企業コニカミノルタ東証プライム:4902】「電気機器 twitterでつぶやくへ投稿

  • 早わかり
  • 主な指標
  • 決算書
  • 株価
  • 企業概要
  • 企業配信情報
  • ニュース
  • ブログ
  • 大株主
  • 役員
  • EDINET
  • 順位
  • 就職・採用情報

企業概要

 文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社が判断したものであります。

(1)当連結会計年度の総括

 当連結会計年度(以下「当期」)における外部環境は、ウクライナ情勢などによる不確実性の高まりや世界的な物価高と各国の金融引き締め政策により、欧州を中心に経済成長は鈍化傾向、米国では引き締め的な金融環境の中でも底堅い個人消費が景気を押し上げて経済が堅調に推移しました。日本では、物価高により消費は停滞しましたが、インバウンド需要の増加などもあり景気は緩やかに回復しております。

 このような経営環境の下で、当期における当社グループの連結売上高は、円安の進行もあり1兆1,599億円(前期比2.6%増)と、2003年のコニカとミノルタの経営統合以来最高の売上高となりました。デジタルワークプレイス事業、プロフェッショナルプリント事業、ヘルスケア事業、インダストリー事業の全ての事業で増収となり、営業利益は大きな減損損失を計上した前期から大幅増の260億円、親会社の所有者に帰属する当期利益45億円と、2019年3月期以来の黒字を達成しました。事業貢献利益、営業利益、当期利益、いずれも期初からの業績見通しを超過し、特に営業利益は大幅な超過となりました。デジタルワークプレイス事業、プロフェッショナルプリント事業では、前期に欧米など主要地域において半導体不足に起因する受注残の解消という一過性の販売増があった反動を受け販売台数減となったものの、為替の追風や航空輸送の減、物流の正常化、生産コストダウンによりカバーしております。さらに、販売費及び一般管理費の抑制に努め、世界的な物価高騰に対応した定期昇給の見直しなどで人件費は増えましたが、為替影響を除きますと実質では費用の削減となりました。加えて、米国の創薬支援企業Invicro, LLCの持分譲渡に伴う公正価値評価により、売却目的保有資産に係る減損損失戻入益36億円を計上したこと及び米国の遺伝子検査企業であるAmbry Genetics Corporationの事業が順調に推移していることから減損損失戻入益34億円を計上したことも影響しております。

 一方で、プロフェッショナルプリント事業の産業印刷ユニットにおいて、フランスの印刷機器メーカーMGI Digital Technologyでの減損損失21億円や、インダストリー事業の映像ソリューションユニットにおけるプラネタリウム直営館の集客低下などによる減損損失17億円と画像IoTソリューションにおけるドイツMobotix AGの減損損失2億円を当期に計上しました。金利上昇や為替等の影響により金融収支は122億円のマイナス、また、主に海外子会社の当期損失に係る繰延税金資産を認識することができなかったことで、税負担率が高くなっております。

 当社は、2024年3月期を初年度とする3ヶ年の中期経営計画で非重点事業と位置付けた領域への対応も確実に進めてまいりました。プレシジョンメディシンユニットで、2024年4月に創薬支援サービスを担うInvicro, LLCのCalyx Services Inc.への全持分譲渡が完了しました。光学コンポーネントユニットにおいては、2023年10月にラックスビジョンズイノベーションテクノロジー有限会社と中国生産子会社2社の80%の持分譲渡契約を締結し、クロージングに向けた対応を進めております。同様に中期経営計画内で掲げた財務基盤強化についても、運転資本圧縮を実行し営業キャッシュ・フロー833億円の黒字を達成しました。

(2)翌連結会計年度の経営方針

 翌連結会計年度において、当社は、欧米を中心とした物価高と景気減速、為替変動など経営環境の不確実性が高まると見込んでおります。このような中、当社は、デジタルワークプレイス事業のオフィスユニットでは働き方の変化に伴うプリントボリュームの緩やかな減少を見込んでおりますが、複合機連携アプリケーション・サービスの提供やモノづくり革新による更なるコスト低減や固定費削減等により、収益力を強化するとともに、資産効率を高めキャッシュを創出します。プロフェッショナルプリント事業のプロダクションプリント・産業印刷ユニットでは、オフセット印刷からデジタル印刷へシフトする流れは不変であり、中期的には中堅・大手印刷会社を中心に需要をけん引して市場は成長すると見込んでおります。また、8年ぶりに開催される世界最大規模の国際印刷・メディア産業展「drupa 2024」の出展による需要が期待できますが、欧米を中心とした景気減速影響による一部顧客との商談長期化のリスクも見ております。

 オフィスユニット、プロダクションプリントユニットにおいては、投資効率やコスト競争力の向上、安定供給、環境対応、事業継続力強化を目的として、調達、トナー開発・生産に関する他社との業務提携を積極的に進めていきます。

