キッセイ薬品工業 【東証プライム:4547】「医薬品」 へ投稿
企業概要
当社は、「純良医薬品を通じて社会に貢献する」「会社構成員を通じて社会に奉仕する」という経営理念のもと、事業活動を通じて継続的に価値を提供するとともに、中期5ヵ年経営計画「PEGASUS」の基本戦略の一つとして「ESG/SDGsの推進」を掲げ、SDGsが目指す持続可能な社会と地球環境の実現に取り組んでおります。
持続的な社会の実現に向けて取り組むべき重要課題(マテリアリティ)については、当社事業との関連性とステークホルダーへの影響度の二軸から重要度の高い項目を絞り込み、事業活動と経営基盤に関するマテリアリティとして特定しました。当社事業活動に関するマテリアリティとして、「社会的に有用な製品の開発・提供」「高品質な製品の安定供給」「医療関係者、患者さんとのコミュニケーション」の3つに分類し、これらの活動を支える経営基盤に関するマテリアリティとして、「ガバナンスの強化・充実」「働きがいのある職場づくり」「環境への取り組み」及び「良き企業市民としての社会貢献」の4つに分類しております。
ガバナンス
年度経営計画目標、中期経営計画目標の達成に向けて、経営企画部門が各部門で作成する部門方針及び組織目標の進捗状況の確認を行っております。
また、部門横断的な要素が大きい、サステナビリティ関連課題については、SDGs推進委員会のもと活動を推進してきました。2023年4月からは、サステナビリティ活動の向上とその推進・管理体制の強化を目的として、人事部門と総務部門を管掌する取締役を委員長とする体制とし、サステナビリティ推進委員会に改編しました。サステナビリティ推進委員会(旧SDGs推進委員会)では、当社が優先的に取り組むべき重要課題(マテリアリティ)の特定や、主な取り組みに対するKPIの設定、進捗状況の確認など、サステナビリティ活動における諸施策を立案するとともに、関係部門との連携のもとこれを推進し、定期的に取締役会に付議・報告しております。なお、当社のコーポレート・ガバナンス体制については、「第4 提出会社の状況 4 コーポレート・ガバナンスの状況等」 に記載しています。
リスク管理
当社は、全社的なリスク管理の基本方針及び管理体制を「リスク管理規程」に定めるとともに、取締役会の諮問機関であるリスク管理委員会のもと、当社並びにグループ会社において発生し得るリスクの発生防止に係る管理体制を整備し、その進捗状況を監視しております。また、取締役会の諮問機関としてコンプライアンス委員会を設置し、コンプライアンス推進の適正化を図るとともに、コンプライアンス・プログラムの実践に取り組んでおります。
サステナビリティ関連リスクについても重要な経営リスクの一つとして捉えており、サステナビリティ推進委員会で特定したリスクについては、年に1回以上の頻度で、事業活動に及ぼす影響度の見直しを行います。また、事業活動への影響が比較的大きいリスクについては、費用対効果と緊急度を勘案し、優先順位をつけて対応策を講じております。その管理状況については、サステナビリティ推進委員会より取締役会に付議・報告するとともに、リスク管理委員会へ報告し、全社の総合的リスクマネジメントにつなげてまいります。
戦略
(1) 人的資本に関する取り組み
①人材育成方針
経営理念にあるとおり、当社の存在意義は純良医薬品・会社構成員を通じた社会に対する貢献と奉仕にあります。新薬開発の高度化、開発リスクが高まる中で、中長期的に継続して独創的な医薬品を開発し上市するには、経営環境の変化に的確かつ迅速に対応し、より高度な専門性を持ち独自性と卓越性を有した自律的かつプロフェッショナルな人材を育成していく必要があります。このような考えのもと、当社では「自律型人材の育成」をメインビジョンとして掲げ、以下の3点を人材育成方針としています。
・会社は、社員の成長と会社の発展の同時実現を目指す教育・学習環境を提供する。
・会社は、管理者らによる実効性の高い指導・育成を支援し、計画的な次世代育成を促進する。
・会社は、社員の自己啓発を奨励し、自発的な能力・キャリア開発を支援する。
②社内環境整備方針
自律型人材を育成していく環境整備として、当社では「働きがいのある職場づくり」を経営基盤に関するマテリアリティの一つとして特定しています。「働きがいのある職場」では、社員一人ひとりが「仕事へのやりがい、使命感」、「仕事の達成感」あるいは「仕事を通じた自己の成長」を実感しているものと考え、社員のエンゲージメントを重視し、定期的に測定しています。その分析結果をもとに、新たな人事施策の検討・実施につなげるとともに、次のような取り組みをしています。
(複線型人事制度の運用)
