クオルテック 【東証グロース:9165】「サービス業」 へ投稿
企業概要
当社の経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は、以下のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当事業年度末現在において当社が判断したものであります。
(1)経営方針
当社は、信頼性評価と微細加工の技術を進化させ、表面処理・実装・パワー半導体の分野における技術開発と能力向上を推進し、未来品質の創造に貢献するという経営基本方針を掲げております。環境性能と安全性能の評価技術を確立し、安心・快適な未来社会の実現に貢献いたします。
(2)経営環境
(信頼性評価事業)
自動車業界における「CASE(注)」を背景に、「クルマ」の概念が大きく変わろうとしています。近年では環境問題への対応として掲げられたカーボンニュートラルの目標達成に向け、自動車の電動化(EV、PHV、HV等)に向けた開発が進められており、次世代車の普及は世界的に年々増加するものと見ております。
これらを背景に自動車の信頼性評価試験の市場では、特に電動化・自動運転に向けた車載機器の信頼性評価の需要が大きく伸びております。製品固有の試験需要や電動化、自動運転技術に伴う高度な試験への対応、また試験設備への投資ハードルやソフト開発へのリソースシフトを目的に、外注市場規模も大きくなっております。また、電動自動車に多く実装されるパワー半導体需要は今後も増加すると考えられ、加えてより高性能な半導体の開発も盛んに進められております。
(微細加工事業)
当事業では、車載部品、ヘルスケア、通信その他の分野で拡大を続けて参りました。今後注力するヘルスケア分野では、バイオセンサ市場の成長が見込まれます。市場成長に加えて開発サイクルが長く、参入障壁も高いことから、長期に亘る安定受注が期待できる市場であると考えております。
また、当社が加工するビルドアップ基板やフレキシブルプリント基板などの電子部品は、通信その他分野ではスマートフォンを代表とする通信系デバイスに使用され、車載部品分野では、ミリ波レーダやカメラを使った自動ブレーキ・車線維持支援などの先進運転支援システムなどの自動運転に関わるもの、ハイブリッド・ガソリンから電気に完全シフトした電気自動車の各種制御基板や、ヘルスケア分野では超音波プローブ・CTスキャナーなどの医療機器に至るまで、幅広い分野に使用されていることから、どの分野においても微細加工の需要が増加すると見ております。また、技術的な進歩は目まぐるしく、短小軽薄・高多層・高精細化が進み、次世代半導体に採用されるガラス基板に対する微細加工や5G、6Gで必要となる低誘電材など、当社が得意とする難加工材への加工のニーズがより一層高まると考えております。
(その他事業)
その他事業に属するバイオ事業では、バイオ医薬品関連の産業化は、経産省主導の国家戦略として推進されております。また、遺伝子検査の事業においては、2019年の動物愛護管理法の改正により、ペット販売における遺伝性疾患の発生状況の対面での説明が義務化されたことから致死性遺伝性疾患に対する関心の高まりを受けて、遺伝子検査の需要の拡大が見込まれると考えております。
(注)CASE
自動車業界において次世代技術やサービスを意味する「Connected(つながる)」、「Autonomous(自動運転)」、「Shared(共有)」、「Electric(電動化)」の4つの英語の頭文字をつなげた造語。
(3)経営戦略等
当社では、今後も発展を続ける自動車業界において、そのパラダイムシフトの方向性を的確に把握、認識し、その変化に素早く対応できるように、日ごろから体制構築を図っております。
信頼性評価事業において、当社の強みは、「独立系検査会社」であることと、試験ラインナップが多いことで実現する、幅広い顧客のニーズにワンストップで応えられる「Total Quality Solution」が可能であることと認識しており、ケイパビリティの優位性があるものと考えております。
昨今の検査データ改ざんに見られる企業の不正を無くすことが当社の存在意義であり、メーカーが自らの検査データを改ざんする可能性があるような状況においては、当社のような中立な第三者が担う信頼性評価試験の重要性が高まると考えております。当社は、これまで培った技術力を発揮することにより業界内での存在感を増していきたいと考えております。
