サワイグループホールディングス 【東証プライム:4887】「医薬品」 へ投稿
企業概要
文中の将来に関する事項は、有価証券報告書提出日(2024年6月25日)現在において、当社グループが判断したものであります。
(1) 当社グループの経営方針
当社グループは、信頼に値する企業を目指すことを第一に掲げ、2024年6月に修正公表した「Sawai Group Vision 2030」達成に向けた道筋をつけるため、2026年度(2027年3月期)を最終年度とする3か年の中期経営計画(以下「新中計」という。)を策定しました。
長期ビジョン「Sawai Group Vision 2030」
①2030年度に目標とする企業グループイメージ
(創りたい世界像)
より多くの人々が身近にヘルスケアサービスを受けられ、社会の中で安心して活き活きと暮らせる世界
(ありたい姿)
個々のニーズに応じた、科学的根拠に基づく製品・サービスを複合的に提供することで、人々の健康に貢献し続ける、存在感のある会社
②財務目標
売上収益 3,100億円 ROE 13%以上
中期経営計画「Beyond 2027」
①重点テーマ
「信頼される企業の地位確立」を土台となるテーマとして設定し、その上でさらに成長するために下記の重点テーマを設定
a.事業戦略重点テーマ
・GE市場における着実な成長
・GEビジネスの持続性確立
・成長分野への継続投資
b.経営基盤重点テーマ
・持続的成長を支える人財の創出
・サステナビリティへの取り組み
・資本効率改善
②株主還元方針
a.配当
中長期的な利益水準、DOE等を総合的に勘案しながら安定的かつ継続的な配当を目指す
b.自己株式取得
資本効率向上と株主還元策の一環として、フリーキャッシュフロー、市場動向等を踏まえ、機動的に実行
③定量目標
売上収益 2,200億円 ROE 10%以上
(2) 当社グループの現状認識
日本の医薬品市場を取り巻く環境としては、1961年に実現された国民皆保険制度の恩恵を受け、日本は世界最高水準の長寿社会を実現してきました。その反面、医療費をはじめとする社会保障費用は、年々増加の一途を辿っているため、少子高齢化も相まって現役世代の負担がますます重くなり、一定の自己負担で高水準の医療を受けられる仕組みの維持が困難になりつつあります。
このような状況に対して、近年、医療の質を落とすことなく、医療の効率化(医療費の削減)を図るべく、ジェネリック医薬品の使用促進が図られてきました。
政府は2017年6月に閣議決定した「経済財政運営と改革の基本方針2017~人材への投資を通じた生産性向上~」(骨太方針)及び、2019年6月に閣議決定した「経済財政運営と改革の基本方針2019~『令和』新時代:『Society5.0』への挑戦~」(骨太方針2019)において「2020年9月までの後発医薬品使用割合80%」を目標として、「後発医薬品の使用促進について、安定供給や品質のさらなる信頼性確保を図りつつ」、「インセンティブ強化も含めて引き続き取り組む」とし、さらに、2021年6月に閣議決定された「経済財政運営と改革の基本方針2021」(骨太方針)では、「後発医薬品の品質及び安定供給の信頼性の確保を柱とし、官民一体で、製造管理体制強化や製造所への監督の厳格化、市場流通品の品質確認検査などの取り組みを進めるとともに、後発医薬品の数量シェアを、2023年度末までに全ての都道府県で80%以上とする」とされています。
ジェネリックシェア80%時代を迎え、ジェネリック医薬品が担う責任と重要性の高まっていく中で、グループの中核会社である沢井製薬の九州工場で製造するテプレノンカプセル50mg「サワイ」の安定性モニタリングの溶出試験において、不適切な試験が継続的に行われていたことが判明し、沢井製薬が2023年12月に厚生労働省、大阪府及び福岡県から「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律」違反を理由とする行政処分を受けました。不適切な方法による試験行為に対する再発防止策に取り組み、当社グループ製品の品質に対する信頼性を確保するとともに、安定供給体制を構築してくことが、当社グループとして果たすべき社会的責任であると認識しています。
一方、政府により決定された薬価制度の抜本改革によって、通常の2年に1度の薬価改定の間の年度においても薬価調査・薬価改定(中間年改定)が導入されたことで毎年の薬価改定が行われる状況になっており、今後薬価の下落影響が拡大し続ける可能性があります。
