クレスコ 【東証プライム:4674】「情報・通信業」 へ投稿
企業概要
文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において、当社グループが判断したものであります。
(1) 経営方針
グループビジョン:「CRESCO Group Ambition 2030」
人が想い描く未来、その先へ
クレスコグループは最高のテクノロジーと絆で”わくわくする未来”を創造します
当社グループは、2021年度より10年間の長期グループビジョン「CRESCO Group Ambition 2030」をスタートしております。当該ビジョンの具現化に向け、中期経営計画として、中期経営計画2023(変革:2021年度~2023年度)、中期経営計画2026(挑戦:2024年度~2026年度)、中期経営計画2030(飛躍:2027年度~2030年度)の3ステップを設定し、2番目のステップとなる中期経営計画2026では、2026年度における「連結売上高700億円」、「連結営業利益率11.5%」、「連結ROE15%以上」を財務目標としております。
中期経営計画2026
中期経営計画2026では、7つの戦略から構成される成長戦略を策定いたしました。当社グループとしてこれらの戦略群を実践することで、『顧客とともに持続的に成長し、社会を前進させる』というミッションを果たし、同時に上記の財務目標を達成することを基本方針としております。
各戦略の方針は以下のとおりです。
① 共創型モデルの確立
従来の受託型からプロダクト型・課題解決型・未来創造型へと提案スタイルを広げていくことで、顧客の成長を支える「戦略パートナー」としての地位を確立し、顧客へ提供可能なサービス・プロダクトの価値の拡大を目指してまいります。
② 品質リーダーシップ発揮
グループ社員個人に対するITプロフェッショナルとしての育成を強化し、また、組織としても全方位型の品質管理強化を実現することで、安全・安心・感動の品質を担保し、「戦略パートナー」にふさわしいサービス・プロダクトを顧客に提供することを目指してまいります。
③ 人的資本経営推進
これらの戦略を遂行するに当たって必要な人財ポートフォリオを策定・運用し、必要な人財を採用・育成するための諸施策を実施するとともに、多様な人財が協働・躍動できる風土を醸成することで、個人と組織の力を最大化し、顧客への提供価値を創出することを目指してまいります。
④ 技術・デジタルソリューションの拡張
顧客が抱える経営課題の解消に向けて当社グループの有する技術・デジタルソリューションが貢献できるように、AI、セキュリティ、データアナリティクスを中心とした技術領域の強化・拡大と、独自のブランドソリューションの開発や国内外のソリューションの調達強化を目指してまいります。
⑤ 事業連携促進
新たな市場の開拓のためのアライアンスパートナーの獲得、高い技術力と豊富なリソースを有するビジネスパートナーとの関係強化、さらには大学・研究機関との共同研究を通じた産学連携により、当社グループのビジネスエコシステムを拡大し、顧客への価値提供につなげることを目指してまいります。
⑥ デジタル変革実現
グループ社内業務においてもデジタルソリューションを適用し、業務パフォーマンスを上げることで、グループ役員・社員をよりクリエイティブかつ高付加価値な業務に集中させ、生産性の向上につなげることを目指してまいります。
⑦ グループ一体経営
当社グループでは、各社が自主自立的な経営を行っておりますが、事業的シナジーを一層強化して顧客への提供価値の最大化を目指すとともに、グループ業務の集約化を進めて経営の効率化を実現することを目指してまいります。
(2) 経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等
当社グループは、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標(KPI)として売上高、営業利益率、ROEを設定しております。
なお、「中期経営計画2026」におけるKPIの目標値は次のとおりであります。
KPI (連結ベース) | 2023年度 実績 | 中期経営計画2026 | |
2024年度 | 2026年度 | ||
予想値(注) | 目標値 | ||
売上高(百万円) | 52,755 | 58,500 | 70,000 |
営業利益率(%) | 9.7 | 10.1 | 11.5 |
ROE(%) | 14.3 | 13.8 | 15.0 |
(注) 1 2026年度の目標値及び2024年度の予想値については、当連結会計年度末現在において予測できる事情等を基礎とした合理的な判断に基づくものであり、その達成を保証するものではありません。
2 2024年度の売上高及び営業利益額の予想値は、2024年5月10日時点での公表値であります。
3 2024年度のROEの予想値は、当該年度における自己資本の変動が親会社株主に帰属する当期純利益及び剰余金の配当のみであると仮定して算定しております。
(3) 中期経営計画2023の達成状況
当連結会計年度をもって終了した中期経営計画2023の実績の推移は、以下のとおりです。
KPI (連結ベース) | 2020年度 実績 | 中期経営計画2023 | ||||