当社は、品質検査や分析、測定などを行う試験所等に対する要求事項を定めた試験所認定と呼ばれるISO/IEC17025の認定を取得しており、当社の技術力は国際的に認められており、今後も同認定を維持して参ります。高度な分析には高性能の装置や設備が不可欠になることから、以前より設備投資を行って参りました。顧客の要望に応えるために必要な設備を揃えることで、技術やノウハウを蓄積しております。
「(2)経営環境」でも述べたとおり、CASEを背景に2030年頃からEV(電気自動車)市場が急拡大すると言われており、当社は日本でCASEを推進している企業と取引しております。
市場が急拡大する前段階にある試作品段階では、量産時の製品の安全性を確保するため、何度も信頼性評価試験が繰り返されます。当社はこれらの需要を着実に獲得し、その後の量産品段階での需要獲得に繋げることを目指して参ります。
自家用車の電動化が進むその先には、モビリティの小型化や建設機械及び航空分野の電動化も進むものと予測されます。そのような環境においても、これまでどおり当社の高度な技術力に基づいた信頼性評価試験を行うことで、顧客とともに成長できるパートナーとしての確固たる地位の獲得を目指して参ります。
更に、裾野の広い自動車業界に属する主要顧客との関係性を強化、確立することで、幅広く関連企業のニーズ開拓に繋げていきたいと考えております。
微細加工事業における市場環境は、半導体不足によりスマートフォン向けの電子基板、モジュール基板などの製品の生産が減少する中でも、自動運転に関連した製品や医療機器などは安定した生産が続くと考えております。それらの市場をターゲットに高付加価値、特殊用途、小ロット多品種でも製品ライフサイクルの長い製品に関する試作の受注拡大を進めており、これらの量産受注の獲得を目指して参ります。
当社は同事業において20年以上の歴史を持っており、大ロットの量産から、小ロット多品種の試作、材料評価まで幅広い対応力を持つ強みと24時間受付、稼働することで幅広いニーズをキャッチする体制を整えております。また、フェムト秒グリーンレーザ加工(注)など特殊な材料の加工や特殊な工法が可能なことも強みのひとつであり、これら当社の強みを活かして医療分野などで大ロット製品の量産受注を目指すなど、ターゲット市場の開拓を進める考えです。
その他事業において、バイオ事業では、国家戦略として進められるバイオ医薬品関連の産業化の機運を契機に人員体制を強化し、バイオ医療関連製品の受託検査の受注伸長を図ります。
販売戦略としては、営業本部を中心としたマーケティングリサーチによる効果的な販売戦略の立案、当事業年度に新たに熊本営業所を開設した九州地区の半導体や電子部品メーカーへの販路拡大や同業他社空白地帯(北海道、東北、中四国)への積極的な営業を展開し、潜在顧客の開拓に取組みます。
技術戦略としては、顧客の多種多様なニーズに対応できる技術陣が当社の強みであり、特異技術を駆使した特殊解析のニーズへの対応力を保つことで、競争優位性を確保し、更に高度なニーズにも応えられるよう、人材育成と技術の伝承に注力し、期待以上の提案ができる集団を目指して参ります。
当社が重要と考える自動車市場は、時代と共に変化しながらも益々成長する可能性を秘めていると考えており、同市場において当社は、顧客のニーズのひとつひとつに実直に応えることで着実な成長を目指します。
当社はこれからも、環境性能と安全性能の評価技術を確立し、安心・快適な未来社会の実現に貢献することを経営基本方針とし、「未来品質の創造」をスローガンに全てのステークホルダーのため、社業に邁進して参ります。
(注)フェムト秒グリーンレーザ加工
パルス幅(時間幅)が数ピコ秒(1兆分の1秒)よりも短いレーザ加工で、熱拡散する時間を与えずに分子結合を切断、除去することで、熱影響の少ない高品位な加工を可能にする工法。
(4)経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等
当社は、継続的な事業拡大及び成長の観点から、売上高及び売上高営業利益率を重要な経営指標としており、業界動向及び当社業績の推移等を勘案し、適切な目標設定を行い、企業価値向上に努めて参ります。
売上高を指標とすることは、当社の主要市場の成長や同業他社の売上高との比較、分析に有用であると考え重要な指標と位置付けております。当社が市場での競争優位性を確保しつつ売上高を向上させるために、主要市場の動向を注視し、ニーズに応える技術力の向上に取組んで参ります。併せて、事業の収益性、販売活動の効率性を図る観点から、売上高営業利益率を重要な指標と位置付けております。当社が市場での競争優位性を確保するために、高い付加価値の提供と効率的かつ効果的な販売活動に取組んで参ります。
