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企業概要
文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において当社が判断したものであります。
(1) 経営方針
当社は「リモートワークを当たり前にする」というミッションのもと、リモートワーカーがより活躍できる環境を構築するべく、あらゆる仕事のリモート化の実現を目指しております。
当社は自らリモートワークを実践しており、取締役会、監査役会、監査役監査、内部監査等を含む全ての会議体や業務をリモートワーク環境下で実施しております。
事業においては、日本・海外の各所に所在するリモートワーカーによって、マーケティング・商談・契約・役務提供の全てをオンラインで提供しており、「リモートワークを当たり前にする」というミッションを自ら体現することで、顧客企業に新しい働き方とそれによる付加価値を提案しております。
従業員の研修活動としては、セキュリティブックの配布、eラーニングや理解度テストを定期的に実施しております。また全社周知が必要な重要事項等については社内ポータル上で適時に情報配信を行い、啓蒙活動を率先して行っております。
(2) 経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等
当社のミッションに基づいた持続的な成長と企業価値向上を示す指標として、売上高、事業セグメント別売上高、売上総利益、売上総利益率、販管費、販管費比率、営業利益、営業利益率を経営上重要な指標として位置付けております。
また、売上高の拡大には、顧客企業稼働社数、解約率・継続期間、ARPU、MRR、広告費、CAC、LTV、獲得コスト(CAC)の回収期間、LTV/CAC(ユニットエコノミクス)の拡大・改善が必要であると考えております。
以下では、当社の全社及び事業セグメント別の売上高、売上総利益、販管費、営業利益及び各KPIの推移を掲載しており、収益性を維持、向上しつつ、成長性が拡大していることを示していると当社では考えております。
財務指標の推移
(単位:千円) | |||||
| 2019年8月期 | 2020年8月期 | 2021年8月期 | 2022年8月期 | 2023年8月期 |
売上高 | 940,565 | 1,480,672 | 2,235,478 | 3,338,001 | 4,179,385 |
WaaS事業 | - | - | 1,783,627 | 2,653,315 | 3,320,505 |
その他事業 | - | - | 451,851 | 684,685 | 858,879 |
売上総利益 (売上総利益率) | 302,969 (32.2%) | 572,233 (38.6%) | 922,669 (41.3%) | 1,281,953 (38.4%) | 1,618,564 (38.7%) |
販管費 (販管費比率) | 790,240 (84.0%) | 812,827 (54.9%) | 1,284,802 (57.5%) | 1,444,715 (43.3%) | 1,615,639 (38.7%) |
営業利益 (営業利益率) | △487,271 (△51.8%) | △240,594 (△16.2%) | △362,132 (△16.2%) | △162,762 (△4.9%) | 2,925 (0.1%) |
(注) 2019年8月期~2020年8月期において、事業セグメント別の売上高については集計していないため記載しておりません。
KPIの推移
| 2021年8月期 | 2022年8月期 | 2023年8月期 |
顧客企業稼働社数 (注)1、2 | 826社 | 1,046社 | 1,168社 |
解約率 (注)1、3 | 4.7% | 3.8% | 4.0% |
ARPU (注)4 | 248千円 | 292千円 | 299千円 |
MRR (注)1、2、5 | 2.1億円 | 3.0億円 | 3.3億円 |
広告費及び販促費 (注)1、6 | 322百万円 | 271百万円 | 253百万円 |
CAC (注)1、7 | 63万円 | 48万円 | 40万円 |
LTV (注)1、8 | 213万円 | 286万円 | 287万円 |
獲得コスト(CAC)の回収期間 (注)1、9 | 6.4ヶ月 | 4.4ヶ月 | 3.6ヶ月 |
LTV /CAC (注)1、10 | 338% | 588% | 703% |
(注) 1.各数値は契約が3ヶ月以内に終了する顧客及びReworkerのみ利用している顧客を除いた数値(継続案件)であります。
2.各期8月末時点の数値であります。
3.解約率は、当期解約社数を各月の月初時点稼働社数の和と当期開始社数の和で除した数値であります。
4.ARPUは、Reworkerのみ利用している顧客を除いた年間売上を、前期末時点稼働社数に期中の開始社数の二分の一(月途中開始案件を鑑み概算値として算出)を加え解約社数を減じた数で除した数値であります。
5.MRRは、継続案件の月額売上であります。
6.広告費及び販促費は、会計上の広告宣伝費と販売促進費の和であります。
7.CACは、広告費及び販促費と顧客獲得に要した営業人員の人件費の和を、当期の受注数で除した数値であります。
