によるマーケティングに取り組んでおります。当該プログラムは、プログラムにご参加いただいた会員の皆様に対するインタビューやアンケートを通じて、お客様の当社商品・サービスに対するご意見や潜在的なニーズを把握し、実際の商品・サービスの改善につなげていく取り組みです。会員の皆様から直接フィードバックをいただくことで、マーケット・インの視点で新商品や売場改善のご提案を行うことができるため、プログラム会員の皆様だけでなく、当社ブランドの全てのお客様のブランドロイヤルティ向上につながると考えております。2024年3月期において、FBCプログラム会員を2,500人規模に拡大し(前期は約500人)、さらに幅広いお客様からのお声を集めて、商品・サービスの改善に取り組んでまいります。

 ハ.その他の顧客ロイヤルティ向上施策

 その他の顧客ロイヤルティを向上するための施策として、「店舗接客力の向上」や「会員データの収集」に取り組んでまいります。当社の自社店舗は、お客様が当社ブランドを体験いただくことのできる場所です。そこで得た体験が、そのお客様にとっての当社ブランドに対する印象、その後のロイヤルティにつながるため、店長及びパートナー(注)の育成を図り、店舗ごとの接客力のバラつきを抑えることに努めてまいります。また、お客様の日々の購買行動を分析し、より良い商品・サービスのご提案につなげるためには、多くの会員データを収集し、分析を行うことが重要と考えております。会員データの分析を通してお客様が何を求めているかを把握し、お客様が価値を感じていただける商品・サービスの開発に取り組んでまいります。

(注) 当社は、従業員を「パートナー」と表現しております。

b. 商品付加価値の向上

 当社は、新たに「MeKEL(メケル)」が加わり、「サンクゼール」、「久世福商店」及び「MeKEL(メケル)」の3ブランドでの国内展開を進めてまいります。「サンクゼール」はジャム、パスタソース及びワインなどの洋食材を中心としたブランドであり、「久世福商店」は出汁(だし)やご飯のお供などの和食材を中心としたブランドです。新たに加わった「MeKEL(メケル」)は冷凍食品やアジア等の地域の食品を中心とするブランドであり、3つのブランドがそれぞれ異なるカテゴリーの食品を対象としております。全てのブランドの商品開発において共通するのは、お客様の声やニーズに基づき、お客様に価値を感じていただける商品を開発することです。今後は、新たな技術を取り入れたお客様にとって付加価値の高い商品を開発するために、当社グループ内に商品開発ラボを設置し、商品開発業務を強化いたします。商品開発ラボの機能で「食のSPA」をさらに強化し、お客様がワクワクする魅力的な商品を開発できるように取り組んでまいります。

c. 生産・供給能力の拡大

 付加価値の高い商品を開発し、お客様のロイヤルティを向上させていくことに伴う需要の高まりに対応できる供給力を確保することは、「食のSPA」を強化していく上で重要な要素の1つであります。現在、当社グループは、国内においては、長野県上水内郡飯綱町の自社工場と15社の協力工場を通して自社製品の製造を行っております。今後は、自社工場設備への投資による既存工場の生産能力の拡大、又は、食品工場の買収により、グループ全体の製造能力の拡大を図ってまいります。また、15社の協力工場に関しては、当社が開発した生産管理プラットフォームシステムを通じて、各商品の直近販売実績や在庫状況から素早く所要量を計算し、各協力工場の生産状況を踏まえた効率的な生産指示を行う体制づくりを進めております。自社工場の生産能力の向上と、デジタル化による生産性の向上により、高まる需要に対して十分な供給力を確保できるように取り組んでまいります。

d. 新業態店舗の拡大

「サンクゼール」、「久世福商店」に次ぐ新業態ブランドとして「MeKEL(メケル)」を立ち上げ、第1号店となる直営店を長野県長野市内に出店いたします。「MeKEL(メケル)」は、冷凍食品とアジア等の地域の食品を中心とする自社店舗を展開する小売事業であり、郊外型のアウトレットを中心に展開している「サンクゼール」及び地方のショッピングモールを中心に展開している「久世福商店」と異なり、地方都市のロードサイドを中心に店舗展開を行います。「MeKEL(メケル)」は、「サンクゼール」及び「久世福商店」と比べ低い価格帯で、より日常使いにフォーカスしたブランドであり、主なターゲットは、増加傾向にある共働き世帯やシニア世帯のお客様を想定しております。

