サトーホールディングス 【東証プライム:6287】「機械」 へ投稿
企業概要
当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取組は、次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
(1)当社事業戦略の推進を支える強み
当社の事業領域は、現場のモノや人にバーコードやRFID、センサーなどで、IDや温度などの状態情報をひも付け、読み取って上位システムに届ける「タギング」です。
このタギングによるリアルデータの取得は、現場のモノや人の見える化(どこに、何が、何個、どのような状態で存在するか)を可能にし、サプライチェーンやそれを構成する各現場のボトルネックの特定・解消等、社会の課題解決に寄与します。当社は現在、中期経営計画2021-2023(以下、中計)において、各現場のリアルデータ取得による課題解決に注力しています。加えて長期の成長を見据えたタギングの進化、すなわち課題解決の範囲をサプライチェーン全体、サーキュラーエコノミーにまで広げるべく取り組んでおります。当社のこれらの取り組みはお客さまや他のプレーヤーとの共創で、さらに範囲が拡大したり、より良い課題対応が実現したりする等、持続可能な社会の実現へとつながります。現在では5つの市場(製造、物流、小売り、ヘルスケア、食品)をターゲットに取り組みを展開していますが、他にもタギングによる課題解決が必要とされる分野もあります。これまでの蓄積を活用し、こういった新たな市場・業界での可能性についても検討していきます。
サプライチェーンやそれを構成する各現場は、国や地域、業界あるいは個社ごとに異なります。例えば同じ「製造業」でも、自動車業界と化学業界では、現場の状況やオペレーション、扱うモノやサプライチェーンが異なります。当社は、長い歴史の中で各業界の個別性を国や地域ごとに捉えて、持続的に最適なタギングを軸にしたソリューションを提供できる「現場力」 を培ってきました。
ソリューションの主な構成要素であるラベルプリンタとラベル/タグは自社で開発・製造しており、この開発力及びモノづくり力も当社の強みとなっております。また、自社で保持・開発・製造していない技術や製品、サービス等はパートナー企業と共創しており、この構築したグローバルなパートナー企業ネットワークも当社の強みです。最適なタギングのソリューション創出の過程においてお客さまとの「接点」が生まれ、期待を超えるソリューションの提供により、この接点が「信頼」へと変化します。この幅広いお客さまからの「信頼」も当社の持続的な成長を支える強みです。
(2)人的資本経営への取り組み
≪戦略≫
当社グループは社是として「あくなき創造」を掲げています。これは、タギングを軸とした自動認識ソリューションで様々な市場、事業分野における顧客価値向上と社会課題解決に貢献するためには、「あらゆる製品・サービス・プロセスを組織的・継続的に改善するイノベーションを現場が生み出す」組織文化の醸成が不可欠と考えているからです。
1976年に「あくなき創造」を実践する仕組みとして「三行提報」を立ち上げ、以来この仕組みにより、社員が経営トップに会社を良くする提案・報告を日々直接提出する活動が継続され、「小さな変化を喜ぶ」文化が根付いています。さらに、経営理念に沿う行動を奨励・報奨する活動や、「三行提報」を活用して身近な課題を現場上長に提案し自部門メンバーが主体的且つ迅速に解決する「一石伝波」という取り組みを追加し、多くの成果に繋げると共に社員一人一人の主体性・創造性・情熱を刺激し、課題に対する問題意識や気づきに基づくアイデアによる改善を進め、イノベーションを生み出す土壌づくりを進めています。
当社では、これらの取組みを通じ、サトーならではの方法で人的資本の強化に取組み、経営戦略を支えてまいります。
[人財育成方針]
当社は経営理念において、顧客価値の実現と社会課題の解決を目指すことを宣言しており、その実現には様々な市場・業界のお客さまの現場に適した「現場力」の強化こそがカギであり、当社グループの競争の源泉です。