 ヘルスケアユニットでは、強みであるⅩ線関連機器に加えて、Ⅹ線動態解析システムの成長を図っていきます。医療サービスの質の向上や効率化に向けて、画像やAIなどのデジタル技術の利活用が進展していくことも想定されます。

 インダストリー事業において、センシングユニットのスマートフォン用ディスプレイ計測器は顧客における設備投資抑制が続いておりますが、新たなディスプレイ技術の開発は進むと見ており、先行需要の取り込みに注力していきます。機能材料ユニットは、ITデバイス・スマートフォン用薄膜フィルムは市場在庫調整からの回復が見え始め、テレビ用ディスプレイは、市場在庫調整が一巡し、大型ディスプレイ向けを中心に回復することが期待されます。こうした市場動向を認識しながら、当社は事業貢献利益の拡大を図るとともに、中期経営計画で掲げた経営目標を達成しROE5%の早期達成を実現していきます。

 また、新たに追加施策として、人財最適化を含めたグローバルでの構造改革を実行し、従業員一人あたりの生産性の向上を図り、高収益企業を目指して事業の選択と集中を実行していきます。2025年3月期の通期見通しには、これらの施策実行による一過性費用の計上を見込んでおります。

(3)2025年度に実現する事業構造

2024年3月期を初年度とする3ヶ年の中期経営計画では、これまで当社が展開してきた施策を総合的に評価し、企業価値向上に資するものは継承し、変革すべき部分については速やかに判断することが必要不可欠と認識して、高収益企業への回帰を目指し、赤字からの脱却、収益基盤とキャッシュ創出力の強化に取り組んできました。その結果、当期は当期利益までが黒字となり、営業キャッシュ・フローは833億円とキャッシュ創出力も向上しました。また棚卸資産の削減等による運転資本等の資産圧縮や有利子負債の縮減によるバランスシートの改善が進みました。事業の選択と集中については、過去の経緯にとらわれず、時間軸も含めて当社の将来につながるのかを判断の軸に取組んでおります。当期におきましては、非重点事業と位置付けた、プレシジョンメディシンユニットにおける創薬支援サービスを担うInvicro,LLCの全持分譲渡や、光学コンポーネントユニットにおける産業用途での高付加価値領域へのシフトを目的とした中国生産子会社2社の80%持分譲渡の契約を締結するなど、収益基盤の再構築に向けて大きな一歩を踏み出しました。

 強化事業と位置付けたインダストリー事業、プロフェッショナルプリント事業、ヘルスケアユニットには経営資源を重点的に配分して利益率の向上を図り一層の成長を追求します。特にインダストリー事業は、ターゲット領域をディスプレイ、モビリティ、半導体製造等に定め、強みである材料、光学、微細加工、画像等の「コア技術」をAI活用と事業をまたぐ技術融合により強化し、「顧客との共創」につなげて高い市場シェアを保有する既存事業の一層の強化と新規事業開発を推進します。

 収益堅守事業と位置付けたオフィスユニットは利益とキャッシュ貢献に重点を置いております。新型コロナウイルス感染症拡大前からプリントボリュームは減少しておりますが、当社独自のOne Rate(毎月変動する従来の複合機の課金方法ではなく、定額の課金をする当社独自の課金モデル)などの取り組み成果もあって、売上総利益の水準を維持しております。また、当期は徹底した生産コストの削減により、当初計画以上の事業貢献利益を創出しております。現時点では、プリントボリュームは、中期経営計画の想定内で推移しており、減少が加速されるような新たな要素は見当たりません。しかし、長期的には市場の縮小傾向が想定されるため、投資効率を向上させることが必要と判断し、オフィスとプロダクションプリントユニットにおいて他社とのアライアンスも積極的に実行していきます。地政学リスクについても課題を認識し、対応を図っていきます。

 非重点事業と方向転換事業においては、アクションを加速させ、2025年3月期に事業の選択と集中を完遂することを目指してまいります。

 また、当社は事業の持続的な成長を実現するため、全社的に生産性の向上や業務効率の向上を追求して労働生産性が高い組織に変革していきます。そのために生産性・効率性の障害を特定し、業務プロセスの見直しや生成AI活用などのツール導入などを通して、生産性・効率性の改善を図るとともに、適材適所で現場の課題解決に専念できる体制を強化してまいります。

 事業の成長による事業貢献利益は継続して拡大しますが、事業の選択と集中やグローバルでの構造改革を確実に実行するためには痛みも伴い、2025年3月期に一時的費用の計上を見込んでおります。

 これらの取り組みにより、中期経営計画の最終年度2026年3月期には環境変化に強い事業構造と持続的な利益成長が可能な経営基盤を確立させ、経営目標ROE5%以上の達成を実現します。

 当面は財務基盤の強化を優先させていただきますが、業績とキャッシュ・フローを勘案し、株主の皆様に納得いただける配当水準への復帰と利益成長と併せて株主還元の強化を図っていきたいと考えております。

PR
検索