 そのほか、主な特徴は以下のとおりです。

 イ.調理が簡便かつおいしい冷凍食品

 共働き世帯のお客様は、仕事と家庭を両立する中で、忙しくて料理をする時間がない、といったお悩みを抱えていらっしゃいます。「MeKEL(メケル)」は、冷凍商品を数多く取り揃えることで調理が簡便かつおいしい食品を提供し、お客様のお悩みにお応えいたします。

 ロ.アジア等の地域の海外食品

 近年、韓国、タイ、ベトナムといったアジア等の地域の料理に対するニーズが高まっております。しかし、地方に住むお客様は、都心に住むお客様と比べると地方にこれらの料理を提供するレストランや食料品店の数が少なく、これらの地域の本格的な料理を食べたいと思ったときにアクセスしにくい環境にあります。「MeKEL(メケル)」は、海外現地の協力者を通じた直輸入や、当社の強みである食のSPAのノウハウを活かしたオリジナルレシピでの商品開発を行うことで、お客様のニーズにお応えいたします。

 ハ.既存ブランドのサプライヤーネットワークを活かした商品調達

 当社は長野県に本社を構えておりますが、都心と比べ、地方には食の専門店が少なく、加工食品に関して選択肢が少ない傾向にあることを感じております。当社は、「サンクゼール」及び「久世福商店」等の既存ブランドを通して築いた各地500社を超えるサプライヤーネットワークを有しており、「MeKEL(メケル)」においても、このサプライヤーネットワークを活かし、魅力的な冷凍食品や加工食品の商品ラインナップを実現し、地方に住むお客様のニーズにお応えいたします。

 当社は「MeKEL(メケル)」を通して、お客様の日常の食におけるお悩みを解決すると共に、地方においても本格的な食を発見できる喜びや、ワクワク感のある楽しいお買い物体験の提供により「愛と喜びのある食卓」を実現してまいります。

② グローバル事業の成長戦略

a. 米国

 グローバル事業における主力市場である米国は、今後も高い成長性が期待できる市場であります。2017年の米国進出以降、食品スーパーマーケットを始めとする小売店への直接販売を基本方針に据えて、グローバル展開用ブランドである「Kuze Fuku & Sons」のブランド認知の拡大と小売店からのフィードバックに基づく商品開発・改良に取り組んでまいりました。今後は、これまでに獲得したブランド認知や小売店での販売実績による信用力を基に、米国で次のステージへ進むべく、以下の方針により販売網の拡大に取り組んでまいります。

 イ.ミドル~ハイエンドスーパーへの棚什器設置(Kuze Fuku Pro戦略)

 米国における当社グループのターゲット顧客は、ミドルからハイエンドの価格帯の食品スーパーマーケットです。これらの価格帯のスーパーマーケットに来店されるお客様は、価格よりも質の高い商品をお求めになる傾向があり、当社グループの商品とも相性が良く、当社ブランド商品の主要な顧客層となっております。当該店舗においては、食品カテゴリーごとの棚の中に他社商品に並んで単品商品を陳列するよりも、同一ブランドの複数の商品を統一した世界観の中で販売していくことで、よりブランド認知の向上につながります。そこで、当社グループは、「Kuze Fuku & Sons」オリジナルの棚什器、又は、当社ブランド陳列用の一定のスペースの棚とともに20~30SKUの商品を陳列することでブランド認知の向上と販売促進を図る施策、通称「Kuze Fuku Pro」という施策を展開しております(注)。現在ターゲットとするのは、米国北西部や北東部に数店舗から30店舗程度のチェーン店を展開するミドルからハイエンドスーパーであり、2023年4月末時点でKuze Fuku Pro戦略を展開する店舗数は43店舗となっております。

(注) 当社オリジナルの棚什器を導入せずに、顧客店舗で一定のスペースの棚を確保し、同様の展開を行う場合も含みます。

 ロ.ブローカーネットワークを利用した販売拡大

 当社グループは、前述のとおり、食品スーパーマーケットを始めとする小売店への直接販売を基本方針に据えて、グローバル展開用ブランドである「Kuze Fuku & Sons」のブランド認知の拡大と小売店からのフィードバックに基づく商品開発・改良に取り組んでまいりました。これまでに培った米国市場での「Kuze Fuku & Sons」ブランドに対する信用力を基に、今後は米国内での販路獲得を加速するべく、米国食品流通において小売店との仲介をする役割を担うブローカーを活用した販路開拓に取り組んでまいります。

