企業兼大株主クミアイ化学工業東証プライム:4996】「化学 twitterでつぶやくへ投稿

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企業概要

当社グループは、農薬及び農業関連事業セグメントにおいて、国内外の農業用及び非農耕地における除草剤、殺虫剤、殺菌剤及び植物成長調整剤の研究を通して、食料生産に貢献しうる新製品の開発に注力しております。また、化成品事業を第二の柱に位置付け、様々な社会課題を解決するため新製品の開発を目指します。さらには研究領域及び事業領域の拡大を促進し、持続可能な社会の実現に資する技術・製品の開発にも積極的に取組んでおります。

農薬及び農業関連事業セグメントにおいて、当社は研究開発型企業として、自社で農薬の創製、開発から販売までを一貫して行っており、農家の方々のニーズにこたえる新規農薬の創製に注力しております。

自社開発園芸用殺ダニ剤「バネンタ」(農薬一般名:フルペンチオフェノックス)の開発を進めており、2025年の上市を想定しております。本剤はクミカ独自骨格の殺ダニ剤であり、新規作用性のため薬剤抵抗性を発達させたハダニ個体群に対して高い効果を示し、果樹、野菜、花きのハダニ剤として高い実用性が認められております。

自社開発水稲用殺菌剤「ディザルタ」(農薬一般名:ジクロベンチアゾクス)は、現在までに東日本向け「ブーンパディート箱粒剤」、「ブーンレパード箱粒剤」、西日本向け「ブーンゼクテラ箱粒剤」、全国向け「ブーンアレス箱粒剤」、北海道限定の潅注剤として「ブーンバズSC」を上市し、2024年には西日本向け「ブーンハーデス箱粒剤」を上市予定となっております。「ディザルタ」を含有する水稲用殺虫殺菌箱粒剤は新たな開発を続けており、さらなるラインナップの充実を図ります。また、他社からも「ディザルタ」混合剤が開発、販売されており、今後も「ディザルタ」の普及拡大を強化してまいります。さらに韓国においても「ディザルタ」の農薬登録をされております。韓国では2023年に提携各社から「ディザルタ」を含有する水稲用箱処理剤を4剤上市しており、継続して「ディザルタ」ブランドの確立及び普及促進を進めます。

自社開発水稲用除草剤「エフィーダ」(農薬一般名:フェンキノトリオン)は、水田広葉雑草に対して幅広く除草活性を示すだけでなく、薬剤抵抗性が発達したイヌホタルイなどにも有効な水稲用除草剤です。国内水稲栽培の移植、湛水直播などの各種栽培体系において、食用米だけでなく、飼料用米や多収米などの新規需要米品種を含めた多くの品種に対して高い水稲安全性を示す特長を有しています。2023年6月時点でエフィーダ混合剤は他社も含めて52剤が販売されており、本剤の日本国内での普及面積は2023年6月で467,646haとなっています(日植調データより)。さらに、国内だけでなく、欧州のムギ類を対象とした開発も行っており、世界の作物生産への貢献が期待されています。

自社開発畑作用除草剤「アクシーブ」(農薬一般名:ピロキサスルホン)は、米国、ブラジル、オーストラリア、アルゼンチンなどの主要穀物生産国においてダイズ、トウモロコシ、コムギ等で販売が好調です。また、これらの国での適用作物拡大及び混合剤開発も進んでおります。2022年にはイラン、ナミビア、タイ、ロシア、パラグアイ、2023年にはこれまでチュニジアで新規登録をしました。さらに、2021年に北海道コムギ用除草剤として上市した「キタシーブフロアブル」は順調に売上を伸ばしています。今後も南米、アジア、東欧及び国内での開発を進め、「アクシーブ」のグローバルブランドの確立及び販売・普及促進を推進します。

当社は2019年にCorteva Agriscience社から中国を除くアジア・太平洋地域における「ベンスルフロンメチル」事業を譲受いたしました。「ベンスルフロンメチル」は水稲における広葉、カヤツリグサ科雑草に広く効果を示し、移植、直播栽培のいずれにも適用可能な水稲用除草剤として農業の発展に大きな貢献をしてきました。当社においても「トップガンR」をはじめとして、本剤を含有する水稲用除草剤を数多く開発、販売しており、2023年には「ラオウ剤」を上市しました。新たな混合剤の開発もすすめております。また、2020年にGowan社より殺菌剤「ペンシクロン」の日本国内の独占販売権を獲得し、2021年から販売会社に製品を供給しております。「ペンシクロン」はリゾクトニア病害に卓効を示し、水稲を中心とした農耕地及びゴルフ場を主とした非農耕地にて使用される主要殺菌剤で、今後も、安定供給と新たな製品開発をすすめてまいります。