現在の経営環境は予見性に乏しく、常に変化の渦中にあります。このような中で当社が持続的な成長を遂げるためには、「年齢や年数」にとらわれることなく早期から存分に能力を発揮し、社員同士がお互いに強く刺激し合うことによって生まれる高次の一体感を醸成させること、そして、これまでの仕事観や価値観の転換を促し、他人や標準モデルとの比較ではなく、自らが起こすべき行動や果たすべき結果に対して、より健全な緊張感の宿る企業文化へと進化させていくことが重要であると考えます。このような考えのもと、①果たしている役割の適正な処遇反映、②スペシャリストの活躍機会の強化、③チャレンジ意欲の奨励の3つをコンセプトとする多様性と将来性を重視した複線型人事制度を運用しています。
(教育制度の運用)
人事制度と連動する形で、階層別研修を拡充しマネジメント層の強化を図っているほか、社員のより能動的な学習やリスキリングを促すために、eラーニングの拡充を通じて時間や場所の制約を受けない学習環境を整備し、ビジネス・IT知識、英会話などの継続的学習を奨励しています。
(ダイバーシティ&インクルージョンとジェンダー平等の推進)
様々な考え方や価値観を持った社員が相互に認め合い、刺激し合うことが企業にとってダイナミズムと創造性をもたらすとの認識のもと、「キッセイ薬品行動憲章」において「従業員の多様性、人格、個性を尊重し、倫理観の高揚と資質の向上に努めること」を行動規範の一つとして掲げ、全ての取締役及び社員がその実践を基本としています。
具体的には、「プラチナくるみん」の認定維持を通じた次世代育成支援や、女性活躍推進法に基づく女性社員が活躍できる基盤整備、65歳までの継続雇用制度の運用、障がい者がそれぞれの能力を発揮しながら業務に従事できる環境の提供などに取り組んでいます。
(健康経営の推進)
当社の経営理念の実現と行動憲章の実践のためには、まず社員一人ひとりが、心とからだの両面において健康でなければならないという考え方から、「キッセイ薬品健康宣言」を制定しています。そして、キッセイ健康保険組合と緊密に連携を取りながら、社員及びその家族の健康保持、増進に努めるとともに、社員一人ひとりが、「生きがい」や「働きがい」を感じながら、その能力を十分に発揮できる、健康的で活力のある職場風土づくりに取り組んでいます。
(2) 気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)提言に基づく情報開示
気候変動対策につきましては、持続可能な開発目標(SDGs)の「目標13:気候変動対応」を重要な経営課題の一つとして認識し、経営基盤のマテリアリティの一つとして「気候変動への対応」を特定しております。気候変動が当社事業に及ぼす影響については、気候関連財務情報開示タスクフォース(Task Force on Climate-related Financial Disclosures:「TCFD」)の枠組みで、1.5℃シナリオ及び4℃シナリオを想定し、グループの中核を担う医薬品事業において自社事業所が受ける影響を対象とし、リスクと機会を特定しました。特定したリスクと機会については、財務的な影響度と発生可能性の大きさから分析、評価を行い、事業戦略に与える影響度から優先順位に応じて、対応策の検討を行いました。1.5℃シナリオ※1による移行リスクとしては、将来の脱炭素関連の政策・法規制の強化によるコストの増加や、気候変動への取り組み不足によるステークホルダーからの評価低下があげられました。平均気温が4℃上昇するとした4℃シナリオ※2においては、物理的リスクとして、急性時には台風や豪雨等での水害による影響が、また慢性時には、気温上昇による空調コストの増加等があると認識しております。一方で、高効率設備導入によるエネルギー調達コストの削減や気候変動に対する積極的な取り組みや適切な情報開示による企業価値の向上等を「機会」として捉え、今後もレジリエンスの強化と開示情報の拡大に取り組んでまいります。なお、これらのシナリオ分析・評価の結果、事業戦略に重大な影響を及ぼす恐れのあるリスクは特定されませんでした。
※1.1.5℃シナリオはIEA NZEシナリオ等を参考に想定
※2.4℃シナリオはIPCC RCP8.5シナリオ等を参考に想定
指標及び目標
(1) 人材育成方針及び社内環境整備方針に関する指標と目標について
①社員のエンゲージメントレベル
当社の経営基盤に関するマテリアリティの一つである「働きがいのある職場づくり」を推進するために、当社では社員のエンゲージメントを重視し、「人事に関する意識調査」としてエンゲージメントレベルや人事諸制度への満足度を定期的に測定しています。社員が自分の会社や仕事についてどう思い、人事諸制度をどのように捉え、何を重要視しているかなどを把握し、人事施策の検証、効果的な推進に活用しています。