 ハ. 業務用市場への参入

 米国のレストラン・カフェ市場は、コロナ禍で一時的に縮小したものの、依然として巨大な市場であり、かつ、今後の継続的な成長が見込まれる市場です。当該市場に対して、当社グループの高品質・高付加価値の商品を業務用商品として展開することで、業務用市場への参入が可能になると考えております。業務用市場向けの第1号商品として「ゆずカクテルシロップ(Yuzu Cocktail Syrup)」を開発し、レストラン・カフェに販売しております。今後も新たな業務用商品を開発し、業務用市場での成長を図ってまいります。

 ニ. M&A実行によるブランドポートフォリオ強化

 米国の各地域に存在する加工食品ブランド企業を買収し、米国におけるブランドポートフォリオの構築を進めてまいります。当社グループは、これまで米国において「Kuze Fuku & Sons」の自社ブランド商品を展開しており、プレミアム日本食ブランドの市場を主力としていましたが、それに加えて、既存ブランドの買収によって米国食品のメインカテゴリーに参入することが可能となります。買収によって各ブランドが持つ既存販路及び新規顧客の獲得に加え、当社グループの既存販路と組み合わせたクロスセリングを実現することができ、また、各ブランドの商品群を当社グループの米国工場で製造することにより、製造ボリュームの拡大によるコストダウンを図ることができる等、米国に商品開発機能、製造工場、販売拠点を持つ当社の強みを活かしたシナジーを得ることができると考えております。

b. アジア、その他

 米国以外にも、台湾を含むアジア地域は足元で大きく成長しており、今後も高い事業成長が期待できる地域です。それ以外の地域では、2023年3月期に新たにオーストラリアの顧客への販売が開始されており、今後はカナダの顧客との取引の開始も予定しております。これら北米、アジア、オセアニア地域をグローバル展開で注力するエリアに位置づけ、それぞれの地域において高い成長性を維持できるように取り組んでまいります。

③ ESGポリシー

 当社グループは、企業の成長と社会の持続性を同時に実現するためにサステナブル経営の推進に取り組んでおります。そのために、当社グループはサステナビリティに関する7つの重点項目を設定し、それぞれの項目に従い、社会や地球環境の持続可能性につながる活動を行っております。

2024年3月期においては、特に以下の分野に注力いたします。

a. 気候変動対策

 当社グループの事業活動に係る温暖化ガスの排出量の削減に取り組んでまいります。2030年までにScope1+2の50%削減を達成することを目標に掲げており、Scope3に関しても、高い精度で測定できる体制を早期に構築し、ホットスポットの特定と削減に向けたアクションの策定に取り組んでまいります。

b. 人的資本

 企業を構成する資本の中でも最も重要な人的資本に対する投資を拡充いたします。賃金向上による平均年収の向上に加え、当社では従業員の7割強を占める女性従業員が活躍できる環境を整備してまいります。なお、2030年までに女性管理職比率を30%とすることを目標に掲げております。

c. 森林保護

 当社信濃町センター(長野県上水内郡信濃町)のオフィスは森林に四方を囲まれた自然豊かなオフィスです。これらの森林は、人間の手が入らないと荒廃していってしまいます。森林の荒廃を防ぎ、また、森林と地域住民との共生を図るために、信濃町センターの森(通称「サンクゼールの森」)を保護及び活用するためのプロジェクトを開始いたしました。当該プロジェクトを通じて、豊かな自然との共生を実現できるように取り組んでまいります。

d. 食品ロス対策

 全世界で食品ロス及び廃棄からの温室効果ガス(GHG)排出量は、人為起源総排出量の8-10%に及ぶといわれます(出所:IPCC「土地関係特別報告書」の概要, 2020年, 環境省)。日本国内における食品ロス量は年々減ってきているものの522万トン発生しており、そのうち食品関連事業者から発生する事業系食品ロス量は275万トンになります(出所:日本の食品ロスの状況(令和2年度), 2022年, 農林水産省)。当社グループは、食品関連事業者として食品ロスに関する現状を改善するために、当社グループの事業から発生する食品ロスの削減に取り組んでおり、2030年までに2021年比で50%削減することを目標に掲げております。

e. 格差のない平等な社会の実現

 当社グループは、格差のない平等な社会の実現に向けた活動として、当社グループの事業活動で得られた資金の一部を、NPO法人「ムワンガザ・ファンデーション」を通じてタンザニアのNGO・SWACCO(ソンゲア女性と子どもの支援団体)へ寄付する活動を継続して行っております。SWACCOが運営する施設では現在、病気で両親を失った孤児、シングルマザーの母子ら約60名が生活しています。当施設の運営に必要な資金を確保し、タンザニアの子どもたちが未来に向かって歩みを続けられるよう、今後も支援活動に取り組んでまいります。

