クミアイ化学工業
【東証プライム:4996】「化学」
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企業概要
文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
(1) 会社の経営の基本方針
当社グループは、創立当初より安全で環境負荷の少ない農薬の開発に傾注し、国産第1号農薬の開発・製品化以来、国内のみならず、世界各地で自社開発品を中心とした製品の普及を進め、「いのちと自然」を守り育てることをテーマに、世界規模での農作物の生産性向上に貢献できるよう取り組んでおります。
当社グループは、事業の中核をなす農薬の研究開発を根幹として、効率的な経営資源の投入を図ります。また、生産、物流、販売の連携を図り、収益本位の経営に徹底し、売上、利益の確保、増大ができる企業体質を確立することを経営の基本方針としております。
(2) 目標とする経営指標
今後も持続的な成長を続け、収益力の一層の強化を目指し、企業価値の向上につなげていくため、当社グループは、「売上高」、「営業利益」ならびに株主資本及び総資本の運用効率を示す指標である「自己資本利益率(ROE)」等を重要な指標として認識しております。
中期経営計画における2026年10月期の目標は、売上高185,000百万円、営業利益16,000百万円、自己資本利益率(ROE)11.0%以上と設定しております。
(3) 経営環境
農薬を取り巻く環境に関しては、海外の景気減速の可能性や、燃料や原材料価格の高騰などによる物価高、及びウクライナ情勢や中東情勢等の地政学的リスクの高まりや、米国の政権交代による政策変更の可能性等により、先行きは依然として不透明な状況が続くことが予想されております。
国内では農業従事者の高齢化・人手不足による耕作面積の減少など依然として課題が多くありますが、みどりの食料システム法が2022年7月に施行され、環境負荷低減や労働生産性向上に向けた取り組みが活発化しております。
新型コロナウイルス感染症の5類感染症移行に伴い、経済活動が徐々に正常化、緩やかに景気回復が続いておりますが、原材料価格の高騰や為替相場の変動もあり、今後の動向に注視する必要があります。
(4) 中長期的な経営戦略及び優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題
中国を中心とした海外の景気減速の可能性や、燃料や原材料価格の高騰などによる物価高、及びウクライナ情勢や中東情勢等の地政学的リスクの高まりや、米国の政権交代による政策変更の可能性等により、先行きは依然として不透明な状況が続くことが予想されます。
当社グループの中核事業である農薬及び農業関連事業は、世界の人口増加に伴う食料及び飼料需要の増加などを背景として今後も拡大するものと考えられますが、上記のような不透明な状況や流通在庫の増加に起因した世界的な在庫適正化の動きを背景に、市場環境は一層厳しさを増しております。
このような情勢の下、当社グループにおきましては、2024年10月期を初年度とする中期経営計画「Create the Future ~できる。をひろげる~」を策定し、企業価値の向上に向けた重点施策の遂行に全力で取り組んでおります。
国内販売部門におきましては、水稲用除草剤の「エフィーダ剤」及び「ベンスルフロンメチル剤」の更なる普及基盤の拡大により、水稲一発処理除草剤市場におけるシェア1位の維持を図ってまいります。また、水稲用殺菌剤「ディザルタ剤」の育成と拡販に注力するとともに、スマート農業推進のための継続的な取り組みを進めてまいります。
園芸剤分野では「ピリベンカルブ剤」など自社開発剤の推進活動を強化するとともに、マーケティング戦略に基づく新規導入剤の早期最大化に取り組んでまいります。
さらに、当社微生物農薬であるエコシリーズの再プロモーション等により、「みどりの食料システム戦略」で求められる環境負荷の低減に貢献してまいります。
海外販売部門におきましては、事業の中核をなす「アクシーブ剤」について米国、ブラジル、オーストラリア、アルゼンチン等の主要市場において新規混合剤の開発を推進し、適切な販売促進支援を行い、継続的な販売拡大・維持を図ります。オーストラリアでジェネリック品が市場参入、アルゼンチンでも参入見込みですが、ジェネリック品の分析等によって当社保有の特許権の侵害が認められた場合には、知的財産権の保護のため提訴を含めた対応を実施する等、様々なジェネリック品対策を施します。同時に、当社在庫の適正化を図っていきます。また、「エフィーダ剤」の韓国での販売拡大、及びその他欧州、米州、アジアでの開発、「ディザルタ剤」の韓国における新規混合剤の上市、販売推進、アジアを中心とした開発を行います。
今後も自社製品の普及、技術指導を通して、世界の農業の生産性向上と生産者の収入増加へ寄与してまいります。
特販部門におきましては、自社農薬製剤技術の有効活用による新規製剤受託加工品目の獲得、「エフィーダ剤」、「ベンスルフロンメチル剤」等の自社開発品目の農耕地・非農耕地分野での拡充により、売上・利益の最大化を図ってまいります。また、自社原体を他社メーカーに向けさらに導出するべく、販売ルートの多様性確保を図ってまいります。