この調査は、総合満足度と5つのカテゴリー(エンゲージメント、職務満足、目標管理制度、処遇・キャリア、人事制度・ワークシチュエーション)で構成された調査で、各設問について「満足度」と各設問が会社生活においてどの程度重要であるかを「重要度」として測定しています。そして、満足度と重要度の二つの指標からポートフォリオ分析を行い、「重点維持項目」「維持項目」「重点改善項目」「改善項目」を特定しています。現中期5ヵ年経営計画「PEGASUS」中に実施した調査の結果(2022年)は下表のとおりです。
次期中期経営計画年度に実施予定の調査では、人事制度や教育制度の運用を通じて、エンゲージメント・職務満足に関する設問の平均点を3.30ポイント以上にすることを目標としています。
人事に関する意識調査結果(4点満点)
満足度評価尺度※の平均
項目 | エンゲージメント・職務満足に関する設問 | 2019年 | 2022年 |
エンゲージメント | キツセイ薬品をもっとよくしたい | 3.61 | 3.56 |
キッセイ薬品の社員であることを誇りに感じている | 3.26 | 3.27 | |
将来もキッセイ薬品とともに成長していきたい | 3.40 | 3.38 | |
キッセイ薬品の経営ビジョンに共感している | 3.53 | 3.58 | |
職務満足度 | 目標以外の業務でも必要だと思った事は上司に提案し実行している | 3.22 | 3.23 |
仕事にやりがいを感じている | 3.18 | 3.22 | |
仕事は会社の目標達成に重要な意味を持っている | 3.40 | 3.42 | |
仕事は自分の能力を十分活かすことができる | 3.15 | 3.17 | |
仕事の達成感を感じることができる | 3.10 | 3.13 | |
仕事を通じて成長を実感できている | 3.09 | 3.12 | |
仕事を通じて社外顧客に満足感をもってもらえる製品ゃサービスを提供できている | 2.97 | 3.00 | |
エンゲージメント・職務満足に関する設問の平均 | 3.26 | 3.28 |
※満足度評価尺度:「大いにそうと思う(4点)」「ある程度そう思う(3点)」「あまりそう思わない(2点)」
「全くそう思わない(1点)」
②ダイバーシティ&インクルージョン
項目 | 2022年度実績 | 2023年度目標 |
女性社員の育児休業取得率 | 100% | 100% |
男性社員の育児休業取得率 | 80.0% | 80%以上の維持 |
男性社員の平均平均勤続年数に対する女性社員の平均勤続年数の割合 | 82.7% | 80%以上の維持 |
障がい者雇用率 | 2.45% | 2.5%以上 |
③健康経営
項目 | 2022年度実績 | 2023年度目標 |
ストレスチェック受験率 | 93.9% | 100% |
メモリアル休暇取得率※ | 98.4% | 100% |
※年次有給休暇の取得促進を目的として、年3日を誕生日などの記念日に計画的に取得する制度
(2) 気候変動に関わる指標と目標について
気候変動に関わる指標としては、経営基盤のマテリアリティ「気候変動への対応」におけるKPIとして、CO2排出量の削減及び再生可能エネルギーの利用率を設定しています。日本政府の2050年カーボンニュートラル宣言及び2030年温室効果ガス排出量46%削減(2013年度比)目標達成に貢献するため、当社における中期的な目標として以下を設定し、活動を推進しております。
・2030年度CO2排出量目標(Scope1+2):2013年度比46%削減
・2030年度再生可能エネルギー利用率:全電力使用量の74%以上
2022年4月には長野県内の水力発電所などの電気を活用した長野県産CO2フリー電気「信州Greenでんき」を本社・松本工場、並びに塩尻工場で導入しました。その結果、当該拠点における再生可能エネルギー利用率は約34%となり、CO2排出量は年間約2,280トンの削減となりました。さらに、2023年4月1日からは新たに中央研究所、製剤研究所、第二研究所、ヘルスケア事業センター及び東海北陸支店の5事業所に導入を拡大し、これにより年間CO2排出量を約40%減(2013年度比)を見込んでおり、再生可能エネルギー利用率については2030年度目標である「全電力使用量の74%以上」を前倒しで達成する見込みです。今後も、再生可能エネルギーの利用を積極的に推進してまいります。
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