(4) 経営環境

 食品製造及び食品小売業界においては、資源価格や原料価格の高騰及び急激な円安等の影響により食品メーカーである企業の費用負担が増しており、当該影響を緩和するため、食料品の小売価格は値上がりを続け、その傾向は留まる気配がありません。当社グループの主力市場である日本及び米国においても、食料品価格の高騰が続いており、各国で低価格路線のスーパーマーケットの業績が好調に推移するなど、お客様の中には食料品への支出を抑制するような動きも見られております。しかし、そのような環境にあるからこそ、お客様はそれぞれの商品に対する価値を厳しく評価をされており、価格相応の価値が無いと評価とされた商品は当然にお客様の支持を失いますが、一方、価格に見合う価値があると評価をいただけた商品に関しては、たとえ高価であってもお客様の支持を得られていると考えております。例を挙げると、現在、コンビニエンスストアやスーパーマーケットで売場面積を拡大している冷凍食品は、現代の時短ニーズに対して高い付加価値を提供している商品といえます。また、食を通じた健康に対する意欲の高いお客様には、添加物を抑制した商品などがお客様のニーズに対して価値のある商品になると考えられます。このように、個々のお客様が持つニーズを正確に把握し、それぞれのニーズを満たす価値のある商品を適切な価格で提供していくことが、これまで以上に重要になっていると考えております。

 また、2020年以降の新型コロナウイルス感染症の感染拡大により、お客様の購買行動やニーズは大きく変化し、リアル店舗からECへの移行が急速に進み、EC化が遅れていた食品に関しても、日常的にECで購入されるようになっております。食品のEC化率は、今後もさらに上昇していくと考えられますが、一方で、新型コロナウイルス感染症の感染状況が落ち着き、経済活動の正常化に伴い、ECからリアル店舗へ戻るお客様の流れも一定数出てくることが予想されます。今後は、リアル店舗とECの各チャネルが持つ強みを活かし、相乗効果を持つ形でお客様へ提供する価値を向上させていくことが重要になると考えております。

 お客様の食に対するニーズは多様化しており、よりおいしく、より高品質な、お客様にとっての付加価値が高い食品を求めるようになっております。コロナ禍において、親戚や友人と対面する機会が大幅に制限されたことで、直接会うことができない代わりにギフトを贈る習慣も一般的なものとなり、自分が食べて「おいしい」と感じたものを大切な親戚や友人にも共有するような、日常の楽しみからギフトへ、という食品に関する新たな流れもできていると考えております。

 このように、食品に関するトレンドは大きく変化しており、この変化を機会と捉えて、当社グループの事業の特徴である食のSPAをより一層高度化し、お客様のニーズに適した商品を素早く開発、提供していくことに努めてまいります。

(5) 優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題

 当社グループの対処すべき主な課題は以下のとおりです。

① ブランド力の向上

 当社グループの更なる事業拡大と中長期的な成長を実現するためには、ブランド力を向上し続けることが必要不可欠と考えております。当社グループは製商品及び店舗ブランドの「サンクゼール」及び「久世福商店」、海外展開ブランドの「Kuze Fuku & Sons」、ECプラットフォームサービスの「旅する久世福e商店」、さらに今後立ち上げ予定の「MeKEL(メケル)」という複数のブランドを有しております。各ブランドの強みを活かし、ブランドごとに異なるお客様に最大限の価値を提供できるように、グループ全体でさらなるブランド力の向上に取り組んでまいります。

② 成長を支える人材の確保

 当社グループは、製商品開発、製造、調達、販売の全ての機能を一気通貫で手掛ける食のSPAモデルを展開しております。この食のSPAモデルを支えるためには、多様な人材が密に連携し合う組織体制を構築する必要があります。また、当社グループは、過去から新規ブランド、新規事業の立ち上げを通じて、不連続な成長を実現してまいりました。外部環境が変化するスピードが速く、将来の不確実性が高い現在においては、環境変化に対応し不連続な成長の実現を支える人材を確保することが必要です。当社グループの成長を支える多様な人材を確保し、それぞれの人材が働きがいを感じて能力を最大限発揮できるよう、人材採用や教育の強化、オフィス環境の整備や人事制度の改定等、健康経営の促進に積極的に取り組んでまいります。