そのためには、従業員一人一人が日々の業務経験を通し「自ら考え行動し(自立)変化を起こせる(自律)人財(ジリツ人財)」となっていくことが欠かせません。このような人財を育成していくために、当社グループでは、専門性のレベルアップにつながるスキル開発や行動促進を促すような能力開発に加え、獲得した能力を、マネジメントによる支援強化を通じ、仕事を通じて発揮できる機会を提供・創出することで、個人と組織の双方の実践力を高めてまいります。
さらに、「あくなき創造で持続可能な社会に貢献する」という共通の目的の下、性別、国籍、文化などさまざまなバックグラウンドを持つ人びとが活躍する多様性を促進することで、異なる考え方や価値観の交差によるイノベーションを生み出す取組みを行っています。
[人的資本強化のプロセス]
日常業務の中で日々「小さな変化を喜ぶ」・「工夫し挑戦する」というサイクルを実践し、その実践の中で、「創意工夫」と「主体的な行動」が生まれ、マネジメントがこれらを支えることを通じ「現場力向上」につなげています。また、本部が優れた改善事例を横展開し、会社の仕組みとすること等、一連の取組みを日々積み重ねることでイノベーションを企業文化として定着させ、人的資本の持続的な強化・向上に取り組んでまいります。
[イノベーションを生み出す組織文化醸成の具体的取組みと実績・定量指標]
| 施策概要 | 実績・定量指標(2022年度実績) | |
日常サイクルの実践 | サトーの原動力 | ・企業理念浸透 | ・Credo Awards World Cup表彰 |
・三行提報(さんぎょうていほう) :経営トップへのダイレクトな提案 | ・提報提出件数 (493,589件) | ||
・一石伝波(いっせきでんぱ) :現場上長への提案による迅速な実行 | ・改善件数 (152件) | ||
支援と動機づけ | ・奨励・褒賞制度 | ・三行提報ポイント制度 | |
・社員全員が「真のプロ」を目指し成長するための取組み | ・職種別機能別キャリアラダー・スキルマップ | ||
現場力向上 | SATO Campus | ・キャリアラダーの活用 ・社内の業務を知るバリューチェーン研修 ・自動認識研修 | ・自動認識研修受講者数 (116人) (226人) |
・マネージャー研修 メンバーを支え、推進するマネージャー職の教育 | ・研修受講者数(266人)) | ||
企業文化への定着 | 働きがいを感じる[活き活きと仕事をしている] | ・エンゲージメントサーベイ結果 | |
働きがいを感じる[多様性] | ・女性管理職比率 「従業員の状況」(4)に記載 | ||
働き方改革 | ・どこでもワーク |
[環境整備方針]
当社グループでは、持続的に価値を生み出す源泉は「人」であることを認識し、「社員が財産」という視点に立ちます。個々人の人間性の尊重と多様性の受容を基本として、お客様と共に成長し、最も信頼され続ける会社になるため、持続可能な社会への貢献と社是であるあくなき創造を実践し続ける「人」を生み出し続けることができるような職場環境の整備に取り組んでいます。また、当社グループで社員エンゲージメント向上を重要な経営指標として設定し、当社の取締役会によるモニタリングのもと、グループを挙げた従業員意識調査の実施及び調査結果にもとづく、人財の採用、配置、育成、評価、処遇、働き方などの人事諸施策を進めてまいります。
また、当社では「生涯現役型雇用」の実現を目指し、年齢に関係なく65 歳以降も専門職として継続できる「プラチナ社員制度」を2011年から導入しており、シニア社員のモチベーション向上と全社の活性化につなげています。
≪指標及び目標≫
第一部 企業情報 第1 企業の概況 5 従業員の状況 (4)管理職に占める女性労働者の割合、男性労働者の育児休業取得率及び労働者の男女の賃金の差異をご参照ください。
(3)知的財産への投資
タギングを軸にしたソリューションを創出・提供するなかで生み出された特許権、意匠権、商標権、技術ノウハウなどの知的財産は、現在および将来にわたる競争力の源泉であり、重要な経営資源です。当社では、CEO直下に知的財産部門(専門組織)を設置し、知的財産に関する業務を統括しています。そして、中計の実現に向けて、知的財産中期事業計画の策定と推進を担い、全社横断的な活動と関係部署との連携強化を通じて、現業の「サプライチェーンの各現場の課題解決」の底上げと成長を支える知的財産の創出に取り組んでいます。