2021年度 | 2022年度 | 2023年度(当期) | ||||
実績 | 実績 | 実績 | 2020年度比 | 目標値 | ||
売上高(百万円) | 39,706 | 44,450 | 48,368 | 52,755 | 132.9% | 50,000 |
営業利益額(百万円) | 3,484 | 4,457 | 4,998 | 5,121 | 147.0% | 5,000 |
ROE(%) | 14.8 | 15.6 | 14.3 | 14.3 | ― | 15.0 |
連結売上高 (百万円) | 2020年度 実績 | 中期経営計画2023 | ||||
2021年度 | 2022年度 | 2023年度(当期) | ||||
実績 | 実績 | 実績 | 2020年度比 | |||
| エンタープライズ | 17,075 | 18,219 | 18,839 | 20,311 | 119.0% |
金融 | 12,360 | 13,689 | 14,115 | 14,740 | 119.3% | |
製造 | 8,809 | 10,433 | 12,657 | 13,855 | 157.3% | |
ITサービス事業計 | 38,246 | 42,342 | 45,612 | 48,908 | 127.9% | |
デジタルソリューション事業 | 1,459 | 2,107 | 2,755 | 3,847 | 263.5% | |
合計 | 39,706 | 44,450 | 48,368 | 52,755 | 132.9% |
また、中期経営計画2023の「重点戦略」及び「基本戦略」に係る主な成果は以下のとおりです。
重点戦略
① デジタルソリューションの強化
中期経営計画2023のスタート以来努めてまいりましたラインナップの拡充と、当社のクラウドサービスであるCreageの機能向上やRPA関連ソフトウェアの販売が大きく寄与したことにより、デジタルソリューション事業の連結売上高は2020年度との対比で2.63倍に増加いたしました。
② 機動的経営の進化
グループ売上拡大のために、グループ各社との間で営業案件の連携基盤を構築し、顧客提案などでシナジー効果を発揮できたことや、M&Aを2件実行できたことが寄与し、連結売上高は2020年度との対比で1.32倍となり、当初の目標としていた500億円を達成いたしました。
また、DXへの取組みについても、経済産業省より「DX認定事業者」に認定される等の成果を残すことができました。
③ 人間中心経営の深化
健康経営の取組みが評価され、「健康経営優良法人(大規模法人部門)」に5年連続で認定されるとともに、「ホワイト500」に初めて認定されました。また、教育面では次世代人材育成研修や社内オンデマンド学習基盤を立ち上げたほか、エンゲージメントサーベイを導入し、社員のエンゲージメントの向上施策を実施するなど、中期経営計画2026に向けた準備を進めてまいりました。
基本戦略
① ITサービスの拡大
中期経営計画2023のスタートを受けて営業戦略の見直しを進めた結果、「エンタープライズ」「金融」「製造」の全サブセグメントにおいて新規顧客の獲得が堅調に推移し、特に「エンタープライズ」の領域では公益や医療分野における新規参画が進展し、「製造」の領域では自動車製造業への参画も進みました。これらの結果、ITサービス事業の売上高は2020年度との対比で1.27倍となりました。
② 品質の強化
開発標準プロセスや手順書の発行、当社全体でのISMS認証取得、新技術を活用した案件の獲得などに取り組んでまいりましたが、当連結会計年度において、当社で複数の大規模な不採算プロジェクトが発生したことにより連結営業利益は51億21百万円となり、中期経営計画2023での目標値である50億円に到達したものの、計画していた売上高営業利益率10.0%には至りませんでした。
③ 技術の強化
"CRESCO A STARS"と呼ばれる当社グループを代表するエンジニアの認定や、重点技術領域の「技術コミュニティ」を形成し、エンジニアリング集団として社内技術レベル認定を行うなど、当社グループの技術力の向上を図ってまいりました。これにより、重点技術領域であるAI・クラウド・ロボティクス及びアジャイル分野に関わる売上高の伸長を実現いたしました。
(4) 経営環境と優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題
2023年度の経営環境は、新型コロナウイルス感染症が収束したことにより内需や輸出の回復が見られたものの、資源や人手不足が顕在化し、ヒト・モノ・カネの調達コストの上昇圧力にさらされた一年となりました。
これらの状況は、当社グループにおけるコスト構造にマイナスの影響を及ぼす一方で、顧客企業においてはITを利用した生産性向上のための投資を加速させる結果となっており、当社グループを含む情報サービス産業全体にとってプラスの影響が継続しております。
当社グループとしては、このようなビジネスチャンスを的確に掴むことで「中期経営計画2026」に掲げる目標を達成しステークホルダーの期待にお応えするために、以下の課題認識のもと諸施策を速やかに実行し、持続的な成長と企業価値の向上を実現してまいります。
①不採算プロジェクトの発生防止