8.LTVは、ARPUを粗利率で乗じた数値を、解約率で除したものであります。
9.獲得コスト(CAC)の回収期間は、CACを、ARPUと売上総利益率を乗じた数値で、除したものであります。
10.LTV/CACは、LTVをCACで除した数値であります。
(3) 経営環境
少子高齢化が進行し、生産年齢人口が減少している昨今、1億総活躍社会の実現を目的に2019年に開始された働き方改革以降、社会では多様な働き方が生まれております。2020年のコロナウイルスの蔓延を契機として、リモートワークが加速度的に社会に受容されておりますが、労働人口の減少による中小企業の人材不足は継続して発生しております。スキルや経験があるにもかかわらず、労働時間や居住地などを理由に活躍できる機会を制約されている人材もいることから、当社は、リソース不足を課題とする顧客企業とワーカーとの間に立ち、それぞれに「労働機会」「リソース」を提供することで、双方の課題解決に寄与していきたいと考えております。
従来のBPO企業においては、オフィスや支店を構えることによる地代家賃や維持費用、出社や支店間移動に伴う通勤移動費用、ワーカーが作業をしていないアイドルタイムの給与等が生じるため、これらの費用を回収可能な価格設定とする必要があり、販売ロットが大きくなる傾向がございました。その結果として、顧客企業の資金事情によっては導入ハードルが高く、利用しにくいという側面があったものの、当社は、これらの課題をリモートワークの利点を活かし、最大限の費用排除を可能といたしました。この結果、販売ロットの小ロット化を実現し、資金事情によりBPO利用が難しかった中小企業や個人事業主などを中心にサービス導入が広がり、2023年8月末時点でサービス導入企業数累計は約4,300社となっております。実際に、顧客企業の8割以上が従業員数300人以下の中小企業になっており、幅広い顧客企業が利用できるビジネスモデルを実現しているといえます。
フルリモートワーク(注11)を駆使することによる従前の企業との差別化要因は以下の4点であります。
(注) 11.フルリモートワークとは1日も出社しない完全なリモートワーク形態のことであり、当社においては、重要書類・備品管理等に必要な人員を除き、2023年8月末日時点において従業員(臨時従業員含む)の98.6%がフルリモートで勤務しております。
① フルリモートワークは就業者にとって魅力があり、高い採用力を維持できている
従前からITエンジニアなど一部の限られた職種においてリモートワークが活用されておりましたが、2020年コロナウイルスの蔓延を契機に多くの会社・職種でリモートワークの導入・活用が進みました。コロナウイルスの蔓延が一定の落ち着きを見せてくると、一部の企業ではリモートワークから出社に戻す動きが見られ、緊急事態宣言後のテレワークの見通しにかかるアンケート調査(注12)で、「テレワークの頻度を下げる・実施しない」と回答した割合は、回答者の半数を超える57.2%に上りました。一方で、今後もテレワークをしたいという回答は、回答者の86.9%に上り、出社に戻したいという風潮とリモートワークを継続したいという風潮に大きなギャップが生まれているものと思われます。2021年9月~2022年8月における正社員・契約社員・派遣社員の求人応募数の月平均は約2,000名となっており、約400名の従業員(臨時従業員を含む)が入社しております。コロナウイルス蔓延期間中から収束の兆しを見せ始めた同期間において、当社のリモートワーク求人への応募は好調に推移しており、高い採用力を維持しているといえます。
(注) 12.アデコ株式会社による「新型コロナウイルス感染症の拡大との関連を中心としたテレワークに関する調査」(2020年7月発表)より引用。
② フルリモート環境においては適した専門性を持つメンバーをすぐに見つけ登用できる
新規事業やプロジェクトの立ち上がりの際は、必要な人員を固定で求人・採用する必要があり、且つ案件の開始までに一定の時間が必要となります。当社においては、フルリモートにより、時間的・地理的な制約を最小限にすることで、多くのリモートワーカーが当社事業に参画しております。当社に登録のあるリモートワーカーの中から専門性の高いスキルを有する登録者を、案件ごとにスピーディーかつ柔軟に活用することが可能です。その結果、新たな取り組みの際、適した専門性を持つメンバーを早期に調査・アサインするなど、チームの組成がしやすく、スピード感をもった事業の推進を可能にしております。
③ 800名超の大規模組織におけるフルリモートワーク運営を実現するインフラ・運用を独自に構築
当社は2014年の創業から今日まで、フルリモートによる企業経営を自ら実践し、事業においても、各種サービスをフルリモートで顧客企業に提供しております。それらを実現するため、独自のインフラと運用方法を構築してまいりました。具体的には、独自サービスである採用メディアを運営し、リモートワーカーの集客を実施しております。その他、ワーカー管理、セキュリティ管理フロー、業務マッチングプラットフォーム、各種のディレクションシステムにおいて独自のシステム・運用を確立し、これらを最大限に活用することにより、約800名の従業員(臨時従業員を含む)を有する大規模なフルリモートワークの事業運営を実現しております。
④ フルリモートワークを駆使し、タスク毎に定価でリソース提供を可能に