このような経営環境の中で当社グループは、ジェネリック医薬品業界のリーディング・カンパニーとして、いち早く新しいジェネリック医薬品を開発・上市するとともに、品質・安定供給・情報提供においてトップレベルの水準を維持し続けることにより、ブランド価値を高め、競争に打ち勝つことが、持続的に成長していくために不可欠との判断の下、その達成のために次の(3)にあげた7点が最重要課題であると認識しております。
(3) 当面の対処すべき課題及び具体的取組状況等
① 信頼性の向上
ジェネリック医薬品の品質を確保し、信頼性を向上していくことが、医薬品メーカーとしての当社グループの責務です。こうした中、沢井製薬の九州工場で不適切な試験が継続して実施されてきた原因を踏まえ、再発防止策として、a.沢井製薬社長直轄の企業風土改革プロジェクトの実施、b.既存上市品の製造面及び品質面での再評価とその対策実施、c.全従業員に対する製造管理・品質管理基準(以下、「GMP」という。)教育の再実施や、管理職・監督職の責任の明確化、工場の品質管理部門、品質保証部門への社内外からの人材確保推進などの沢井製薬生産本部における再発防止策の実施を掲げ、すでに取り組みを開始しており、グループ一丸となって継続して取り組むことで、信頼性の回復と向上に努めてまいります。
② 安定供給の維持・確保
治療を必要とする患者さんの元に高品質な医薬品を安定的に供給することは、医薬品メーカーにとって最も重要な使命の一つです。生産設備の拡充による生産能力の増強をはじめとし、世界中から高品質で適切な原材料を確保し、適宜適切かつ継続的な設備投資、厳格な基準による製造管理・品質管理を行うとともに、的確な需要予測と適正在庫の確保を行うことを通じて、安定供給の維持・確保を図り、ジェネリック医薬品の需要増に対応してまいります。また、災害時にも安定供給を維持できるよう策定したBCP(事業継続計画)に基づき、原材料の複数ソース化、生産機械の共通化、代替要員の確保、人財の多能職化並びに工場間の人財交流及び技術の標準化等に取り組んでまいります。
③ 高付加価値ジェネリック医薬品のいち早い開発と確実な上市
競合が多いジェネリック医薬品業界において競争に打ち勝つためには、市場環境、患者さんや医療従事者のニーズに応えた他社品目との差別化が重要であり、また、一番手で上市することがジェネリック医薬品として患者さんのニーズに応えることにもなります。特許・技術・コスト・効率化等の諸課題に挑戦し、高付加価値ジェネリック医薬品の確実な一番手上市を目指してまいります。
④ 情報提供の充実
医薬品は、正確な情報を伴ってはじめて患者さんの治療目的が達成されるものであります。MRの活動のみならず、ウェブやコールセンター等のマルチチャネルを効率的に活用し、情報提供力の充実・強化を図ります。正確な効能・効果、用法・用量、副作用、品質や付加価値といった医薬品情報のほか有用な情報を医療関係者に迅速かつ確実に提供し、顧客満足度の向上に努めてまいります。
⑤ マーケティング機能の充実
競争優位を確立するためには、マーケット分析に基づいた的確な開発品目の選定、ターゲティングの明確化によるMRの生産性の向上が不可欠であります。マーケティング機能の充実と薬価制度改革や医療政策の変化等に伴う競争環境の変化を踏まえた営業戦略の見直しを図ってまいります。
⑥ 企業体質・経営管理の強化
沢井製薬が行政処分を受けた不適切な試験の背景としてa.安定性モニタリングを軽視する風潮の蔓延、b.上司の指示に疑問を持たずに従う傾向、c.試験関与者のGMPに対する理解の欠如といったコンプライアンス体制、意識に関連する事象が挙げられており、企業理念の浸透、コンプライアンス委員会の活動強化、リスク管理の充実、内部統制の整備・拡充といったコーポレート・ガバナンスの強化とSDGsに沿った取り組みによって企業体質の改善、強化を図ってまいります。また、環境変化に的確に対応できるよう意思決定や事業展開のスピードを追求するとともに、コスト削減等による徹底したコスト競争力の強化や業務の効率化、業容拡大に伴う経営基盤の整備・強化、会社の成長を支える人財の育成、ダイバーシティへの取り組みといった企業体質及び経営管理の強化に取り組んでまいります。
⑦ 新規事業基盤の構築・強化
当社グループが中長期ビジョンの達成を目指すにあたり、また、将来にわたって持続的成長を遂げていくためには、既存のジェネリック医薬品事業以外の新規領域への展開を図っていく必要があります。併せて、ジェネリック医薬品事業の周辺ヘルスケア分野への新たな展開に向け、事業分野調査をはじめとした新たな事業分野の開拓、展開に取り組んでまいります。
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