③ マーケティングの強化

 当社グループは前述のとおり、「サンクゼール」、「久世福商店」、「Kuze Fuku & Sons」及び「旅する久世福e商店」というブランドを有しており、今後さらに「MeKEL(メケル)」ブランドの立ち上げを計画しております。各ブランドのお客様は、それぞれ異なる特徴を有しており、そのニーズも多岐にわたることから、ブランドごとに最適なマーケティング施策を実行していくことが必要になります。当該課題に対処するために、当社グループはブランドごとにビジネスユニット作り、それぞれのビジネスユニットにおいてマーケティング機能を持つ組織体制を採用しております。各ブランドのお客様に対する提供価値を最大化させるため、全てのビジネスユニットで継続的にマーケティング機能を強化してまいります。

④ 商品開発力の向上

 ブランドや商品価値の陳腐化を防ぎ、常にお客様の支持をいただける独自性の高い製商品を開発し続けるために、製商品開発力の更なる向上が必要であると考えております。そのために、製商品開発部門の体制強化や人材育成、新製商品の研究開発を目的とした商品開発ラボの設置を進めるとともに、地方の食品メーカーとの友好な関係を構築してまいります。

⑤ 新規出店のための優良物件の確保

 当社グループの事業拡大のためには、毎年一定数を新規出店することが必要であると考えております。新規出店する店舗の収益性を高められるように、競争力の高い優良物件を確保していくことができるよう、努めてまいります。

⑥ 新規事業開発やM&Aに関わる人材やノウハウの充実化

 既存事業の成長だけでなく、継続的に不連続な成長を実現させていくためには、新規事業開発やM&Aが重要な戦略ととらえております。新規事業やM&Aの可能性を見つけるための探索とその後の実行の各フェーズを支える人材やノウハウの充実化に取り組んでまいります。

⑦ 生産性の向上とDX(注)

 当社グループが持つ多種多様な顧客に提供する価値を最大化しながら、従業員一人一人の事務処理負担を軽減するためには、グループ全体で継続的に生産性を向上させていく必要があります。また、DXを推進するためのテクノロジーは日々進化しており、食のSPAにおけるお客様価値の最大化に資すると考えられるテクノロジーに関しては、適時、取り入れていくことが必要です。これまで食のSPAを支えるITインフラを整備してきた知見を活かして、グループ全体でDXを含む業務の見直しを継続的に実行し、人とITシステムを最適な形で配置し、生産性を最大限向上することに取り組んでまいります。

(注) DXはDigital Transformation(デジタルトランスフォーメーション)の略称であり、企業がビジネス環境の激しい変化に対応して、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズをもとに、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立することであります。

⑧ グローバルサプライチェーンの進展

 昨今の資源価格の上昇や物流コストの上昇は、当社グループの成長を阻害する要因であり、対処すべき課題であると考えております。当社グループが日米に有する各工場の生産力を最大限活用し、原料の国際調達を通じた製造コストの低減を図るとともに、米国を始めグローバルに商品を流通させていくために、調達と販売の両面において、グローバルサプライチェーンの更なる進展を図ってまいります。

⑨ 気候変動対策を含むサステナビリティに関する取り組みの推進

 当社グループがコーポレートスローガンに掲げている「愛と喜びのある食卓」を多くの家庭で実現し、長期持続的なものとするためには、当社の事業戦略の中にサステナビリティ戦略がしっかりと組み込まれ、「社会の持続可能性」と「企業の持続的な成長」が同じ目線で追求されている状態をつくり、強力に推進していくことが必要になります。その中でも、食品業界における気候変動による影響は、主に原材料の調達等で深刻な影響を与える可能性があることから、気候変動の原因となる温室効果ガス(GHG)の排出量を抑制するために、当社グループのサプライチェーン全体のカーボンニュートラルの実現に向けて取り組んでまいります。また、食品業界におきましては、食品ロスやプラスチックごみなどの環境問題に適切に対処していくことが必要不可欠であると考えており、当社グループにおきましても、これらの環境問題の解決に向けた具体的な取組みを計画し、実行してまいります。

⑩ 内部管理体制の強化

 当社グループの成長のためには、それを阻害するリスク要因を漏れなく把握し、各リスクへ適切に対処することが必要不可欠となります。当社グループといたしましては、個人情報管理や法規制への対応などのコンプライアンス体制の強化を含め、継続的に内部管理体制の強化に取り組んでまいります。

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