さらに環境負荷低減型農薬の開発に積極的に取り組んでおります。そのひとつとして、水稲用の水面施用製剤「豆つぶ」があります。「豆つぶ」は当社独自の製剤技術を活かした軽量・省力・簡便な散布が可能な剤型です。手撒き、ひしゃく、無人ヘリコプターでの散布に加え、スマート農業として注目されている「ドローン」での散布にも適しています。商品ラインナップとして、除草剤では「トップガン剤」、「エンペラー剤」、「ツイゲキ剤」をはじめとする多くの製品をそろえ、殺菌剤「オリブライト剤」、「コラトップ剤」、殺虫剤「スタークル剤」、殺虫殺菌混合剤「ワイドパンチ剤」などの「豆つぶ」も販売しております。また、「豆つぶ」を水溶性フィルムでパックした「ジャンボ剤」もあわせて販売しております。化学製品以外では、環境にやさしい微生物農薬として水稲用種子処理剤「エコホープDJ」、園芸殺菌剤「エコショット」などの「エコシリーズ」を開発・販売し、さらに果樹類やバラの根頭がんしゅ病に対して卓効を示す新規微生物農薬「エコアーク」を開発し、2025年の上市を想定しております。今後も継続して、新しい微生物農薬やバイオスティミュラントの研究開発を進めております。

また、研究開発型企業として最先端技術を開発・導入する目的で、大学や国立研究開発法人などとの共同研究に積極的に取り組んでまいります。その一例として、経済産業省のエネルギー・環境新技術先導プログラム「ファインケミカルズ製造のためのフロー精密合成の開発」、「ライフインテリジェンスコンソーシアム」などのプロジェクトに参画し、外部研究機関から新たな技術の導入など、共同研究によって研究開発力の向上に努めております。

さらには、農薬開発で培った周辺技術を活用し、温室効果ガス低減技術の開発(農地からのメタン生成を抑制する資材)やゲノム編集技術を応用した環境ストレス及び病害虫耐性作物の研究開発も積極的に行っております。

化成品事業セグメントにおいては、従前からのクロロトルエン・クロロキシレン系化学品、農薬原体製造で培った有機合成技術を駆使した医農薬中間体や電子材料、高耐熱樹脂等に使用されるビスマレイミド類をはじめとする精密化学品、様々な分野で使用されているウレタン樹脂製工業製品の原料であるウレタン硬化剤、産業用薬剤、環境衛生薬剤、医療用殺菌剤原体等の産業薬品、発泡スチロールを主体とした化成品について、グループ全社保有の原料及び独自の技術・設備を生かした市場競争力のある製品開発に取り組んでおります。

その他セグメントにおいては、酵素類、生菌剤、ファフィア酵母(飼料添加剤)等のバイオ製品について、グループ全社の技術力を生かした高付加価値製品の開発に取り組んでおります。

以上のように、農薬及び農業関連事業では、従来の研究成果の蓄積を活用し、応用することによって、日本政府が策定した持続可能な食料生産戦略である「みどりの食料システム戦略」に対応した製品開発を進め、化成品事業では豊かな社会を実現するための製品開発に取り組み、両事業ともに環境にやさしく自然と調和した新たな製品及び技術の創出への取り組みを、今後も継続してまいります。

当社の国内研究拠点については、生物科学研究所内に農薬研究センター、生命・環境研究センター、化学研究所内にプロセス化学研究センター、製剤技術研究センター、創薬研究センターとあわせて5研究センターを設置して、より専門性の高い技術集団による効率的な研究開発を進めております。また、2021年より建設を進めてまいりました化学研究所(ShIP:Shimizu Innovation Park)は2023年10月より本格稼働を始めました。静岡県内に分散していたプロセス化学研究センター、製剤技術研究センター、創薬研究センターを当社発祥の地である静岡市清水区の旧自社工場敷地内に統合し、そのシナジー効果により、新農薬創製、製品化研究のスピードアップと更なる研究開発分野の拡大を目指してまいります。また、この化学研究所に新素材開発研究室を新設しました。新素材開発研究室では、当社の研究員のみならず、グループ会社の研究員も協働するオープンラボとすることで、当社グループを横断した取り組みによって英知を結集させ、さらには産・官・学との連携も取り入れながら、グループ独自技術を活かした付加価値の高い電子材料分野などの新製品開発を行います。

また、株式会社理研グリーンのグリーン研究所も加え、新規薬剤の探索合成から生物評価、安全性・環境科学評価、製剤技術開発、工業的製造法確立まで一貫した研究開発体制を確立し、よりスピーディで効率的な研究開発を進めてまいります。

さらに、米国におきましてはK-I CHEMICAL U.S.A. INC.が農薬の現地評価を行うミシシッピ試験場を配し、韓国では子会社のKUMIKA KOREA CO., LTD.が韓国での開発業務を担っております。これら各研究開発拠点の有機的かつ効率的な運営により、自社新規農薬、自社独自製剤技術を用いた新製品の開発のスピードアップと品質保証を含むグループ全社の研究開発技術の更なる向上を図ってまいります。

 なお、当連結会計年度における研究開発費の総額は6,187百万円であり、各セグメントの内訳は以下のとおりであります。

①農薬及び農業関連事業      5,682百万円

②化成品事業             488百万円

③その他              17百万円

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