(5)優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題
信頼性評価と微細加工の技術を進化させ、表面処理・実装・パワー半導体の分野における技術開発と能力向上を推進し、未来品質の創造に貢献するという経営基本方針を掲げる当社が、持続的な企業価値の向上を図るうえで、対処すべき課題として認識している事項は以下のとおりであります。
① 自動車業界以外の柱となる業界の開拓
当社の主要事業である信頼性評価事業においては、特に自動車業界に属する特定顧客への売上割合が高い状況です。今後は、同事業におけるパワーサイクル試験や断面研磨、分析・解析の分野において特定顧客への依存度を低減するための水平方向の拡販活動や、微細加工事業においてヘルスケア分野への進出による事業規模拡大を図ること等により特定顧客への売上割合の低減を図って参ります。
② 設備の増強
顧客が取組む新規開発には、様々な試験、分析が繰り返し行われます。近年はより高度な試験、検査のニーズが高まっております。また、半導体需要の増加に伴う試験、検査需要の増加に対応すべく、効率化の重要性が更に増すと考えております。これに対応するため、設備の増強による生産性向上、最新設備への切り替えを適宜行うことにより、より高度な顧客ニーズへの対応を図って参ります。
③ 技術力の向上
顧客の新規開発フェーズでは、様々な困難に直面する場面が多くあり、その困難を共に解決する技術力を高める必要があると考えております。これまでの経験により蓄積された見識による技術力に加え、新たな試験や検査への取組みでより知見を深め、更なる技術力の向上を続けて参ります。
④ 新規事業の醸成
当社は、2023年12月14日付でPatentix株式会社(本社:滋賀県草津市、代表取締役社長:衣斐 豊祐)と資本業務提携に関する合意書を締結し、これを足掛かりに更なる事業領域の拡大を図るべく、半導体製造分野への進出を図って参ります。
⑤ 優秀な技術者の採用及び育成
当社では、優秀な技術者の採用と育成が事業成長に必要不可欠であると認識しております。昨今の技術者の採用市場における獲得競争は更に激化しており、人材確保には厳しい状況が続くものと予想されますが、引き続き積極的な採用活動を進めて参ります。併せて、採用後も高いモチベーションを維持しながら安心して働くことができる労働環境づくりに取組んで参ります。
⑥ 営業体制の強化
当社の継続的な事業成長には、既存顧客のニーズを的確に把握するための信頼関係強化に加え、当社の技術力を必要とする新しい市場の開拓、拡大が必要であると認識しております。そのため、既存顧客の高度なニーズへの迅速な対応が可能な体制の強化、営業本部を中心としたマーケティングリサーチによる効果的な販売戦略立案、新規に営業所を開設した九州地区や同業他社空白地域への積極的な拡販活動、当社の技術力を広くアピールするためのホームページ上やメディアへの露出増進、展示会への積極的な出展等の活動を行い、新規顧客の開拓に取組んで参ります。
⑦ 情報セキュリティの強化
当社では、技術や営業に関する情報、取引先の重要情報など多くの情報を取扱っており、情報セキュリティの強化が重要であると認識しております。
情報セキュリティに関する規程等を策定し、情報セキュリティ委員会を通じて、情報資産の機密性、完全性、可用性の視点から情報セキュリティの維持、向上の取組みを行うなど、これら情報資産の流出や外部からの攻撃の対応策を徹底し、情報資産の毀損による損害の防止や取引先からの信頼に応えるべく、情報セキュリティの強化を継続的に図り、万全な防御体制の構築を進めて参ります。
⑧ 内部管理体制の強化
当社は、より一層の事業拡大を進めるうえで、また上場企業としての責務を果たすため、内部管理体制の強化が重要な課題であると認識しております。上場以降進めている、バックオフィス業務の効率化を図るための業務改革や、事業運営上のリスクの把握と管理をより適切に行う強固な内部管理体制を維持し、引き続きコンプライアンスを重視した経営管理体制を敷くことで経営の公平性や透明性を確保いたします。
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