当連結会計年度において、当社の複数の大型案件において不採算が発生したことが影響し、「中期経営計画2023」において目標としていた連結営業利益額50億円には到達したものの、計画していた営業利益率10.0%を達成することができませんでした。不採算プロジェクトが発生した場合、収束に向けて多額の人件費・外注費を投入する必要があるだけでなく、新規案件にリソースを振り向けることができず機会損失をもたらすことになるため、当社グループの経営成績に重要な影響を及ぼします。不採算プロジェクトは技術・品質の問題だけでなく、見積ミスや顧客との調整不足など様々な要因によって発生することから、発生原因を徹底的に追求し、今後同様の事態を起こさないようにするための仕組みと体制を構築してまいります。
②ITエンジニアの確保と育成
「中期経営計画2026」で掲げる連結売上高700億円の達成のためには、幅広い技術領域と顧客のビジネスに精通したITエンジニアの確保が必要不可欠であります。この経営課題に対し、当社グループでは、一層のブランディング活動と採用活動の強化を行うとともに、M&A案件やビジネスパートナーの発掘、ニアショア(子会社やビジネスパートナーとの協業による国内分散開発)やオフショア(ベトナム現地企業との協業による国外分散開発)を強化することでエンジニアの母集団を増やすとともに、人財開発・育成プログラムを刷新してエンジニアを含めたすべてのグループ社員の水準の底上げを図ってまいります。また、給与水準の見直しやテレワーク・オフィス環境、安全衛生等の労働環境の整備を継続することで、従業員のエンゲージメントを高めるための諸施策を実行してまいります。
③グループ連携を軸にした顧客への提案活動
売上高の確保に向けて、大中小の様々な規模の案件を効率的に受注するためには、当社グループ各社が独自に商圏の拡大を目指すだけでなく、営業案件のグループ内での融通や、要員・技術・ソリューションの抱き合わせによる提案活動が重要であると判断しております。
このような経営課題に対して、当社グループでは、当社のグループ統括本部を中心に、グループ役員・営業担当・開発人員の交流機会を増やし、顧客企業からの要望に対して機動的に対応することでグループシナジーを最大化するための体制を構築してまいります。
④デジタルソリューション事業の売上高の増加と収益性の向上
近年、顧客企業においては、少子高齢化に伴う人手不足や物価高騰に伴うコスト構造の変化、企業間競争のスピードの激化に直面しており、従来のように自社で要員や設備を抱えたり、長い時間をかけた研究開発を行うことが困難な状況になっております。この状況を打破するための解決策として、AI・クラウド・RPA等の技術を活用したデジタルソリューションに注目が集まっており、今後の需要拡大が期待されていることから、当社グループとしても経営資源をデジタルソリューション事業に集中し、同事業の売上高を確保するとともに収益性を引き上げることが重要であると判断しております。
このような経営課題に対して、当社グループでは、各種イベント・勉強会の開催や技術コミュニティ活動の促進、共同案件の獲得を通じてITエンジニアの市場価値の引き上げを図るほか、自社ブランドソリューションの更なる開発やソリューションを有する提携先企業の発掘を進めることにより、事業全体の利益率の向上を目指してまいります。
⑤生産性の向上
「中期経営計画2026」の推進に当たり、営業・採用・調達・M&A/PMI等の業務や法規制等に対応するための活動等が増加することが予想されます。また、当社グループが主力とする受託型ソフトウェア開発においても、顧客からの要求レベル(仕様や条件等)が高まるものと考えられます。このような変化に的確に対応するためには、生産性の向上が必要不可欠であり、営業利益率を高めるカギにもなると判断しております。
具体策として、ITリテラシー教育を促進し、デジタルソリューションを用いた業務の効率改善と集約化を進めることで間接コストの抑制を図るとともに、グループ役員・社員が本業に集中できる環境を整備してまいります。また、アジャイル開発やRPA・生成AIの導入を促進することにより、開発効率の向上と製造コストの抑制を図ってまいります。
⑥サステナビリティ経営及び人的資本経営の推進
当社グループは経営上の目標・指標を定めており、これを達成する責務を負っておりますが、一方で、企業価値の向上と社会課題の解決の双方を実現する「サステナビリティ経営」や、人材の価値を最大限に引き出して中長期的な企業価値の向上を実現する「人的資本経営」を推進することが求められております。
このような経営課題に対し、当社グループは、2022年度に「サステナビリティに関する基本方針」を制定し、持続可能な社会の実現に向けた行動を推進していくことを明らかにいたしました。また、「健康経営宣言」「マルチステークホルダー方針」を公表し、従業員をはじめとした多様なステークホルダーとの価値共創を進めていくことを明らかにしております。中期経営計画2026においては、当社グループのマテリアリティ(重要課題)を明記しており、今後も引き続き、これらの方針等に則った事業活動を展開し、適時適切な情報開示に努めてまいります。
なお、サステナビリティ経営及び人的資本経営に関する詳細につきましては「2 サステナビリティに関する考え方及び取組」をご参照ください。
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