化成品事業におきましては、アラミド繊維原料となるクロロキシレン系化学品の更なる成長への展開と、ビスマレイミド・アミン硬化剤・産業用薬品・発泡スチロール類等の拡販、市場動向に合わせた受託製造ビジネスの拡大により売上・利益の最大化に努めてまいります。また、研究開発部門及びグループ化成品事業の連携強化と推進による高付加価値な新規ビジネスの創出により、化成品事業領域の拡大を図ってまいります。
その他の事業におきましては、建設業では、引き続き自社ブランド確立と一般顧客に対する認知度向上に取り組み、工事受注量拡大を図ってまいります。印刷事業では、機械化の促進など生産効率の向上による原価低減に一層取り組むとともに、販売手法の開拓を通じて既存顧客の維持及び新規顧客の拡大を図ってまいります。物流事業では、ホワイト物流推進運動の継続と機械化による労働負荷軽減や業務効率化を図るとともに、顧客に合わせた最適な物流サービスの提供に取り組んでまいります。また、物流データの見える化や物流業務のデジタル化による効率化と収益改善にも注力してまいります。
生産資材部門におきましては、安全操業を前提に原体・製剤の効率的生産、製造条件改善による原価低減、効率的生産のための設備投資と工場機能の強化に取り組んでまいります。また、温室効果ガス排出量削減や廃棄物削減を加速し、よりクリーンな工場の実現を図ってまいります。調達に関しては、海外営業部と協働しアクシーブの在庫の適正化に注力するとともに、各種原体及び原材料のコスト低減に向けたサプライヤーとの交渉を進めて参ります。
研究開発部門におきましては、従来の化学農薬に加え、微生物農薬、バイオスティミュラント等の開発により「みどりの食料システム戦略」にも対応した、環境にやさしく自然と調和した新たな製品の創出に取り組んでまいります。新規殺ダニ剤「バネンタ」と、果樹やバラの根頭がんしゅ病防除用の微生物農薬「エコアーク」は国内での農薬登録の申請をし、審査が進められている中で、上市に向けた準備を進めており、継続して海外評価にも着手しております。
農薬事業の中核をなす「アクシーブ」はジェネリック品に対する知財戦略を推し進めるとともに、新規混合剤、新製剤開発による差別化を進めてまいります。「エフィーダ」、「ディザルタ」については、欧州、米国をはじめとするグローバル開発を進めると同時に、原体製造の最適化による利益性改善も進め、事業の最大化を目指してまいります。また、地球温暖化による環境変化、人口増加、PFAS等の規制を見据えた新技術の開発研究に取り組むなど、研究段階から社会課題の解決を視野に入れた製品開発・新技術開発に一層取り組んでまいります。
化学研究所Shimizu Innovation Park(ShIP)は2023年10月より本格稼働を始め、統合した3研究センター間で大きなシナジー効果を発揮しております。ShIPとともに研究開発の原動力となる生物科学研究所につきましても、2027年に新研究棟の稼働を目指し建設を進めております。化学研究所と生物科学研究所を両輪として、新農薬創製・製品開発のスピードアップと、研究領域の拡大を目指してまいります。
サステナビリティ経営におきましては、当社のコア事業である農薬及び農業関連事業に深く関わる気候変動や環境負荷低減に対する取り組みとして、当社グループで排出する温室効果ガス排出量を2030年までに2019年比30%削減とする目標を設定し、CO2フリー電力の導入やCO2排出量の少ない燃料への転換により着実に削減を進めています。さらに100年企業となる2048年までのカーボンニュートラルの実現に向けて効果的な削減策の検討を継続します。また、地域の生物多様性、豊かな景観を維持する活動として、北海道福島町の自社保有林640haの適正な維持・管理や静岡県菊川市において希少な生物や植物も生存できるような3,030㎡のビオトープ(クミカレフュジア)の造成を行っています。環境省が主導する「30 by 30アライアンス」にも参加し、生態系の維持や回復に向けた活動に取り組んでまいります。
社会に関わる取り組みとして、当社は2023年9月18日に「国連グローバル・コンパクト」への取り組みを表明しました。「国連グローバル・コンパクト」とは企業による自主行動原則で、署名した企業は、「人権」「労働」「環境」「腐敗防止」の4分野10原則に対して、経営トップ自らがコミットメントし、実践してまいります。また、人的資本経営を目指した人財戦略として、当社の期待する人財像を設定し、その人財像を確保するため、採用、育成、配置/キャリア、人事制度、評価、報酬、ダイバーシティ、ワークライフバランスの課題別に人事施策を策定し、取り組んでまいります。
2024年11月1日に横山新社長の下、新体制に移行し、これまでに築いた経営基盤を引き継ぎ、更なる企業価値の向上を目指してまいります。そのためには、100年企業に向けた当社グループのあるべき姿を追求し、役職員の皆が「誇れる会社」となるよう、経営に邁進してまいります。
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