さらに、長期成長「サプライチェーン全体、サーキュラーエコノミーの課題解決」に向けた戦略投資に対応して、技術イノベーションを支える知的財産の創出にも積極的に取り組んでおります。こうした社会に新しい価値をもたらす知的財産の保護と活用を通じて、より豊かで持続可能な世界社会の発展と、当社の長期成長と企業価値の向上を目指しています。
そして、イノベーションを創出するプロセスにおいて、IPランドスケープ(知財情報分析)の提供と活用を開始し、競争優位を支える知財創出に向けた戦略立案と、国内外での知財ポートフォリオの充実に取り組んでいます。
当社では、知的財産に関する基本方針を定め、知的財産の創出と活用に加え、第三者の有効な知的財産の尊重と、知財教育と意識啓発にも取り組んでいます。このような取り組みが評価され、経済産業省 特許庁が表彰する平成31年度「知財功労賞」における「特許庁長官表彰」(知的財産権制度活用優良企業等)を受賞しました。
(4)気候変動対応
当社は、気候変動が社会全体に与える影響の大きさを認識するとともに、この問題への対応を重要な経営課題の一つと捉えています。その観点から「TCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)」の提言に対して2021年に賛同を表明し、提言を踏まえた気候変動への対応に努めています。また、2021年度よりTCFDの枠組みに基づくシナリオ分析を通じ、リスク及びビジネス機会の識別と評価、対応策の策定を実施しています。
[基本的な考え方]
当社は、持続可能な社会への貢献は本業と不可分なものと捉え、サステナビリティを経営の根幹に据えています。脱炭素施策などの気候変動対応は、以下の2軸で取り組んでいます。
①お客さまや社会に対する貢献
②自社の事業活動における貢献
≪ガバナンス≫
取締役会の監督の下、サステナビリティ推進委員会を執行部の最高意思決定機関である執行役員会の直属としています。同委員会に経営企画部門や事業部門などの主要メンバーを参画させることにより、サステナビリティに関わる活動と経営・事業戦略との融合を図るなど、グループ全体の気候変動対応を含むサステナビリティを巡る課題への対応を推進しています。脱炭素施策を中心とした取組みもこの体制で進めてまいります。
≪戦略≫
当社は、シナリオ分析を通じ、リスクと機会の識別および重要度評価、事業・財務インパクトの定量評価、対応策の策定を行っています。同分析では、自社の業界およびお客さまの主要な業界につき、以下の2つのシナリオにおける中長期の影響を考察しました。
①パリ協定努力目標の1.5℃シナリオ
②気候変動対策が遅延する4.0℃シナリオ
1.5℃シナリオでは、原材料コスト上昇の影響が大きい一方、トレーサビリティの担保に大きなビジネス機会があると認識しています。他方、4.0℃シナリオでは、事業継続リスクや物理的リスクへの対応コストの増加の影響が大きいと捉えています。
リスクに対しては、温室効果ガス排出量削減やCSR調達体制の確立、BCP強化などの対応策が明らかになりました。他方、機会に対しては、環境に配慮した商品やソリューションの開発・拡販、データ収集・活用ビジネスの拡大などの対応策が見出されました。
即ち、いずれのシナリオにおいても、当社はレジリエントな経営を行うことが可能と確認しました。
≪リスク管理≫
サステナビリティ推進委員会主導でリスクを識別した上で関連パラメータを更新し、各リスクの事業・財務インパクトを定量評価することで、リスクを管理します。その結果は執行役員会や取締役会に適宜報告し、全社のリスク管理と連携させます。また物理的リスクについては、リスクマネジメント委員会と連携し、リスク・危機管理を実施します。
≪指標及び目標≫
Scope 1&2は、2030年度に2016年度対比50%削減、2050年度にカーボンニュートラルを目指します。達成に向けて再エネ活用拡大や省エネ推進に取り組みます。
詳細は当社ウェブサイトにおいて開示しています。
当社ウェブサイト「TCFD提言への対応(サステナビリティ)」
https://www.sato.co.jp/about/sustainability/tcfd/
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