従来のBPOでは、顧客企業がBPO事業者に見積依頼を行い、営業が案件別に個別提案を実施する流れでサービス提供がなされておりました。案件ごとに、対応する人員を固定で確保していく仕組みになっており、開始までの要件定義負担が大きく、定価も定まっていないことから、中小企業がBPOを利用しづらい実態がございました。それらの実態を受け、当社では、リモートワークを活用し必要な人材を時間単位で柔軟に組み合わせることにより、月額定価でのサービス提供を可能にしております。タスク単位で必要な人材を都度アサインできることから、開始までの要件定義の負荷を下げ、中小企業からの受注を拡大しております。
(4) 経営戦略
当社は創業から今日に至るまで、既存事業からの独立、新しいサービスの立案や海外展開をはじめとした新規事業の開発、M&Aを実施し、リモートワークによる各種サービスを展開してまいりました。「リモートワークを当たり前にする」というミッションの実現においては、セグメント拡大の実行による、事業・サービスの多角化が重要であると認識しております。セグメント拡大とは、「リモートワークを当たり前にする」というミッションの実現のため、あらゆる仕事のリモート化を目的に、事業やサービスを多角化する施策であります。現時点においては、「市場規模・成長性」「労働集約率の高さ」「リモートワーク化の容易さ」の3点を、新たな投資領域を決定する検討軸とみなしております。セグメント拡大を目的とした最適化された組織体制を以下のとおり構築し競争優位性を高めていきます。
<A:企画立案を担う組織>
CSO(注13)管轄の戦略部門にて、セグメント拡大における企画立案を担います。SOM(既存業務領域)から、SAM、TAMと事業領域を拡大していくため、投資領域の調査、M&Aの調査・実施、新規事業の企画立案等を専門的に担ってまいります。
(注) 13.CSOはChief Strategy Officerの略称であります。
<B:成長を担う組織>
COO(注14)が管轄する既存の各事業部とCRO(注15)が管轄するセールスマーケティングチームにて、安定的な事業運営のためのプロセス・体制づくりを実施いたします。売上成長を最大化するための事業運営KPI(稼働社数、解約率、ARPU、MRR)及びセールスマーケティングKPI(CAC、LTV、広告費、LTV/CAC)の拡大・改善を従前から進めております。各事業部において解約率の低減、ARPUの向上及びLTVの最大化を実現する施策を講じるほか、セールスマーケティングチームにおけるCACコントロールを一層緻密に実施してまいります。
(注) 14.COOはChief Operating Officerの略称であります。
(注) 15.CROはChief Remote work Officerの略称であります。
<C:コスト管理を担う組織>
既存の管理部門及び情報システム部において、既存事業のほか、セグメント拡大によって増加する事業のコスト管理を実施いたします。セグメント拡大によって事業の増加が見込まれますが、事業が増加した場合においてもコストの増加を抑制する仕組み作りを実施し、利益の最大化に努めてまいります。
(5) 優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題
① 当社サービスの認知度向上、営業活動の強化
当社が提供するWaaS事業やその他事業は、中小企業の人手不足や、コロナ禍においてリモートワークの認知度が向上したことにより、需要と供給の両面で追い風の状況であります。今後も高い成長性を維持していくために、新規顧客の獲得、クロスセル・アップセルなどによるARPUの向上のほか、ユニットエコノミクスは700%超と高い水準にあり十分な投資余力がある状態であるため、売上と利益のバランスを見極めながら、積極的に営業展開・広告投資を実施し、売上拡大に取り組んでまいります。
② 適正な営業利益の確保
組織として統一した品質を提供するとともに、適正な営業利益を獲得する体制を整備していく方針であります。当社では、独自システムを活用したキャスティング業務の自動化により業務を効率化することでフロントの生産性を向上させるとともに、計数管理を高度化し、販管費の増加を最小限に抑えるコストコントロールの徹底を図ることで適正な営業利益の確保に努めてまいります。
③ 情報管理の徹底
当社は、顧客から受託した業務に資する情報を取得し、当社正社員及び業務委託先間で必要に応じて共有しながら業務を行うため、データ保護責任者(DPO)を設置し、ISMSの取得などのオペレーションを確立するとともに、個人情報については、プライバシーマークを取得するなど、個人情報や機密情報の徹底した管理体制の構築・運用に努めております。当社は、これらの対策の重要性を認識した上で、今後も継続的に情報管理の徹底に努めてまいります。
④ 社内管理体制の強化
当社は成長段階にあるため、継続的な成長をしていくために、組織的な管理体制を整備・運用していくことが重要であり、経営の公正性や透明性を確保するために、内部統制システム強化に取り組んでおります。
事業が拡大していく中で、積極的な採用により当社の従業員の増加が見込まれます。当社では、業務における属人性を排除し、組織規模の拡大に対応した社内管理体制の充実やシステム化が必要不可欠であると考えております。
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